中将「強いぞ」副官「嘘ですよ」   作:偽馬鹿

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暗黒期を頑張って抜けました。


中将「病気か」副官「仮病ですよ」

○月○日晴れ

なんと副官ちゃんが病気らしい。

本部の医者なら何とかなりそうだが、副官ちゃんは俺から離れたくはないらしい。

仕方ないので連れて回るしかないのだが、ここで朗報。

実は麦わらの一味の船医はかなり優秀らしい。

副官ちゃんの病気もなんとかなるのだとか。

借りを作ることになるが、まあいい。

いつか返せるだろう。

 

しかしながら俺の我儘に部下を巻き込むわけにもいかない。

俺はひっそりと副官ちゃんを伴って麦わらの一味に同行するのだった。

 

 

○月◇日晴れ

麦わらの一味の別れを見た。

仕方のない話だ。

あの青髪の少女は王族だったのだとか。

それでは海賊になるわけにもいかないだろう。

 

ところでこのお嬢さんに見覚えがあるんですがどこかで会いましたか?

いや分かっているけども。

 

追記

おやつがない。

 

 

○月▲日曇り

何か降ってきた。

大きなガレオン船だとか。

サルベージを試みたが、別の海賊と鉢合わせになった。

あちらはサルベージのプロらしく、優秀な装備を持っていた。

 

副官ちゃんの容態が安定しない。

なんとかなるんだろうか。

船医は山は越えているというが、やはり心配である。

 

追記

この船のおやつは美味しい。

 

 

○月□日晴れ

そういえば、次の島は空島らしい。

らしいというのは、その存在が謎に包まれているからだ。

俺も偉大なる航路に詳しいわけではない。

もしかしたらそんな場所もあるのかもしれない。

 

副官ちゃんの容態が安定し始めたので、他の部下たちに手紙を送ることにした。

あちらは大丈夫だろうか。

いや、あいつらはまがりなりにも俺の部下である。

平気なはずだ。

 

 

◇月○日晴れ

なんと、次の島へ空を飛んで行くつもりらしい。

驚いた、本当に空島を目指すとは。

これは手伝っておこう。

借りもあるが、中々に楽しみだ。

この世界には不思議なことがいっぱいだ。

 

追記

死ぬかと思った。

 

 

◇月□日

空島に辿り着いたが、何やら変な蟹らしき存在に連れられて変な場所へと運ばれてしまった。

副官ちゃんの病気が完全に治っていない以上動くわけにもいかない。

俺は船を守ることになった。

 

船医を戦力として数えることになるとは思わなかった。

しかし、悪魔の実の能力者だ。

俺には理解できない能力を持っているかもしれない。

 

……動物系の実の能力者だという。

言われてみれば角があった。

気付けと言われたが、そんなこと気にしていると駄目だろう。

何故ならば、この船医も海賊だ。

いつかは敵になるのだろうから。

そう言ったら船医はゴクリと喉を鳴らした。

 

 

◇月●日晴れ

敵が来たので迎撃した。

船に傷をつけてしまった。

これはまた借りを増やしたようだ。

 

空を飛ばれると流石に俺も近寄れない。

そう思ったところで謎の男が敵と戦い始めた。

両者ともに中々強い。

まあ俺の方が強いだろうが。

 

戦いは、こちらを助けに来てくれた男が負けて決着した。

続けるなら相手になると言ったが、相手は消耗した状態で戦えないと逃げ出した。

戦略的撤退という奴だろう。

中々頭の回る奴だ。

 

 

◇月▲日晴れ

そもそも雲の上なのに雨が降るのかという疑問に行き当たった。

まあいい。

なんとか歩ける程度には復活した副官ちゃんの様子を見ながら、男の容態も見ていた。

 

やはりこの船医は優秀だ、

船医にも専門分野というものがあるはずなのだが、この船医にはそれがない。

というか何でもできそうだ。

海賊やめて海軍に勤めたりしないのだろうか。

 

駄目だそうだ。

 

 

◇月▼日晴れ

なんだか色々あったしい。

 

気付けば全員が集合し、宴が始まった。

料理が美味い。

いやまあ、俺の船のコックも負けてないが。

 

何か強い敵がいるとかいないとか。

恩がある。

この船は守ろう。

 

 

◇月☆日晴れ

俺は神になった。

 

 

○月○日晴れ

宴が始まった。

キャンプファイアーを囲んで敵味方関係なく騒いでいる。

ああ、平和だ。

こんな世界に、早くならないだろうか。

いや、他力本願は駄目だ。

俺がするんだ。

 

 

○月□日晴れ

黄金を持って逃げるらしい。

仕方ない。

ここは見逃してやろう。

俺達も帰れなくなるからな。

 

俺は今のところ負けたことはないが、この麦わらのルフィは強い。

何せゴム人間だ。

雷にも強い。

いやだからどうしたというわけでもないが。

 

とにかく、俺は強いので弱い人間を守ることが義務である。

なのでそろそろお別れになる。

次会う時は敵同士な気がする。

嘘だった。

あんまり敵になる気配がない。

悪ではない気がするからだろうか。

気のせいか。

 

最大の理由は、副官ちゃんを助けてくれたからなのだが、まあ置いておこう。

何時か借りを返す日も来るだろう。

それまでさようならだ。

 

追記

おやつがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔の実を食べてから病気になったことはなかった。

これはもしかしたらそういう機能が働いているのかもしれない、と思ったこともあるが、それは違ったらしい。

何せ、今私は病気になっているのだから。

 

「大丈夫なのか?」

「休めば治ります」

 

