4人は廊下を移動していた。フランの案内を受けて、彼等はジーナスが居るであろう研究所まで歩みを進めていた。因みに師匠は、フランの背中に背負ってもらっている。
すると、ジェノスは廊下の奥から迫って来る存在を感じ取った。レーダーで探知したのである。
ジェノス「前方から高速接近反応!しかも二体……いや、下から三体目が!?」
サイタマ「あ?」
師匠『下から?グランドドラゴンみたいな奴か?』
ジェノス「違う!それにしては振動は前方からのみ!恐らく、すり抜けながら進んでる!」
フラン「すり抜ける?」
フランは疑問に思った。そんな奴は少なくとも進化の家には居なかった筈だ。
フラン「私の知らない、実験生物?」
師匠『なら実力は未知数か。気を付けよう』
フラン「ん」
そして、廊下の奥から血塗れのジーナスの頭を掴みながら迫る巨大怪人が、照明を割りながら走ってきた。走って通った際の衝撃波で照明が割れていた。
阿修羅カブト「おういたいた!!3匹居るがどいつだ!」
ジーナス「あ、あのハゲた男の方だ……!出来れば、あの猫耳の方も………!」
阿修羅カブト「じゃあこのサイボーグは要らねぇんだな!」
ジェノスは構えを取るが、阿修羅カブトはジーナスを放り出した後にジェノスを手の甲で殴り飛ばして壁に叩き付けた。
そして、投げ飛ばされたジーナスは空中で止まる。
現代アートのようなポーズとなったジェノスとジーナス。
マジカルアント「フフフフッ。此処に居たぁ」
そして、床から頭を出し、軈て全身を晒したマジカルアント。全身に黒いオーラを纏っており、周りの破れたガラス片が浮いていた。
阿修羅カブト「俺は阿修羅カブトだ!」
マジカルアント「私はぁマジカルアントだよぉ!」
阿修羅カブト「戦闘実験ルームがあるから、其処で殺ろうぜ!」
二匹の怪人の誘いに、サイタマはフランにある事を提案する。
サイタマ「フラン。俺もやって良いか?」
フラン「ん。良いよ。それに、私自身、ジーナス殴れたし」
フランの隣には、頭を床にめり込ませたジーナスの姿があった。マジカルアントはフランがいつの間にジーナスを殴ったのか見えなかった為、初めて出会う強い相手に興奮を隠せなかった。
――――――――――――――――――――――――
進化の家、戦闘実験ルーム。
フランにとっては、実験体達から虐められる日々が繰り返された忌々しい部屋。
阿修羅カブト「広いだろ!この施設で一番デケェ部屋だ!戦力として使えるか、此処で闘わせて実験してんだ!」
フラン「…………知ってる。後で此処も破壊するから」
マジカルアント「ああっ。貴女は確か、私達が閉じ込められてる内に此処で雑魚共から虐められてたんだねぇ。私達はその時居なかったから、何されたのか気になるなぁ」
今のフランはあまり話さない。進化の家で受けた凌辱の日々が、フランの頭の中でフラッシュバックしてるからだ。しかし、それと同じくサイタマや師匠と過ごした何気なく大切な日常も思い出す。
もう自分は、あの頃の弱いフランではない。そう言い聞かせたフランは、自らの両頬を両手で叩いた。フランが手を離した時、頬は赤く染まっていた。しかし、フランの顔はもう吹っ切れたかのようにスッキリとした表情を浮かべており、師匠もフランの様子を見てもう大丈夫であると確信した。
フラン「よし!もう大丈夫!」
師匠(吹っ切れたな、フラン。なら、心配要らないな!)
