裏の実力者厨二病と表の努力家仮面ライダー 作:気まぐれな富士山
将来の夢、として掲げる無敵のヒーロー。
しかし、その夢は多くの人間が諦める。
俺のその夢は、多くの人間が目指さない。
「かっけー!クウガかっけー!超変身!」
小1の頃、今でも覚えている。
優しくて、強くて、かっこいい仮面ライダークウガ。
「フッ、鍛えてますから!」
響鬼の筋肉に憧れて、めちゃめちゃに鍛えたりもした。
「俺、参上!」
友達とみんなで映画を見に行った。
一人一人、好きなイマジンの真似をしてた。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」
中学はディケイドのフリをして大スベりした。
色々聞かれる度に、こう言って回っていた。
「この学校の全員と友達になる男だ!」
この言い回しをしながら高校に通ったら、全くもって通じないまま三年間が終わった。
友達は結構できたけど、全員とは無理だった。
その後も、仮面ライダーもスーパー戦隊もウルトラマンも全作見た。
30にもなった俺は、今でも生粋のライダーオタクだ。
でも、限界が来た。
年齢とか、資金とか、家族とか、そういうのじゃない。
死んでしまった。ただそれだけだ。
「まぁ、なんて可愛らしい!」
「べろべろべろ〜!ほらみろ!笑ったぞ!」
「この子はきっと、最高の鍛治師になるぞ!」
「名前は…………スミス!エルガン・スミスね!」
こうして、前世の記憶を持ったまま、俺は転生したらしい。
鍛治師の子として育った俺は、特殊な力があったらしい。
「これは、けっこうかたい。でも、あっちのほうがかたくてやわらかい!」
「凄いぞ!この子、もう既に俺の使う鉱石を覚えてやがる!」
「ウソ!?まだ一歳よ!言葉を覚えるのも、早すぎるわ!」
「やっぱり天才だ!さすが俺たちの子だな!マリア!」
鉱石に触れると、その意思が伝わってくるような感覚があった。
粒子のようなもの、一つ一つが自分に語りかけてくるようだ。
同時に、自分の体にまとわりついてくるようだ。
その意識に残る力を活用すると、鉱物が体に貼り付いて鎧になったり武器になったりした。
何かの才能らしいが、この片田舎ではそうそう役に立たない。
「今日は、ここで社会見学だ!色々教えてもらえよ!」
「エルガンさんの息子なら大歓迎だ!色々見せてやるよ!」
この日は、父の知り合いである炭鉱夫のおっさんたちに色々な鉱物を教えてもらった。
「これは石炭、こっちは花崗岩、こっちは大理石で………………」
「たくさんある……………」
「ハハハ。流石に子供にゃ覚えられねぇか。」
「でも、面白い!っ?え、何?そっち?」
この時、俺は誰かに呼ばれたんだ。
今までの鉱物たちは、何となく生きている感覚しかなかったが、今回は明確に声が聞こえた。
「あ、おい!待て小僧!そっち行くな!」
ててててと声のする方に走っていく。
「君が、ぼくをよんだの?」
そこにあった石は、光り輝きながら俺を待っていた。
「おい!って……………こりゃあたまげた!こいつはライトマイトの原石だ!こんな大きいとは………………」
「おじさん、これ知ってるの?」
「あ、あぁ。こいつは超珍しいな鉱石でな。こいつは魔力を含んでいて、これだけでエネルギーになるんだ。今じゃあ、石油が入ってきちまって食いもんにならねぇが、鉱石研究なんかで使われてるぜ。」
「へぇー…………だから、なんかいっぱい出てるんだ。」
「え?何が出てるって?」
