ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。   作:ソン

36 / 46
お久しぶりです、何とか現実が少しだけですが、落ち着いてきたので更新を少しずつですが再会していきます。
相変わらずの不定期更新ですが、お付き合いいただければ幸いです。



スカサハーッ! 出てきてくれェー!


幕間 オペレーターとして

 僕が無事復帰してから凡そ一ヶ月。

 それは平穏な日々でアナグラの日常は平和そのものだった。例えば、ハルオミさんがユウさんを聖なる探索に連れ出そうとして、アリサさんから口撃を受けたりとか。

脱走したカルビを局員総出で探していたら、何故かオペレーター席の下から見つかったりとか。

リンドウさんが息子であるレン君を連れてきて、自慢げに話していたりとか。

 後は時折、アラガミの襲撃があるものの、ユウさんとリンドウさんが戻って来た第一部隊とブラッドレイジを会得したネルちゃん率いるブラッド隊にとっては、何の脅威にもなり得なかった。

 極東が変わった事と言えば、本部から視察が何度か来たり、フェンリル士官学校から見学の要請があったりとか。まぁ、そんな些細な事。

 ――ついでに言えば、僕が榊博士に呼び出されるのも二日に一回ぐらいの頻度である。

 

「で、榊博士。今度は何の用事でしょうか……」

「おや、随分と疲れてるねセン君。きちんと眠れているかい?」

「えぇ、ちょっと、まぁ、色々と」

「上にも下にも問題児を抱えるのは大変だね」

 

 貴方も含まれているんですが、それは。

 ちなみに言うまでも無く、榊博士とラケル博士である。特にラケル博士は最近はっちゃけぶりが酷い。何て言うか炸裂してる。頭の中でリンクバーストしまくってる。

 

「セン君。明日、本部より二名、オペレーター候補生が配属されるのは知っているね?」

「はい。真壁テルオミ君と星野ウララさんでしたっけ」

「うむ、その通りだ。その二人に関してはこちらも探りを入れている。背景はシロ。成績も飛びぬけて良い訳ではないし、問題が無い優等生と言う訳でもない。これでスパイだとしたら、中々な道化師だ」

「スパイでなくとも、色々と事情抱え込んでる人はいますよ。にしてもオペレーターか。……僕らの所はフランちゃんとヒバリさん、ツバキさんの三名で回してます。それに皆、かなりレベル高いですし……」

「それだよ、セン君。さっき君は色々と事情を抱え込んでいるといったが、それは極東支部も同じ事。――だが、私達はあまりにも後手に回り過ぎた故に本部からいくつかの牽制を許してしまっている」

「……だから、オペレーターやゴッドイーターの研修を積極的に受け入れる事で、本部の意向を探りつつ、こちらの体勢も煙に巻くと」

「話が早くて助かるよ。相手がオペレーターなら、いざと言う時に力技で押さえられる。まぁ、ゴッドイーター並の戦闘力を持ったオペレーターなら、話は別だが」

 

 へー、そんな非常識がいるんですねー。

 

「そこでだ、セン君。君にオペレーターの教育を任せたい。二人が本部と繋がっていないかを探りつつ、こちら側へ引き込んでほしい。

 オペレーターだろうが、ゴッドイーターだろうが、使える手は増やしておきたいからね」

「分かりました。何とかやってみます」

「うん、頼んだよ」

 

 

 

 

「……やっぱ慣れないなぁ、この服」

 

 僕が来ているのは、黒と白を基調としたフェンリルの制服――オペレーターの制服である。どうにもこの堅苦しい服装は慣れない。

 ちなみにこの制服を着る理由になったのは、昨日の夜である。僕の研究室に乗り込んできた博士(バカ)二人が発端である。

 

 

「セン君、入るならまず形から行こう! ファッションのプロを呼んであるんだ。こっちだよー、ラケル博士」

「あら、セン。貴方だったのね」

「榊博士、違います。この人、ファッションのプロじゃなくて腐ァッションのテロリストです。僕のメールに毎日、大量の画像送って来る人です」

「任せなさい、セン。私の目に狂いはないわ。私それなりに勉強してきたのよ」

「……雑誌とかですよね。『月刊フェンリル』『週間フライア』『日刊アナグラ』とかですよね。頼むからそう言ってください」

「えぇ、フェンリル本部から取り寄せた『貴腐人』を読み込んできたから、大丈夫」

「もう名前からアウトです」

「うむ、私の目にも狂いは無かった」

「榊博士、天上天下全て狂ってます。初球ホームランどころか、全打席ホームラン決められてるんですけど。バックスクリーン直撃しまくって、僕の心ズタズタなんですけど」

「やだわ、セン。キめてから直撃なんてマニアックな……。それにズタズタなんて」

「僕の上司がこんなに腐ってる訳が無い……!」

「上に問題児ばかり抱えるのは、苦労するだろう。セン君」

「いや、問題児って貴方達の事ですから。完全に自覚ありますよね。僕に対する嫌味ですよね」

「セン、理解してくれてうれしいわ。門は大事よね」

「誰かー! このバカ二人に回復弾撃ち込んでー! 出来れば脳天直撃でーッ!」

 

