ゴッドイーターになれなかったけど、何とか生きてます。   作:ソン

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ようやくリアルが安定してきました。
感想返信ですが、今回から出来そうです。皆さん、ご迷惑おかけしました。

次回から、レイジバースト編です。
全部書き上げてから投稿しようと思ったんですが……モチベーション維持が難しいので、丁度区切れるところまでで投稿します。ちなみにプロット自体は構想が固まっていますが、どうやってそちらに持っていくかで悩んでおります。
……ちなみにかなり難産でしたが、そちらについてはおいおい語っていきます。


幕間 たまには昔話でも。

 

 

「……で、本当にどうするんですか榊博士。正直な所、色々な意味で限界が来てますよ」

「……正直な所、ここまでとは思わなかったよ」

 

 新入りのオペレーター二人。ウララちゃんにテルオミ君の指導だが、まさかここまで難題になるとは思わなかった。

 いや、二人に問題があるのではない。寧ろ、極東支部の面々に問題があるのだ。

 ……体中の痛みがまだ引けてないし。

 

「そういえばセン君。体は大丈夫かい?」

「……何故か、ある筈の無い痛みを感じます」

「何、手足はちゃんとあるさ。問題は無いね」

 

 前回、僕は酒乱となったネルちゃんが絡み(物理)を受け、意識が途切れた。

 映像データを辿ると、その後はネルちゃんがただ酒を浴びるように飲んでいただけだから、何も問題は無い。そう間違いは無かった。

 

「さて、そろそろ新しい手段を考えたい所だが……。まず目的を決めなければならないね」

「そうですね。今までは目的が定まっていなかったから、失敗したと思います」

「ふむ……。セン君。最近、気になる事とかないかな?」

「気になる事、ですか……」

 

 あの一件以降、ムツミちゃんがラウンジを誰にも貸し出さなくなり、さらには酒が一週間に渡り禁止となった。リンドウさんの表情が日に日に溶けていくのは記憶に新しい。

 その影響からか、少しゴッドイーター達のモチベーションが低下してきているようにも見える。

 何とかして、それを変えたい。皆の帰る場所。そこが暗いままでは皆が、苦しそうだから。

 

「……何か作るとかどうですか?」

「作る? それは……ジュースとかかい?」

「それもそうですけど、何かこう。料理とかを。

 前にナナちゃんが特製のアイテムを作った時、皆笑ってたじゃないですか。何かこう、皆で食べる時とか、凄くいい雰囲気になるんじゃないかって。

 何の根拠も無い理屈ですけど」

「……成程、料理か。食材はどこで? さすがにラウンジだとムツミちゃんが怒るからね」

「螺旋の樹、とかで。あそこならアラガミも来ないですし、自然環境が整ってるから作物とか作れると思うんですけど」

「……セン君」

「……はい」

「それだよ! いやぁ、私も年を取ったなぁ。本来の目的が出てこないまま、物事を進めようとしていた何て!」

「……はい?」

 

 ちなみに榊博士はエンジンが掛かると誰にも止められない。

 巻き込まれるのは大体、僕である。時折ソーマさんが黙って肩を叩いてくれるのが辛い。

 

「早速螺旋の樹の調査隊を派遣しよう! 楽しくキャンプと行こうじゃないか!」

「……はぁ」

 

 

 

 

 螺旋の樹調査隊が組まれた。無論リーダーは僕である。

 チームメンバーにはジュリウスとロミオ、コウタさんとまた珍しい面子だ。

 

「……今回の目的は食物を探せ、か。セン、お前も大変だな」

「まぁ、命かける訳じゃないし。それにたまには体を動かさないと」

「うしっ、じゃあ行こうぜ、セン! まずはどこだ!」

 

 頭に思い描くのは大衆料理。

 まず家畜の確保だ。カルビ? アレに手を出したら解体されます。

 螺旋の樹は何故か、いくつもの自然動物が生息している。例えば川には魚が泳いでいるし、山には牛や羊もいる。

 ひとまず一番最初にするべき所は――。

 

「食事場所兼調理場の確保。それは今僕達がベースにしているここでいいと思う。

 広さも丁度いいし、気温、湿度共に良好だ。調理は……うん、女性陣に任せようかな」

「あー、アリサはやめとけよセン。ユウがさ、アイツの手料理食った後、行動が変になったんだよ。

 何度もオウガテイル単体のミッション受けてたんだわ。……何か、報酬良かったとか言ってたけど。それと何かソーマと500回くらい任務行かなきゃとか、神機のパーツ全部揃えなきゃとか言い始めてたしな」

 

 何その、やり込み。まるで引継ぎみたいだ。

 

「……ふむ。俺も近頃奇妙な夢を見る。久々に極東支部に戻って来たと思ったら、いきなりエイジス島に連れていかれてチョコ拾いする夢だ。……誰もが必死だったな。大体義理チョコだったが」

「奇遇だな、ジュリウス。俺もだ。それに『覚醒前』とか呼ばれてた気が……」

 

