ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。   作:ソン

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筆が進み過ぎて本当にビックリしてます。
一人称がとにかくすらすら進んで、書きやすい……。

主人公がまだ全然主人公らしくありませんが、ご勘弁を……。
さて、次の投稿はいつになるやら……。


お茶会?

 

 

 

「よっし……!」

 

 私、ネルティスは気合を入れ直してフライアのロビーを見つめた。今日からここで、私のゴッドイーターとしての生活が幕を開ける。

元々、私がゴッドイーターになったのはごく最近の事。士官学校の卒業が真近まで迫ったところで、私に通知書が届いた。

 それはゴッドイーターの適性試験の通知で、ただのゴッドイーターではない。フライアで新しく結成される特殊部隊、通称「ブラッド」のゴッドイーターである。

 他の同級生にも何人かゴッドイーターの適性試験の通知が届いていたが、ブラッドの通知は私だけだった。

 人々を守る戦士になりたかった私に、まさしくこの連絡は天命とも言えるだろう。だからと言って、そこで終わりじゃない。これからが始まりだ。

 私のいるのは、明日が約束されない戦場。しかも女であり、年若い私にはまだまだ経験不足だ。強いて言うなら資質しかない。

 ゴッドイーターになるにあたって、アイテムの使い方やアラガミの生態、訓練などは腕輪が与えられる前から徹底的にこなしてきた。

 後は――

 

「貴方もブラッドー?」

 

 そう聞いて来る少女の服装に思わず唖然とする。何て言ったらいいのか、分からない服装だった。

 

「え、あ、う、うん!」

 

 だからそう返事した私は悪くないと思う。

 

 

 

 

「ナナはマグノリア・コンパスの出身だったんだ」

「うん、この袋は友達に作ってもらったのー!」

 

 おでんパンなる物を食べながら、私は彼女の話を聞いていた。

 香月ナナ――私の同期で、今の所とても明るい女の子と言う印象を受ける。互いに、談笑しながら隊長である人物が来るのを待つ。

 

「……ん?」

 

 ふと、場の空気が変わったような気がする。

 何と言うか……。これは――

 

「ここにいたか、楽にしてくれ」

 

 二人の青年が階段から降りて来た。育ちの良さを感じさせる服装と品のある端正な顔立ち。曲がる事を知らない真っ直ぐな目。

 彼が隊長であると見ただけで理解した。漂わせる風格が、他とは異なり過ぎている。

 ならばもう片方の青年は誰なのか。見たところ、腕輪をしていない事からゴッドイーターでは無い。

 寝ぐせの目立つ黒の髪に、少しばかり青さの残る顔立ち。首元まで下ろしているゴーグルと胸元で止まっている黄のネクタイ。黒のシャツには、職員証が付けられている。着ている白衣はボタンが一つも止まっておらず、まるでコートのように羽織られていてボールペンが数本、ポケットに入っているだけ。黒のズボンには、ポーチが二つあり、どちらもそれなりに膨れ上がっている。

 身長も私より僅かに高い程度で、見た目から伺える年齢も私と変わらないくらいだろう。

 彼は――

 

「オレは隊長のジュリウス・ヴィスコンティだ。今後長い付き合いになるだろう。よろしく頼む」

 

 金髪の青年――ジュリウス隊長の言葉に、私は思考を止めて反射的に返事をした。

 

「あ、はっはい! ブラッド第一期候補生、ネルティスです! よろしくお願いします!」

「同じく、ブラッド第一期候補生、香月ナナですー。よろしくねー!」

 

 残る一人。彼の詳細を少しでも伺うべく、さらに耳を傾ける。

 

「セン・ディアンス。一応フライアでは研究者をやってるし、オペレーターも一通りはこなせます。研究室にいる事が多いからあんまり出会う事は無いかもしれないけど、よろしくね」

 

 口角を小さく吊り上げる青年。一応研究者って……一応って何よ、一応って。

だけどセン・ディアンス――彼の名は士官学生時代に聞いた事がある。あれは確か――。

 

「無能って肩書きがつくがな」

「何も出来ねぇくせによ」

 

 ふと聞こえた声に、記憶が合致する。フェンリル士官学校で、そう呼ばれた人物がいる。確か二個上の先輩に、そういう人物がいたと。

 まさか彼が――。いや、でもなら何故フライアに?

 そう思った刹那、ジュリウス隊長が凄まじい速度で振り返った。

 

 

 

 

 背後から聞こえた声に、ジュリウスが拳と共に振り返った。僕が止めるには間に合わない。だけどそれでも――。

 

「あら、センに何かありましたか? 何やら聞き捨てならない言葉が聞こえたものですから」

「っ! ラ、ラケル博士……!?」

 

 ジュリウスが振り向くと同時に、どこからか博士が現れた。

 うん、ナイスタイミング。助かりました。

 唖然とする職員モブA。……そういえば彼らとは初対面だっけ?

