聖刃伝唱シンフォギア -語り紡ぐ交響曲の果て- 【改訂版】   作:野鳥

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第2章 2節 水の剣士、ライオンと共に来りて

 

 

「───来たようですね。

 ここが消された街の外側です。聖剣を持っていれば、この中に入る事ができます」

 

 数日後。俺達は倫太郎から連絡を貰い、かがり市内のとある街にやって来ていた。

 そこには街全土を覆う巨大な本のような光───おそらくあの時俺達をワンダーワールドに飛ばした結界が広がっている。

 

「この先は危険且つ、責任は重大です。

 ここに来た以上心は決めてきたのでしょうが……改めて聞きましょう。お二人の覚悟を」

 

 倫太郎は結界を前に俺と響ちゃんの気持ちを確かめるつもりだ。

 ……覚悟と呼べるだけの気持ちとは言えないかもしれない。それでも俺なりに自分の心を定めてきたつもりだ。

 

「"世界を守る"……そう胸を張って言うには、人も世界もまだ俺の知らない事がたくさんある。

 だけど目の前にいる人を守りたいって気持ちがずっと胸の中にあるんだ」

 

 ソードオブロゴスの掲げる世界の均衡なんて話、俺にはピンとこない。

 寧ろ一年前に人の悪意と呼べる部分を間近にして、俺が語れる程世界は狭くも浅くもないんだと叩きつけられたばかりだ。

 

「だから戦うよ。俺は仮面ライダーとして皆を守ってみせる」

 

 それでも誰かがメギドやノイズに襲われれば、きっと俺は見過ごせない。

 だから聖剣を奮う。

 この力で守れるものがあるのなら戦う事を躊躇はしない。

 

「……たくさん迷ったよ。一人で戦える程強くもないのに、この力を奮うのかって。

 それでもわたしは大事なものを奪われたくない。奪っていく奴の好きにさせたくない」

 

 続けて響ちゃんも自分の想いを語っていく。

 彼女も力の重みを真剣に考えて……自分なりの答えを見つけ出せたようだ。その目に強い意志の光が輝いているのを、俺は確かに見て取った。

 

「だから戦う。わたしの目の前で何一つ奪わせない為に」

 

 俺達の決意を聞いて、倫太郎は一度目を瞑って息を整える。

 その口元が微かに微笑んでいたのが強く印象的だった。

 

「お二人の覚悟は伝わりました。

 ですから僕の方こそお願いします。共に戦い、街を救いましょう」

 

 こうして俺達を認めるその呼びかけに、二人で強く頷いてみせる。

 それを見た倫太郎は聖剣に手を添えて、結界の前に開かれた本に似たゲートを創り出した。

 

「では付いてきてください。この本を潜れば───」

「とーうま。ひーびきちゃん」

「「「………えっ」」」

 

 早速彼の案内でゲートを潜ろうとするが、そこで嫌に聞き覚えのある声を耳にする。

 いやそんなまさか……と振り向けば

 

「うちも行くーーー!!」

「って、芽依ちゃん(さん)!!?」

 

 芽依ちゃんが自転車に乗って突っ込んできたァ……?!

 いきなりの展開に誰もついていけず、彼女の突撃に押されてしまう。

 臨場感や戦意を昂らせるといったものはなく、まるでコメディのように俺達はゲートへ突入してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたたた……」

「よっし、せいっこう!」

「須藤芽依さん! ここは普通のホモ・サピエンスが来る所じゃないんですよ…!?」

 

 押された俺達は漏れなく地面とキスした状態で結界内に辿り着いた。

 こうなった原因は至極ご満悦なようだけど、流石にこういう時は真面目に入りたかったな……。

 

「これって……」

「うわっ、めっちゃキモ~い!?」

「……どうやら異変が最終局面まで進んでいるようですね」

 

 溜息をつきながら埃を掃っていると、他の三人は街を意味ありげに見つめている。

 気になって俺も見てみると、そこには深刻化した異変が街を襲っていた。

 

 前にも見た本と化した建物は至る所に見られ、腐った紙片はシャボン玉と共に舞っていない場所がない。

 さらにどことなく街に漂う雰囲気も重く、前の公園よりも酷い状況なのが肌で感じられた。

 

