ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。   作:ソン

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短編です。
私にイチャラブは無理でした\(^o^)/
ラケル博士が中の人全開になって……まだ足りませんかね。
まだまだ短編は続きますので、お付き合いの程よろしくお願いいたします。
次回はフロム回です。


小話2 螺旋の樹調査レポート①

 

 

 螺旋の樹騒動から凡そ一週間。

 僕の予想通り、あの樹にはアラガミが寄り付かなくなっていて、大自然がそのまま生きている空間になっていると言う。

 そしてもう一つの懸念がフェンリル本部の介入。どうやら本部からしてみれば、螺旋の樹出現、そして内部のオラクル細胞不活化地域と言う事に対しては看過出来るような問題じゃなかったようで、調査権限を早速振りかざしてきた。

 お前ら前にも終末捕喰とかアラガミ化したゴッドイーターの事件でやらかしたろ。今回は許さんぞゴルァ、って感じ。

 で、そんな訳でそんな事に噛み付き始めたのがグレム局長である。

 

『調査など我々だけで充分行える。本部は必要ない』

 

 そしてそれに被せるように立ち上がったのが榊博士。

 

『螺旋の樹自体が、オラクル細胞不活化地域であるなら調査を急ぐ必要も無い。寧ろ本部が早急に介入を行ってしまう事により、何らかの均衡を乱してしまう恐れの方が私は高いと思うよ。そうなった場合そっちは、さて――どう責任を取ってくれるのかな?』

 

 無論、ラケル博士も売られた喧嘩は買う主義である。性格変わり過ぎてませんかね。

 

『螺旋の樹は、それ自体が終末捕喰を留めるキーになる物です。――何も知らないヒトに扱えるとでも思っているのでしょうか? そもそも素人に管理が出来ると考えているのでしょうか?』

 

 博士、それ言い分ちゃう暴論や。喧嘩売りに行ってる。

 そしてラケル博士がついに家柄を使った。まぁ、何が言いたいかと言うと。

 

『詳細はラケルから聞きました。――さぁ、話し合いましょうか』

 

 ――ジェフサ博士、来ちゃいました。

 と言うか半端ないよ、あの人。娘の事になったら目がマジだ。

 グレム局長、榊博士、ラケル博士、ジェフサ博士――こんな面子に異議を唱えられれば、さすがに本部も考えざるを得ないだろう。

 結局、僕らがゆっくりと調査を進めていき、その結果を本部に提出する事でこの話は解決した。

 ……これで良かったんだろうか。

 

 

 

 

「……おー」

 

 と言う訳で第一回螺旋の樹調査開始。

 僕とラケル博士、そしてジュリウスにアリサさんが同行している。一応念のための護衛であり、二人とも神機が使えなくとも、充分な実力者である。

 そうして螺旋の樹へ足を踏み入れた時、僕は思わず息を漏らした。

 

「……綺麗」

 

 緑が茂っていて、花畑や小川、そしてあちこちを飛び回る小鳥の姿まで見える。

 どこからか光が差し込んでいて、淡い陽光は程よいコントラストとなっていた。川の流れる音や草木の揺れる音が耳に心地よい。

 一番奥を見ると、なだらかな坂になっているようで、そこをぐるりと回る感じらしい。

 

「まるでピクニックだな」

「そうだね……」

 

 まるで僕らが場違いな存在に見えて来た。何だろう、へこむ。

 辺りを見ると、何やら洞穴の入り口に掛かる霧のような物が見えた。それが一つの扉となって、何かを分断しているようにも見える。

 気になるけど、今はこちらの現状把握が先だ。

 

「ジュリウス、アリサさん。神機は?」

「あぁ、作動すらしない。ゴッドイーターとしての力も停止されているようだ」

「私も同じです」

「……そっか、アラガミが寄り付かないのはそういう事か」

 

 オラクル細胞が強制的に停止する。つまり、アラガミにとってはそこで倒されれば永遠に復活できない訳だから、近づきたくすらないだろう。

 つまり僕がここで心臓でも貫かれれば、再生機能は働かず死に至ると言う訳だ。つまり一応死ねることは死ねるらしい。気を付けよう。

 

「……ここ、外部居住区の子供達に開放してあげたいですね」

「そうですね……。そのためにはまず僕らがこの樹自体を把握しなくちゃいけません」

 

 そう言って、僕は霧まで近づく。そろそろ我慢の限界だった。好奇心が溢れて仕方ない。

 にしてもこの霧は――何だろう、これ。どっかのゲームで見た事があるぞ。

 確かアレは……。

 

「っ!」

「セン!」

 

 霧に手をかざすと体がそれに飲み込まれた。

 そうして霧を通り抜けるように、して――え?

