【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第10章 拡大戦役⑥~シリウス・経済共同体の滅亡
第1節 ロンドリーナ攻略戦の開始


 本章では拡大戦役の掉尾を飾るシリウス・経済共同体両の滅亡、その有様を両国の視点から描き、あわせて拡大戦役が旧帝国史に、ひいては人類史に与えた影響を概説したい。

 

 帝国暦51年の年頭、皇帝ジギスムントは方面軍総司令官ノイエ・シュタウフェン公に対し、年内の早い時期に両国を完全滅亡させよ、との勅命を発した。

 慎重居士と言える性格のジギスムントだが、両国の政治家や軍隊司令官、企業経営者など、帝国への亡命を希望する者が後を絶たず、軍務省調査局の報告でも、両国社会は混乱の極みにあり、多くの人民も衣食住を保障してくれる帝国の支配を歓迎するだろう、との結論が出されていた事を踏まえて、当初の戦略目的である農奴の獲得も順調、父親の派閥たるシュタウフェン派も手中に収め、同派に属さない自分子飼いの軍人・官僚達も、この征服事業を通じて頭角を現してきた、この現状を鑑みて、ルドルフ崩御から数えると、既に10年目に突入した拡大戦役の幕引きを図るべきと決断したのだろう。

 

 新年の祝賀会が終わると、方面軍総司令官ノイエ・シュタウフェン公は、ヴェガ星域 の軍事基地に戻り、シリウスの首都星ロンドリーナ攻略を全軍に下命。約1万隻の艦隊を率いて、一路、ロンドリーナへと進軍した。

 

 帝国軍、ロンドリーナへ侵攻開始との報に接したシリウスだが、この土壇場になっても、国論を統一する事が出来なかった。一般市民らは政府や軍部の非を鳴らし、市民の生命と財産を守れ!とデモや暴動を繰り返し、富裕層は財産を抱えて辺境の惑星に疎開しようとする動きもあったが、その動きを知った低所得者層が宇宙港に殺到、卑怯者!裏切者!利己主義者め!との怒号と共に、逃げ出そうとしていた富裕層らを虐殺していった。その暴力は幼い子供や女性、老人達にも及び、社会からは秩序が、市民からは寛容さが失われた。

 或いは、首都星ロンドリーナを脱出も出来ず、ただ帝国の侵略を受け入れる事しか出来ない者達は、暴力と流血の狂騒の中に身を置くしか、母国の滅亡という未曽有の恐怖に耐える術が無かったのかもしれない。

 

 一部の若手軍人らは、例え勝てずとも、全軍を以て帝国軍に玉砕し、誇り高い民主共和主義者の矜持を示すべきだと強硬論を主張したが、同調する者は決して多くなかった。政治家の中には「無益な戦いで無辜の市民に流血を強いる事は、民主主義者の為すべき事ではない、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、敢えて帝国に降伏し、民主共和思想を後世に伝える伝道師になろうではないか」と主張する者もいたが、彼らが密かに経済共同体へ逃亡しようとしていた事実を暴露されて、激怒した若手軍人に殺害される、との一幕もあった。

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