「え?ほら、なんかこう、うにょうにょーって、何だか波みたいなのがあるじゃん。」
「小僧…………本当に見えるのか?」
「見えるよ。おじさんには見えないの?」
「なんてこった……………小僧、そいつぁすげぇ才能だぞ。」
俺には転生特典があった。
と言っても、魔力の流れが先天的に見えるだけだったが。
まぁ、そんじょそこらの魔剣士では感知できないレベルの魔力を見れるから、かなり凄いんだろう。
そして、ある日気づいたんだ。この目と、石に関する知識があれば、俺は仮面ライダーになれると。
「試してみるか…………………」
10歳の頃だった。
地面と意識を繋げ、地下にある鉱物を呼び覚ます。
瞬時に仮面ライダー1号のベルトを創造し、変身ポーズをとる。
「ライダー…………変身!!」
するとどうだろう。足から頭にかけて石達が集い、1号のスーツとなっていく。
鏡で自分の姿を初めて見た時、興奮した。
憧れのヒーローに、確かに変身したのだ。
「すげぇ…………!これが魔力!」
その後も、ずっと同じ様にイメージトレーニングを続け、鉱物への知識を高め続けた。
ある日。月が綺麗な日だった。
「街に…………盗賊!?」
夜の特訓をしている最中、商隊が盗賊に襲われていた。
俺は、今こそ実戦の時だと思った。
「へっへっへ、アイツらたんまり仕込んでやがったぜ。」
「あとは、街に焼いてトンズラだな。」
「待て!悪党ども!」
崖上から月の光で自分の影を生み出し、顔が見えないようにし、魔術を連動させながら声を拡張していく。
「貴様らの悪行は見せてもらった!」
「あ〜?何だお前!」
「真名を名乗る必要はない……………だが、この名を覚えておけ!」
「俺は!仮面ライダーーーッ!V3!」
高々と叫び、変身のポーズを取る。
今回は、3号ライダーの姿で行ってみようと思う。
「変…………身!ブイ、スリャァァァ!!」
気合いを入れながら魔力を光に変える石、発光石に魔力を込め、光らせながらライダースーツを形成していく。
「な、なんだあのふざけた野郎は!」
「構わねぇ!やっちまえ!」
「トウッ!」
飛び降りた時の対策も万全。
足に加工次第でスライムの様に柔らかくなる、通称スライムストーンをつけることで、着地の衝撃を軽減する。
強化スーツの効果は、スピードとかパワーとか身体能力が向上する。
「ハァッ!ダァッ!」
「ぐぉっ!?うがぁっ!」
「なんだ、こいつ!強いぞ!」
前世では、我流の喧嘩術で鍛えてたこともあり、敵の動きは大体読めるようになっている。
「お前で最後だ!」
「くっ、クソ!お前、なんなんだ!」
「言ったはずだ!俺は、仮面ライダーV3!貴様らの好きにはさせんぞ!デストロン!」
「デストロンだと…………!?何の話っ、ぐあぁっ!」
敵は気絶させた。
あとはこいつらを縛り上げ、騎士団が来るのを待つだけだ。
「よし、とりあえず縄を………………」
「はぁっ!!」
ガギィンッ「うおっ!?まだいたのか!」
「なっ、剣が!?」
「魔力を流した攻撃か…………でも、魔断石で覆われた俺の体には魔力が流れない!即ち、本当の切れ味だけでしか俺は切れない!」
「な、何だと!?」
「だが、その剣の腕、かなり鍛えた様だな!だから、お前にはこの技を食らわせてやる!トウッ!」
高く垂直に飛び上がり、両足で蹴り、回転する!
「ブイスリー!きりもみ反転キィィィック!!」
「ぐぁぁぁぁ!!」
仮面ライダーで初めて出てきた二連キック。
相手は確実に再起不能になる!
