【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第6節「民主主義者は宇宙人か?」

 シリウス人の発行する新聞や雑誌に目を通す機会があった。どれもこれも、政治家や官僚への批判、いや悪口しか書いていない。そう言えば、我が軍がシリウスの首都ロンドリーナを占領した後、住民代表とか称する者達が占領軍司令部へ待遇改善の要望に押しかけてきた事があった。たまたまロンドリーナを訪れていた私が、人手不足とかで、彼らの応接を任されたのだが、自分達の苦境―我々の手前、あからさまには言わなかったが-の原因は、政府と軍が無能だったからだと、そればかりを繰り返していたな。

 

 正直な所、連中の愚痴にうんざりしていた私は、皮肉のつもりで「しかし、卿らは民主主義者なのだろう。自分達が選出した代表者をそこまで否定しては、彼らを選んだ卿らの選択が間違っていた事になるのではないか?」と揶揄してやったのだが、連中の回答には耳を疑ったものだ。曰く「私はあんな政治家に票を入れてはおりません。誰かが勝手に選んだ奴に従う理由などございませんよ」。

 

 眼前の男は確か民主主義者だったと思うのだが、皇帝専制の国から来た私でも知っている、多数決の原則を知らないのだろうか?自分が投票したか否かではなく、大多数が是とした事、或いは人物に従うのが民主政治のルールだったと理解しているのだが。目の前の男は本当に人間なのか?真っ当な知識と理解力を有している知的生命体なのか?子供の頃、曾祖父さんの形見だとして、父上から読ませてもらった空想科学小説に出てきたような、人間の姿に仮装した宇宙人とでも会話している気分になった事をよく憶えている。

 

 いやいや、百歩譲って、彼の主張を認めよう。自分が選んだ訳ではない権力者に従う義務はないと。では、彼が我々帝国を皇帝専制、貴族制度を採用した中世的な反動国家と否定する根拠はどこにあるのか?自分が選んだ訳ではない人物が政治を司っているという構図は、全く同じなのではないか?

 

 これは自画自賛かもしれないが、自分が投票もしていない、無能で軽蔑すべきと信じている政治家に、その他大勢の1人として嫌々従い、その政治家からは投票用紙の1枚、または納税者カードの1枚のように扱われる事に比べれば、皇帝陛下や我々貴族に対し、一個人として忠誠と献身を捧げる事が出来て、それへの見返りもある皇帝制度、貴族制度の方が、人間としての生の充実につながるのではないか?

 

 勿論、仕える貴族が主君たるに相応しい器量の持ち主である、という前提はあるが。少なくとも、私自身、従臣を抱える身である以上、そういう主君でありたいと思っているが。まあ、相手がどう思っているかまでは分からないがな。

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