東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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ハルシネーションの星屑 Ⅳ 『魔法』

 魔女のくせに妖力を感じ取ることが出来ないのか。なんとも残念だ。残念なだけに、その魔女にしてやられたことに腹が立つ。

 かと言って、僕の企みが漏れ出た訳では無い。霊夢さんほど勘が冴える人ではないらしい。

 

「魔女というのは妖力を感じることができないのですか?」

「あぁ、いや、魔女と名乗っているからには魔力を感じ取ることは出来るぜ?ただ、私は普通の人間だからな。霊夢みたいな才能は無いよ。」

「才能ですか。」

 

 生まれ持った性質、つまり修行ではどうにもならない先天的な能力なのだろう。巫女をやるだけはあるようだ。しかし、逆に言えば、彼女は才能もないのに異変解決に貢献しているということになる。

 よく見れば、指先はケアをしているようだが荒れており、魔法使い特有の箒に乗るという行為をするのか前腕にはある程度の筋肉がついている。しかし、筋肉がつくということは魔力でどうにかならないところをそれでカバーしているのだろうか。

 魔法についてはてんでダメだ。知識がなさすぎる。しかし、努力を惜しまない性格の人だということは予想できる。

 

「魔法って、どんなものがあるんですか?」

「お?興味あるのか。いいぜ、この霧雨魔理沙先生が直々に教えてやるよ!」

 

 知っていて損は無い。

 

____________________________________________

 

 ただの場繋ぎの会話だったはずだ。だが、目の前の男は真剣に私の話を聞いている。それが、少し嬉しかった。まるで、私の積み重ねてきた知識や研究を認められているような気がして。

 本物の魔法使いになんか敵わないなんて、そんなことはわかっている。ただ、私は泥臭く這いずってでもアイツらを越える。霊夢を越える。

 その理由はただ一つ───

 

「魔理沙さん?」

「ん?あぁ、つまり魔法というのは要素と要素の組み合わせだ。それが無限大の可能性を秘めているのだ!!」

 

 結局、魔法の基礎を全て話しちまった。別に隠すようなことでもないが、場繋ぎにしては喋りすぎた。

 しかし、男は満足そうな顔をしている。きっと、元々外の人間らしいから物珍しさに魔法について訊いたのだろうが、それにしても専門的な話を延々と聞かされることほど退屈なものは無いはずだ。外の世界ではなにかの学者かなにかだったのだろうか。

 

 

「魔理沙、随分と楽しそうね。」

「あ、おかえり。長風呂だったなぁ。」

 

 部屋の外にはホカホカになった霊夢とお燐の姿。というか、霊夢も温泉に入っていたのか。

 

「何の話?」

「魔法の話だよ。コイツ勉強熱心だなぁ、ずっと前のめりに聴いてるよ。」

「へぇ、あんなつまらない話を…」

「なんだと!?」

 

 やっぱり、興味のない人からすればつまらない話なんだ。それが普通なのだろう。いや、つまりこの男はそれほどに魔法に興味があるのだとも言えるだろう。

 良い、話し相手が出来そうだ。

 

「どうだった、直人。魔理沙の話はめちゃくちゃつまらなかったでしょ。」

「僕は面白かったですよ。奥が深いですね。ただ使うのではなく、もっとちゃんとしたロジックや理論が求められる分野なんだなって。」 

 

 私の話を、何の先入観もなくありのままを聴いてくれていたのだ。私の性格上、力任せの魔法だと思われることが多い。事実、私は弾幕はパワーだという考えのもとに戦う。しかし、それらは魔法の基礎やそれを応用するための論理的思考や導き出した研究結果を組み込んだ上での攻撃なのだ。

 それを、魔法の話をする度に話の中に組み込んでいるが、理解しようとしてくれたのは魔法使い以外でこの男が初めてだ。

 面白い妖怪だ。

 

「今度、魔法の使い方を教えてやるよ。」

「本当ですか、お願いしたいです!」

「へぇ、物好きね。」

 

 それに関しては同意する。本当に変な奴だ。だが、それでも私はかつてないほどに嬉しい気持ちが心を満たされていく。

 

____________________________________________

 

 きっと、承認欲求は満たされただろう。なんて分かりやすい人なんだろう。それは見方を変えれば美徳と言えるが、扱いやすい例の一つと言えるだろう。

 だが、魔法について知るというのは僕にとっても得がある。神田零が扱う能力が一体どのようなものなのか分からない今は、どの攻撃手段が来てもいいように知識を蓄えていくしかない。

 

「明日とかどうだ?なんなら私が地霊殿に向かうけど。」

「お願いしてもよろしいですか?」

 

 申し訳なさそうな顔をして魔理沙さんを見る。すると彼女はとても気持ちの良さそうな笑顔を向けて頷いた。

 

「構わないぜ。じゃ、明日の朝に向かうことにするわ。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「おう!」

 

 そうして僕は彼女の手を改めて握る。固く握ってきたため、こちらも固く握り返す。

 

「ところで、そろそろ帰らないといけない時間になってきました。」

「あーもうそんな時間かぁ。あたい風呂に入っただけだ。」

 

 僕が立ち上がると、お燐も続くように立ち上がった。縁側からは夕日が差し込んでくる。

 

「そう、気をつけて帰ってね。」

「また明日なー。」

 

 二人は机の前に座り込んだまま手を振り見送ろうとする。帰る時に何か盗まれたりするかもしれない、とか考えないのだろうか。

 僕は彼女らに手を振り返し、神社を出ていく。賽銭箱の横を通り、鳥居を潜る。そして思い出した。この絶望を。

 

「階段なっが。」

 

 降りることを忘れていた。




 読んでいただき誠にありがとうございます。作者の薬売りと申します。
 お知らせなのですが、これから作者が忙しくなってしまうため来週から投稿を一時休載させていただきます。詳しい予定は決まっておりませんが、次の投稿は12月下旬になると思いますので、楽しみにしていただいている方は申し訳ございません。
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