東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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ハルシネーションの星屑 Ⅴ 『学問』

 昨日、僕は魔理沙さんに魔法を教えてもらう約束をしていた。朝に来るらしい。6時に起床し、歯を磨き、顔を洗い、朝ごはんを食べる。さとりさんは僕の心を読んで魔法を学ぶことを察して、特別に今日を休みにしてくれた。僕は彼女が来るのを自分の部屋でコーヒーでも飲みながら待っていたのだが…

 

「12時か…」

 

 時計の針は天井を指していた。魔理沙さんにとっての朝とは、一体いつなのだろう。コーヒーなど三杯目を飲み干してしまった。僕の一日の目安は三杯なのだが、久々にそれを超えるカフェインを摂取することになるかもしれない。

 そんな苛立ちを解放しようと、気分転換に外を出歩こうと自分の部屋を出ると、さとりさんが目の前にいた。

 

「え?」

「あ、直人さん。魔理沙さんがお見えになられましたよ。」

 

 そう、彼女が手で促した方を見ると、その金髪はニコニコと笑いながらこちらに片手に箒を持ち大手を振って歩いてくる。

 

「おう、昨日ぶりだな。それにしても12時まで部屋に籠ってるなんてなぁ。なんだ、寝坊か?」

 

 何だコイツ。

 

「こんにちは。あの、予定では朝に来られるはずではありませんでしたか?」

「え?あぁ、そうだっけ?じゃあお互い寝坊だな。」

 

 何故同類だと思われているのだろう。作り笑顔がイラつきによる痙攣で崩れそうになる。

 しかしこの金髪はそんな僕の気持ちなどを考える能力がある訳もなく、さっさと厳顔の方へと向かおうとする。

 

「よっしゃ、それじゃ早速外で魔法を教えてやるぜー!」

 

 手に持っていた箒をスケートボードのように乗るという魔女の風上にも置けなさそうな乗り方で玄関へと飛んでいった。

 静けさが空間に残る中、さとりさんが僕の背に手をそっと添える。

 

「お気の毒です。」

 

 僕は悔しいよ、さとりさん…

 

____________________________________________

 

 遠くの街では明るくガヤガヤと騒がしそうなのが聞こえてくる。一方僕は心の中がどんよりと沈んでいるにも関わらず、対峙する金髪魔女は僕の作り笑顔に一切の疑念を持たなかった。

 やっぱりこの人から教わろうとしなければよかった。

 

「それじゃあ、昨日教えたことは覚えているか?魔法の基本的な考えだ。」

 

 急に講師らしく振る舞い始めた。今にも無いメガネをクイッと中人差し指で調節しそうだが、さておき、昨日の話からは魔法の理屈とやらを何となく理解は出来ていた。

 魔力やらマナやらと呼ばれる魔法エネルギーを使い、複数の要素の魔法を発生させる。これが大雑把な魔法の説明だ。そこから要素と要素を掛け合わせることで無限な可能性を引き出すのが魔法の面白いところ、だそうだ。

 

「そう、人間が体を動かせるのは生命エネルギーがあるから。それと同じように魔法エネルギーを使って魔法を繰り出すということ。では、生命エネルギーを作るには何をするべきかなワトソン君。」

「直人です。食事や睡眠を摂ることです。」

「素晴らしいね、エマ・ワトソン君。」

「直人です。」

 

 どこか得意げに笑う魔理沙さんに、苦笑いを零してしまう。どうやら承認欲求が満たされすぎて酔ってしまったらしい。付き合わされる身にもなれよ。

 

「同じように、魔法エネルギーを作るのにもそれらが必要だ。適切な食事に適切な睡眠、それらは魔法エネルギーを作るのに必要なことなんだよ。」

「でも、適切な食事と適切な睡眠を摂っている僕は魔法エネルギーを生成した自覚がないんですけど、本当に生成されてます?」

「君は生命エネルギーを生成したことを自覚できるというのかね、ハーマイオニー君。」

「マグルです。」

「穢れた血め!」

「なんだコイツ。」

 

 我慢はできなかった。

 

「さて、確かに魔法エネルギーは自覚できない。限界と思ったらそれが枯渇した時だよ。実は今も直人の中に魔力は宿っている。けど、それを使えるかどうかはまた別なんだよ。使い方を知らないって感じ。」

「なるほど。」

「ちなみに、今まで使ってこなかったから莫大な魔力が直人の中に…ッ!!なんてこともないぜ。筋肉と同じで使わないと育たないんだよ、魔法を使う筋肉的ななにかが。」

 

 先読みされた気分で少し癪だ。しかし、聴けば聴くほど生物学辺りの雰囲気が漂う話だ。例として用いているのがそれだからというのもあるが、逆に言えばそれが例として適任と言える程に似た分野だと言える。

 

