いつか誰かのInfinitedendrogram 作:シェキナー
□コルタナ某所 とある【豪商】の屋敷
【商人】ライ
「えぇえぇ、いい取引でしたとも。今後ともよろしくお願いします。」
張り付いたような笑顔で、屋敷の主人と会話するマスターがいた。
何らかの取引を締結したようで、互いに立ちあがり握手を行っている。
マスターが【商人】というジョブに就き、ティアンの【豪商】と商談を交わす。
ティアン側は、命知らずで相場知識に乏しいマスターが卸す商品を安く買い叩ける事を。マスター側は、上級職の就職条件を満たすために売買量を増やせた事にほくそ笑む。
マスター全体から見れば【商人】というジョブに就くものは少なく珍しく思えるが、世界中で増加した光景の1つだった。
「では、私はこれで失礼致します。」
今まで商談を行っていたマスターが出ていった後、屋敷の主は今話していたマスターについて、信頼に足るかどうかを再度確認していた。
(「真偽判定」スキルには反応無し、鑑定でも【商人】と【冒険者】以外のジョブには就いていなかった。下級職のレベル上げと上級職の条件達成が目的で間違いはないか…最近は、相場知識が身についてきたマスターが増え、カモが減ってきていた所だ。逃す手はない…)
最近では砂上船の技術上昇の恩恵もあり、他国の商品が流れる事も増えたが、それでもティアンにとって国を超えて商品を入荷するというのは命懸けの事業である事に変わりはない。エンブリオなる未知の力は警戒に値するが、交渉しがいのある相手だと言えるだろう。
商品の受け渡しは明日の朝行う事になっている。
知人のマスターに貰ったと言っていたが、まさかグランバロアのモンスター素材が大量に手に入るとは行幸だ。しかもそのうちの1つに【亜竜海蛇《デミドラグシーサーペント》】の毒液が含まれている。薬にも毒にもなるそれは売り方次第で巨万の富に化けるのだ。
無知なマスターをカモに出来たことにその商品はほくそ笑み、明日に備えて就寝するのだった。
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次の日の朝、商品の受け渡しをする為に再度【豪商】のティアンの屋敷にマスターが来訪していた。
受け渡しの場には、【豪商】のティアンと共に金で雇った【剛剣士】のジョブに着いた護衛、【豪商】ティアンよりも高い鑑定スキルを有する【上位鑑定士】のジョブに着いた奴隷が同席していた。
マスターに対する信頼など微塵も無く、ただ取引相手として見る。【豪商】ティアンは流石にそのジョブに就き、金を稼いできただけの事はあるだろう。万全の態勢で行われたその取引は特に何事もなく終了した。
「では私はこれで」
マスターの方はまだ商人としての経験が浅いのか、次の取引の是非についても話さず席を立とうとする。
「あぁ、いい取引だったよ。是非とも次の取引も検討したいものだ」
商人の先達として取引先を増やすことは大事だという親切心半分、カモを逃す訳にはいかないという下心半分で口に出した言葉だったが、相手のマスターはすげなく言葉を発するだけだった。
「ええ、是非また機会がありましたら」
会話はそこで終わり、マスターは屋敷を出ていく。
商人としてのチャンスをあっさりと手放す行動に呆気に取られながらもマスターとはそういうものだと納得する。それよりも取引で手に入れたものを用いて金稼ぎの算用を行わなければ。
ポーカーフェイスを保ちながらも僅かに緩んだ顔で自らの執務室に戻って行った。
それらの商品が全て偽物だった事が発覚するのはそれから10日ばかり経った後のことだった。
何度も高レベルの鑑定スキルを用いた上で騙されたこの豪商は、金の力を用いて騙したマスターに懸賞金を掛けたが終ぞ見つかることは無かった。
さらに日は進み、騙された日から30日が過ぎた頃にこの豪商ティアンは懸賞金の為に集めた金銭を丸ごと奪われるという憂き目に遭う。 何でも金銭を盗まれた日は屋敷に居た全員が【気絶】や【睡眠】の状態異常により意識を失っていたという。各地で同様の事件が起こっている事から各国は警戒を呼びかけ、このマスターの全国指名手配を行っているが、顔を変装で変えていると思われる為今日まで正体を特定出来ていない。
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「今回も上手く行きましたね」
そのマスターの手には金銭が詰め込まれたアイテムボックスが2つ握られていた。占めて1つにつき1000万リルが収められている。
彼は詐欺師だった。そして愉快犯でもある。
運良く手に入れた超級職と自身のパーソナルから生まれたエンブリオ。現実では出来ないことを幾らでも行えるこの世界の事が彼は好きだった。
人が騙される瞬間を眺める事こそ最上の甘露と宣う。
人と仲良くなる事が好きだし、その上で縁を切る事が好きだった。切られた人間の感情の変化を見るのが好きだった
彼は同じ事を繰り返していく。
時が進み、超級職や超級エンブリオを手に入れたマスターが増えると今度はそんな上澄みのマスターと縁を繋ぐ為に行動する。
彼らの感情の動きを見ることこそが彼の生き甲斐であった。
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ステータス
【ライ・イートイン】
通り名【保証人】
所属ギルド【フリーランス】
メインジョブ【詐称王《キングオブスカム》】(偽装商系統超級職)Lv511
上級職
【偽装商《フェイクマーチャント》】
(詐欺師+贋作職人複合上級職)Lv100
【上級詐欺師《ハイスウィンドラー》】Lv100
下級職
【詐欺師】Lv50【贋作職人】Lv50【商人】Lv50
【盗賊】Lv50【鑑定士】Lv50【冒険者】Lv50
エンブリオ【縁怨起 エンガチョウ】
type:ルール・アームズ
両手置換型のエンブリオ
見た目は普通の腕と何も変わらない
ステータス補正:全てE
スキル:【不浄の左手】
左手で触れた対象のバフを抜き取り貯蓄、貯蓄したデバフを与えることが出来る。奪取、付与するバフ・デバフの個数は触れた時間によって変わる。
【清浄の右手】
左手で触れた対象のデバフを抜き取り貯蓄、貯蓄したバフを与えることが出来る。奪取、付与するバフ・デバフの個数は触れた時間によって変わる。
必殺スキル:【縁切遊戯《エンガチョウ》】
今まで触れた事のある対象を選び、ストックしたバフ・デバフを3つまで距離関係なく無条件で付与する。1度使用すると再度触れるまで同じ対象には使用できない。使用したバフ・デバフも消失する。クールタイム:6時間
貯蓄出来るバフ・デバフ数はそれぞれ15個ずつ。
戦闘方法:直接戦闘は極めて苦手。非戦闘時に握手をするなどして接触し、デバフを掛ける嫌がらせが主。ただし、【詐称王】のスキルによってデバフが掛かっていないかのように見せかけたり、【死呪宣告】を直近で影響の少ない【疲労】【風邪】等に書き換えるというタチの悪い小技を用いる。
性格:普段は無害な【商人】を装い数多の詐欺を働く犯罪者。しかし全て証拠不十分で個人の特定には至っていない。
人と話し、繋がる事が好きだがその相手に何か影響を与えることはもっと好きという歪んだ趣味を持つ。