【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第10節 攻守連合の滅亡~「難治の地」に

 攻守連合の首都星ペイジンを占領した遠征軍総司令官ノイエ・シュタウフェン公は、超光速通信を用いて、ジギスムント帝に復命。現地の状況を包み隠さず報告すると共に、攻守連合という国家は事実上、消滅した、正規軍による残党狩りは時間と労力の浪費であり、彼ら残党の捕縛は、占領地の治安回復活動の一環として行うべきである旨、言上した。

 

 ジギスムント帝もその判断を是とし、同公以下、遠征軍将兵の労苦を厚く労うと共に、帝都への凱旋を許可している。皇帝の許可を得て、ノイエ・シュタウフェン公は帝国宰相の権限により、ポルックス人民共和国の首都星だったルーシアに新領土総督府を設置、自ら新領土総督に就任したが、自身の腹心たる軍政家、テオドール・フォン・カイザーリング中将を総督代行に任命、実務は一任した。

 また、新領土全体を管轄するウトガルド軍管区を新設、治安回復と残党追捕の責任者として、同じく腹心のユルゲン・フォン・ファーレンハイト少将を管区司令官兼地方艦隊司令官に任命した。以降、彼ら両名の手によって、攻守連合領の帝国領への転換が急ピッチで進められていく。

 なお、惑星ペイジンではなくルーシアに総督府が置かれた理由は前述の通り、ペイジンには国民たるべき人民がほぼ皆無だったためだ。拡大戦役終了後、両星を含む一帯はアムリッツァ星系と名付けられて、論功行賞で勲功第一とされたノイエ・シュタウフェン公爵に領地として下賜されている。

 

 これらの処置を済ませると、ノイエ・シュタウフェン公は宣言通り、遠征軍を率いて、策源地のアルヴィース軍事基地に帰投。全将兵に対して、労いの言葉と共に一時金と休暇を与え、士気を回復させた後、帝国暦45年末には帝都オーディンに凱旋している。なお、軍事基地での休暇よりも、一刻も早く家に帰りたいと望む将兵も多かったようだが、この時すでに、ジギスムント帝とノイエ・シュタウフェン公は国境侵犯したシリウスへの出兵を決定しており、帝都に帰還した遠征軍をそのまま、シリウスへの遠征軍に転用する事を考えていたようだ。故に、軍団組織と将兵の緊張感を維持するため、敢えて軍事基地での休暇を選択したと見られている。

 

 さて、今や帝国領ウトガルド軍管区となった、かつての攻守連合領だが、前述の通り、一部貴族らの裏取引によって、名目上は帝国領だが、実際は民主共和政体が保持されている星系もあった。帝国支配の貫徹を希求するジギスムント帝は、この事態を深く憂慮。親政開始後、自らの腹心ビューロー大将による再平定戦を実施しているが、その後も同地には反帝国感情が根強く残っていた。

 

 その原因の1つが攻守連合残党の蠢動。拡大戦役終了後、帝国暦50~60年代に至っても、攻守連合の旗を掲げた軍事集団がゲリラ戦を行っている。だが、その目的は同国の復活でも、同国領の回復でも無く、かつての同国人民を拉致、労働力として移住させる事だったようだ。また、帝国の支配を嫌った同国の遺民が彼ら軍事集団と通謀し、その護衛を得て帝国領を離脱、サジタリウス腕方面へ消え去る事例も多発している。一説には、同国最後の指導者ディビット・スーは、イゼルローン回廊を突破して、後の同盟領で独自のコロニー国家を築いたとも言われるが、これら同国残党や遺民の動きがその根拠の1つとなっている。

 

 また、攻守連合は軍事国家であり、国土開発や経済振興よりも、軍備拡充に注力していた。そのため、後述のシリウス・共同体領と比較すると、その領域は低開発状態にあった。よって、帝国領に編入された後も、住民の生活レベルは、一般的な帝国国民・領民の水準よりも総じて低く、貧困故の犯罪も多発。反帝国のスローガンを掲げた武装集団やテロ組織、マフィア等が跋扈して、治安も良いとは言えなかった。

 

 なお、同国の中心星域だったアムリッツァ星系は、拡大戦役終了後、ノイエ・シュタウフェン公爵家に領地として下賜されたが、これは初代当主ヨアヒムが同国を征服した事を記念して与えられたもので、その統治は帝国政府に委任され、実質的には皇帝直轄領だった(税金等は政府が徴収し、統治に必要な経費を除いた後、同公爵家が余剰分を受け取っていた)。帝国暦100年代、同公爵家は当時の権臣エックハルトとの権力闘争に敗れ、一門を挙げて領地に移住、領主貴族とならざるを得なかったが、帝国最大の権門として、帝都で栄耀栄華を極めていた同家にとり、治安の悪い低開発の辺境域で、領地開発に努める事になってしまったのは、極めて不本意な事であっただろう。

 

 以上の事から、帝国政府はこの一帯を「難治の地」と見なしており、主要星系こそ皇帝直轄領として保持してはいたが、その他の星系は領主貴族または自治領主に封じられた現地有力者が統治するか、前述のノイエ・シュタウフェン公爵家のように、何らかの事情で同地の領主にならざるを得なかった貴族達が支配する状態だった。なお、彼ら現地有力者は、ジギスムント帝の再平定戦の結果、帝国皇帝に忠誠を誓い、民主共和制を採用しないと誓約した者たちだった。

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