フランと師匠
B市に出現した巨大生物。この世界において、巨大怪獣さえも“怪人”と呼称される。
口から冷凍ガスを放出し、B市を瞬く間に氷河期へと変えていく。両腕には羽が付いているが、空を飛ばずに羽ばたいてるだけだ。冷気が翼によって広げられて、B市全域を覆い尽くして行く。
A市でもある強大な怪人が暴れて大変だというのに、B市は氷河期化して大パニックになる。出動したA級ヒーロー達も冷凍ガスに苦戦を強いられていた。
『災害レベル・竜:ペギラ』
ペギラ『コオオオォォォオオオォッ!!』
ペギラは冷凍ガスを放出し続ける。B市は機能が麻痺して、大パニックになっていく。
しかし、ペギラの両足が突然切断される。A級ヒーロー達はその光景を見て、驚愕していた。そして、巨大な剣を持った白いロングスカートに軽装を装備した、一人の少女が現れた。
少女「師匠!行こう!」
師匠『ああっ!見せつけてやろうぜ!』
少女は師匠と呼んだ剣の柄を掴み、ペギラに向かって走る。冷凍ガスを全身に浴びるが、少女は構わずに突き進む。
師匠『フラン!寒くないか!?』
フラン「平気!」
少女の名はフラン。彼女はB市を氷河期に変え、その上拡大し続けるであろうペギラの冷凍ガスを浴びても肉体は凍らず、平然としている。
フラン&師匠「『フレイムソード』!!」
師匠は炎に包み込まれたかと思えば、フランが炎を纏った師匠でペギラの胴体を斬る。
ペギラ『コオオオオォォォッ!!?』
ペギラは翼をはためかせて空を飛ぼうとする。冷気をまき散らしながら空へ飛び出ち始めるが、フランは逃走を許さない。
フラン「『ドラゴンファング』っ!!」
フランはペギラの頭部に師匠の刀身を突き刺し、更にライフル弾のようにその頭部を貫通した。その時、師匠の刀身にペギラの血液が付着しており、其処から師匠がペギラの力を取り込んでいく。
師匠『能力吸収!』
そして、師匠の剣に新たな力が流れ込んでくる。冷凍怪獣の能力を得たお陰で、冷蔵庫が無くとも食品を冷やせる上に、攻撃に使えば相手を弱らせる事にも繋がる。
フラン「師匠!見て!空を飛べる!」
フランと師匠は力を共有している。そのお陰で怪人の得た肉体能力を、フランも使用する事が出来る。フランはペギラの翼で空を飛んだ。とはいえ元はペンギンの怪人の為か、空中を浮遊する程度しかない。それでも空を飛べるのは強い武器だ。
師匠『ああっ!此れなら怪人が現れても上手く駆け付けられるな!』
こうして、B市を後にした二人。A級ヒーロー達が声を掛ける前に、彼等はある人の向かったA市に向かって空を飛んだ。フランが翼をはためかせて、空を飛んだのだ。
A市の壊滅した場所に降り立つ二人。其処に居た黄色いスーツに白いマントを身に着けたハゲた男が、その場で落ち込んでいた。彼の隣には、そんな落ち込む彼の姿を見て呆然としている少女の姿があった。少女は、ハゲたその男に助けられたのだ。
フラン「サイタマ」
サイタマ「おう。そっちも終わったか」
フラン「その子、安全な所に」
サイタマ「おう」
二人は少女を避難場所へ運び出す。少女は避難場所に送ってもらい、少女の知り合いと再会した後に二人に感謝を告げた。そして、二人は帰路に着く。彼等が暮らしているのは、Z市のゴーストタウン化したアパートだ。ゴーストタウン化したものの、ライフラインは通っている。家賃自体は支払う事は無い為、無料の部屋で三人で暮らしている。
サイタマ「ほら、これお前等が喜びそうな奴」
サイタマが持って来た物は、とある怪人の脳味噌だ。A市て暴れていた怪人をサイタマが倒したのだが、その際にサイタマは二人の為に脳味噌を土産として持ち帰っていたのだ。
フラン「ん。ありがとう」
師匠『お前が倒した怪人の脳味噌だよな?どれどれ?』
サイタマ「フランと師匠は倒した怪人の力を取り込めるだろ?なら、これ欲しいかなと思ってな」
サイタマが渡した脳味噌をフランに渡すと、フランは脳味噌を師匠で突き刺した。
師匠『能力吸収!名前はワクチンマンで……うっ?!うおおおおおおいっ!?マジか!?こりゃ凄いぜ!!地球の意志によって生まれた怪人を倒したのかお前!?地球の力その物だぜ此奴!?』
フラン「おおおおおおっ!!凄い!!力が溢れて来る!!」
サイタマ「そんなにか?」
サイタマにとっては強いかどうかも分からない相手。しかし二人にとっては、嘗てない程の強敵であった。ペギラを含めた、怪獣の如き巨大怪人達とは比較にならない力だ。
フラン「師匠!私、この世界に転生して良かった!師匠と同じで、」
師匠『フラン………俺も、お前に出会えて良かったぜ』
フランの過去。それは、3年前に遡る。