「下がって。ここは僕が戦い方を見せましょう」

「えっ、倫太郎も変身できるの?」

 

 倫太郎はここで一歩前に出て、自分が手本を見せるよう告げる。

 そして懐から水のエンブレムが付いたソードライバーを取り出し、腰に巻き付けた。

 

「この水勢剣流水に誓う。僕が必ず世界を守る」

 

 誓いを口にし、続けて蒼いライオンを描いたライドブックを開いて伝承を読み上げさせる。

 

《ライオン戦記》

《───この青き鬣が新たに記す、気高き王者の戦いの歴史》

 

 挿しこむのは真ん中の動物のスロット。

 流れる水のように重厚な旋律と共に聖剣を抜刀。真一文字に斬り払った刀身からは水の斬撃が放たれ、倫太郎の身体を包んでいった。

 

《流水抜刀!》

 

「変身!」

 

 水は黒を基調とした鎧に代わり、胸周りには獅子の頭を模した胸当てが出現する。

 俺の時と同じく上半身から頭にかけて剣が生え、仮面には水を模したバイザーが蒼く輝く。

 

《ライオン戦記──!》

 

《流水一冊!

 百獣の王と水勢剣流水が交わる時、紺碧の剣が牙を向く───!》

 

 確かソフィアさんは彼の事をブレイズと呼んでいたから……呼び名は『仮面ライダーブレイズ』になるのかな。

 そうして変身を終えたところに、どこからかギチギチと歯を擦るような音が周囲に響いた。

 

「来ましたね。メギド!」

「いけっ、お前達ィ!!」

 

 奇襲を嗾けて現れた集団は、三方から倫太郎を狙って駆け寄ってくる。

 

 雪崩れ込む集団は無機質な仮面にボロ衣を纏った怪人。

 そしてそれを操るのはアリのような頭で黒い皮膚の怪人。さしずめ『アリメギド』と呼べる一体だ。

 

「いきますよ───!」

 

 倫太郎は集団にも臆さず果敢に立ち向かっていく。

 軽々と集団を飛び越えて、着地した瞬間に流麗な剣捌きでどんどんメギドの手下を斬り捨ててしまう。

 手下は数に任せて手持ちの短剣で襲うけども、彼はその切っ先は刃で逸らして受け流し、その流れを利用して逆に斬り払ってみせる。

 

「ええいっ、ならばァ!」

 

 手下の攻撃を意にも介してない倫太郎へ腹を立てて、アリメギドは攻撃に移る気らしい。

 何をするつもりかと観察すると、あいつは口から緑の唾を戦場を狙って吐き捨てていった。

 

「ギィィィィ……イィ!?」

 

 咄嗟に彼は身を捩って躱したけど、気付かなかった手下の一人は顔面に唾を受けて倒れてしまう。

 するとその顔は無惨にも溶けていき、あっという間に手下は動かなくなった。

 あいつの唾は溶解液なのか!? しかも、味方に構わず撃ってくるなんて……。

 

「仲間諸共倒すつもりですかッ!!」

 

 これには倫太郎も怒りを見せて、次々と撃たれる溶解液を弾きながらアリメギドへと近付いていく。

 弾いた溶解液は自分を襲う手下にかかるよう弾道を調整して、接敵と周囲への対処を同時にやってのけてる。

 

「ハァ───!」

 

 そして新たにメギドが唾を吐こうと仰け反った瞬間。倫太郎は聖剣から水を呼び出し、その顎を狙って水流を発射した。

 水流は見事に口の中へと押し込まれ、メギドは喉を詰まらせて激しく悶えだす。

 

「グゲッ!?」

 

 ここで駆け込み、ライオンのような脚力で彼は顎を目掛けてサマーソルトを決めた。

 バキリと顎の折れる音を響かせながら、倫太郎は一回転からの踏み込みでジャンプ。前方の建物に跳び移り、上から戦場を観察し始めた。

 

「アリのメギドなら、集団でいる筈……よし、あそこか!」

 

《ライオン戦記!》

 

 何かを見つけた倫太郎はライドブックの頁を軽くタップ。

 以前俺が使った時の要領で。けれどそれとは違い、確かな実体を持ったライオンを召喚して解き放った。

 

「ライオンワンダー!」

 

 それと同時に、横合いから手下を引き連れたアリメギドが戦場に歩み寄ってくる。

 そうか、アリは群れをつくる生き物だ。習性から元から複数体いると踏んで、倫太郎は一気に仕留めにかかったんだ!

