聖刃伝唱シンフォギア -語り紡ぐ交響曲の果て- 【改訂版】   作:野鳥

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第1章 3節 目覚めるは、炎の剣士。

 

「これがこの剣の力……。これならいける、これなら戦える……!!」

 

 飛羽真さんは炎の剣を引き抜いて、わたしのように変身してしまった。

 全身は左右非対称の白い鎧に覆われて。右には龍を象った赤い肩当てがあり、腰にスケイルアーマーが伸びている。

 さらに上半身から頭へと一本の剣が生えて、目元には炎のようなバイザーが轟轟と光り輝いていた。

 

「う……そッ」

 

 ………目の前の光景に、わたしは唖然としてしまっていた。だってその姿を、わたしは二年前に見た事がある。

 ノイズに襲われた会場の中。瀕死のわたしを励まして、何か特別な方法でこの命を繋ぎ止めてくれた仮面の戦士。その姿と今の飛羽真さんは瓜二つだったから───

 

「飛羽真さんが、あの時の……?」

 

 疑問が口に出てしまうけど、飛羽真さんがそれに応えてはくれない。

 なにせ今は戦闘中だ。飛羽真さんに立ち塞がる怪人は、わたしの疑問を解消する機会なんて与えてくれる筈もなかった。

 

「貴様、何故聖剣を…。まさかソードオブロゴスの剣士か……!?」

「ソードオブロゴス…? 何の話かは知らないけど、この力で俺がやる事は一つだ。

 ───お前を倒して、亮太くん達を元の世界に戻す!」

 

 飛羽真さんは剣を掲げて、毅然と怪人へ言い放つ。

 その勢いのまま斬りかかっていくあの人に、怪人は怒りを滲ませて迎え撃った。

 

「抜かせッ。ここまで来てオレを止められると思うな!!」

 

 炎の剣と怪人の拳が激しい火花を散らしてぶつかり合う。

 最初は互角に押し合いを続けていた二人。けれど次第に飛羽真さんが押し始め、最後は怪人の体勢を崩し、がら空きのお腹を斬り捨てた。

 

「グゥ───!」

 

 よろけたメギドに、あの人はさらに跳び上がってから上段斬りで畳み掛ける。

 これにさらなるダメージを受けた怪人は後ろに下がっていく。続けて飛羽真さんは追撃に出たけど、そこで怪人はカウンター狙いの拳を振り抜いた。

 

 彼は咄嗟に剣を盾に防御へ回る。

 でもその威力には耐えられなかったみたいで、彼もまた大きく後ろへ吹き飛ばされた。

 

「ハハハッ! 勇んできた割にはその程度か!」

「グ……ハッ」

 

 咳き込んで拳を受けた箇所を抑える飛羽真さん。

 やっぱりあの鎧でもあいつの拳は痛いんだ。不安がわたしの心に生まれかけるけど、あの人の様子を見ればそんな気の迷いは吹き飛ばせた。

 

「なら、これでどうだ──!」

 

 だって、あの人は何も諦めていない。

 その証拠に策があるようで、怪人が拳を飛ばしてきたのを飛羽真さんは待ち構えている。

 自分に当たるギリギリまで接近したところで、彼は剣を振り被って拳と激突させた。このままじゃさっきの二の舞いだけど、そこで敢えて力を抜いて拳の流されるままになる。

 

「ぬおっ!」

 

 そして最大限に引き摺られた所で足を踏ん張らせ、怪人へと拳を投げ返してみせた。

 思いもよらなかったのか怪人は諸に拳を受けてしまい、大きく尻餅をついて転んでしまう。

 これには怪人も怒りを抑えられなかったようだ。元から食いしばった顔をさらに顰めて、あいつはさっきの白い本を取り出し始めた。

 

「グ、ガァ……ええい、ならばッ!!」

 

 本の頁を開くと、光を放って世界に変化を促していく。

 段々と周囲が暗くなっていくのに気付けば、わたしの目には空から街が落ちてくる光景が飛び込んで来た。

 

「なんだッ!?」

 

 ……違う。街が落ちてるんじゃなくて、街が本のように捲られてるんだ。

 