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少女はこの世界の出身ではない。元々はサラリーマンであり、色んな作品に目を通してきただけの、ただの一般人であった。
どのように死んだのかは今となっては思い出せない。思い出さなくても良いかもしれない。
しかし、転生した後は、最悪であった。
黒猫の耳、黒猫の尻尾を生やす、幼い少女となった。それは、少女が前世て目を通していた『転生したら剣でした』のヒロイン『フラン』であった。彼は、フランとして転生していたのである。
しかし、転生した先ではとんでもない組織の研究成果によって産まれたが、その能力は後から産まれた実験体と比べて最低レベル。それでも強さを無理矢理上げようと実験を繰り返されていた。実験と言っても、実験によって産まれた『新人類』と呼ばれる怪人達と無理矢理戦わされ、殺されずに痛めつけられる生地獄の日々が2年も続いた。。
そしてサイタマと出会う一年前、生みの親である『ジーナス博士』から“役立たず”として棄てられた。進化の家から追い出されたフランは彷徨った。白装束の実験体用の衣服しか着てないが、逃げる内に服はボロボロになっていった。肝心な所は見えてないが、見えるのは時間の問題だ。
とはいえ、今は夏で猛暑日にも関わらず、全く暑いとは思わない。フランの体質なのか、猛暑日の中でも平気であった。
フランは街を彷徨っていた。彷徨っていたフランを待っていたのは、一本の剣であった。
剣は空から飛来した後、空腹で倒れるフランの前に降り立って話しかける。
師匠『あー其処のお嬢さん?大丈夫か?』
フラン(えっ?此の声って、師匠!?何でこの世界に!?)
師匠(あれ?この子、もしかして………いやまさかな?)
フランは体を起こして、座り込んだまま剣を見た。
フラン「………もしかして、師匠?」
師匠『えっ?それって俺の事?そりゃ俺は、『転生したら剣でした』の“師匠”に………えっ?お前、まさか!?フランか!?』
フラン「あっ………私、転剣のフランになったの」
師匠『えっ』
フラン「えっ」
フラン&師匠『「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?」』
二人はその場で叫んだ。
そして、落ち着いた後に二人は近くの河原で座って話をしていた。
師匠『そっかぁ。お前も俺と同じ転生者なんだな』
フラン「ん。でも私、進化の家で産まれた。実験の日々は辛かった…………同じ実験体に虐められて、博士からは何度も解剖されて………棄てられた」
師匠『そっかぁ。俺も“師匠”に転生してから、ずっと色々なモンスター倒してきたんだ。でも、一人で旅してきたから寂しくてな……もしフランに出会えたらなぁなんて彷徨ってたら………まさかこうして出会うなんて思わなかったぜ』
フラン「でも、師匠に会えた。フランに転生した意味あった。此れからも、“師匠”って呼んで良い?」
師匠『勿論だ。俺の力、存分に使ってくれ!』
フラン「師匠。この世界、多分転剣の世界じゃない。師匠の力も何処か変わってるかも。でも、師匠が得た力、私に共有出来る?」
師匠『出来ると思うぞ。俺を装備してくれ。その部分は同じ筈だ』
フラン「ん。分かった」
フランは師匠の柄を握り締める。すると、フランは自らの肉体に何かが流れ込んで来るのを感じた。
その時に、フランの脳内に様々な怪人の能力が流れ込んで来る。フランが進化の家で長年欲しがっていた力だ。
師匠『この世界のモンスターは“怪人”で統一されてるんだ。例え巨大な怪獣だろうとな』
フラン「怪人……じゃあ、私も師匠も、怪人になる?」
師匠『ただ、この世界に存在するある組織には、怪人のような特殊な体質又は見た目を持ちながらも、人々を助ける組織があるんだ。倒した怪人の記憶から知ったけどな」
フラン「組織………冒険者みたいな感じかな?」
師匠『そうだな。だが、どうやって入るか分からないし、取り敢えず今は、生活出来る場所を探そう』
フラン「ん」
こうして二人は出会う。各地で怪人やモンスターと闘いながら進む内に、出会ったのだ。運命の男と。
それは、二人がQ市に出現したとある巨大植物に苦戦していた時だ。
フラン「うっ……ゴホッ!ゴホッ!」
師匠『花粉が厄介だな!フランの環境適応能力でも、この花粉だけはどうしようもないのか!?』
フラン「大丈夫……ゲホッ!ゴホッ!」
それは、地面に根を生やす巨大植物『マンモスフラワー』である事を二人は知らない。マンモスフラワーの撒き散らす花粉を吸い、師匠は何ともないがフランは花粉の毒で苦しんでいた。
そして、フランが膝を付いた、その時だった。
ドパアァァァァンッ!!
