【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

73 / 147
第10節 帝国軍人アンドレアス・フォン・ビューロー②~攻守連合・シリウス遠征で活躍

 ルドルフが崩御、ジギスムントが即位すると、特に望まれて中央艦隊に異動。攻守連合への遠征軍総司令官となったノイエ・シュタウフェン公の麾下となり、連合への遠征にも従軍している。

 艦隊司令官としても能力を発揮するが、少数を以て多数を破る事に美学を見出しており、同公はその姿勢をしばしば叱責したが、当人は「なる程、多数で少数を破るのは、確かに安全でしょうが非効率でもありますな。小官は企業人の子であります故、どうしても効率を重視してしまうもので」などと人を食ったような発言に終始。温厚なノイエ・シュタウフェン公すらも怒気を発する事があったが、皇帝ジギスムントは、自分の性格と正反対だったからなのか、従弟で学友でもあったビューローを何故か好んでおり、父親にも「あの者は確かに不遜な男ですが、無駄に部下を死なせるような愚か者ではありません。彼奴なりの勝算があってやっているのでしょう。今少し、長い目で見てやって頂けませんか」と、執り成してやるのが常だったと云う。

 

 攻守連合への遠征で武勲を上げ、その功績により少将に昇進。続くシリウス・共同体の征服事業では、方面軍総司令官に就任したヴィンクラー中将の副将となった。これは自身の腹心に功績を上げさせたいジギスムントの意向でもあった。ビューローは皇帝の意を汲み、シュタウフェン派に属さない若手軍人らを率いて、征服戦で活躍。拡大戦役終了後、彼らはビューロー派となり、親政を開始したジギスムントが帝国軍を直接支配するための基盤ともなっている。

 

 ただ、両国内の交通路を遮断し、物資の流通を阻害、人民を飢餓状態に追い込む方面軍の戦略は、少数で多数を破る事を重んじるビューローからすれば、決して最上の戦いとは言えなかったであろうが、彼が一連の征服事業で不平不満を漏らしたとの記録は無い。総司令官ヴィンクラー中将の戦歴と威厳に敬意を払ったためなのかどうかは分からないが、この時期のビューローはヴィンクラーの指示を遵守して、その為人に敬服さえしている。

 或いは、青年時代の客気が収まり、次代の帝国軍を率いる将帥の1人として、皇帝ジギスムントからの期待を実感し始めていたビューローにとり、重厚なヴィンクラーの姿は、これから自身が目指すべき軍人像として映ったのかもしれない。実際、緻密な戦略家であったヴィンクラーの下で、その采配を間近で見た事は、後年、ビューローが攻守連合領の再平定戦を遂行する上で、貴重な経験となっている。

 

 シリウス征服戦の終盤、ヴィンクラー中将が急逝した後、方面軍総司令官に起用されたノイエ・シュタウフェン公が総司令官代行に地上軍のイザーク・フォン・ケッテラー中将を任命した事は、ヴィンクラーの副将は自分だとの思いが強かったビューローには承服しがたかったのだろう。シリウスの首都ロンドリーナ攻略戦の司令官に、自身の師匠でもあったカイザーリングを推薦した後、病気を名目に帝都オーディンへ帰還してしまった。

 その姿勢はシュタウフェン派、特にケッテラー兄弟から批判されたが、当人は意に介さず、皇帝ジギスムントに帰還を報告すると、病気療養だと言い、自領内の保養地に引き籠っている。ジギスムントも気分屋の傾向が強い従弟を無理やり軍務に就かせても、より機嫌を損ねるだけだろうと判断したのか、敢えて放置している。これ以降、ジギスムントの親政開始まで、ビューローは無役の時を過ごす。

 

 シリウス・共同体両国が滅亡、帝国暦52年に挙行された戦勝記念式典の席上、武勲を評価されたビューローは中将に昇進するが、独断での帝都帰還が響き、役職は軍務省高等参事官という、事実上の閑職が与えられただけだった。これは、方面軍総司令官を務めたノイエ・シュタウフェン公を勲功第一とし、帝国元帥の称号を与えた以上、その命令に服従しなかったビューローを重用する事は出来なかったからだが、この時期の皇帝起居録によると、皇帝ジギスムントは領内巡幸の道中、密かにビューローと会っていたようだ。後年、ビューローがジギスムントの筆頭武官となった事を考えると、ジギスムントは近い将来の登用を約して、彼の不満を宥めていたのかもしれない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。