 世界が頁のように切り替えられていく。

 わたし達にはどうしようもなくて、この異変にただ巻き込まれる事しかできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!?」

 

 気付けばわたしと飛羽真さんはどこかの空の上に放り出されていた。

 下には見た事のない山脈と、高層ビルのように巨大な一本の剣が突き刺さった平野が見える。

 

「お、落ちる……!?」

 

 わたしの謎の力がどこまで耐久力があるのか知らないけど、流石にこの高度から落とされて無事でいられるなんて思えない。

 ならばどうするのかと考えたところで、飛羽真さんはわたしに向かって声を張り上げてきた。

 

「響ちゃん、こっちだ!」

 

 そしてこちらに伸ばされた掌を見て、すぐにあの人の意図を察する。

 下からの気流に煽られる中、必死に手を伸ばして……何とか手を繋いだ飛羽真さんは巨大な剣の鍔を着地地点に選んだ。

 

「ととっ、大丈夫?」

「は、はい……何とか、無事です」

 

 どちらの鎧も鍔に飛び込めるだけの耐久力はあったらしい。痛みもなく着地できたところで、ほっとしたわたしは手を膝について息を整える。

 

 本当はもう少し状況を把握したかったけど、相手は全く待つつもりがないみたい。

 怪人はアリに見えるくらい高度の離れた地上で、地面を殴って大量の岩石を空へ打ち上げていた。

 その全てがわたし達に向けられていて。余りの数に息を呑んでしまったわたしへ、飛羽真さんが声を掛けてくる。

 

「響ちゃん、まだやれそう?」

「……わたし、は───」

 

 戦えるんだろうか、わたしに……。

 最初は押してたけど、あいつはすぐにこっちの動きを見切って対処してきた。また挑んでも足手まといになるだけなんじゃと、また不安が心の底から押し寄せてくる。

 

「戦える自分を想像するんだ」

 

 そうして決断できないでいると、飛羽真さんは続けてわたしに言葉を投げかけてきた。

 

「物語を頭の中に描くように、自分の理想の戦い方をイメージして。そうすればきっと、さっきよりももっと戦えるようになれる」

 

 戦える自分を想像する……。それは戦いとは違うけど、飛羽真さんがいつもやっている事に近かった。

 この人は読者として物語に没入する時、その世界にいる一人の人間になった自分を想像する。そうすればより身近な視点で登場人物の心情を読み解けて、物語をより深く汲み取れるんだとか。

 

「それに本当は俺一人でもやれるって胸を張りたかったけど、残念ながらそこまでの自信はないんだ。

 でも二人でなら。たとえ半人前でも、力を合わせれば一人前の力を出せる筈だよ」

 

 そしてわたしの答えを待っているのか、こちらへ拳を突き出してくる。

 ……自信がない、っていうのは半分嘘かな。

 この人ならこういう時は自信のある無し関係なく、一歩前に出て身体を張るような性格だから。

 

 だからきっと、これはわたしを励ましてるんだろう。

 手を挿し伸ばせば、わたしは必ず立ち上がると信じてくれてる。

 

「───やるよ。わたしもやる」

 

 ……ここまでされて、いつまで迷ってる訳にはいかないじゃないか。

 手短に答えた。深くは喋らない代わりに、突き出された拳へ想いをぶつける。

 

「ああ、いこう。響ちゃん!」

 

 彼の掛け声を合図にわたし達は岩石群へと飛び出していった。

 飛羽真さんが炎を纏った剣で次々と岩石を斬り裂いて、わたしが取りこぼした分を拳でどんどん打ち壊す。

 互いに死角をカバーして、徐々に岩の数が減って来た段階で、怪人はさらに巨大な岩石を空へ打ち上げてきた。

 

 わたし達なんてスッポリ覆ってしまう壮大さに、今頃怪人は勝ちを確信してほくそ笑んでるのかもしれない。

 けど舐められたもんだよ……。今のわたし達なら、このくらい何てことないッ!

 

《ブレイブドラゴン!》

 

「合わせて!」

 

 手短な呼び掛けと共に。飛羽真さんはドライバーの本をタップして、龍にも似た火炎を岩石に向けて放射する。

 そこに沿わせるように、わたしは腰のブースターを全開にして一直線に突っ込む。

 

「───おぉりゃああああああああ!!!!」

 

 狙うは一点、岩石の中心部!