 

「……マジで?」

 

 眼前の光景に僕は思わずそう呟いてしまった。

 いや、いくら何でもこれは無い。何て言うか、物理的法則とか、質量保存の法則とか何かそう言った物を全て無視しているような気がする。

 

「セン、いきなり……何?」

 

 後から来たジュリウスまでそう呟いてしまう程。

 それはラケル博士やアリサさんも例外では無かった。

 

「……は、はは」

 

 じっとりと汗を掻く。

 照り付ける灼熱の陽光に、熱気を放出する砂浜。そこを我が物顔で歩行する蟹。

 そして大きく広がるエメラルドグリーンの海。それは地平線の彼方まで続いている。

 

「これ、は……」

「海、だね。それもアラガミが生まれる前……。人々が平和に暮らしていた時の」

「馬鹿な……。閉鎖空間なのに、空があるだと……?」

 

 歩くごとに砂がジャリジャリと音を鳴らし、蟹は何だ何だと言った様子で僕の周囲をうろつき始める。

 何やらラケル博士の目線が蟹に注目しつつあるので、手短にいた一匹を捕獲する。余りビックリさせないように。

 僕の掌でじっとする蟹。うわ、何か可愛い。

 と、ラケル博士が興味津々な様子で近づいて来る。

 

「セン、この生物は……」

「蟹ですね。大きい物なら食べておいしいんですけど、このサイズだとどうなんでしょうか」

「食べれるの?」

「さすがにこんなに小さいのを生では無理ですけど」

 

 もう少しサイズが大きければいいんだけどね、タラバガニとかそこらへんになれば。

沢蟹はおいしいと聞くけれど、生憎そこまで詳しくないのでここまで。

 ラケル博士がつんつんと蟹を指で押している。何か満更でも無さそう。博士の掌に乗せると、今度は撫で始めた。

 僕は海岸まで歩くとそこから海を見る。

 ――魚は、鮫とかはいないね。小さな魚くらいだ。後はサンゴ礁とかそこくらいか。

 海水に指を付けると、ひんやりと冷たい。その指先を舐めると、ちゃんとした塩気がする。

 

「セン?」

「……これはちょっと使えそうだね」

「何にですか?」

「フェンリル職員達の息抜きに」

 

 これもきちんとした調査である。

 

 

 

 

 と、まぁそんな訳で。

 

「海だーっ!」

 

 そんな声と共に、コウタさんと外部居住区の子供達が海へ殺到していく。次々から次に海へ飛び込んでいくと共に派手な飛沫があちこちで上がる。

 僕らが極東支部に戻った後、調査の写真を極東支部全体に報告。その結果、ゴッドイーター達やフェンリル職員への労い、そして外部居住区との交流を深めると言う意味で―子供限定だけど―海開きが行われるとなった。

 外部居住区の住人が子供限定の理由として、大人を入れると螺旋の樹へ不法潜入して資源をかっさらっていくかもしれないからである。アラガミのいない大自然と言うのはそれだけで安全な地域であるし、大自然からとれる恵みは外部にとって貴重な資源になるため高値で売買される。資源回収としては絶好の場であるのだ。

 その事から、子供達だけに限定しようと決まったのである。警備の増員が決まれば、大人にも開放されるだろう。

 

「……平和だ」

 

 この事を伝えてからは、ゴッドイーター達の士気上昇は半端じゃなかった。誰もが文字通りの一騎当千レベルの活躍を見せたのである。特にネルちゃんは修羅だった。一回の出撃で二十にも上る大型種を討伐してきた時は、マジで極東ヤバイと思った。

 まぁ、そんなゴッドイーター達もこの螺旋の樹ではただの人だ。だから全力で休暇を満喫できる。

 そしてもう一つは海開きが決まってから、誰もが水着を買いにターミナルへ殺到した。素材が足りなければ、アラガミ討伐へ。水着確保のために討伐されるって……。

 おかげで極東支部も現在、黒字でホクホクらしい。榊博士がいい顔してた。

 ちなみに僕の服装ではあるが、海パンにパーカーを羽織っただけだ。と言うのも、実は僕、海が苦手である。と言うか泳ぎが苦手なのだ。

 泳ぎの上手くなる仮面でも付けようかと思ったけど、よく考えたらここオラクル細胞不活化地域だから意味が無い。畜生。

 そんな僕はビーチチェアに座って、海へ飛び込んでいく人々を眺めていた。

 

