フランの横に振り上げた師匠を、サイタマはお辞儀をしながら避ける。フランは両手に翼を生やして羽ばたくと、空中で旋回してサイタマの元を向いた。そして、今度は空中で回転しながらアースタイタンの脚力でサイタマを蹴ろうとするが、体を起こしたサイタマは後ろへ体を傾けて避ける。しかし、攻撃するのはフランだけではない。
師匠『アースショット!』
師匠が光球を出して弾丸のように撃ち出す。サイタマは光球を避けると、光球は通り過ぎた先の崖に直撃して大爆発を起こした。崖は消滅し、その先の森も数百メートル規模で消滅した。
フラン「『六連斬撃』!」
フランはサイタマに向かって師匠を振り下ろす。その瞬間、サイタマに向かって6つに分かれた斬撃が空から迫る。
サイタマは避けるが、マントの一部が斬れて地面に落ちる。そして、マントの切れ端はフランの6つの斬撃によって消滅した。6つの斬撃は地面に同時に直撃し、数十メートルもの6つの傷跡を地面に作る。
サイタマは上空へ跳んだが、フランに代わって師匠はその隙を逃さなかった。
師匠『『カイゲルビーム』!』
師匠が刀身から電撃状の光線を放つが、サイタマは空中にも関わらず回避した。回避されて岩石に当たる。岩石は当たった瞬間に秒を数える間もなく液状に溶けていき、溶けた際に蒸発音も響く。溶けた上に気化しているのだ。
サイタマ「おい、服をまた溶かす気かよ」
師匠『マジかよ~空中で避けんのか』
フラン「まだ、まだ!」
フランは自身の周りに光球を出現させ、空中に浮かばせた。数を増やしていき、まるで星空を思わせる無数の光球が、フランを取り囲んでいた。そして、その光球を弾丸のように放つ、のではなく細長い光線を光球から放った。
サイタマは光線を避ける。服が焼けてしまうからだ。更にフランが光球から放つ光線は数を増していき、軈てサイタマのマントに複数の穴を開け始める。
しかし、光線はサイタマ本人に当たらない。当たっても意味は無いし効かないにも関わらず、サイタマは避けていた。服が焼けるから受けたくないだけなのだが、フランは「この程度の攻撃は容易く躱せる」というのがサイタマの考えであると勘違いした。師匠はサイタマが攻撃を避ける理由を何となく理解していた。
フラン「こんな速さじゃ避けられる!もっと、もっと早く動く!」
師匠『フラン!無理はするな!』
フラン「無理は分かってる!でもやらなきゃ、サイタマに勝てない!」
師匠『フラン……何故そこまで!』
フラン「勝てないなんて分かってる!でも、勝つ!!私は強くなるんだ!!そして、馬鹿にしてきた進化の家の連中を見返してやる!!」
フランは師匠の柄を口に咥え、四足となる。両手を地面に付け、脚を猫の後ろ脚のような見た目をした爪先立ちとなる。この構えは、フランの本当の戦闘スタイルではないが、最近利用したネットとやらで、この戦闘スタイルを持つヒーローを知ったのだ。S級ヒーロー『番犬マン』だ。彼は獣のような四足戦闘スタイルを主に扱っており、可愛い見た目とは裏腹に圧倒的な戦闘力を持ち合わせていた。動画で見た時、フランは師匠と相談して、この戦法も取り入れる事にした。Q市の守護神たる番犬マンの戦闘方法は、猫の特性を持つフランにも出来る筈なのだから。
フランは四肢を巧みに動かして、サイタマに攻める。フランはただで突貫するような馬鹿ではない。四足のまま反復横跳びを行い、無数の分身を生み出した。
師匠『おおっ!フラン、いつの間にかこんな技を!?』
怪人を取り込んで来たが、少なくとも此処まで速い怪人はまだ取り込んでない。もしかすると、
サイタマ「やるな。強くなるよ、フラン」
サイタマも、フランから将来強くなる事を感じ取った。師匠込みもあるだろうが、フラン自身も成長して来ている。
フランはサイタマの背後に回り込み、口に咥えた師匠を振り下ろす。サイタマは横へ避ける。サイタマが避けた先の地面が深く抉れた。
フラン「『アイシクルトルネイド』!」
フランは口から冷凍ガスを放ちながら、その場で回転した。回転により生まれた竜巻はフランを囲むようにして出来た後に、冷凍ガスを取り込んで水色に輝く。そして、サイタマに抱き着いて冷凍竜巻をサイタマに食らわせた。しかし、サイタマの服が若干凍るだけで、サイタマ自身は凍らず、平然としている。
サイタマ「なんだ。服が凍ってるな」
フラン「っ!やっぱり強い!でも、まだやめない!!」
フランは両足に力を入れて、特に腸腰筋に力を入れた後に跳んだ。
フラン「強くなる!!強くなって!!進化の家を、見返してやる!!彼奴等の顔を、ぶん殴ってやる!!」
師匠『フラン………分かった!俺もお前に協力する!』