マジカルアント「ん?」
マジカルアントは、師匠の念話を聴いた。心の声を聴いたが、誰の声か分からず周りを見渡す。そして、フランが背中に背負う師匠を見た。
マジカルアント(いや、まさかね)
マジカルアントは気のせいだと思ったが、念の為に警戒しておく事にした。
マジカルアント「気のせいか。じゃあ、早くやろ――」
と、マジカルアントがそう言った瞬間、マジカルアントは片手を別の方向に突き出した後、片手を握り締めた。そして、阿修羅カブトとマジカルアントに迫る業火が竜巻状となり、軈て空中で一つの球体となった後に、小さくなって消えた。
業火が飛んできた方向を見ると、其処には半壊状態となって片目の部分が剥がれて機械の目が丸出しになったジェノスの姿があった。
阿修羅カブト「まーだ生きてやがったか」
ジェノス「彼奴等は俺が……!」
ジェノスはその場から走ろうとするが、走ろうとしたジェノスをサイタマが片手で掴んで止めた。一瞬でジェノスの元に移動したサイタマの速さを、この場に居る誰もが認識出来なかった。
サイタマ「ジェノス。手を出すなよ。今は休んで、俺達に任せておけ」
ジェノス「し、しかしサイタマ先生!」
サイタマ「良いから任せておけよ。俺とフランなら平気だ。信じて待っててくれ」
ジェノス「っ!はい、先生!」
ジェノスはその場で留まり、サイタマとフランの闘いを見守る事にした。
サイタマ「さて、そろそろ始めようか」
フラン「ん」
サイタマは阿修羅カブトへ、フランは師匠を握り締めてマジカルアントの元へ歩く。
阿修羅カブトとマジカルアントは、二人が強者である事を一目で見抜いた。否、先程の二人の動きを見て、それでサイタマとフランを強者だと見抜いていたのだ。
阿修羅カブト「おおっ、分かるぜ!お前等強いな!」
サイタマ「ガッカリさせんなよ?お前等は此処の最終兵器なんだろ?今朝の奴等と比べて、自信に満ちた顔をしてっから」
マジカルアント「きヒヒヒヒヒヒッ!!では、始めようか!!」
『災害レベル・竜:阿修羅カブト&マジカルアント』
阿修羅カブトが走り出し、マジカルアントはその場から消える。そして、フランの周りに何度も出現と消失を繰り返していた。
ジェノス「速い!?いや、もう一体は時間差もなくその場から消えた!?此れが、超能力か!」
ジェノスはマジカルアントが超能力の使い手と見抜いた。
そして、サイタマの背後に回った阿修羅カブト。フランの背後に回り込んだマジカルアント。阿修羅カブトはサイタマを殴り飛ばそうとし、マジカルアントはそのままフランに超能力で干渉して体内から血を弾け飛ばそうとした。
その時だった。サイタマから感じた殺気と一撃で殺される光景を阿修羅カブトは感じ取る。そして、フランに干渉したマジカルアントは、その目で宇宙空間を見た。その時、地球のような惑星が目の前まで迫りくる、押し潰されそうな威圧感を。
阿修羅カブト&マジカルアント「「ぬぅっ!?/ひぃっ!」」
阿修羅カブトは羽を展開して飛んだ。マジカルアントは再びテレポートで上空へ逃げた。
マジカルアント「な、何なのよアンタ達!?」
阿修羅カブト「今、手を出したら殺されていた!?何なんだ此奴等!?」
隙だらけの筈だ。フランは隙があまり見られなかった。しかしそれでも、二人に攻撃しようとした時に危険を本能で感じ取り、退いてしまったのだ。
二人から感じる、人間とは思えぬ圧倒的な力を。自分達より格上かもしれない、圧倒的な力を。
阿修羅カブト「貴様等ァァーー!!それ程までの力、どうやって手に入れたんだよぉぉー!!」
ジェノス「ッ!!」
ジェノスも気になっていた、サイタマの強さの秘密。そして、サイタマと共に居るフランと師匠の力の秘密。