 

 

 

 マジできつかった、うん。アレは一夜の夢だ。そう思おう。

 僕の知るラケル博士は、理想の上司。これでいい。

 

「センオペレーター! 候補生二名が到着しました!」

「馬鹿野郎! センさんの事はオペレーターってつけたら紛らわしくて呼びにくいから、さん付けで統一との通達があっただろうが!」

「隊長! 俺はセンさんの事は『鈍感草食系オペレーター』と呼べとの通達でした!」

「俺の時は『肉食のフリしてるけど、実は怖がっている草食系のムッツリ野郎』でした!」

「俺は『シリアスもギャグも最低限しか出来ないワンパターン系の主人公(笑)』と聞きました!」

「ごめん、僕その通達聞いてないから、後でじっくり教えて。後半はそれ、ただの悪口だから」

 

 おかしい、極東支部がどんどんカオスになってきてる。

 と、そこまで考えたところで、僕の目の前に二人の男女が立ち敬礼する。

 

「うん、真壁テルオミ君と星野ウララちゃんだね。二人の事は聞いてるよ。僕は、セン・クラウディウス。一応オペレーターも兼任してるけど、本業は研究です。これからよろしくね、二人とも」

「はい、よろしくお願いします!」

「よ、よろしく、お願いします!」

 

 うん、本当に癒される。やっぱり後輩っていいよなぁ。

 

『えぇ、後輩に強要するプレイもいいわよね』

 

 人の思考に介入してこないでください、博士。

 

 

 

 

 候補生の二人は、ヒバリさんとフランさんから極東支部のオペレート設備について説明を受けていた。

 一応、それも僕の役目ではあるのだが、あの二人の方が設備に触れている時間も長い。だからその二人から説明を受けた方が余程有意義になるだろう。丁度、任務も終わった後らしいから、二人も暇を持て余していたらしい。

 

「……」

 

 アナグラ特製のココアを飲みながら、僕は小さく息を吐く。

 にしても何故、榊博士は僕に教官と言う役割を任せてくれたのだろうか。あの人は変人(バカ)だけれど、意味も無く何かを命令するような人では無いのだ。僕だけではなく研究者を名乗る中で榊博士やラケル博士に憧れを寄せている者は少なくない。

 ゴッドイーターであるならば、ユウさんやネルちゃん、ジュリウス、リンドウさんのような存在である。

 

「……分かんないなぁ」

「どうかしたんですか? センさん」

「あ、ネルちゃん。お帰り、ほらココア」

「わ、いつもありがとうございます」

 

 任務を終えたばかりのネルちゃんにココアを差し出す。

 今回、彼女はサバイバルミッションと呼ばれる連続任務を請け負っていた。ロケーションもアラガミも全く異なる任務を、僅かな神機のパーツとアイテムだけを持って出撃する。そして全ての任務を終えるまでの間、決して支部には戻れない。

 

「そういえば、ネルちゃん。どうしたの? ちょっとヘコんでるみたいだけど」

「センさん……。のこじんって、自分の神機壊しても適用されますかね」

「うん、少し待とうか。リッカさんが聞いたら泣くよ? と言うか、何かあった?」

「だって……今まではヴィーナス乱獲してればコアで強化出来たのに、何か神機の仕様が変わったみたいで、神機の強化に神機が必要なんですよ。IEって完全にいらない子じゃないですか」

「……え、ちょっと待って。ヴィーナス乱獲って何? アイツ、乱獲出来るくらい存在してるの?」

「不思議じゃないですよ。だって知り合いのゴッドイーターにウロヴォロス討伐数が二千超えてる人いましたし。ヴィーナスだって、一匹見かけたらきっと五十匹いますよ。アラガミってそんなモンです」

「今、僕の中でアラガミのスケールが凄く小さくなったよ。神のGじゃなくて、そっちのGになっちゃったよ。……で、どうしてヴィーナスばかり狙ってるの?」

「アイツの素材が一番コアの容量埋まりますし……。何より、アラガミの癖になんですか、あの体と攻撃範囲。サイゴート見習ってくださいよ。範囲攻撃連発とかNPC殺しもいいところですよ、オートガード必須です」

 

 嫉妬だったんかい。……と言うか、サイゴートもあぁ見えてちゃんとした女型だよ。じっくり見る暇ないけど。

 いや、確かに範囲攻撃は驚異だ。ハンニバルのアレとか、ガード無しじゃ無理だし。通常種と侵喰種で方向が逆だし。……うん、気持ちはわかる。見守る方もハラハラするんだよね。アレ、上手く個別戦闘指揮(パーソナルアビリティ)をしないと直撃確定だし。

 

「で、そういえばヘコんでる理由は?」

「そうそう、のこじんがですね、出ないんですよ。それもロングとスナイパーとシールドの+だけ。どうしてかバスターとかショートとか、主軸じゃないのこじんの+ばかり出るんですよね。それにスキルとかLV9ばかりで。別にスキルインストールで何とかなるからいいんですけど、本当に+が出ないんですよね。運と分かってても納得しきれないと言うか」

