【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第2節 潰えた好機~リューゲン星域会戦

 帝国暦42年3月、ルドルフ崩御の報を受けて、攻守連合の最高指導者ディビット・スーは、同国が保有するほぼ全ての艦隊戦力、約1万隻を率いて、帝国領ムスペルヘイム軍管区へ侵攻を開始する。

 彼らは、蜂起した共和主義勢力を吸収し、物心両面で彼らの支援を受けて、同軍管区司令部を制圧。同地を橋頭堡として確保した上で、各所の共和主義勢力によるテロ・ゲリラ活動を支援し、帝国軍の迎撃態勢を攪乱させる。最終的には、長駆してルドルフ崩御で混乱しているだろう帝都オーディンを攻略する、という戦略を策定した事が同軍捕虜達の証言から判明しているが、現在的視点からすれば、この戦略は既に破綻していた。

 

 前述した通り、ルドルフ崩御時、武力蜂起を画策していた共和主義勢力の動向は、悉く帝国当局の知る所となっていた。帝国暦42年3月1日に挙行されたルドルフの国葬までに、その大部分が社会秩序維持局の治安維持部隊によって、一斉逮捕されている。この時点で、共和主義勢力の支援を受けるという攻守連合の戦略は破綻したと言わざるを得ない。一斉逮捕の報に接した同軍首脳部は、このまま侵攻しても質量共に優勢な帝国軍に迎撃されてしまい、帝都オーディンの攻略など不可能だ、一度、本国に撤退すべきとの主張と、例え共和主義勢力の支援が受けられずとも、ルドルフ崩御というこの千載一遇の好機を逃すべきではない、撤退しても状況が好転する保障など無いではないかとの主張が対立、容易に結論が出なかった。

 

 最終的には、総司令官ディビット・スーの判断で、ムスペルヘイム軍管区を攻略、その戦果を以て帝国政府と交渉する、との方針に決したが、時すでに遅かった。

 

 この事を予見していたノイエ・シュタウフェン公は、ルドルフ国葬の翌日、自ら迎撃軍総司令官となり、帝国中央艦隊のほぼ全軍、約2万5000隻の大艦隊を率いて、帝都オーディンを出立。副司令官に起用したノイマン候アルベルト(カストル軍政府の故スー総統の三男スー・ウェイ・ダオの後身)を先鋒に、一路、ムスペルヘイム軍管区へ進撃を開始。攻守連合軍が軍管区司令部に到達する前、同管区内のリューゲン星系で邀撃戦を展開した。

 攻守連合軍に比して、帝国軍は質量ともに圧倒している事を活かし、総司令官ノイエ・シュタウフェン公は外連味のない、堅実で隙の無い用兵で攻守連合軍を圧倒。同軍司令官のディビット・スーは、父親譲りの多彩な戦術を駆使して、寡兵ながら善戦したが、最終的には数に勝る帝国軍が勝利、残存兵力を率いて本国への退却を余儀なくされた。

 

 勝利したノイエ・シュタウフェン公は、その余勢を駆り、攻守連合への逆侵攻を敢行。同国の軍事基地が置かれていたアルヴィース星系を占領すると、同星系を策源地とするため、帝国本国から工兵部隊を呼び寄せると、基地の仕様変更と拡充工事を開始した。なお同基地は、星系名からアルヴィース軍事基地と命名されて、帝国暦44年に竣工している。

 

 攻守連合と同様に、帝国領への侵攻を企図していたシリウス、その同盟国・共同体を放置して、帝国中央艦隊のほぼ全軍を攻守連合軍への邀撃戦に当てたのは、平定戦役時、帝国宇宙軍随一の知将と称されたノイエ・シュタウフェン公の判断だった。

往年の軍事力は喪失したとは言え、経験豊富で優秀な将兵を抱える同国の艦隊は決して侮るべきではない、主力を壊滅させる機会を決して逃すべきではないと、強硬に主張した結果だった。また、自身が迎撃軍司令官として、シリウス・共同体の連合軍を撃破したヴェガ星域会戦の経験から、両国の軍事力が帝国よりも著しく劣っており、仮に両国が侵攻してきても、軍管区レベルで対処可能との判断もあった。事実、帝国暦43年、シリウスも艦隊を動かし、帝国領に侵攻を開始したが、アルフヘイム軍管区駐屯の地方艦隊司令官、ヨハネス・フォン・ヴィンクラー中将によって撃退されている。

 

 だが、知将としての判断だけではなく、平定戦役時、かつての上官で、用兵術の師匠でもあったリスナー上級大将から「弱敵に必ず勝つ」と評されたノイエ・シュタウフェン公は、攻守連合軍との戦闘経験が少ない事もあり、数の力を最大限に活かせるこの機会を逃せば、同国軍を完全覆滅させる自信が無かったのかもしれない。史料上の根拠はないのだが、攻守連合の盟主の1人だった故スー総統の三男、スー・ウェイ・ダオの後身、ノイマン候アルベルトを副司令官に抜擢した事が、その表れだったのではないかと、個人的には考えている。

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