マジカルアント「わ、私も気になる!教えて!どうして其処まで強くなったの!?」
マジカルアントも同じだ。サイタマとフランの強さの秘密を、どうしても知りたくなったのだ。
フラン「…………師匠、良い?」
師匠『………良いぜ。知りたいなら、教えてやるよ!』
阿修羅カブト「いっ!?け、剣が喋った!?」
マジカルアント「やっぱりさっきの声って、あの剣だったんだ………!」
ジーナス「馬鹿な………色んな実験体を多く見たが、知性ある剣なんて、聞いた事が…!?」
部屋に入ってきたジーナス。骨が折れた腕を、折れていない片手で抑えている。肉体の痛みがジーナスを襲うが、それはジーナスにとって苦ではない。何故なら、此処でサイタマとフランの強さの秘密を知る事が出来るかどうか。それが何よりも重要であった。
サイタマ「誰?」
フラン「ジーナス。私を捨てた博士」
サイタマ「お、おう。まあ良いぜ。フラン、先ずはお前から話せ。俺は後で良い」
フラン「ん」
そして、フランは師匠の事を説明した。
フランが進化の家を追放されてから彷徨い歩いた時に、師匠出会った事。師匠の装備者となり、それから怪人を倒して行く内に、マンモスフラワーと闘って苦戦した事。マンモスフラワーをサイタマが倒した事。それからも怪人や悪の組織と闘って、その力を得て強くなってきた事。フランは全て説明した。
フラン「私は、師匠に会えたから変われた。師匠のお陰で私は強くなった」
師匠『俺とフランは無敵のコンビだ。此れからも俺達は強くなる。サイタマに、いつか勝つためにもな』
ジーナス「し、信じられん!倒した奴の力を吸収して強くなる剣で、その上意思を持って行動するなど!?」
マジカルアント「凄い………!欲しい!」
フラン「次、サイタマ」
サイタマ「ああっ。ジェノスも聴いていけ。で、フランと師匠にもまだ話してなかったな」
そして、サイタマは語る。
サイタマ「良いか?“続ける”事だ。このハードなトレーニングメニューを毎日続ける事だ」
フラン「トレーニング!?」
師匠『それだけで!?一体どんなトレーニングをしたらそんなに強くなれるんだ!?』
ジーナス「お、教えてくれ!改造手術や遺伝子操作、薬物投与よりも強力なのか!?」
全員が期待する。サイタマの続けて来たトレーニングとやらを。
サイタマ「そうだ!そして、毎日辛くても続ける事だ。お陰で俺は、3年で此処まで強くなれた!!」
そして、サイタマはトレーニングの内容を明かす。
サイタマ「腕立て伏せ100回!上体起こし100回!スクワット100回!そしてランニング10キロ!!これを毎日やる!!」
サイタマ以外全員『『……………はっ?』』
言葉を失う。耳を疑う。聞き間違いと願う。しかし、サイタマが真剣な顔で語った言葉は、嫌でも耳に残ってしまう。
サイタマ「勿論、一日3食きちんと食べろ。朝はバナナでも良い。極め付けは、精神力を鍛える為にエアコンを使わない事だ」
其処からサイタマは語る。最初は死ぬ程辛く、一日休もうかとつい考えてしまうが、サイタマは強いヒーローになる為に苦しくなりながらもトレーニングを続けた事。足が重くなろうが、腕の神経や筋肉繊維が千切れて激痛が走ろうとも、血反吐を吐き出そうとも続けた事。
サイタマ「そして………変化が起きたのは1年半後だ。俺はハゲていた!そして強くなっていた!つまり、ハゲる位死物狂いで己を鍛え込むんだ!それが強くなる方法だ!新人類とか、進化とかで遊んでるお前等では決して此処まで辿り着けねぇ!自分で変われるのが、人間の強さだ!!」
ジーナス(じょ、冗談ではないのか?)
阿修羅カブト(此奴、マジか?)
マジカルアント(凄い………それだけで其処まで強くなるなんて………もしかしてこの男の才能かな?)