 噴射の勢いに乗せて体勢を変えたわたしは、飛羽真さんの炎を巻き込んで跳び蹴りを岩石へと繰り出した。

 

 瞬間、岩石は炎に焼かれながら木っ端微塵に砕けていく。

 ついに相手の弾を振り払った中で、わたしを通り過ぎて飛羽真さんが怪人へと次の一手を決める。

 

「ハァ───!!」

 

 遥か上空から重力を乗せる、炎を纏った渾身の一撃。

 それは怪人の肌を深々と斬り裂き、目に見える確かな傷を負わせてみせた。

 

 するとまたもや世界が捲れて、景色は次第に元の公園へと戻っていく。

 

 急に高度が変わった為に着地でよろけたわたしは、この変化に違和感を覚えた。

 今のは明らかに怪人がダメージを受けたから世界が切り替わってる。この変化が奴の状態で変わってくるなら、完全に倒せれば……もしかして元の世界に戻れるんじゃ?

 

「まだ、だ……。これで、終わりではないッ!」

 

 この異変を終わらせるのに希望が見えたところで、怪人が声を張り上げる。

 するとあいつは胸元を抑え、全身から妖しい光を発し始めた。

 そこから腕を奮えば、その身体は見る見る内に巨大なものへと変貌してしまう。

 

「え、えぇぇ…!?」

 

 ビルの十階くらいはありそうなサイズで、怪人はわたしたちを見下ろしている。

 そのまま巨体を活かし、怪人は次々と拳や足を振り下ろしてきた。

 

 一撃を避ける度に、余波で地面が震えてしまう。

 固い大地にいる筈がぬかるみのような不安定さに、わたしたちは次の攻め手を決めあぐねていた。

 

「ええい、ちょこまかと避けよって!」

 

 ……一見追い詰められてるのはわたし達。なのにあいつはすぐにわたし達を倒せずに苛立ちが強まってきてる。

 もしかしてこれは本当に奥の手なんだろうか?

 追い詰められてるからこそ、こうでもしないとわたし達が倒せないと焦ってる…?

 

 ならここさえ越えれば、この戦いを終わらせる事ができそうだ。

 でも攻めあぐねてるのはわたし達も同じ。どうやってあの巨体を攻略するかと考えて

 

 ───自分の理想の姿をイメージして。

 

 その瞬間、飛羽真さんの言葉がわたしの頭を過ぎった。

 ………そう。今のわたしじゃ倒せないなら、倒せる自分を思い描けばいい。

 この力がどこまで応えてくれるか未知数だ。でもあの大岩を壊せたのなら、あんな巨人だって倒す事ができる───

 

「飛羽真さん、わたしが行く」

 

 そう伝えれば、彼は頷き一つで理解して時間稼ぎに出てくれた。

 二人で攻めあぐねていた現状、余り負担は強いられない。早速わたしは脚を踏み締めて、腕の籠手に手を添える。

 力を込めてそこを引っ張れば、籠手はスリングショットのように引き絞られ、大量の蒸気を発してエネルギーを溜め込んでいく。

 

「小娘、まだ懲りずに向かってくるか!」

 

 怪人が気付いたようだけど、飛羽真さんの妨害でわたしには手を出せない。

 その間に限界までエネルギーを溜め込む。もっと、もっと、もっと……!

 

「一人で戦える程の強さなんて無い。それでも───」

 

 準備ができたわたしは、深く体勢を沈みこませる。

 クラウチングスタートのような姿勢を保ち、足のパワージョッキで強く大地を蹴り上げた。

 

「あの人の信頼に、わたしは応えるんだッ!!!」

 

 弾丸のような鋭さで、一直線に相手へ叩き込む───!

 上空へ跳び上がったわたしは腕を振り抜き、迎撃しようとする怪人の拳ごとあいつの頭を打ち貫いた。

 

 拳は怪人を越えて、その頭は派手な音を立てて飛び散っていく。

 痛みに悶えて悲鳴を上げる怪人は、恨めしそうな眼光でわたしを睨みつけていた。

 

「ガ……アァァ!!