フラン&師匠「『ッ!?』」
突然、マンモスフラワーがへし折れたのだ。そして、二人の前に一人の男が降り立つ。
サイタマ「なんかよく分からん奴だったな」
マンモスフラワーが崩れ落ちて花粉も減っていくが、それでも空気中には大量の花粉が飛び交っている。しかし、男は平然としており、倒したマンモスフラワーを見つめていた。
サイタマ「っ?大丈夫か?」
フラン「………ん。大丈夫」
師匠『この男………強いぞ!フラン、今は闘わない方が良い!』
フラン「分かった」
サイタマ「えっ?何だ今の声」
師匠&フラン『「あっ」』
思わぬミスをした二人。
サイタマ「………俺、サイタマ。趣味でヒーロー活動してるんだけど」
フラン「………フラン。此方は師匠。師匠が名前」
師匠『………俺は師匠だ。フランの剣だ』
サイタマ「やっぱ喋るんだ。変わってるな」
師匠『まあな。それよりフラン。今後も怪人を倒して行くとして、何処で暮らしていこうか?』
フラン「あっ。そう、住む所無い」
サイタマ「なら、俺の住んでる来るか?俺の住むアパート、ライフライン使い放題で家賃タダだから」
フラン「家賃無料……行く!!」
師匠『そりゃ良いや。』
此れが、最強のヒーローサイタマと、フランと師匠のコンビの、初めての出会いであった。
フラン「あっ。師匠、この花を」
師匠『っとそうだったな』
マンモスフラワーに突き刺し、マンモスフラワーの能力を会得した師匠。此れで怪人の血液からでも能力を会得出来るようになった。
そして、サイタマの案内でZ市にやって来た二人。ゴーストタウンとなった無人街にあるアパートに到着した二人は、漸く落ち着ける部屋が出来て、其処で暫く休息を取った。
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それから一年後。フランと師匠はF市のショッピングモールへ買い物に来ていた。師匠は布で包み込んでおり、それを背中に背負っている。周りから見れば、ギターか何かの楽器を背負う少女にしか見えない。但し、猫耳や尻尾を隠していない為、かなり目立っている。とはいえ、悪い目線ではない。大半はフランを知る者達で、中には怪人から助けてもらった者達も居るのだ。
食べ物を得る為のお金を稼ぐ方法は、悪の組織を潰してお金を回収。かなりお金を溜め込んでおり、一年半は生きていける貯えがあった。その時に後から駆け付けたヒーロー達から勧誘を受けたが、まだ決められない為に断って退散した。
それと、フランには完璧な環境適応能力がある事が判明した。季節や水中、例え空気の薄い環境だろうと普通に生きる事が出来る。そんな完全環境適応能力だ。
フラン「ヒーローかぁ………やっぱり勧誘受けるね」
師匠『ヒーロー協会。3年前にアゴーニっていうアゴの割れた男が立てた組織で、沢山のヒーローが所属してるって話だな。ヒーロー達の給料は、ヒーロー協会への募金が主な収入源らしいな。俺達は散々勧誘断ってきたけど、そろそろ悪の組織から頂戴したお金も底を尽き掛けてるし、所属する事も検討しなくちゃな』
フラン「サイタマは、ヒーロー協会に入ってるかな?」
師匠『多分属してないだろうな。趣味でヒーローしてるって言ってたし』
フランは買い物カゴに鶏肉を容れると、レジに向かって歩く。猫である為か、肉食なのだ。野菜は体が受け付けず、肉と魚という肉食の体質となった。
オバサン「あらフランちゃん。今日も買い物?」
フラン「ん。お金」
オバサン「はいよ。468円ね」
フランは財布を取り出し、500円玉と68円を取り出して支払いを済ませる。お釣りを受け取った後、フランは店を出た。その時だった。
突如として突風が吹き荒れて、瓦礫や小石が風に乗って飛んできた。フランは片手で顔を覆うが、瓦礫が飛んでくる。車も飛んできて、フランに迫りくる。
師匠『硬化!』
師匠とフランは全身を硬化させて、全身に降り掛かる瓦礫が当たってもびくともしなくなる。しかし、瓦礫に埋もれていく二人であった。
フランが瓦礫を退かした後に空を見上げる。空に居たのは、赤い嘴に白い羽毛を全身に生やす巨大な怪鳥であった。
師匠『よし。行くか、フラン』
フラン「ん!」
フランは布を解いて、師匠を晒した。そして、空を飛んでいく怪鳥を追って、走り出すのだった。
『災害レベル・鬼:ラルゲユウス』
ED:『それが大事(大事MANブラザーズバンド)』