【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第11節 帝国軍人アンドレアス・フォン・ビューロー③~再平定戦の総司令官に起用

 転機となったのは帝国暦55年、帝国宰相ノイエ・シュタウフェン公の逝去。名実ともに親政を開始したジギスムントは、ビューローを帝都に召喚、中央艦隊副司令長官兼第一分艦隊司令官に任命、帝国宇宙艦隊司令長官代行の称号を与えた。専制国家らしい極端な抜擢人事ではあったが、ビューローの武功を知る者達はむしろ遅きに失した程だと評し、その麾下にいた将兵らは歓声を上げて就任を祝ったと云う。

 

 この時代、中央艦隊の指揮権は統帥本部総長が有していたが、宇宙艦隊司令長官代行の称号を与える事で、ビューローは帝国軍が保有する宇宙艦隊全ての指揮権を掌握する事となった。なお、司令長官は名目上、帝国全軍の最高司令官でもある帝国皇帝だと見なされた。即ち、ビューローは宇宙艦隊の指揮権についてのみ、皇帝ジギスムントの代理を務めるとされたのだ。

 

 ちなみに、旧帝国軍史上、宇宙艦隊司令長官が常置の官職となったのは、帝国軍の主体が宇宙艦隊にシフトしたダゴン星域会戦以降。それ以前で、代行との立場ではあるが、この官職を得たのはビューローの事例が初とされる。

 

 かくして、帝国宇宙軍、その実戦部隊の事実上のトップとなったビューローだが、皇帝ジギスムントが彼に期待したのは、今やウトガルド軍管区となった、旧攻守連合領の再平定を行わせる事だった。

 前述した通り、功績を焦った一部貴族の暴走により、同軍管区内には名目だけの貴族領または自治領でしかなく、その内部では依然として民主共和制が保持されている星系が存在していたが、皇帝支配の貫徹を希求するジギスムントにとり、等閑視できる問題では無かった。また、父親の派閥・シュタウフェン派を事実上、継承した以上、同派内部の統制もジギスムントの責任であり、派閥の力を恃み、皇帝専制という帝国の支配原則を蔑ろにした貴族らを放置する事は許されなかった。同派の貴族達から軽侮されないためにも、断固とした措置を講じる必要があったのだ。

 

 シリウス・共同体の征服事業で、中央艦隊に損害がほぼ無かった事もあり、約1年間の準備期間を経て、帝国暦57年、皇帝ジギスムントはビューローを遠征軍総司令官に起用し、旧攻守連合領への再平定戦を開始する。名目は帝国領内で蠢動、臣民を拉致する連合軍残党の討伐だったが、実際の目的は、皇帝の支配に服さず、未だに民主共和制を奉じる貴族領や自治領を皇帝直轄領に編入する事だった。その意味では、先帝ルドルフの御代に遂行された平定戦役と同様の性格を持つ戦いだったと言えよう。

 

 約2万隻に近い遠征軍を率いたビューローは、旧攻守連合領に置かれたウトガルド軍管区司令部に到着すると、遠征軍の索敵能力を挙げて、連合軍残党の根拠地を探し出し、特定が出来次第、全軍を以て之を覆滅するとの方針を表明。軍管区全体を網羅する哨戒網を作り上げ、麾下の艦隊を各地に派遣していった。

 

 しかし、この一連の行為自体が欺瞞だった。ビューローの真の狙いは、事前の調査で判明していた、未だ帝国皇帝の支配に服さない、名目だけの貴族領や自治領を派遣した艦隊で攻略する事だった。連合軍残党を探す哨戒活動として、軍管区内を行軍した各艦隊は、目標の貴族領等に近づくと、急速に展開して惑星軌道を制圧。制宙権を確保すると、劣悪遺伝子排除法違反-同法第三条に定める「帝国の支配を受け入れず、不当な政治団体を構成し、同団体を支配する者及びその支配下にある者」に該当する容疑-で、全領民を逮捕、拘束すると宣告した。

 多くの場合、自分達は帝国の領主貴族に仕える領民であります、もし問題があるというならば、領主様に問い合わせて頂きたいと抗弁したが、その領主らが枢密院派遣の特別警察官らによって逮捕される動画を見せられると、観念して降伏する場合が殆どだったと云う。彼らはほぼ例外なく、農奴階級に落とされ、帝国各地の皇帝直轄領で働く事になった。

 

 このように、ビューローの艦隊が彼らの領地を制圧するのに先立って、ジギスムントは、自領内に共和主義者を隠匿していたとして、大逆罪の容疑で彼ら領主達の逮捕を枢密院に請求している。自分達と良好な関係を維持していた皇帝の要請を断る理由は枢密院側には無く、むしろ無主の星系が増えれば、無爵位の子弟達を新たな領主にできる可能性も高まると、枢密院議員達はむしろ積極的に賛成している。

 

 こうして、名目だけの貴族領はその貴族家ごと取り潰されて、皇帝直轄領となった。自治領もまた同様で、多くの自治領主は皇帝を蔑ろにし、帝国が禁止する民主共和主義を奉じる逆賊だとされて、一族もろとも処刑。自治領民は農奴として連行されていった。

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