起源を遡れば、支配者が従属者に対して与えたものが労働だ。
後々には、権力を得るため、支配を広げるための労働が生まれた。
現代では、
さて…労働とは誰の為にあるのか?
今も昔も…変わらないのはどれも、
めぐみの大量スイーツ&ストライキ事件によって千束が軽く絶叫してから4日目、閉店後の夜である。スイーツの消費期限と売り捌く速度との勝負に勝手になってしまったが故に全員が肩で息をしたり、畳の上で潰れている者もいるほど疲労困憊である。
「…在庫は?」
「さぁな…」
「なんてことしてくれちゃってるのよあの子はぁ…」
「うなだれてても仕方ないじゃないですか」
今ミカが在庫の減り具合を詳細に調べているところだが、一つ言えるのは在庫はまるで減っているようには見えないことである。
「最近のおやつに困らないのはいいけどねぇ…」
「そろそろ味にも飽きてくるな」
「衛生面でも注視しなくてはいけない頃合いですからね」
「あぁ…体重が、体脂肪がぁ…」
頭を抱えてうなだれるミズキだが、若干背中の角度が浅くなっていることに約一名のみが気付いている。多くは突っ込むまいとするために取ってきた団子を齧る。
そういう彼女も若干顔が丸くなっているような感じがしていることに気が付かないふりをしていることを相棒は知っている。
「戻ったぞ」
「せんせぇ~…どうだった?」
「2割5分…といったところだな」
「月末までには必ず消化できる計算にはなるな」
「しかしあの量を文字通り腐らせないようにするには一刻も早く消費しなくてはいけませんよ?」
それを皮切りに、価格を下げるとか某白い鳥のいるSNSにいろいろ宣伝文句をつけるだとか、各々がアイデアをひねり出していく。どれもいつもやっていることの延長でしかないが、やれるだけやってみようの意識は維持されていた。
なによりも売り切らなければ月末収支が赤字確定になるから必死である。
「改めて思うが、新しいストライキの仕方だなこれ」
「やりすぎたのかしらね~」
「でも仕方ないじゃん…とは、言えないよね」
「言いたいことは分かりますが、チャンスだと思ったので」
「でもそれで逃げられたんじゃあねぇ…」
「それで、今でも連絡はつかないのか?」
「…ん」
そういって以前に勝手に連絡先を交換していた千束が某緑に吹き出しのある某チャットアプリの画面を持って見せるが既読の文字すらなかった。
「ミズキはミズキで依頼のメールとか届いていないのか?」
「ぜぇんぜん、あの子が入ってからは一件も来てないわよ~」
「…一件も?DAからもですか?」
「そうよ~」
気付いたのかリコリスの二人してミズキのパソコンを取って受信メール欄を見る。ミズキの言う通りめぐみが来てからは一つも来ていないことは確かになった。そのことに異常性を見出したのはさすが優秀なリコリスといえようか。
「…先生、どう思う?」
「俺から言えることは、本部に直接連絡したときには「機密事項だ」の一点張りで終わったことだ」
「私たちなら関係者でしょ?」
「また直談判に行くのか?」
「必要があれば」
そうして二人と一人の眼が鍔迫り合いを始める。互いが引く姿勢を持たないまま硬直状態を見せる。
切り出したのはミカからだった。
「…探すのは、売り切ってからだ」
「先生!」
「彼女も曲がりなりにもリコリスだ。それもファーストともなれば危機管理の一つくらいはできるだろう」
「納得できません。私個人としてはそれほどまでに楽観的な素振りができるのか解りません。なぜそんなことが言えるのですか?」
二人からの問い詰めにミカは返す刀で答えようと口が動くもの、声が出ないまま窮してしまう。
ピロン♪
通知音が千束のスマホから響く。ミカへと送っていた目線を切ってスマホを取って画面を見る。通知の宛名のところには、
「めぐみからだ!」
そうして画面を操作すると、
“売り切れるまでストしますので、”
「…………こいつぅ!!!」
見せなさいよ、という声に従って震える腕の中にあるスマホの画面を見せる。
そこから聞こえてこないはずの悲鳴が鳴りはじめるが、気にする人間はいなかった。
「ただの煽りじゃないの」
「…で、どうするんだ?」
「やってやろうじゃん!?」
その後に持ち前の身体能力を指先に集中させて返信の波を起こす。あらかた気分が晴れると「みんなやるぞぉ!!!」と一人勝鬨をあげる。
一切の反応を見せることのないたきなは一人思考を巡らせていた。
(売り切れるまで…?ここにはいない状態でなぜ確認できるんでしょうか?)