師匠(話を聞いた時は、俺もゾッとしたな………進化の家って、人類の進化の為に其処までやんのかよ………)
――――――――――――――――――――――――
フランが師匠と出会う前の、2年前の話。
フラン「ぎぃああああぁぁぁあぃいいいっ!!!!!」
フランは絶叫を上げていた。
フランは手術台に縛られて動けなくされ、足をノコギリで斬られていたのだ。更に、神経に至ってはハサミで斬られる等、あまりにも酷い激痛がフランを襲う。
更に、前歯をドリルで歯茎ごと抜き取る。しかし、その前歯も歯茎も瞬く間に再生する。
その様子を見る眼鏡を掛けて白衣を着る男。そして、彼と同じ顔に髪型、体格を持つ黒スーツの男が、白衣の男に話し掛けてきた。
???「どうだ?被検体の能力値に変動は?」
『進化の家創設者:ジーナス博士』
???「はい。肉体の再生能力は他の被検体と比べて高く、傷も瞬く間に再生しました。また、欠損した肉体も再生もしくは結合速度も尋常ではありません」
『進化の家クローン体:クローン04号』
ジーナス「力は弱い癖に再生能力は高いのだな。次は環境適応能力の実験だ」
ある時は、溶鉱炉の中に突っ込まれた。
フラン「ハァ………ハァ………」
鎖で括り付けられ、何度も何度も溶鉱炉の中の溶けた鉄の中で焼かれる筈だが、フランの肉体には何の異常も無かった。
次に逆さ吊りで水槽の中にある酸の中へ突っ込まれた。全身が焼けてしまうが、すぐに再生していく。しかし、再生した所でまた焼けて激痛が襲う。しかし、すぐに適応してしまった。
ジーナス「ふん。適応能力も良い上に再生能力は良いな。だが所詮それだけの使い物にならんクズか。力が無くては駒にもならん」
ある時は、実験により産まれた新人類達の虐めに遭う。
フラン「動かない……!」
???「ケーケケケッ!そのまま埋めてろよグランドドラゴン!」
『災害レベル・鬼:カマキュリー』
グランドドラゴン「暴れられるのも面倒だしな。カマキュリー、今日は新たな技を試すんだろ?」
『災害レベル・虎:グランドドラゴン』
モグラ型の怪人グランドドラゴンによって、床に首だけになる状態で埋められたフラン。必死に抵抗するが、逃げられない。フランの目の前に人型のカマキリ怪人カマキュリーが立つ。
カマキュリー「おっと足が滑ったな」
カマキュリーが足でフランの頬を蹴る。
???「ハハハハハッ!正に手も足も出ないとはこの事だな!」
『災害レベル・鬼:獣王』
獣王「では先ずは、両目を潰す!」
ライオンの頭部を持つ屈強な巨漢の体を持つ怪人が、二本の指に生える鋭い爪で、フランの両目を突き刺した。
フラン「がああああっ!!」
獣王「おい誰が叫べと言った!?」
フラン「ぎゃああああああああああっ!!」
獣王がフランの潰した両目の部分を、爪で回して更に血肉をかき混ぜる。その激痛がフランを襲う。
カマキュリー「おい!うるせぇぞ!」
カマキュリーがフランの口に、自らの鎌の先端を突き刺した。声を出せない、否喋れないようにしたのだ。
そして、拷問のような時間が過ぎていく。
グランドドラゴン「おい!お前が汚したんだからな!」
カマキュリー「自分で掃除しとけよな!」
怪人達『ギャハハハハハハハハハハハッ!!』
怪人達が去っていく。血塗れとなり、肉片が飛び散る床の上に寝転がるフラン。傷は全て治っているが、立ち上がる気力も起きなくなった。
それが毎日続く。そして、2年が経過した頃、ジーナスによって屋上から蹴落とされた。
ジーナス「お前はもう不要だ」
殺す事は出来なかった為、その場で廃棄した。フランは地面に落とされて顔の半分を潰れてしまうが、すぐに再生した。
フラン(逃げよう………此処に居たくない……)
地獄の日々が終わる。もう戻りなくない。
フランは走り続けた。体力は無いが、それでもよろけながら走り続ける。そして、後に彼女は“師匠”に転生した存在と出会いを果たすのだった。
――――――――――――――――――――――――
フランは口に咥えた師匠を振り下ろし、サイタマを攻撃する。
サイタマ「おっ」
フラン「喰らええええええええっ!!!」
フランは師匠の刀身に地球のエネルギーを強く込めており、今ならば複数の街だけでなく、大陸を一刀両断出来るだろう。
サイタマ「はい、俺の勝ち」
しかし、サイタマはいつの間にか背後に回っており、フランの頬へ指を当てる。
フラン「っ!!まだまだぁ!!」
フランは口に咥えた師匠を振る。地面に向けなくて良かった威力が空中に放たれ、空の雲が左右に別れた。