 

 この予想は大当たりのようでライオンは口から水流を放射し、増えた群れごと敵の脚を水の流れに閉じ込めてしまう。

 そうして動きを封じたところに、ライオンが爪と牙で瞬く間に薙ぎ払っていく。

 

「そこッ!」

「ギ、イヤァァァ………!!?」

 

 倫太郎は頭上から最初のアリメギドへ跳び込み、上段からの一振りでその身体を斬り裂いた。

 これには敵も耐え切れず、次々と弾ける群れに続いてアリメギドも一欠片も残さず爆発する。

 

「凄い……」

「あっという間に倒しちゃった! チョー余裕って感じ!!」

 

 興奮する芽依ちゃん達と同じく、これには俺も称賛の言葉を送りたかった。

 けど……何か嫌な予感がする。まだ終わりじゃないと、敵を倒した筈なのにざわりと肌に焼き付く感覚が消えない。

 その胸騒ぎに従ってソードライバーを取り出すと、周囲から何かが蠢く音がし始める。

 

「なにっ────」

 

 すると四方の建物から、車のように巨大なアリの大群が俺達に押し寄せてきた。

 倫太郎も気付いていたけど、響ちゃん達は意表を突かれたようで呆然と立ち尽くしてしまってる。

 二人を守る為、俺はすぐに聖剣を引き抜いて変身した。

 

《ブレイブドラゴン》

 

「ドラゴンワンダー!」

 

 ただ変身しただけじゃあの巨体には対抗できない。

 ならば俺も倫太郎のようにやればいいと、見様見真似でドラゴンを呼び出そうと同じ手順を踏む。

 そうすると想像の通りに実体を持ったドラゴンが現れ、二人に迫るアリへ炎を浴びせて焼き尽くしていった。

 

「あ、あぶなぁ……」

「ありがと……」

「大丈夫だよ。二人共油断しないで」

 

 剣を構えて俺も巨大アリへ斬りかかる。

 巨体に呑まれない様、曲芸師のように跳ね回って頭上をとり、一太刀で急所を斬り払う。

 

 そうすればどんどん巨大アリは沈んでいく。

 図体は大きいけど、強さ自体は取り分けて高くはないらしい。ドラゴンや倫太郎達も戦っているのが相まって、戦況を持っていくのにそう時間は掛からなそうだ。

 

「……ッ、ガァ……!?」

 

 けれど相手もそう甘くはない。押されていた戦況を戻すべく、敵は次の一手を打ってきた。

 戦場に身体の底から不快感を起こさせる旋律が響き渡る。その酷さに俺達全員が耳を塞ぎ、まともに立つ事も困難になってしまう。

 

「み、耳が……!」

「あ、あそこに!」

「あれは……キリギリス、か?」

 

 芽依ちゃんが指さした先を見ると、一体のアリメギドの隣に新しいメギドがいるのが見える。細長いフォルムに腕から鎌のような爪を生やした、アリと同じく虫───多分キリギリスのメギドだ。

 アリのメギドとキリギリスのメギドって事は、あの二体は『アリとキリギリス』がモチーフなのか……?

 

「ととっ、皆避けて…!」

 

 騒音のせいで動きが鈍る中、巨大アリは意にも介さず俺達を襲ってくる。俺も含めて皆ギリギリで避けられてるけど、それも長くは続かないだろう。

 音の発生源がキリギリスメギドなのは分かってるのに……ああ、ずっと音を聞き続けて頭まで痛くなってきた…。

 

「ひ、びきさん……唄ってください!」

「う、た……?」

 

 とそんな時、倫太郎は唐突に響ちゃんへ唄うよう告げる。

 

「ソフィア様から……聞き、ました。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、のだと。ここで…響さんがうた、えば……もしかすると、この音を掻き消せるかも…しれませんッ」

 