 お前、達が……どれだけ足掻こうと! いずれ世界は、我等の手に治まる結末なのだァ!!」

 

 負け惜しみか。はたまたそう言えるだけの自信があいつにはあるのか。

 

「いいや、終わりを決めるのはお前じゃない」

 

 ……けれど少なくとも、あんたはここで終わりだよ。

 

「物語の結末は、俺が決めるッ!」

 

 もう一人いない事に気付いて、怪人は声の方へ視線を投げる。

 その時にはもう準備は終わっていて。あとはあの人が溜め込んだ力を解放すればいいだけだ。

 

《必殺読破!》

 

《ドラゴン一冊撃! ファイヤー!》

 

 納刀した剣からエネルギーを循環させて、飛羽真さんは遥か上空へと跳び上がる。

 狙うは怪人の胴体。向かうべき先へ、彼は迸る炎の力を解き放った。

 

「火龍蹴撃破ッ!」

 

「ガァァァァァぁ!!?」

 

 炎を纏った脚が怪人の身体を貫いていく。

 貫通した敵を背に彼は着地し、悠々と立ち上がってみせれば───怪人は爆発して木っ端微塵に吹き飛んでいった。

 

「飛羽真さん!」

 

 わたしも同タイミングで着地し、彼の下へと駆け寄っていく。

 そうして無事な姿を見て、気が抜けちゃったみたい。変身が解けて元の姿に戻ったわたしは、飛羽真さんと素顔をかち合わせた。

 

「大丈夫、響ちゃん! 殴られたとこ平気!?」

 

 身体の具合を訊いたりとか、お疲れなんて言おうと思ったけど。そのタイミングで芽依さん達もこっちへ駆けつけてくる。

 ……心配してくれるのはいいけど、相変わらず犬みたいに元気な人だなぁ。

 

「ああ、もうっ。大丈夫だからそんなに触んなくていいよ……」

「芽依ちゃん…。響ちゃんの心配するのはいいけど、俺には何もないの……?」

「何もって飛羽真はピンピンしてるじゃん。

 それだけ動けたらぜんっぜん平気! それより思いっきり殴られた響ちゃんを心配するのは当然でしょーが」

「俺も瓦礫に埋まった気がするんだけどなぁ~~。

 でも響ちゃんが心配なのは俺も一緒だし……良しとしておくよ。ウン」

「いやいや、そこは素直に文句いいなよ。そっちだって頑張ったんだしさ……」

 

 こっちが心配する暇もないや。……けど、これがいつものわたし達って気がする。

 とんでもない目に遭ったけど、勝ったんだよね……。何も奪われずに、またいつもの日常に帰れるんだ。

 

「見てあれ、街が元に戻ってく!」

 

 そしてわたし達の勝利を裏付けるように。世界が元に戻る様をわたし達は目撃した。

 変化を遂げていた建物や景色が、光のように溶けていって元の姿に戻っていく。

 どこか神秘的な雰囲気を帯びたそれに見入りながら、わたし達はその時を待ってたんだ。

 

「あっ、ママ! パパ!」

 

 やがて光が消えて元の世界と繋がった所で、亮太くんの両親は立ち尽くしていた。

 今にも飛び出したい亮太くんの気持ちを汲んで、飛羽真さんはにっこりと彼に微笑みかける。

 

「いっておいで、亮太くん」

「うん!」

 

 元気な返事で飛び出していく彼を眺めて、わたしは感慨深いものを覚えていた。

 ホントに勝てたんだなって実感が、また目に見える形でわたしの前に現れて

 

 だけど亮太くんは、不意に立ち止まってこちらへ振り向いた。

 

「ありがとーーう!

