東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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前編
前編 プロローグ


 俺は何者なのだろう。

 アイデンティティの形成、つまりは青年期にこれを思った人は少なくないだろう。ただ、俺のそれは少しベクトルが違う。

 気がついたら俺は真っ暗な、しかしキラキラと光る星たちに囲まれて存在していた。何のために、そして誰が生んだのかも分からないまま、存在していた。

 何もせずに宇宙に身を任せているのもつまらないので、滅んでしまった星を再生、もしくは生まれ変わるように働きかけたりした。

 それを繰り返している内に、俺は滅びた星を再生するために生まれたんじゃないかと思った。

 ただそう思っただけ、宇宙の役割は星の創造と破壊。

 

 俺の役割は星の再生と転生、そう思った。あの星に着くまでは…

 

────────────

 

 最近、水がある星が崩壊したことを知った。その星は少し特殊で意思のある生物が存在していた。それでもってなぜだか大切な星のように思えていたのだ。他の星とは違う、大切な星に。

 その時はその星に名前などなかったが、それは今で言う『地球』だ。俺らが足をつけてるこの星だ。

 地球に到着して早速再生しようと思ったが…

 

「なんだ、勝手に再生してるじゃないか」

 

 地球にはすでに人間が居た。ちなみに、崩壊する前に居たのは恐竜だ。隕石が降って氷河期が来て、そして雪が解けて人が生まれたということだ。

 その当時の人間は都を造り、文明を創り、更には自らが崇める神なんかも創りあげていた。

 俺は仕事をしなくて良いと思い、その場を去ろうとしたのだが、ふと思った。勝手に再生するんだったら、俺は何のために居るのだろうと。

 俺の役割じゃないのか?それともこの地球が特殊なのか?分からない。ならば、人間になってこの星を調べよう。

 そうして俺は地球に降り立った。

 

────────────

 

 暫く観察していると、どうやらこの星ではそれぞれの人間に固有の名前があるらしい。

 郷に入れば郷に従え。ということで俺の名前は適当に『神田零』という名前にした。神田零…今思えばなんでこんな名前にしてしまったのか。現代では厨二病扱いな名前だ。

 それはさておき、人間になるには生まれ変わらねばならない。俺は意識を手放し、視界が一瞬ぼやけ、そして光に包まれる。この地に生まれるように。

 

 暫くして目を覚ますと視界いっぱいに草木が広がっており、その間から青い空がこちらを見つめていた。どうやらどこかの森に生まれ変わるったようだ。

 

「ここは、どこだ?」

 

 声が聞こえる。そうか、これが俺の声で、これが俺の耳か。そうして自分の体を確かめるように観察する。筋肉の形、骨の構造、血の巡り方。これが俺の体であることを理解する。

 とりあえず、人間のいる場所に行かなくてはわざわざ人間になった意味が無い。探そう。

 俺は目を閉じ、脳から『波長』を流して周囲に人がいないかを調べる。帰ってきた波から、南南西の方向に多くの人工物と多くの人間の存在を確認した。波を送るのを止め、目をゆっくりと開く。

 

「さて、それじゃあその方向に移動するか。」

 

 誰かがいるわけでもないのに、俺は自分に声という新たな波があることを面白がってわざわざ独り言を口にしていた。

 しかしながら、歩いて移動するには少し遠い。人間になる前の力は果たして使えるだろうか?試してみる価値はあるだろう。

 

「『瞬間移動』。」

 

 呟くと、俺の体は一瞬にして目的の都へと到着した。どうやら、俺の力は今も尚使えるらしい。尤も、微調整は出来なくなったようだ。人工物の中に移動してしまった。人間が生活するための家具や食べ物が周りにあった。

 波長によると、現在の位置は都の中心らしい。恐らく、ここが一番偉い奴の家だな。 

 

「色々物色するか。」

 

 人間の生活はどのようなものなのか、非常に興味がある。恐竜の時代はこのような服や家具なんてものはなく、ここまで社会的な生物も存在しなかった。

 

「これは、何だ?教えてくれないか?」

「それは薬よ。」

「薬…?中身を見るに病気を治す為の物か?」

「えぇ、そうよ。」

 

 その者は、俺に弓矢を向けて喋っている。先程も言ったように、波長でどこに何があるのか、誰がいるのかは把握出来る。そこに何者かがいることは分かっていた。

 

「何者かしら。」

「姓が神田、名が零。」

「名前じゃないわよ。」

「一応人間だ。」

 

 ご期待の返答を聞けたのか、彼女は黙った。ずっと弓を構えてジッとしているのに対し、俺はその薬というものを物色している。

 俯瞰してみれば異様な空間だが、俺はそんなことよりも好奇心を満たすことに忙しかった。構っていられない。

 

「何しにここに来たの。」

「人間ってさ、何で出来たのかな。君は知ってる?」

「質問に答えなさい。」

「それを知りたいから。」

 

 俺はやっと彼女の方に目を向ける。俺の質問には応えてない。

 

「俺の質問の答えは?」

「知ってるわ。」

「そっか。じゃあさ、君の家に住ませてくれないか。」

「………は?」 

 

 これが物語の始まりとなった。無知な俺が、地獄を知る物語が。

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