ジーナスや阿修羅カブトは信じてはいなかったが、マジカルアントはサイタマの言葉から嘘を感じなかった。そして、マジカルアントのみが、サイタマの強さの本当の理由に大方近付いていた。
しかし、それを信じ切れない二人が声を上げる
ジェノス&フラン「「ふざけないでください/いい加減にしろ!!」」
サイタマ「えっ?」
サイタマは予想外の反応にキョトンとする。嘘は言ってないにも関わらず。
ジェノス「それは誰でも出来る一般的なトレーニングだ!!ハードでも何でもない!!通常レベルだ!!」
フラン「何なの!?私達を馬鹿にしてるの!?サイタマが強いのは分かってるけど、その程度のトレーニングで其処まで強くなってる訳無い!!」
ジェノス「フランの言う通りです!!俺は強くならなければならないんだ!!そんな冗談を聴く為に、貴男の元へ来たのでは断じてない!!」
師匠『お、おい落ち着けよ二人共!』
フラン「師匠は黙ってて!!私と師匠は沢山の怪人達と闘って危なかった時もあったのに、そんなトレーニングで其処まで強くなるなんて有り得ない!!私だってやってる!!もしそれでサイタマが強くなってたとしたら、私も師匠ももうサイタマと同じ強さになってる!!でもサイタマに追い付けない!!本当のごどをいっでよ!!ざいだま!!」
フランは泣き始めていた。それ程までに、サイタマの話に期待していたのだ。そして、裏切られた気分になった。
サイタマ「フラン、ジェノス…………んな事言われても、他に何にもねぇぞ?」
そして、そんなサイタマをフォローしたのは、意外な相手であった。
マジカルアント「彼は嘘言ってないよ。話した事は全部本当の事だから」
フラン「う、嘘………」
ジェノス「そんな、馬鹿な!?」
フランもジェノスも、マジカルアントから告げられた言葉を未だ信じられずに居た。
師匠『じゃあ、本当なんだな!?それだけで?マジかよー!?』
師匠は、未だに信じられなかったが、サイタマが嘘を言ってないとするならば、ある疑問が浮かんだ。
サイタマが言うようなトレーニングを、実はフランにもやらせていた。しかし、フランはサイタマレベルの強さに達する事が無い。継続は力なりとは言うが、それにしても差があり過ぎる。
フランと自分、そしてジェノスと何が違うのか?それ程までにサイタマの成長力が強すぎたのか?
阿修羅カブト「………もう良い。秘密を教える気がねぇなら…………もうどうでも良いぜ」
阿修羅カブトは怒りにより、全身の甲殻が全て剥がれ、全身の筋肉質な肉体が肥大化していく。10メートルもの巨大な姿へと変貌していく。角も伸びて、全身も紫色に染まっていく。
阿修羅カブト「どうせ俺より強くねぇんだろう!だが、テメェはムカついたから、なぶり殺してやる!!」
ジーナス「よ、よせ!!阿修羅カブト!!また暴走する気か!?」
マジカルアント「さて、どうするかな〜」
マジカルアントは空中に浮いた。出入口は阿修羅カブトの暴走により、厳重に無数の分厚い扉によって閉鎖される。
フラン「貴女は?闘わないの?」
マジカルアント「うーん………阿修羅カブトが勝てるか見てみようかな?暴れてる間に巻き添え喰うのは嫌だし。終わったら、私が相手してあげる」
フラン「ん」
そして、阿修羅カブトは変身した。阿修羅カブトの最終形態であり暴走形態である『阿修羅モード』を。
オリジナル怪人
名前:マジカルアント
作品:オリジナル
災害レベル:竜
様々な超能力を使用出来る。念動力や念話、読心、探知等といった超能力を行使可能。タツマキ未満ゲリュガンシュプ以上の精度とパワーを持つ。また、相手の話す言葉が真実かどうか見抜く事が出来る。
もしサイタマが語ったこのトレーニングを、他作品のキャラが聴いたらなんて言うんでしょうね?というか、これだけで強くなったサイタマ、成長性高すぎw