 とうま兄ちゃん、ひびきお姉ちゃん! 二人とも、すごいカッコよかったーーー!!!」

 

 一体なんだろうって不思議に思っていると、彼は唐突にそんな事を叫んできたんだ。

 ……お礼を言われるなんて、わたしは全く考えが及んでなかった。

 だってわたしが戦ったのは自分の居場所を奪われたくなかったからだ。純粋に彼の為に戦ったとは言えないし……。

 

 なのにどうしてかむずがゆくて。困って飛羽真さんを見ると、彼まで微笑ましそうに見つめてくる。

 

 ………そういう目で見るのはやめてほしい。ああいうお礼は、貴方だけが受け取るべきだろうに。

 そうは思っても口にするのもまたむずがゆくて。何も言えなくなったわたしは顔を背けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそ~!? 写真が全部映ってな~い!!」

 

 昼の騒動から数時間後。外は夜空の下で、俺達はお店に戻って羽を休めていた。

 ただ芽依ちゃんだけは休むなんて気分じゃないみたいだ。様子を見るに、どうやらたくさん撮っていたあの世界の写真に何も写っていなかったらしい。

 

 ……つくづく不思議な世界だとは思ってたけど、ここまで来ると何もわからな過ぎて怖いくらいだ。

 俺としてはあの世界について深掘りしたいけど……そうも言ってられないか。

 あの落ち込み様だと今日ここに来た理由まで吹き飛んでそうだ。落ち込んで家に帰られる前に、早く渡す物を渡しておかないと。

 

「まあまあそう落ち込まず。はい、今月の原稿」

「……よっしゃキター! これで明日遊びにいける~!!」

 

 昼に催促された原稿を渡すと、芽依ちゃんは一転して上機嫌になりはしゃぎ出した。その有頂天ぶりったら写真の件は完全に吹き飛んでそうな状態である。

 

「相変わらずの速筆だよね…。今日なんてあんな戦いがあったばっかりなのに」

「今日に渡すって約束したからさ。

 それにあんな不思議な世界を見たら、創作意欲が沸き上がっちゃって」

 

 結果的にこうして原稿が早まったのなら、あの世界に行って良い事もあったんだな。

 そう考えてみたけれども。そういえば響ちゃんもあんな目に遭ったのに、あの世界を嫌がる素振りは見せないな……。

 

「確かに凄い場所だったよ。

 わたしもあんな状況じゃなかったら、もっと楽しむ余裕もできたかな」

「響ちゃんがそこまで言うなんて珍しいね。もしかして気に入った?」

「まぁね。でも……今はあの世界よりも気になる事があるかな」

 

 彼女も俺と似たような感想なのに嬉しがる間もなく、響ちゃんはそう言って俺を見つめてくる。

 

 気になる事……もしかして本や変身したあの姿の事だろうか?

 とはいえ俺もあの変身でようやく使い方が解っただけで、説明するにしてもソードライバーに書いてある事しか言えないんだけど……。

 

「飛羽真さん。飛羽真さんが、二年前の戦士なの?」

「えっ────二年、前…?」

 

 ところが彼女が尋ねてきたのは、俺の想定とは全く違う内容だった。

 

 二年前……何の事だ? えーーっと、話を整理しよう。

 まず戦士って事は、きっと彼女が想定してるのは俺が変身した姿だろう。

 加えてその時期に思いつくとすれば、響ちゃんが行った例のライブだ。けれど俺はそもそもあのライブどころか、ツヴァイウイングのライブに行った事すらない。

 

 なのにあの姿の事を指してるのなら─────もしかして彼女だけが知っている、あのライブに隠れた別のナニカがあるんだろうか?

 

「失礼します」

 

 一体どれ程固まっていたのだろう。響ちゃんの質問に答えあぐねる余り、俺は店に入って来た来客へ気付くのに、一瞬時を要してしまった。

 

「……あっ、はい。どちら様、で…す……」

 

 少しぎごちない動きながら、俺は意識を取り戻してどうにか応対する。

 今は店仕舞いの時間だとか。響ちゃんへの質問への答えとか色々考えてたのに

 

「突然の話だけど驚かないでほしい。今日は君にお願いがあってここに来たんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神山飛羽真くん。君の聖剣とワンダーライドブックを渡してもらえないだろうか?」

 

 扉の前には、蒼いライオンに乗った青年が俺達へ微笑んでいた。

 

「「「………ええぇぇぇぇーーー!!?」」」

 

 揃いも揃って大声を上げてしまう。

 

 今度はなに!? ライオン? 聖剣? ワンダーライドブック??

 ……せっかく事態を解決したと思ったのに。どうにも俺達が巻き込まれた世界は、次から次へと驚きを運んでくれるようだ───。

 

 

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