 そういえば、ネルちゃんが『のこじん出ねぇ……LV10出ねぇ。アヴァロン行かなきゃ。ハイド付けて、ジ・エンドブチかまさなきゃ』とか呟いてたけど、あれは何なのだろうか。ユノさん何度も連れていってたけど。

 まぁ、話を戻して。

 

「魚は川と前の海でいいね。で、作物を育てなきゃいけないんだけど……」

「おう、そいつはじいちゃんたちから聞いたぜ、セン!」

 

 ロミオがメモを見せてくれる。

 うん、農業が全く分からない僕にとってはありがたい。

 

「……とりあえずあちこち巡ってみようか。皆、集合かけるからここに集まろう」

 

 で、結果的に言えばまさかの一発で目的がすべて達成できた。

 ロミオは作物が育ちそうな場所を見つけたし、コウタさんは果樹林を見つけた。ジュリウスはすげぇ動物に懐かれて帰って来た。

 

 

 

 

「……いやぁ、人とは目的であればあそこまで変われるんだねぇセン君」

「そうですねー」

 

 三日ほど前、ゴッドイーター達にウララちゃんとテルオミ君が入職する事を祝い食事会の事を通達した。焼肉、焼き魚、刺身、料理、ビール、飲み物などたらふく用意しており、螺旋の樹で行う事。フェンリル全職員に参加してほしいため、出来るだけ仕事を手早く片付けて欲しい事。

 ……ぶっちゃけ後者が問題だった。

 まずゴッドイーター達の活躍ぶりはヤバかった。ユウさんがいたからもっとやばかった。一日半で、極東支部周囲のロケーションにいるアラガミは全滅。三日で極東支部とその周辺は静かになり、しばらくは民間人が平和に歩けるレベルに。防衛班が殲滅任務に出ていたのはどうなんだろうか。

 職員は仕事を片付ける速度がやばかった。二日目あたりで一ヶ月のノルマを終えていた。三日目になると、全員が暇すぎて支部の掃除を始めた。

 

「セン、お疲れ様」

「お疲れ様ですラケル博士」

 

 飲み物を手にした―無論、初恋ジュース―ラケル博士。その視線の先にはウララちゃん、そしてテルオミ君の姿がある。

 二人とも極東支部の職員に囲まれて、楽しそうに笑っていた。

 そうだ、仕事なんて今すぐ出来なくていい。ただ一歩一歩、少しずつでいいから確実に出来るようになっていけば。

 

「おや、これはラケル博士。そちらのセン君をお借りしてしまって申し訳ない」

「あら、榊博士。気にする事はありませんわ」

「いやぁ、こちらも頼み事ばかりしてしまってねぇ。嫌な顔せずに受けてくれるから本当に助かるよ」

「ええ、センは私の子ですもの。ちゃんと躾けてありますから」

 

 何か意味の分からない応酬が始まった。

 と言うか、僕が躾けられてるって……いやぁ、まぁ、そうなのかもしれないけど。

 席を移動し、カレーを食しているジュリウスの下へ。農作業の衣類が実に似合っている。

 貴族の生まれだと言うのに、農家の服装が似合うと言うのは何だろう。凄い皮肉な気がする。

 

「センか。……今、俺は衝撃を受けている」

「……ちなみにどんな?」

「カレーは、実から出来るのではなかったのだな。それに魚も刺身で泳いでいるのではない。俺にはまた新しい知識が増えたよ。

 ――やはり百聞は一見に如かず、か」

「……ジュリウス」

 

 やべぇ、言葉が見つからない。

 

「セン、お前には感謝しているよ。お前と友になれた事が、俺の最大の幸福だ」

「……僕もさ、ジュリウス」

「お前がいなければ、俺はどうなっていたか……。分からない。ただ、俺は意味を失っていたに違いない。お前がいてくれたから、お前が俺を導いてくれたから、こうして皆と共にいられる。

 ありがとう、セン。これからもよろしく頼む」

「僕の方こそ、これからもよろしくジュリウス」

 

 と、誰かに肩を組まれる。

 見ればロミオがいた。

 

「よう、二人とも。こっちにこいよ!」

 

 そうしてロミオに連れていかれたのはブラッドがいる場所。

 ナナちゃんは相変わらずおでんパン常備だった。

 

「今さ、ブラッドで振り返りしてたんだ。

 最初は俺達三人だけじゃん。そっから広がってさ、今はこうしてたくさんの人達を守れてるって事が、今でも信じられなくてよ」

「……まぁ、俺とシエルは最後の加入、だからな。お前らだけだった頃の話に興味がある。

 何しろ、あの世界最強と言われる極東と肩を並べてるからな」

 

 頭を掻く。

 正直に言うならば、ジュリウスとロミオがいてくれたからと言う所が大きい。

 ブラッドの隊員に適しているかを見抜く眼を持ったラケル博士も無視は出来ない。僕はただ緊急時のオペレーターでしかないのだ。

 