「セン、泳がないのか?」

「ん、ジュリウス」

 

 見れば、髪を下ろして、ポニーテールにしてるジュリウスがいた。僕と同じ海パンタイプの水着である。と言うか、体の筋肉スゲェ。

 

「泳ぐのは苦手だからね。見て楽しむよ」

「見て楽しむか……。フッ、色々と企み事が好きなお前らしいよ」

「ははっ」

 

 言い返す言葉もございません。

 だって僕が色々と画策したのは事実だし。

 

「ロミオが呼んでるよ、ジュリウス」

「そうか。……お前も適度に力を抜けよ、セン」

 

 そういって歩き出すジュリウスを見送る。

 螺旋の樹の一件以降、どこか態度が軟らかくなっているような気がした。まぁ、それを本人に尋ねてみてもはぐらかされるだけなんだろうけど。

 

「いいものね、男同士って」

「……はい?」

 

 振り返ると、そこにはラケル博士の姿がある。水着じゃなくて普通の服装だけど、車椅子にはパラソルが差してあった。少しばかりのお洒落なんだろうか。

 ……と言うか、一番気になるのは。

 

「博士、今の発言って」

「セン、私ね思うの。大いなる神の声が聞こえなくなってから、色々なモノに手を出してみたわ。けど、どれもしっくりこない。何かが違う」

 

 これマズい流れになって来たぞ。

 誰か止めて。

 

「センとジュリウスを見ていると胸が高鳴る。そう、私は気づいてしまったのよ、禁断の楽園に」

「そのまま禁断でいてください」

「きっと、それを求めるのが私の本当の姿なの。もう迷わないわ、セン。私は真実の答えを得たの」

「答えに至る過程から間違えてると思います」

 

 断じて僕とジュリウスはそんな関係でもないし、僕は極めてノーマルである。親友以上の関係は求めない主義だ。

 しかし螺旋の樹の一件以降、ラケル博士の研究室はそっち系で埋まりつつある。

 僕としては嬉しいような悲しいような微妙な気分である。

 ラケル博士がようやく、自身の趣味と言うのを見いだせた所まではいいけれど……。その趣味がアウト。せめてもう少し女の子らしい趣味を……。

 何と言うか抑圧されていた本来の感情でも溢れて来たんだろうか。……けど、逆に言えば、それまでずっと束縛され人である事に抗い続ける人生を送っていたと言う事だ。

 それをどうしても考えてしまう。

 ラケル博士がようやく持てた楽しみを、僕の主観的な感情で否定してしまってよいのだろうかと。

 ――まぁ、それとこれとは全然、関係ないんだけど。

 

「セン、誤解してるようだから忠告しておくわ」

「はい……。何でしょうか……」

「私はただ、好きなモノを純粋に求める女の子を体現しているだけよ」

「アッハイ」

 

 そこから博士の長話を聞く事数十分。

 レア博士が何とかラケル博士を連れ出す事で、僕は窮地から脱する事が出来た。

 

「……」

 

 何かもっと、疲れた気がする。ビーチチェアに座ってただけなのに。

 見ればビーチバレーをしているブラッドの面々。

 ナナちゃんは普段から露出の多い恰好をしているせいか、余り変わらないように見える。シエルちゃんは……うん、揺れるところが眩しい。

 と言うかゴッドイーターって本当に露出が多い。何でもオラクル細胞で体内の代謝量が常人よりも多いため、自然と薄着になる傾向のようだ。

 フェンリルの男性職員にとっては眼福だろう。道理で男性職員ばかりが多い訳だ。士官学生だった頃、就職希望に事務を希望してる人が多い理由が分かったような気がする。

 

「あのー、センさん」

「どうかした、ネル……ちゃん」

「ど、どうですか?」

 