監視している?…なら電源が足りないはず…出入りの反応?…それならすぐ見つかるはず…
「今日のところはもう帰りなさい」
『…はぁ~い』
そうして一人を残して全員が自分の住処に帰っていく。
「たきな、どうした?」
「…すみません、一度在庫を見に行きますね」
「分かった。用が済んだらすぐに帰りなさい」
「はい」
そう言って、何度も出入りしている在庫部屋と化している地下の元射撃場に入る。いつの間にこれだけの棚を用意したのか今一理解が及ばないが、とにかくことを済ませるために行動する。
(…何かあるはず…なにか…)
天井、壁と天井との間の角、扉近く、各棚の裏側、柱の周りといった“センサーが取り付けられやすい場所”をくまなく見て回る。
(ありません…か)
安直すぎる考え故に先に潰しておきたかったところとはいえ、手掛かりもないとなるとさすがに心に来るものがある。
そうして柱の下を見ると、何かが挟まっているようだった。
(なんでしょうか?)
屈んで床と柱との接地面との間にシートのような物があった。
(もしかして…!)
バラバラだった情報が一気に組み上がったたきなは他の棚の柱の下も調べていく。結果…どれ一つとして
「…そういうことですか」
確信を得た。
しかし…今の段階ではどうしようもないということも、また理解した。
(
心の中で毒づきながらこれまでのことを脳内保存したたきなは戻って鞄を持って帰路につく。今週末までには残りの在庫を4割くらいにまで減らすと決心して。
「……ん?」
クルミは気付かない。
知識欲はあれど、他人に関心が薄いがゆえに。
隅の方に置いてあっためぐみの鞄が一つないことに。
所変わって、めぐみは一人スマホをいじっていた。
「…あ、ミスった」
‟そこんとこよろしく”と続きを打つつもりが送信ボタンを押してしまい、すぐに既読がついたために取り消しすらできなくなってしまった。
「…まいっか。どうせこんな場所、バレないよね」
高所特有の吹き荒れる風が後ろに結った髪を振り回す。
そう、彼女はあの旧電波塔…その天辺にいた。
壁も、ガラスも、フェンスさえもない真の屋上に、いつも通りのリコリスの制服に袖を通している
「…現状一番高いところとはいっても、足場は不安定なんだよね…」
それでも、ここが一番いい。
「さて、任務を遂行しましょうか」
そういって、担いでいたゴルフバッグを開きながら楠木司令からの返事を思い出す。
『……そうか。お前が全て代行するということだな?』
『…お前もリコリスだ。次の3つの任務を与える』
『どの任務も同日だ。うまくやれ』
なんの感情すら感じない言葉によって命令された内容は、
一.指定した会社の本社帰りのスパイを殺せ
二.指定された場所で勃発する可能性のあるヤクザの抗争を事前に鎮めろ
三.例の港から出港途中の船を沈めろ
「…乗り気しないなぁ」
どの命令にも後ろに“only death”が付いているのだ、やる気なんて起きるはずもない。
それでも過去の
そうして中から取り出したのは、
「あると嬉しい、ロケットランチャ~」
これがあってこそ!であることよ。
拾ったものをなんとなく使ってみたら意外と性能が良かったので整備しながらずっと使い続けている一基である。ゴルフボールが入っている場所のジッパーを開けて中から
「まずは…2つ目の方から、だね」
スマホで調べるとその場所はここから大体10km先の場所らしい…ロケランが許されるくらいだからラジアータ君は結構激しめな感じを想定しているんだろうか。
左の肩にロケランの筒を乗せながらお気に入りのスコープを持って先を見る。倍率低めにして見える全景から徐々に対象を絞っていく。
「…あ、いた。もう片方もだ。数は……合わせて30人くらい?それは激しめ判定にするかも…」
…そうしてより倍率を上げて細かいところを見る。拳銃に限らずにライフルや爆弾(?)の類を持っている感じがする。
「ここからだと…」
と言いながらスコープから目を外して目標地点の方の空を見つめる。顔も少しずつ上がって行って、止まる。
「…そこ、かな」
肩に乗せていたロケランを両腕で構えて、射角は高めにしながら引き金に指をかける。
…ッ
引き金を引く。
腕に爆発の振動が響き、両腕にロケランの両端からの衝撃が迸る。空気を突き進む音が響く中、夜空に一本の黒い線が目標に向かって進み続ける。
見えなくなる頃合いに、上に向けて降したランチャーの口に新しい弾頭を仕込む。
「さて…次っと」
次は三つ目の港…要は海の方向を向いてまた
その時に指令からもらった写真とか画像を思い起こしながら見回す。
「…あれ、かな?」
少し目に留まった変に小汚い船が一隻。スマホをいじって
