ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。   作:ソン

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連続投稿。
今回は後書き有です。


紹介と出張

 

 

 

 歓迎会が終わってから次の日の事。早速僕はフライアと極東支部の面々の前で、僕が作ったアイテムを紹介する事になった。何か、通販みたいだコレ。

 グレム局長、ラケル博士、レア博士、クジョウ博士、新兵のゴッドイーター――いないのは、この人達ぐらいだ。

 まぁ、まずは無難な所から行こうか

 訓練所を見ると、ダミーアラガミ一匹とアイテムを使うジュリウス、ロミオが立っている。この二人なら模範的な動きが出来ると判断しての人選だった。

 

『セン、いつでもいいぞ』

「うん、じゃあまずフォールトラップから行こう」

『了解した。合図は任せる』

 

 僕が手に取ったのは、金属製の筒。他のトラップと区別しやすくするためにあえて、形を変えた。

 物珍しそうに皆がフォールトラップを見る。まぁ、流通はしていないから当然の光景だろう。寧ろ、どこにでもあるように見られたら僕が傷つく。色んな意味で。

 

「これはフォールトラップって言います。内容は……まぁ、早い話即席の落とし穴です」

「落とし穴……ですか」

「よし、お願い」

 

 ジュリウスが筒をダミーアラガミの眼前に投げつける。金属製の筒は広がって、五角形の形となって、床へ定着した。

 動き出したダミーアラガミがその筒を踏んだ瞬間、地面に穴が開いてダミーアラガミが沈む。

 

「と、こんな感じでアラガミの動きを止める事が出来ます。ただし、足を使って動くアラガミ限定になりますが」

「それで、効果は?」

「アラガミが抜け出すまで続きます。だからゴッドイーター達がその間に追撃して、アラガミを怯ませたり気絶させれば、その分効果は長くなります」

「穴はどうなるのですか?」

「周囲の細胞に溶け込むので、穴は自動的に塞がります」

 

 ロミオがダミーアラガミに一撃を与えると一瞬で霧散し、次のダミーアラガミが姿を現す。

 

「それで、次がセンチネル。コレはアラガミをその場に誘導させる効果があります。感応種に対しての効果は不明ですが、乱戦になった時は分断したり撤退したりするのに使って貰うように作りました」

 

 ロミオが伸ばしたのは、一本の棒。長さは一メートルくらい。これを地面に建てればアラガミ誘導効果を持つパルスを発生させ、アラガミ達の指令系統を混乱させる事だってできる。

 だけどデメリットを言うなら、持ち運びに不便な所か。後はやはり範囲が狭い。フィールド全体の四分の一程度の範囲までしか届かないのはネックだ。

 僕が合図を送るとロミオは棒を縮めて収納する。

 

「今回は使ったらアラガミが来るかもしれないので、見せる程度です。ジュリウス、次は銃形態に変えて欲しい」

『あぁ、分かった』

「次はアイテムと言うよりバレットになります。名前はフレキシブル。どの銃にも使うことが出来ます」

 

 ジュリウスがバレットを射出する。紫色の弾丸はまるでガムのようにダミーアラガミの頭部へと張り付いた。

 

「このバレット自体に大した攻撃力はありません。効果は……まぁ、見た方が早いかな。二人とも、お願い」

 

 ジュリウスがバレットを真上へと向けて放つ。そのまま天井へ衝突するかのように見られたバレットは、途中で向きを変えて、ダミーアラガミの頭部へと直撃した。

 そしてロミオも同じように全く別の方向に放つが、それも同じようにダミーアラガミの頭部へと吸い込まれていく。

 

「このようにバレットの狙いを一点に絞らせることが出来ます。効果は三十秒ほど。なので、その三十秒の間は言葉通り一点集中砲火が可能です。……爆発や放射は無理ですけど」

 

 途端、どこかで溜息が聞こえた。

 そういえば、極東には誤射で有名な人が……いや、まぁ置いといていいか。

 そして次のアイテム――最後の紹介になるけど、これははっきり言って僕の中でもかなりの自信作である。

 本部からとんぼ返りを受けた際激怒しそうになった程だ。

 

「最後はバレットグレネード。僕はこれが一番の自信作です。このアイテムを使う前に、一つ見てもらいたい映像があります」

 

 訓練所のモニターに表示されるのは、ヴァジュラの攻撃映像。広範囲へ電撃を走らせる全体攻撃。

 うん、種類はこれでいいはずだ。間違っていたら恥ずかしい。

 

「? この映像に一体……」

「見ればわかりますよ。ジュリウス、お願い」

『あぁ、待っていたぞ』

 

 見ればジュリウスとロミオの顔が綻んでいる。

 二人もきっとこれを見せたくて仕方が無かったのだろう。二人が心を躍らせる程の発明でもあるのだから。

 ジュリウスがグレネードを投げる。それと同時に二人が距離を取った。

 グレネードが空中で炸裂し――ダミーアラガミを中心として電撃が広がった。

 

「!」

「受け渡し弾と言うのがありますよね。このバレットグレネードはその受け渡し弾をストックすることが出来るんです。そして誰でも投げれば、その受け渡し弾を使うことが出来ます。その代わりとして、威力は低いですが……」

 

 まぁ、仕方ない。バースト化しなくとも貯蓄効果が続くようにするためには、どうしても威力の力を維持に回す必要があったからだ。

 ちなみにこの開発をするとき、僕は実際、ミッションに出て現地で研究していた。何だかんだで楽しかったなぁ。

 