「……あぁ、うん」

「これだったら、火山でお守りでも掘って炭鉱夫とか、尻尾斬りまくって宝玉集めしてた方がいいかなぁって」

「世界観どころか大人の事情越えちゃってるから。そっち別のハンティング。後、僕が個人的に続編待ってる奴だから。3rdGずっと待ってる」

「Xになっちゃいましたし、遠い話になりそうですよね。後Xと言えば私的にも、ずっと待ってるのがクシャナXとアカムの兄――」

「やめろ、マジでやめろ。あの話はいい話だったけど、グレーゾーン突っ走るのはやめろ」

「ならベリオXも」

「やめて、本当に特定されちゃうからやめて。偉い人(運営)から警告来ちゃうからやめて」

 

 良い子は検索したらダメだぞ! ちなみに僕はどっちも大好きです!

 何とか戻そう、無理やりシリアスに戻そう。

 

「――にしても、大きくなりましたよね。ブラッドも、フライアも」

「うん。本当に早かった」

「センさん、知ってますよね? 私に転属の声がどんどん来てる事」

「……まぁ、ネルちゃんはもうユウさんに並ぶゴッドイーターだからね。そうなるんじゃいかなって思ってたよ」

「私ですね、その話全部断ったんですよ。それとそういった話を持ちかけて来た支部には金輪際関わらないと、大きく宣言しておきました」

「……へ?」

「私はブラッドの隊長ですから。他のブラッド隊員の皆がどこかに巣立つまではずっと、ブラッドの隊長を続けようと思ってるんです。だから、リンドウさんからクレイドルの勧誘も来たんですけど、きっぱり断らせて頂きました」

「……そうなんだ。ネルちゃんが断るなんて」

「後、婚姻持ちかけて来た貴族は、全部叩き潰しておきました」

 

 アレ、ネルちゃん、こんなに武闘派だったっけ?

 

「ちなみにどっちの意味で?」

「両方です」

 

 やだ、この子怖い。ちょっと病んでる時のラケル博士に似てきた。

 

「――それに、私はある人についていくって決めてるんですよ。ずっと、昔幼い頃から、ずっと、ずっと。

 もう二度と離さないって約束しましたから。何があっても傍にいるって」

「……そっか。なら、僕もその子と約束するよ。ずっと、一緒にいるって」

「! わ、私ちょっと用事思い出したんで行きますね! こ、ココアごちそうさまでした!」

 

 逃げるようにして、早歩きするネルちゃんを見送りながら僕は残っていたココアを飲み干す。

 丁度、ヒバリさん達の方も終わったらしい。

 

「センさんの野郎、さらにドデカいフラグ立てやがった……。呼称は『一本釣り』に変更だ」

「待ってください隊長。どうせなら『一本釣り系専門漁師』ってのはどうですか」

「いや、もう面倒くせぇから『大物専門マグロ漁船』で行こう」

 

 通達してたの、お前らだけだったんかい。

 

 

 

 

 で、オペレーター教育の続きである。

 ゴッドイーター達の訓練風景と戦闘記録の閲覧、これらを一通り終えると二人は色々と疲れたのか、足元がおぼつかなくなっていた。

 いや、まぁそうだろう。この極東支部のゴッドイーターは誰もがイロモノである。そんな彼らを、どんな編成になったとしてもオペレートして見せるヒバリさんとフランさんには頭が上がらない。

 

「ヒバリさんの教育はスパルタだから、今日学んだ事はちゃんと振り返っておく事。後は……ゴッドイーターの顔と名前は必ず覚える。指示の時、名前間違えたら一大事だよ」

 

 今、僕はラウンジのソファで二人に、今後の課題を提示していた。課題と言ってもレポートではなく、心構えの様なものだけど。

 

「後は……うん、自分達で自主的にね。それが一番、力になるから」

「――ひ、一つ質問いいですが?」

「うん、大丈夫だから。中身出ちゃってるから、落ち着こうか」

 

 どうもウララちゃんは、緊張しやすいタイプのようだ。テルオミ君は逆に冷静ではあるが、それ故に落ち着きすぎている。

 でもまだどうなるかは分からない。優秀なオペレーターとなるか、それとも潰れるか。それは全部彼ら次第だ。

 

「センさんは何で、オペレーターになろうと思ったんですか」

 

 いや、僕研究者なんだけど――と言う答えはさすがに捻くれ過ぎだ。

 オペレーター――要するにゴッドイーターの女房。彼らの命綱にも等しい存在。

 それを僕が務めた理由。

 色々な思いはあるけれど、やはり根幹にあるのは一つだけ。

 

「――親友は、一人でも減って欲しくないからね」

 

 あぁ、そうだ。

 任務に失敗してもいい。アラガミに勝てなくてもいい。

 ただ元気で、無事に――生きて帰ってきてくれれば。

 それが、純粋な僕の願いだから。

 

 

 

 

「セン、明日アリサさんとユノさんが料理するらしいから毒見よろしくだってさ」

「……え?」

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。