「ビンゴ」
改めてロケランとなったそいつを右側に担いで8㎞先の
2度目の引き金を引くのは早かった。再びの衝撃と共にロケットは空を駆ける。
「さて、最後だね」
ランチャーを床に寝かせて自分の立っている床に腰を下ろす。その横側に前から置いていたスナイパーライフルに腹ばいになりながらグリップを握りこんで改めて確認する。
「…マガジン良し…倍率良し…
弾丸は、ライフル用に用意した
「さて、そろそろ時間だと思うけどなぁ」
そうしてお気に入りとは別の備え付けのスコープを除いて銃の到達先を見る。そうすると指令に見せられた顔と同じ人間がもうすぐ自動ドアから出てこようとしていた。
「おぉ、ジャストミートってやつかな?」
グリップをもう一度…小指からゆっくりと馴染ませるように握りこむ。
「面倒が省けることは良いこと、よね」
タイミングを待つ。カメラから外れるのを、一瞬でも動きを止めるのを、遠くない未来をじっと待つ。
一瞬、脚を止めるように姿勢を正す姿を見る。
カチッ
一瞬のマズルフラッシュに照らされて、一発の凶弾は飛んでいく。
こめかみに、コンクリートに赤い花が咲くと同時に…二つの大きな花火が爆発の音と共に夜空を照らす。
東京一の華街。
そこは良く言えば華々しく活気に溢れている世界で、悪く言えば昏い欲望が渦巻いてい世界でもある。その二つの世界がぐちゃぐちゃに練り混ぜられた最も混沌とした一つの街である。
そんな目を潰しそうなネオン色の激しい夜景の中に酒と煙草と香水の香りが漂うような場所から少し外れた、とある空ビルの中。
「…兄貴、まだなのか?」
「まだだ…あともう少しだ」
暗闇の中にスマホの画面が爛々と光る。
残り時間まで、あと少し。
———こんな事になるとは、いつかは思っていた…ここまで早くなるとは思っていなかったが。
「…
『はい、頭!』
変に思い出に浸ろうと思った所で
「よし、もうそろそろだ」
頭がそう言うと、奥からゾロゾロと似合いもしない派手な服を下手糞に気崩した姿のした集団が、クチャクチャと口の中で遊びながらヘラヘラとしゃべりながら入ってくる。
人数はうちと同じとはいえ、ライフルやC4を裸で出してるようじゃウチとは似ても似つかない汚ねぇ連中だ…
「よう来たのぉチンピラ風情が、シャブに踊らされてでも来たんか?」
「ハ!!
「!!!」
よう言ってくれよるのぉ!と飛び出そうとする俺の肩を掴む。
その手の主である頭の眼を見る。
「他所の
「そっちさんは小さいもんでなぁ…よぉ見えんとですわぁ!」
「ごちゃつきよって…!」
口を開けば神経を逆撫でする様な物言いにそろそろ火を吹かせたい所だが、
「まぁ待て。ウチが小さい言うんやったら、お前ら
「
「知らんことで
ウチと奴さんとがやいのやいのと言い合いを始める。
この煽り合いもまた喧嘩…どっちが先に堪忍袋の緒を切るか、どっちが先に
そうして言葉の鍔迫り合いが始まって数分だ経つ。
ついに、ウチの舎弟の一言が引き金を引かせた。
「あぁあぁ言いよったなぁ!!お前は絶対落とし前付けさせたるわ!」
向けろ!!という声でいよいよ互いが銃口を向けあって、
「
「やるぞお前ら!!」
「撃て!!」
引き金を引く。
スイッチを押して投げる。
直後、何かが落ち
肉が熔けそうな熱さと、眼を潰しかねない光と、脳内に響く轟音と、体を吹き飛ばす衝撃が、同時にやってきた。
それがその場にいた男達の、最期の記憶である。
とある湾岸にほど近い海上にて、二人の男が船の中で向かい合っていた。
片方は程よくくつろいだ姿でソファに座っていて、もう片方は足を汲んでサングラスの向こうから見える瞳で神を見つめていた。
そうして時間が過ぎて、ドアの向こうからスーツの男が耳打ちをした後に前に目をやる。
「…契約通り、ですね」
「えぇ、より良いものをお客様の懐が寒くならないようにお渡しするのが信条ですから」
「分かっています。貴方の所の商品は、それはとても優良なものであるということは存じておりますから」
「ですから私も…となった次第です」
「それは何よりです」
お互いに尖り気の一つもない笑顔を交換する。
「明日には報酬を振り込まれますので」
「それはそれは…今後ともご贔屓にお願いいたしますね」
此方が手を出せば、無言だがにこやかにして握手に応じた。
ここで行われていたのは、なんてことないただの商売取引だ。
ただ渡したブツが“高値で売れる粉”ってだけだ。
徐々に質を悪く、量を多く、単価をそのままにしておけば、純粋に利益が上がるんだから楽な仕事だ。
‟工作”は大事、ということだ。
この調子で少しずつ売った金を洗って転がしていけば…いずれ!