「だから、まず初心者には魔法の使い方を体で覚えてもらう必要がある。」

「分かりました。」

「それじゃあ、最初は炎の魔法でもやってみるか。まずは目を閉じてくれ。」

 

 言われた通りに瞳を閉じる。すると魔理沙さんの声がすぐ右に移った。

 

「それじゃあイメージをしてくれ、自分の体全体から熱気のようなオーラが滲み出てくるのを。」

 

 自分の最大限のイメージ力を駆使して自己催眠をかけるように体で念じる。何となく、体の周りにウヨウヨと熱気のような空気のような何かが漂っている気がする。

 

「うーん…まぁ、良しとするか。それじゃあ、人差し指を真正面に向けろ。そんでもって、今のオーラを全部指先に集めろ。」

 

 言葉に従順に、何も無い空間に指を差して全オーラを指先に向ける。しかし、全部を集めてしまったら指先が火傷するほどに熱気が集まってしまうのではないだろうか?

 

「…お、センスいいな。そんじゃ、私がトリガーとしてお前に魔力を送るぞ。」

 

 魔理沙さんは僕の肩と前腕をガッシリと掴むと、小さな声で呟いた。

 

「肩から魔力を送るから、送った魔力を集めたオーラの方に放出させるんだ、いいな?」

「わ、分かりました。」

 

 その声色は先程とは比べ物にならないほど真剣で、何故だか緊張してしまう。

 

「カウントダウンをするぞ。3…2…1…撃て!」

 

 肩になにか衝撃が伝わる。その衝撃をイメージしたように腕を通るように走り抜け、熱気が集まった指先にたどり着く。すると、それは放出された。

 

「うお…すごいな。」

 

 僕は衝撃のあまり目を見開いてしまった。僕の指先からは銃のように発砲された炎の塊が地面を潜っていったのをこの目で見てしまった。

 銃痕から広がるように炎が広がり、そこの地面が少し膨れると小さな爆発を起こしてボーリング球程の円形に地面が抉れた。

 

「初めて魔法を使ったにしては上等だ。」

「そうなんですか?」

「最初から魔法を放出できるとは思わなかったぜ。何度か練習して感覚を掴むもんだからな。」

「そうですか…」

 

 中々実感が湧かないか、僕はどうやら魔法を使うことができたらしい。自分の手のひらを広げて見てみると、人差し指の先が黒い煤で覆われていた。火傷は…してる。気付いてしまうと痛みが急に襲ってくる。

 それを魔理沙さんが覗くように見て、納得したように頷く。

 

「…なるほどなぁ。お前、イメージなのに妙にリアルにイメージしただろ。例えば、全身の熱気を指先に集めたんだから焼けるような熱さに変わっているんだろうな、とか。なんなら熱さすらも感じたんじゃないか? 」

「えぇ、正に。」

「うへー、その変態的なイメージ力はパチュリーと同じ感じの魔法使いになりそうだぜ。」

「パチュリー?」

「あ、知らない?紅魔館に住んでる魔法使い。」

 

 耳にした記憶は無い。忘れているだけかもしれないが。首を傾げていると、魔理沙は理解したように話を続ける。

 

「まぁ、今度の紅魔館のパーティに招待されてるんだとしたら、その時に挨拶でもしときな。アインシュタインと相対性理論について議論している気分になれるぜ。」

 

 つまり、さらに専門的な話を聞けるということか。

 

「私には到底真似出来ない、スゲー魔法を使ったりする。」

「…へぇ。」

 

 何となく、羨ましそうに言葉にしているように聴こえる。しかし、僕には関係の無いことだ。

 

「まぁ、そんな専門的な話をされても、魔法初心者の僕は困っちゃいますよ。魔理沙さんのおかげで一発で魔法を使えちゃいましたし、今後も宜しくお願いします。」

「…!お、おう、任せろ!なんてったって普通の人間から魔法使いになった私だ、お前に魔法を教えるのには適任だぜ〜?」

 

 誇らしく胸を叩く魔理沙さんに、僕は慣れた作り笑いを向ける。一瞬見せた心の隙間、これを利用すればこの魔女も仲間にできるだろうか?そんな思考で脳は満たされていた。

 




 あけましておめでとうごさいます。薬売りです。
 前回、12月下旬に投稿すると言いましたが、予定よりも遅れて投稿することになってしまいました。申し訳ございません。ただでさえ途中で投稿しなくなった話をリメイクした作品なのですから、投稿が途絶えてしまうとまたやらかしてしまいそうで怖かったです。
 それよりも、この作品を楽しみにされている方には深くお詫び申し上げます。遅れて投稿したこともそうなんですが、久々の執筆の所為か思うように書き進められなかったり、1月2月も忙しく、投稿が出来ても二三週間に1話のペース、もしくはさらに遅れてしまう可能性があります。申し訳ございません。
 それでも読んでいただけるのであれば、これからもこの作品をよろしくお願いいたします。
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