「フッ…………手加減はしたぜ?牢獄で反省しな!」
こうして、街の平和は守られた………………
かに思われた。
「た………助けて!ぎゃぁぁ!!」
「ッ!?残党か!」
声のする方に走ると、そこには、闇に紛れる男がいた。
「全く、資金が足りないから来てみればどういうことだ……………もうとっくにやられている。しかも全員生きているとは、いやはや甘いヤツだな。僕ならこうして、ちゃんと殺しているのに。」
「お前…………誰だ!姿を現せ!」
その者は、暗くはためく外套をたなびかせ振り返る。
「おやおやおやおや、君がこれの当事者かい?」
「そうだ、と言ったら?」
「クククッ、お人好しにも程があるなぁ。こいつらは商隊のみんなを殺して金品を奪うつもりだったんだよ?死んで当然よ連中さ。」
「…………死んで当然、か。」
「当たり前じゃあないか。そんなこともわからずに正義のヒーローごっこやってるのかい?仮面ライダー。」
「ッ!!なぜ俺の名を!」
「君に関することは何でも知っている…………とでも言っておこうか。」
ニヒルに笑うその喋り方が、いちいち癇に障った。
しかし、今の会話で分かったこともある。
目の前の男が自分について知っていることは、名前だけだ。
(嘘だな…………俺が活動するのは今日が最初だ。全くもって情報は流出していない。俺にはその自信がある!)
「………………死とは、至極当然のものだ。生きている限り必ず死が訪れる。そのタイミングは誰にもわからない。」
「ならどうして……………………」
「だが!殺すことは、その者の選択を奪い去ることだ!人生という名の道を消し去ることだ!それは、この世界のどの生き物であろうとも!罪に他ならない!」
「ハハハ!矛盾するなぁ、仮面ライダー!我々は、生きている限り何かを殺しているっていうのに!」
笑いながら切り掛かってくる男。
その太刀筋に迷いはなく、ただ生命を切り捨てているだけだ。
「だから!我々は日々、生命に感謝を持って生きるのだ!殺すことが常ならば、知識ある我々は、感謝をもたなくてはならない!」ギィンッ
黒い剣の一閃をスーツで防御する。
「V3パンチ!」
「ぐあっ!」
剣を躱しながら、パンチを叩き込む。
こういう捨ての技でも、技名を叫ぶのが大切。
(入ったか!?)
「……………なーんてね。フッ!」
マントよってパンチが防がれたようだ。
ドロドロに溶けたようなマントが、刃となって飛んでくる。
「ぐっ!!」ギャリギャリギャリ!
「へぇ、見た目通り硬いんだね。」
「そんなもので、俺に傷をつけられると思うな!」
(このマント……………いや、服の全てが武器!スライムの様に形状を変化させている!魔力による変質か!なら、武器をマントと誤解させる!)
屋根の上に登った男を見上げ、ブラフをかける。
「そのマント……………一体どうやって手に入れた!」
「これは僕の研究の成果さ。さて、君は僕をどうしたいのかな?」
「決まっている。安易に人を殺すお前を、俺は許さない!」
「おお怖い怖い!それじゃあ、欲しいものも見つけたし、僕は立ち去るとしよう。」
「待て!ぐっ!?」
どこからともなく現れた無数の刃が降り注ぐ。
流石に貫通する可能性が高いので、近くの石柱に隠れる。
「おのれ!貴様一体何者だ!」
鳴滝の台詞を最後に吐く。
これほどまでの厨二病なら、反応しない筈はない。
「…………我は影に潜み、影を狩る者………名は、そうだな。シャドウ。」
「シャドウ…………!!」
「さらばだ。仮面ライダー。月が2人を巡り合わせれば、また会おう。」
「いったたたた…………あの厨二病野郎、よくもやってくれたな…………やば、夜が明ける前に帰らねぇと!」
瓦礫から這い出し、自分の家へ走り去る。
幸いスーツのおかげで大事には至らなかった。
そして、同じような状況なのは彼もだった。
「あいててて…………スライムで防御したのにショックが伝わってくるとは……………主人公らしいスペックじゃないか。」
この時、同じ場所に異世界転生者が2人もいるとは、この時はまだ、知る由もなかった。