 

「どこの、誰か、無能で、何も、出来ない、のですか?」

 

 区切りながら―微笑んでるせいで威圧感がヤバイ―首を傾げるラケル博士。しかも声までかなり低くなってるよ。

 あそこまで怒らなくてもいいのに。

 

「し、失礼しました!」

「で、ではまた!」

 

 逃げるように去っていく職員達。

 ざわめきが一層強くなった気がする。

 

「災難だったわね、セン」

「もう慣れましたよ、博士。……ジュリウス、僕の研究室に行こう。ここだと人目に付きやすい」

「あぁ、そうだな。……セン」

「ん?」

「すまなかった」

「……いいよ、ありがとう。ジュリウス」

 

 うん、やっぱり持つべきは親友だ。

 

 

 

 

 僕の研究室はさほど広くは無いが、それでも生活できるスペースは確保されている。新入りの女の子二人をベッドに腰掛けさせて、ジュリウスと途中で出会ったロミオはソファに。僕は手短な椅子に座っていた。博士は車椅子なので、不要である。

 

「それじゃあ、ブラッドも全員揃ったみたいだし、改めて自己紹介しようか」

 

 僕の言葉に、ジュリウスが頷いて立ち上がる。

 こうしてみると、僕がゴッドイーターになれなかったのは当然だと思う。僕はジュリウスのような強い意志もなければ、力も無い。

 そんな僕がゴッドイーターになったところで早死にするのが目に見えてる分、やっぱりこちら側で正解だったのかもしれない。

 まぁ、イフを考えたって意味ないんだけど。

 

「ブラッドの隊長を務めるジュリウス・ヴィスコンティだ。先ほども言ったが、ここにいる全員は長い付き合いになる。よろしく頼む」

 

 そう言って、僕に目線を送る。『これでいいか?』と言いたいのだろう。しかし、それを僕に聞くのは少し違うんじゃなかろうか。

 軽く頷くと、ジュリウスは再びソファに座り直す。続けてロミオが立ち上がった。

 

「よっし、俺はロミオ・レオーニ! ブラッドは甘くないからなー。覚悟しとけよ」

「ロミオはアイテムの使い方がオレよりも上手い。協働の時は、よく観察するようにな」

「やめろよ、ジュリウスー。照れるじゃんか」

「フッ、まぁ被弾もオレより上手いがな」

「あっ、言ったなコイツ!」

 

 うん、一年も続けば仲はよくなるよね。この間、三人で開いたパーティはかなり楽しかった。

 やっぱり皆でワイワイするってのは、どの世界でも楽しい。二年前までは、絶望しかない日々だったけど。

 

「おい、セン。何か言ってやってくれよー」

「ははは……。そこで僕に振られてもなぁ」

「ちぇっ。まぁ、何かあったらとりあえず俺に聞いてくれよな」

 

 ちなみにロミオの実力も一年前とは桁違いである。一年前はと言えば、突っ込み吹っ飛ばされまた突っ込み、の繰り返しだった。それでよくジュリウスと衝突してたなぁ。

 アイテムも全く使わなかったけど、僕とジュリウスで彼への指導案を考えたところ、それが劇的に改善されたのだ。

 嫉妬心は乗り越えれば、強い信頼になる。

 僕もロミオもジュリウスも強い絆で結ばれている。少なくとも、僕はそう思いたい。

 

「じゃあ、次は僕が行こうか。少し前にも紹介したけど、僕はセン・ディアンス。フライアじゃ研究室に籠ってる事が多いかな。でも鍵は開けてるからいつでも来てね。後、ゴッドイーターじゃないから、神機の使い方は教えられないのがネック……。それぐらいかな」

「あ、あのー」

 

 ネルティス……まぁ、長いからネルと略そう。

 ネルちゃんは控えめに手を挙げていた。うん、その反応だと多分、聞く内容はコレしかないね。

 でもそれを彼女に言わせてしまったら、多分この先後悔する事になるかもしれない。だから少しだけ申し訳ないけど、話題を逸らさせてもらおう。

 

「あぁ、敬語なら必要ないよ。僕とは同い年だしね」

「えっ!?」

 

 そうよく驚かれるのである。何でも僕の姿勢は研究者にしてはフランクらしく、よく驚かれるのだ。ちなみにダミアンさんからは「整備士かと思ったぜ」と言われた。ごめんなさい、神機の整備は苦手です。

 

「よし、じゃあ次は博士お願いします」

「えぇ、ラケル・クラウディウスです。よろしくお願いしますね」

 

 僕と話す時は敬語じゃなくなるのになぁ。どうしてだろうか。

 さて、じゃあ早速二人の事を聞こうか。

 

 

 

 

 ナナちゃんの事はよくわかった。やはり彼女は香月ヨシノの娘らしい。

 ゴッドイーターチルドレン――彼女はそれに該当する。博士から聞いた話だが、ゴッドイーターチルドレンは偏食因子が不安定な状況に成りやすいらしい。元からオラクル細胞の断片を持って生まれてくるためだ。

 だからと言って強力なゴッドイーターになるとは限らない。結局は本人の努力次第なのだ。例えば極東に語られる最強のゴッドイーターも、その一例だろう。

 さて、次はネルちゃんだけど、彼女との関係は少しばかり複雑になりそうだ。

 何故なら、それは――。

 

「ネルちゃんはフェンリル士官学校の卒業生だっけ」

「はっ、はい」

 

 うん、やっぱり。

 しかも首席で卒業と聞いた。貴族達を歯牙に掛けぬ抜群な成績で、学生生活を終えたのは彼女を差し置いて他にはいないだろう。

 道理で、フライアに顔を出す貴族が多い訳だ。多分、彼女とのパイプを作るためだろうが、それは行かない。

 彼女の人生は彼女だけの物だ。それは決して他人に左右されるべき物では無い。

 それに――後輩を守るのは先輩の役目だしね。

 だから僕は、それをはっきりと口にした。

 

 

「それじゃあ、ネルちゃんは僕の後輩って事になるね」

 

 

 丁度、二年前。僕がラケル博士と出会った時だ。

 まぁ、少しばかり思い出に浸ろうかな。

 


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