 いきなりの話だが、確かに音に音をぶつけるのは悪くないかもしれない。

 響ちゃんは何故か彼の案に戸惑いがあるようだが、このまま生身で戦場にいるのも危険だ。ここは賭けに出てみようと、バイザー越しに彼女へアイコンタクトを送る。

 

「………」

 

 彼女は俺の視線に気付いてこちらを見やった。

 迷いが見て取れる目だったけど、俺の態度に言いたい事は伝わったんだと思う。一瞬顔を伏せた後、響ちゃんの目には倫太郎に覚悟を示した時の光が戻っていた。

 

「───Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 ───唄われた詩には、今も響く騒音を忘れさせるナニカがあった。

 音程は低いけれど、口ずさむ一音一句には爽やかで純粋な想いが込められている気がして。まるで響ちゃんそのものを表しているように感じられた。

 

 やがて唄い終えた響ちゃんは、光に包まれてあの時の鎧───シンフォギアを身に纏う。

 そしてその際の衝撃は巨大アリを後退させ、余波は奥のキリギリスメギドにまで及ぶ。

 

「しまった、音がッ!?」

「今です!」

 

 余波で腕を弾かれたキリギリスメギドは演奏の中断され、これをチャンスと倫太郎が聖剣をソードライバーに納める。

 響ちゃんの唄で頭の澄んだ彼の動きは、騒音に苦しめられる前の冴えをしっかりと取り戻していた。

 

《必殺読破!》

 

 聖剣のトリガーを引いた彼は、胸の獅子からメギドを狙い水流を発射。

 道を阻む巨大アリを撃ち抜き進んだ激流は、逃げる間も与えずに巨大な水球となって奴を閉じ込める。

 

「レオ・カスケードッ!」

 

《ライオン一冊撃! ウォーター!!》

 

 締めに繰り出されるのは脚に水を纏わせた上空からの必殺の蹴り。

 見事に敵の胴体を捉えた獅子の一撃が、水球を弾けさせてキリギリスメギドを貫く。

 

「あ、あんな歌如きに……!」

「グォ……!?」

 

 爆発したキリギリスメギドに巻き込まれて、隣のアリメギドは横合いに吹き飛ばされた。

 その拍子に爆炎とアリメギドの胸から二つの何かが地面へと転がっていく。

 それが何なのか確かめようと倫太郎が歩み寄る───だけどその前に、慌てたメギドが片方を拾い上げたんだ。

 

「剣士共め……。だがここさえ生き残れば!」

 

 あいつが拾い上げたのは空色のライドブックだ。

 なんであいつがワンダーライドブックを持っているのか驚く暇もなく、本を取り込んだメギドの背中からは、奴の身長程もある羽が生えてきた。

 

「さらばだ人間共ォ!

 まもなく本は完成する。このまま本が書き上がれば我らの勝ちだ!!」

「なんだって……!?」

 

 捨て台詞を言い残してアリメギドは空へ飛び去っていく。

 すぐに叩き落そうと走ろうとして。

 けれどその途端にドスン!と周囲から鈍い激突音が聞こえてきた。

 

「うぇぇ、アリが軒並み死んでる……」

「アリメギドは生きてるのになんで……」

 

『おそらくそのアリ達はワンダーライドブックの力で生み出したのでしょう。

 しかし本がメギドから離れた事で、効力が切れて自分の身体を支えられなくなったのかと』

「ソフィアさん!?」

 

 見れば周囲を囲っていた巨大アリが軒並み息を引き取り、地面へ転がっている。

 何が起こったのか判らずにいると、ブレイズのスマホを通してソフィアさんが解説してくれた。

 

『……ブレイズ。すぐに皆さんを連れて帰還を』

 

「ですが、まだ結界内にはたくさんのホモサピエンスが!」

『結界の状況は貴方が一番よく判っている筈です。

 そこまで書き換えが進んだ本の中にいるのは、剣士とて命が危うい』

「そんな……」

 

 彼女はこれ以上ここにいるのは危険だと、避難するよう俺達に促してくる。

 倫太郎は深刻そうに顔を俯かせるけど、よく考えれば俺はまだ異変が最後まで進んだ時にどうなるかを知らない。

 

「倫太郎。本が完成したら街と人はどうなるんだ?」

「メギドがこうして街を結界に包むのは、メギドを生み出すアルターライドブックを創り出す為なんです。その本が完成してしまえば、結界内の街と人は本の一部となって戻れなくなります」

 

 聞けば奴らの目的は自分達の仲間を増やす事のようだ。

 ……けど待てよ、アリメギドはあの時なんて言っていた……?

