リーアちゃん視点も交じり始めます。
追記
絶対永遠で合ってるのです。
あたしは今、奇跡を目の当たりにしていた。
誰もあたしを救わなかった。
誰もあたしを助けなかった。
それならあたしを助けてくれたご主人様の為に命を使おうと思った。
そう思っていたのに、今あたしは命を救われている。
あたしを救ったのはご主人様が好きな人で、名前をルシフというらしい。
白髪でショートカット、瞳の色は蒼。
腰にサーベルを携えていて、正義のコートを羽織っていた。
今はズタボロになってその辺に落ちているけれど。
「正義を捨てるか……?」
「俺の正義は海軍では貫けないようだからな」
「そうか」
放たれるのは灼熱のマグマ。
それが人間一人に襲い掛かる。
しかし、ルシフという男はそれを片手で受け止める。
受け止める……?
いや本当に受け止めている。
頭がおかしくなったかと思った。
「
「ぬぅ!?」
どこからともなく漆黒の剣が飛び出したかと思うと、柄の部分が結合して回転。
大将サカズキへと襲い掛かった。
「小癪な真似を……!」
いつまでも追いかけてくるそれを、大将サカズキは弾き飛ばす。
その拳には傷。
覇気を纏った剣なのだろう。
それをあんな風に自由自在に操れるなんて、どれだけの鍛錬を積んだのか。
「ほら、逃げますよ」
ご主人様が手を引いてくれる。
だけど、本当にいいのだろうか。
あたしを庇えば、もう二度とまともな生活には戻れない。
海軍として、中将という立場を失うことになるのに。
「もうさっきの攻撃で反逆罪ですよ。それに……」
「それに……?」
「守られてばかりでは、不公平ですからね」
軽く笑いながら言うご主人様。
だけど、救われたのはあたしだ。
これじゃあ不公平だ。
「
閃光が走る。
あれだけ暴れたら、もう駄目か。
あたしは素直に引かれる手に逆らうことなく走り始めた。
「海軍をやめます。ルシフ中将について行きたい人だけ残りなさい!」
ご主人様が船に辿り着いた瞬間に言った一言。
その一言に、船員たちは何事もなく出航の準備をし始めた。
「仕方ないなあ、あの様子じゃあやっちゃったんでしょう?」
「はい、やりました」
「ははは、いつかこうなると思ってましたよ!」
彼らの顔は笑顔だった。
海軍の制服を脱ぎ捨て、そのまま普段着へ。
既に覚悟をしていたというのだろうか。
「どうして……?」
つい口に出してしまった。
無粋で、無遠慮な言葉だ。
「あの人について行くって決めたからさ」
その人の言葉に、他の人も賛同する。
あの人のために、この場の人たちは命を投げ出すのだ。
それはこの人たちにとって当然で。
この人たちにとって分かり切ったことなのだろう。
「だからまあ、そういうことです」
ご主人様は頭を抱えつつ嬉しそうな顔をしている。
船から誰も降りないのだ。
それだけ、ルシフ中将は人気なんだろう。
「ルシフ中将を乗せたら出航します! 準備を!」
「「「了解!」」」
「……」
出航してから3日。
ルシフ中将とやらは自室に籠ったまま出てこない。
何か考え事をしているのだろうか。
あれだけ大見得を切ったのだ。
何をするのか少し楽しみだ。
「だけど……」
統率された組織。
一切の乱れのない航海。
船長として何か口を挟めるかも、とか考えていたあたしが恥ずかしい。
ここはやはり優秀な軍隊なのだろう。
というか。
あたしはこの場で何をすればいいんだろうか。
何だか働いていないことが恥ずかしく思えてならない。
「フーさんの恩人だからね」
とみんなは言うけれど、あたしが助けられた側なのだ。
恩に報いるためにも何かをしたい。
そう申し出ると、白髪交じりの男の人が前に出て言う。
「それじゃあ俺達を鍛えてくれ」
「……?」
「このままじゃ足手まといだからな」
照れくさそうに言う。
しかし、戦力として数えられなくても、これだけの働きができるのだ。
そんな必要あるんだろうか。
「ある」
「……っ」
力強い声だった。
何か理由もあるのか。
「命を救われて、拾われて……ただ船を任されるだけなのは、嫌なんだよ」
「それは、でも」
「分かっている、これは我儘だ。だけどな……やっぱり守りたいのさ」
簡単な話だった。
背中を任せて欲しい、守りたい。
そして、一緒に戦いたいんだ。
だからあたしなんかに指導を頼むんだ。
少し前まで敵対していた海賊の、小娘船長にだ。
「わかったよ。あたしがみんなを強くする!」
「ああ、頼んだぞ!」
あの人はそんなことを望んでいないかもしれない。
だけど、彼らは我慢できないんだ。
自分たちが守られてばかりなのが。
だからそう。
あたしはこの人たちに力を貸す。
だってそうじゃないか。
あたしが最初に力を手にした理由と一緒なのだから。
「麦わらの一味が消えた……か」
出航して暫く経ち、何故か届く新聞に目をやるとそんな記事が小さく乗せられていた。
大々的に報じられているのは私たちの起こした天竜人襲撃と、麦わらのルフィによる暴行事件だ。
一味が消えたことに関してはどうでもいいのだろう。
「何かあるのか?」
「あ、ルシフ中しょ……いえ、ルシフさん」
「ルシフでいい」
ルシフ中将をルシフさんと言うのは未だに慣れない。
ルシフでいいとは言われているが、それは個人的に無理。
いや、嫌というわけではなく、恐れ多いという感じだ。
ルシフさんは麦わらの一味を気にしている。
何か理由でもあるのだろうか。
……恐らく、私が気にしていることが分かっているのだろう。
だから気にしているのだ。
「あの一味も天竜人に危害を加えたらしいですよ」
「なるほど」
そう言うと、興味をなくしたようで、ルシフさんは水平線に視線をやった。
周囲では手の空いているクルーがリーアの指導の元訓練をしている。
自主的な訓練だ。
誰にも邪魔はできない。
しかし。
ルシフさんがあまりにもぼんやりとしていて不安だ。
張りつめていた糸が切れたような、そんな感じだ。
何か話題はないだろうか。
ルシフさんの注意を引く何か。
ああ、こんな時に会話になりそうなものを持っていない私は駄目だ。
「……誰かの指金かもしれませんね」
「ふむ?」
「まあ、推測ですけど」
仕方なく、麦わらの一味のことを使って注意を引く。
私の知っていることをぽつぽつ出して、興味を引かせたい。
「それはきっと間違えではないのだろう」
「そうです」
「ならばいい」
けれど、ルシフさんはそう言って水平線へとまた視線を向けた。
失敗である。
だが、何やら思うことがあったのか。
ルシフさんが意を決したように立ち上がった。
「島を作る」
「は?」
……突拍子のないことを言うのには慣れたと思ったけれど。
どうやら私も鍛錬が足りないらしい。