嘘だ。

この病気はこの島、アラバスタにおいて不治の病だった。

この場に留まれば高確率で死に至るだろう。

 

しかし、この病気を治すには本部での集中的な治療が必要になる。

そうなれば、私はルシフ中将と離れることになってしまう。

それは困るのだ。

なんというかその、困るのだ。

 

「おれなら……なんとかできるかもしれない」

 

そう名乗りを上げてくれたのは、麦わらの一味の船医、チョッパーだった。

なるほど、それならば安心できるかもしれない。

 

しかし、チョッパーは海賊だ。

そんな相手に借りを作ることになる。

ルシフ中将は大丈夫だろうか。

 

「気にするな。病気を治せ」

 

そう言ってくれたが、心苦しい。

まだ何も返せていないのだ。

もらってばかりだ。

 

 

 

「あら、あなたもこの船に?」

 

……そういえば。

このタイミングでこの女は麦わらの一味に入るのだった。

忘れていたが、まあいい。

私には関係ない。

ないったらない。

 

 

 

 

 

 

寝込んでいる間に、空島へと向かう算段を付けていたらしい。

楽しそうなルシフ中将の顔を見ると私も嬉しいのだが、空を飛ぶのだ。

空を、飛ぶ。

勘弁してほしいが、背に腹は代えられないのだった。

 

 

 

「大丈夫か?」

「ええ、問題ないです」

 

嘘だった。

頭は痛いし喉は辛いし呼吸は苦しい。

しかし、心配をかけるわけにもいかない。

これ以上、お荷物になるわけにはいかないのだ。

 

 

 

空島に辿り着き、私たちは知らない世界を見て感動していた。

何せ空を飛ぶ島だ。

新しい物ばかりだろう。

 

「……歩いて平気なのか?」

「ええ、何とか」

 

これは嘘ではない。

何せチョッパーによる治療だ。

この世界でもトップクラスのそれだろう。

失敗などありえないのだ。

 

「あまり無理はするな。俺の副官はお前だけだ」

「……はい」

 

なんとも心地のいいセリフだろうか。

ルシフ中将の唯一の存在である。

誰にも渡したくはない。

 

 

 

「……なんだ、殺していい生贄が3人もいるのか」

「ピイイイイイイイ!!!」

 

そのセリフをかみしめていると、突如として乱入者が現れた。

無粋な奴だ。

引き裂いてやろうか。

 

そう思ったが、ルシフ中将が私の前に立った。

戦うというのだ。

いやまあ、戦力的にはこの船の中で一番なのだが。

 

「威勢のいい生贄だ。どれ、試してやろう」

「ふん、あまり吠えるな。貴様は犬か?」

「何だと……!?」

 

……信じがたいことだが、恐らくルシフ中将に挑発の意図はない。

信じがたいことにだ。

 

ただの感想なのだ。

それが口から洩れただけなのだ。

もう少し堪えて欲しい所だ。

 

「死ねぇ!」

「ふん……」

 

槍が放たれる。

それは炎を纏ってルシフ中将を襲うが、ルシフ中将はそれをいつものサーベルで弾いた。

そしてそのまま自由な左腕を突き出して相手を掴もうとした。

 

「っ!」

 

しかし、それを知っていたかのように回避する敵。

なるほど、あれが心網。

覇気の一種なのだろうか。

……私にも使えたらいいのに。

戦力的にはチョッパー未満かもしれない私の愚痴だ。

 

「ふむ……」

 

基本的に強いだけのルシフ中将だ。

だが、ただ掴んで叩きつけるだけで相手は即死する。

それを察知したのだろう。

 

「なんて強さだ。頭がおかしいんじゃないか?」

「そうか」

 

一気に距離を詰めるルシフ中将。

それを寸前のところで回避した敵は、そのまま空中へと逃げた。

あそこまでは流石にルシフ中将でも届かない。

なるほど、上手い手だ。

 

「流石にここまでは追って来れまい」

「確かに」

 

そして、男が空中で何かをしようとしたところで、新たな乱入者が現れた。

元神のガン・フォールだ。

 

 

 

「……中々強いな」

 

暫く両者の戦いを見ていたが、その通りだった。

空中戦という特殊な環境であるが、あれはルシフ中将には難しい次元の戦い方だった。

 

「だが俺の方が強い」

 

当然ではあるが、ルシフ中将は負けず嫌いだ。

あと基本的に嘘はつかない。

恐らく戦力的に見て、本当にルシフ中将の方が強いのだろう。

 

とはいえ、空中戦は難しい。

空を飛ぶ能力や技術、もしくは道具が必要になってくるだろう。

 

「……」

 

横を見ると、ルシフ中将は何やら考えている様子。

邪魔しないように空中の戦いを見ていると、ガン・フォールが敵の槍に貫かれてしまった。

しかも燃える槍だ。

ダメージは大きい。

 

「1人仕留めた……が、次を仕留めるのは難しそうだ」

 

横を見れば、いつの間にかガン・フォールを抱えているルシフ中将。

本当に気付けば抱えていた。

まるで理解できない速度だった。

 

「そうか」

 

ルシフ中将がそう呟いた瞬間、敵はこの空間から離脱した。

接近戦を嫌ったのだろう。

火炎放射を続ければ勝てるかもしれないが、時間がかかると判断したのかもしれない。

 

 

 

「さて、手当てをする」

「ま、任せろ!」

 

ルシフ中将が手を動かす前にチョッパーが駆け寄ってくる。

やはり手慣れている。

故郷では外傷の手当てなどしたことがないだろうに。

それだけこの海が過酷だということかもしれない。

 


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