 

「───メギドは"本が書き上がれば、俺達の勝ちだ"と言ってた。って事はその前にメギドを倒せばまだ大丈夫だって事だ!」

 

 そう、あいつは本の完成まで生き残る為にこの場から逃げ去ったんだ。つまりはそれだけ切羽詰まってるという事で、あいつさえ倒せば本の作成は止まってしまう事も意味してる。

 

『……無謀と、勇気は違うのですよ』

 

 ただ残り時間は少ない、というのがネックらしい。ソフィアさんは反対だと通信越しに伝えてきた。

 ……たとえそうだとしても、ここで諦めたら街の人達は戻れなくなる。それに───

 

()()()()()()()()()()()()()()

『ッ、その言葉は……!』

 

 あの時浮かんできた言葉はきっとこういう時に使うものだ。誰の言葉かは未だにぼやけたままだけど、これを思い出すと不思議と背中を押してくれる気がする。

 

「……そうだよね。諦めるにはまだ早い」

「とはいえアリは集団で動くもの。あの個体以外にもまだ残っている可能性があります」

「いや、残ってるのはあいつ一人だよ」

 

 倫太郎も不安そうだが、俺は自信を持って残るはあいつ一人と断言した。

 何も確証無しに最後まで戦うつもりじゃない。あのメギドのモチーフが何なのかを考えれば自ずと答えは分かるんだ。

 

「響ちゃん、アリの生態って知ってる?」

「えっ? 確か前に読んだ本だと、女王と兵隊アリで別れてて……ああ、そういう事」

「お二人共? 納得していないで僕にも教えていただきたいのですが……」

 

 響ちゃんも納得したところで倫太郎は俺達に説明を求めてくる。

 まず、アリはその生態から必ず兵隊アリを纏める女王がいるんだ。

 ならアリメギドにも女王がいる筈で、そいつがどこかに隠れてるならあいつの慌て様はおかしい。だって自分が倒されても他の仲間が。増してや女王さえ生きてれば俺達の負けなんだから。

 

「きっとあいつが他の兵隊アリを統べる女王なんだ。だからあいつを倒せれば、全て丸く収まるって事!」

『決して無謀ではなかったようですね。……ならば、貴方にこれを』

 

 説明を終えると、また入って来た時のようにゲートが開いて一冊のライドブックが俺の下に飛んでくる。

 危うくキャッチすると、そこには赤いバイクに『ディアゴスピーディー』という題名が描かれていた。

 

『それは貴方にしか使えない本です、セイバー』

「セイ、バー……?」

「ふーん、じゃあ飛羽真は仮面ライダーセイバーって事ね」

 

 ソフィアさんからの言葉で、芽依ちゃんは俺の事をそう呼んでくる。

 仮面ライダーセイバーか…。

 俺も剣士になったって話だし、そう思うと実にしっくりくる名前だ。

 

「じゃあ倫太郎、ブックゲートっての貸して。三人がメギドと戦ってる間に避難誘導やっとくから」

「じゃあ、じゃないですよ! わざわざ危険を冒さずとも先に避難すれば……」

「巨大アリがライドブックの力ならもう出ては来ないじゃん。

 飛羽真達が戦ってる間何もしないのはイヤだし、何より逃げるんなら他の人達も一緒の方がいいでしょ?」

 

 仮面ライダーとしての名前を噛み締めていると、芽依ちゃんは倫太郎にブックゲートを催促していた。

 その理由も理には適ってるし助かるものだ。負けるつもりはないけど、街の人を見捨てない為にもやれる事をやった方がいい。

 

「諦めた方がいいよ。こうなったら芽依さんは頑固だから」

「……フゥ、危なくなったらすぐブックゲートから避難してください。いいですね」

「合点!」

 

 ビシッと敬礼して彼女はブックゲートを受け取った。

 芽依ちゃんも自分にやれる事をやろうとしてる。

 

 ……なら、俺も自分のやるべき事を果たさないとな。

 

 

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