 やべぇ、天使がいた。いや、女神かもしれない。

 黒のビキニに青のパレオ。黒髪と凄く似合ってる。首元のゴーグルは前、僕が渡した時とそのままだ。少し嬉しい。

 前々から思ってはいたけれど、ネルちゃんってスタイルがいい。それに肌もすごく綺麗だし。僕の前の世界なら、モデルとかアイドルとかに向いていると思う。

 けど、そんな彼女がアラガミを前にすると修羅となるから色々怖い。ちなみに極東支部で語り草となっている元第一部隊隊長のゴッドイーターは、無数のアラガミを前にして単身で切り抜けた事があるらしい。それもエイジスで。

 ネルちゃんも半端ないけど、そのゴッドイーターはもっとヤバい。

 ――と、現実逃避している暇は無い。彼女に反応を返さないと。

 

「え、えっと……うん、綺麗だと思うよ」

 

 僕の言葉に笑顔を溢すネルちゃん。うわ、凄く可愛い。

 

「センさん、泳がないんですか?」

「泳ぐのは苦手……と言うより体を動かすのは苦手なんだ」

 

 と、僕の座っていたビーチチェアにネルちゃんが腰かけた。

 その動作に思わずドキッとする。

 

「じゃあ、話を聞かせてください。センさんの話、私大好きなんです」

「……」

 

 少しだけ迷う。彼女にも泳ぐように促してくるか、それとも――。

 いや、きっと僕に気を遣ってくれるのだろう。本当に彼女はいい子だ。

 

「そうだね、じゃあ今日はせっかく海にいるんだし水に関連する話でもしよっか」

「はい!」

 

 あぁ、本当に。

 こんな日々がずっと壊れないでいて欲しい。

 

 

 

 

 海水浴の一件後、螺旋の樹調査を求める声が異常な程に増えた。

 しかもゴッドイーターからも、である。士気向上に繋がったのは良かったけれど……。

 と、まぁ、そんな事を計画していた僕は次の日早速榊博士に呼び出されていた。

 

「やぁ、セン君。海水浴は大盛況だったそうだねぇ」

「はい、榊博士が許可を出してくれたおかげで」

「いやいや、君とブラッドの力だよ。螺旋の樹は私達にかなり良い影響を与えている」

「――ように見えるだけかもしれません。螺旋の樹はまだ、僕自身にも分からない事が多いですから」

「かもしれないね。だからだ、先ほどようやく本部から承認が出たよ」

「承認?」

 

 何だろう、嫌な予感がする。

 

「セン君、最早君の名前はフェンリル関係者だけでは無く、一般市民にも知れ渡るようになった」

 

 螺旋の樹が発現した事については、僕が立役者と言う事になっている。そしてその内容で、一般声明が出されたため、結果的に僕の名前が響くようになったと言う訳だ。

 

「しかも螺旋の樹は、アラガミが近寄らないどころかオラクル細胞自体が機能しない場所だ。極東だけでは無く、世界中から注目されている。もしかすると、人とアラガミの戦いにようやく終止符が打たれる。その可能性が見えて来たのだから。

 そんな活躍をした君に対して、本部は何かしらのアプローチを掛けて来るだろう。もしかしたらハニートラップを用意してくるかもしれないけど……君の周囲を見る限りそんな心配はないね」

 

 ネルちゃんとラケル博士がいる時点で、もう何も怖くないです。あの二人敵に回したら、間違いなく潰される。

 

「君が引き抜きでもされたら厄介だ。増してやアニーリング計画の材料にでもされたら、それこそ洒落にならない。

 そこでだ、君に正式な役職を充てる事にしたよ。人の可能性を切り開いた者の肩書きが、しがない研究者じゃ名折れだ」

 

 榊博士がピシッと僕を指さす。

 凄く嫌な予感がする。

 

「フェンリル極東支部直属、螺旋の樹監査長――これからはそう名乗ろう」

「……えっと、つまり」

「そう、螺旋の樹の第一研究者――つまり、君は正式な調査隊長だ。これからもどんどん、螺旋の樹の調査をしてもらうからね」

 

 

 ――どうやら、僕は研究者とオペレーター、そしてとうとう調査員まで兼ねる事になったようです。

 




「最近のゴッドイーターは地形を利用できていないと思うんです。なので、フライアでアスレチック作ったんで、そこで地形訓練しましょう!」
「待って、ギロチンやめて!」
「ギャー、弓矢がー!」
「誰か落ちたー!」
「鉄球が来るぞー!」


次回「センの古城編」
分からない方はダークソウルで検索されると幸せになれます。

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