「……と、これでアイテムの紹介は以上です。フォールトラップ、センチネル、フレキシブル、バレットグレネード。この四つが僕の作ったアイテムです。何か質問はありますか?」

「あの……」

 

 アリサさんだ。見れば手が僅かに震えている。いや、手だけでは無い。肩も震えていた。

 言葉に言うならゾクッとした感じだろうか。

 

「フレキシブル以外は、皆誰にでも使えるんですか?」

「はい、民間人でもゴッドイーターでも同じように効果を発揮します」

「コストは……」

「それなりにはかかりますが、バレットグレネードとフォールトラップは改良が後少し進めばスタングレネードよりちょっと高い程度で済ませそうです。センチネルはちょっと、量産にはコストがかかりますかね……」

 

 そこがネックだ。民間人からすれば避難が第一優先なのだから、センチネルが一番使えるようにしてなくてはならない。

 だが、パルスを発生させると言うだけでも大分コストが高くなるのだ。これが少なくなればいいんだけど。

 

“……あ、そうか”

 

 だったらそのパルスを発生させる時間を短くすればいいんだ。そして棒は投げて刺さった瞬間に発動するようにすれば、避難でも扱える。

 うん、早速改良しよう。

 

「いやー! 凄いよ、セン君!」

 

 そう言って僕の手を握るのは、極東支部局長のペイラー・榊。通称、榊博士である。

 榊博士も元は技術者であるため、どこかでロマンを感じたのだろうか。よし、じゃあ自爆装置とかロケットパンチとかドリルとかのアイテムでも作ってみようか。

 

「これまでアラガミから逃げるにはスタングレネードで攪乱しつつ振り切ると言う方法しかなかった。もしくは神機使いの到着を待つかだ。

 バレットグレネードとフォールトラップ、センチネル……。これなら、一般人の生存率も遥かに上昇する!」

 

 ――けど倒す事は出来ないのだ。フォールトラップとセンチネルに殺傷能力は無いし、バレットグレネードも、威力自体は受け渡し弾に比べると低い。オウガテイルやドレッドパイクを倒すのにだって、それなりの個数は絶対必要だ。

 もっと、もっと先に進める必要がある。そうすれば――。

 

「早速、開発手順を頼むよセン君! いやー、技術者としての腕が唸るねー!」

「ははは……」

 

 と、まぁそんな訳でアイテム紹介は上手く行って何とか本部からの言い逃れと、極東支部での流通が許可される事になった。

 

 

 

 

「……外部、ですか?」

「えぇ、貴方とジュリウスの二人に声が掛かったの」

 

 ラケル博士に呼び出され、来てみれば僕とジュリウスの二人に声が掛かったらしい。

 内容は極めて単純で、僕とジュリウスの二名で外部からの応援に応じて欲しいとの事だ。

 ジュリウスは実力として、僕はオペレーターの能力が必要として今回選ばれた。

 

「それで、場所は?」

「いえ、フライアで向かってもらう事になっているわ。ブラッドは極東支部で待機。――他の皆は極東支部で実力を高めてもらいたいし、ロミオには皆を先導させてもらう必要があるの」

 

 うん、上の命令なら仕方ない。

 それにいつもの事だ。今回、たまたま僕とジュリウスが出るだけで。

 期間は凡そ一ヶ月。一ヶ月後に、また僕らは極東へ戻る。

 つまりその間、僕はフライア内でやる事をやらなくてはならないのだ。まず神機兵のシステム調整とオラクルリソースの改良、アイテムの開発と量産、そして――その後の事を。

 

「博士、出発は?」

「準備が出来次第、だそうよ」

 

 まぁ、ともかく。今はゆっくりと体を休めよう。

 

 

 




 第一部完。
 今回はこの場を借りて総括めいた物を述べさせて頂きます。ゲーム中ではこの後、ネルちゃんのキャラエピ消化がありますが、そこはセンが絡ませにくいため省略としてジュリウスと共に出張と言う形にしました。ゲーム中でもジュリウスが出張で離脱するシーンがあったので「じゃあここに持ってくるか」と言う感じです。後はマンネリ化の予防ですね。キャラエピまでやってたら多分私のモチベーションが保てませんし、何より書いててもゲームをなぞるだけなので、展開に詰まります。後は私が九月からリアルがデスマーチのため、執筆時間がほとんど取れないという事でタグ通り更新が不定期になります。分かりやすく言うとヒラコーの連載速度並になります。こんな私ですが、最後まで応援して下されば幸いです。
 さて、ここからの展開ですがセン達が戻って来るのはゲーム中のミッションで言うと「ウィジャボード」手前、つまりシリアス展開しか待ち受けていません。ちなみにロミオはもうキャラエピ終わってるので、省かれてます。今作の彼は家出しません。やったね、ロミオ活躍が増えry
 ここから先の展開はセンが主人公となります。今までは原作主人公としてネルにもスポットが当たっていましたが、ここでようやく彼が主人公として物語を動かし始める展開です。
 つまりここから先、ゲームの時系列を記述する事はほとんどありません。既にそこは省いていきます。原作主人公の動きを知りたい方は実際に「ゴッドイーター2」をプレイされる事をオススメします。今はインフラも整備されてるのでサクサク進めますよ!

 では「ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます」第一部完結です。

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