「…では、失礼させていただきますね」
「送りましょう」
外に出るための脚を踊らさないように必死に落ち着きながら歩こうと立ち上がったその時、床がわずかに揺れる。
大きな波でも来たか?
もう一度立ち上がろうとして
…あれ、息ができない。昏い。寒い。赤い…青い?
沈んでいく。
そうして見えたものは
(俺の、金)
そうして文字通り、闇の取引は海の底に沈んだ。
とある社内にて。
「任務完了。モノは手に入れた」
『了解。余裕を持って帰投しろ』
「承知した。紅茶を淹れるような気分で帰るとするよ」
『それもいいが、くれぐれも気は抜くなよ』
「もちろん」
軽い小話を最後に通話を切ってポケットの中に入れる。
ようやく、この場所での大一番は終わった。目標物だった機密データをまさか民間経由で手に入れなければならないことになるとは思わなかったが…こちらもプロの端くれ、しっかりと遂行した。
副次的に自分のパイプも拡がったのだから、今後の活動にも十全に生かせることだろう。
軽い気分…とは言っても、この後にポスト引継ぎの手続きを完了させないといけない。やることが多いが…明確な分、やりやすい。
「さて…今の時間は」
建物の角を曲がりながら時計を確認しようとする。
そのために足を止めようとしたのが、悪かったのかもしれない。
ドチュン
ドサッ…
男は両方のこめかみから血を流しながら倒れる。
痛みも苦しみも…何もかも感じることなく、とある国のスパイは死んだ。
二つの大きな花火と立ちのぼる煙が、東京の夜空を彩る。
耳には下から忙しなくタイヤがアスファルトに切りつけられる音や、遠くから僅かに聞こえるサイレンの音が入ってくる。
意識はすでにそちらの方ではなく、もう片方の耳にあるインカムに集中している。
それに手を添えて通信を始めると、向こうからの応答は早かった。
『なんだ』
「…任務完了しました。確認、お願いします」
『了解した』
あまりにも簡素な指令の言葉を最後に向こうから切られた。
此方も電源をスリープ状態に戻す。
そして瞬きをしてもう一度目の前の景色を見る。そこは東京の夜空があり、二つの大きな花火と何本もの煙が立ちのぼる様子に思わず目を引いてしまう。
あぁ…多分…これだけで50人は殺した。
最近流行っているアニメから引用するなら…まるで、
「ろうそくみたいできれいだね」
人が死ぬ時に、光るものがあるか。
目の前の、
「青い」
後ろにゆっくりと倒れこんで、横向きに寝転がる。
大きな深呼吸を一つ、二つと繰り返す。
「気持ち悪い」
腹からせり上がってきたものを、私は塞き止めなかった。
いつもの様に酸味を舌に感じながら、私の一日を終わらせる。
更新遅れて本当に申し訳ありません!言い訳ですがものすごく忙しかったんです!
…ほんとにごめんなさい。今週からまた気合を入れ直します!
あとあの…すごく…赤いです(評価)
白がまだ残っている分まだ心に余裕がありますが…期待に添えてるかなぁ?
Twitter見に行ったらちさたきが結婚してたんだが…?
ハワイに行ったのはもしかして…
…は!?
次こそはオチです。
(現在進行形で製作中です…ユルシテ)
活動報告にも挙げましたが、1話とここにアンケートはっ付けますんでぜひご回答くださいな
今後の展開にちょっと関わってますんで。
オリ主は前世で何歳の誕生日で死んだと思う?
-
A歳:トラックに轢かれて
-
1B歳:いじめの末に
-
2C歳:就活失敗による絶望の末に
-
3D歳:仕事の過労によって
-
お前の勝手にせぇ!(ノブ風味)