尚、三人は知る由もないが、三人の様子を一機のドローンが見下ろしていた。ドローンはジェットを噴射して空中に浮いており、搭載されたカメラで闘いの一部始終を記録していた。
???『騒音の元へドローンを差し向けたが、あれがヒーロー協会が例のサイボーグに並んで注目している、黒猫の少女か。成る程、ヒーロー協会が注目する筈だ。エネルギー量も計り知れん。だが、あの男は何者だ?協会に問いただしてみるか』
そして、見られてる事を知らない三人の闘いは暫く続いた。
フラン「『ヘヴィースラッシュ』!」
フランは重い一撃を込めた斬撃を放つ。シンプル故に最強の一撃。フランの諦めない意志に、サイタマは答える。振り下ろされる一秒間で、サイタマはフランと師匠の覚悟に応えた。
サイタマ「なら、俺も本気を出してやるぜ。お前は強くなる。だから、見ておけよ」
サイタマは、切り札を出す。面倒な相手や、強いと見た相手にしか使わない、自身の取っておき。
サイタマ「必殺マジシリーズ………『マジ殴り』」
そして、サイタマは本気で殴る。
本気で殴られる、事は無かった。目の前で寸止めされて、フランは空中で静止し、師匠の刀身は粉々に打ち砕かれた。
――――――――――――――――――――――――
フランは、刀身が砕けた師匠と共に、地面へ仰向けになっていた。
フラン「ううっ……ぐずっ………ぐやじい!!ざいだまにがでながっだぁ!!」
師匠『フラン………俺もぐやじいよ!!』
フランと師匠は泣いた。フランにとって、進化の家での凌辱の日々と同じ位のショックであった。師匠も、初めて経験した悔しい敗北に、泣くしか出来なかった。
そんな二人にサイタマは、しゃがみながら声を掛ける。
サイタマ「………腹減った。飯だ飯。なんか喰いたいか?」
フラン「………おにぐ!!」
サイタマ「おう」
フラン「づぎはまげない!!じじょうどぜっだいにがっでやる!!がっでやるんだがらあああ!!」
サイタマ「ああっ。俺も何時だって、手合わせしてやるよ」
フランと師匠は負けた。まだ二人は泣いていた。そんな二人に、サイタマは敢えてこの言葉を投げ掛ける。
サイタマ「泣いても良いけどよ。そんなに悔しいなら、もっと強くなれよ」
その言葉が、フランと師匠の決意を強くした。
フラン&師匠「『づよぐなるよおおおおお!!!/あだりまえだああ!!!』」
そして、フランは師匠を背負って立ち上がる。師匠は刀身が再生しており、徐々に修復していく。とはいえ、再生能力の速度アップと向上は今後の課題だ。今後の敵も強くなる事を考えると、再生能力は必須だ。
サイタマ「どんな肉が喰いたい?」
フラン「ステーキ!」
サイタマ「おう、レストランに行こうぜ」
師匠『何時かフランが、野菜も食べられる体になれたら良いな』
そして、上空でドローン越しの映像を見ていた男は、闘いを途中からとはいえ録画していた。
???『あのハゲマントに黒猫の剣士……ヒーロー協会所属でないのが惜しいな。俺からも接触を図るか?ヒーロー協会を信用してはいないが、マトモな面々も居るのは確かだ。シッチやイサムには報告を入れておくが、監視対象に加えておくか』
『S級ヒーロー9位:メタルナイト/ボフォイ』
尚、当の監視対象に入った本人達はというと。
フラン「美味しいいいぃぃぃー!!!!」
師匠『なんじゃこりゃあ!?なんだこのステーキ!?ほぼ丸太じゃあねえか!!』
サイタマ「無理………」
フランがサイタマにある意味でリベンジを果たしていた。ファミレスで行われていた大食い勝負で、フランがサイタマとステーキの大食い対決をしていたが、フランが勝利したのである。
因みに、大食い成功者は10万円もの賞金が当たり、失敗者ㇵ1万円の罰金があった。
オリジナル技
『六連斬撃』
使用者:フラン
剣を振り下ろして放つ6つの斬撃。一度の攻撃で6発も攻撃を同時に行っている。謂わば釘パンチの斬撃バージョン。
『カイゲルビーム』
使用者:フラン&師匠
剣又はフランの指先から放つ溶解光線。カイゲルより何倍も威力は上で、当たった物を溶かす上に気化させる。
『アイシクルトルネイド』
使用者:フラン&師匠
回転しながら冷凍ガスを放ち、自分を中心とした冷凍竜巻を形成して相手を攻撃。相手を凍らせるだけでなく冷気による冷却効果で相手を凍傷により肉体を崩壊させるが、サイタマには通じなかった。
因みに、フランの回想に出てきた出来事なんて、ほんの一部です。みなさんは、フランが進化の家でどんな仕打ちを受けてきたと思いますか?皆さんが想像出来る限りの事を、フランは全部受けてますよぉ。
因みに、メタルナイト越しの会話は本来カタカナが混じってますが、面倒くさいので普通の話し方にしてます。