「……ロミオが突っ走り安くてな。如何せん俺も、教本しか参考が無いため反りが上手く合わなかった」

「センとも合っていなかったのよね?」

 

 姿を現したのはラケル博士。この人もブラッドの真髄を知る数少ない一人だ。

 

「えぇ、恥ずかしながら。初対面の頃は、一番苦手でした」

「えぇー! 今、すっごく仲良しなのに!?」

「同感です。……最初から好印象では無かったのですね」

「……で、僕もそれに困ったんだ。同年代はジュリウスとロミオしかいなかったし、何よりこんなところで途切れたくないって思った。

 だから必死に考えたよ。どうやったら、二人も馬が合うかって」

「だが、俺もロミオも進展無しでな。悪い意味で俺達は頑固だったんだ。

 それである日、俺達の任務中、思いもしない事態が起きた」

「……想定外アラガミの乱入、ですか」

 

 ネルちゃんの言葉に、僕達は頷いた。

 あの日は決して忘れない。

 

「それも俺達のレベルより数段上の大物だ。さすがにあの時は死を覚悟した。だが、オペレーターの声に体が思わず動いた」

「あぁ、何も考えずに聞こえて来た指示通りに体が動いたんだ。その指示を出したのが、センなんだよ」

「……二人がピンチって聞いたからね。フランちゃんに必死にお願いして、オペレーターを変わって貰った。あの時、ラケル博士が説得してくれたから本当に感謝してます」

「いいのよ、センの為だもの」

「センの指示通りに動くと、不思議と心が無心になってきた。何と言うべきか……安心感があった。欲しい時に欲しい指示を、的確なタイミングでくれる。気が付けば、俺達より強い筈のアラガミが倒れていた」

「そっから、仲良くなっていたんだ。そしてさ、俺は思った。センとジュリウスがいるなら、俺はどこまででも行ける。本当に強くなれる」

「……まぁ、そんな所」

 

 話し終えると何か恥ずかしい気分になる。どうにも僕の昔語りは好きじゃない。

 

「まぁ、センの指示には納得だな。アラガミの個体差まで見抜いて伝えてくれるから本当に助かる。しかも俺達のコンディションまで気遣ってるしな。おかげで、戦闘に集中できる」

 

 ギルの言葉に、ブラッド全員が頷く。

 いや、何かもう本当に恥ずかしい。

 

「……そういえば、センさんってそのオペレート技術をどこで学んだんですか?」

「ん、士官学校。当時の教官が凄く、独創的な人でね。色々教えてくれた」

「へー……」

 

 嘘です。ぶっちゃけ、前世で、ゲームの分析とかオペレーターとかしてたら自然と上手くなってました。初見殺しとか、余り引っかかった事ないしなぁ。読み合いとか凄く得意だったし。

 ……でも言ったところで伝わる訳ないしなぁ。

 

「ほら、セン。何心気臭い顔してんだよ。楽しもうぜ!」

「あぁ、そうだ。お前が楽しくなければそれだけで、気分が落ちる」

 

 まぁ、でも過去の事情とかは置いといて、精一杯楽しもう。

 

 

 せっかく、皆揃ってるんだし。

 

 

 




今回のネタはほとんど、GE2RBからです。ギャグ成分、少し薄め。
解説
>「ある筈の無い痛みを~」
ファントム・ペイン。MGSにもテーマで上がりましたね。ちなみに作者はとあるテープで泣きそうになりました。あれだけでも、購入した価値はあります。……まさかおっさんの独白で、涙腺がヤバくなるとは思わなかった。

>「ナナちゃんが特製の~」
ナナのキャラエピですね。何のひねりも無いです。

>「何度もオウガテイル~」
GEBの「豪華景品」と言うミッションです。強化個体と言う割にはあっさり倒せてビビった記憶があります。

>「ソーマと500回~」「神機のパーツ~」
GEBからGE2に引継ぎする際の条件ですね。作者はアリサで既に達成していました。神機のパーツも何か達成してて驚愕。ここまでやりこんでいたとは。……え? SSS+? 何ですかソレ。

>「いきなりエイジス島に~」
GE2のアプデで、追憶のジュリウスと追憶のロミオが実装された時、同時に出現したミッション「スイートコレクター」。制限時間2分で集めろとか何かおかしい。しかもほとんど義理で、ユニークチョコ集めるのが難しい。
制限時間になればクリアなんですが、その都度NPCが台詞言うんで必死だった記憶があります。
J「希望を捨てるな!」

>「覚醒前~」
追憶のロミオなんですが、実装当時は覚醒前の状態でした。その後は修正され、無事覚醒後の状態に。

>「のこじん出ねぇ」
何でLV9ばかり出るのか……。ちなみにアヴァロンは「アヴァロンの林檎」と言う任務で、最初の頃はそこでのこじんを回すのが定番でした。
そしてハイドとジ・エンドですが、ハイドアタックとCCジ・エンドです。これで大体即死と言う罠。ネルちゃんはロングで全BAぶっ放せるから問題ないね!

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