【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第5節 「師父」ノイエ・シュタウフェン公の想い

 以上のように、クーデター未遂事件を起こした母親との和解劇を演出し、反シュタウフェン派の貴族、特に領主貴族らの支持を集めた。さらには彼ら領主の牙城たる枢密院を自らの与党とし、領主達から私兵や人材、鉱山など領地の献上を受けて、自前の武力と財力を手に入れた。これが拡大戦役の前半戦、ノイエ・シュタウフェン公が攻守連合の征服事業を指揮している裏で、ジギスムントが帝都で行っていたと思われる事である。

 

 しかし、ここで疑問が生まれる。同公は、皇帝たる息子が自身に対抗できる政治的基盤を構築しつつある事に危機感を抱かなかったのだろうか?敢えて想像するならば、攻守連合の征服時、ノイエ・シュタウフェン公が一門の貴族らの暴走を容認する事で、ジギスムントの反感と危機意識を煽り、自前の政治的基盤を形成するように促したのではないか、との見解を記したが、同公にとり、息子のこの動きは将に期待通りだったのではないか。一門の党首としては危機感を抱きつつも、父親そして政治上の師の1人としては、息子そして弟子の成長に、むしろ誇らしささえ感じていたのかもしれない。

 

 このように、権臣の勢力に対抗して、自身の支配権確立を図ろうとする皇帝にとって、このジギスムントの事例、即ち政府や軍との関係が比較的薄い、領主貴族の力を借りる事は、旧帝国滅亡に至るまで、常套手段の1つとなっている。また領主貴族側も、自家の保全、そして勢力拡大を図るため、時の皇帝の求めに応じ、積極的な支援を行う者が少なくなかった。それは、政府や軍で権力を独占、ともすれば自家の生殺与奪の権さえ握りかねない中央の文官・武官貴族に対抗するため、皇帝という政治的な後ろ盾を欲したからであった。

 

 かくして、父親の派閥に対抗できる政治的基盤を構築していったジギスムントだが、その目途が付いてきた帝国暦45年、攻守連合が滅亡し、遠征軍総司令官ノイエ・シュタウフェン公が帝都に凱旋している。既に決定していたシリウス・経済共同体への遠征は、その国力比を考えれば、帝国の勝利は約束されていたと言えるが、ジギスムントにとっては、両国の征服事業を活用して、自ら構築した派閥の勢力を拡大し、さらにはシュタウフェン派の牙城たる帝国軍に自派閥の影響力を及ぼせるかどうか、これからが正念場と言えた。

 

 次章からは、シリウス・共同体両国への遠征と征服事業の概略を踏まえて、皇帝ジギスムントの意図を説明していきたい。

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