東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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九人の欲と一人の希望
九人の欲と一人の希望 Ⅰ 『聖徳』


 幾年をかけてこの大地を練り歩いているが、意外と発見などが多いのだ。研究していた頃は多くを知っているつもりだったが、不便を日常的に感じることで見えていなかった世界が見える。

 目的地のない旅をし続けている訳だが、今日は運がいいようだ。大きな都にたどり着いくことが出来た。

 

「大きい都だな。」

 

 永琳と住んでいた時の都ほどでは無いが、この旅の中では1番の大きさであると言えよう。

 早速、その都へと入ろうとするが、抑揚のない声が俺を呼び止める。

 

「そこの者、止まれ。」

「なんだ?」

 

 声の方を向くと、黄緑の髪色をした若干つり目の、警戒して腰を低くしている女性がいた。

 

「お前、何者だ?強い力を感じるぞ。」

「怪しい者じゃない。ただの旅人だ。妖怪とも戦ったこともあるから、その鍛えた力ではないだろうか。」

「それだけでは説明がつかない。上手く隠してはいるが、私には無意味。お前、名は?」

 

 この女性は中々にやれるらしい。確かに、そこら辺の武術家に比べると、霊力は桁違いだ。面白い。

 

「名前を相手から聞くより、自分から名乗り出るのが普通だろう。」

「お前に誇り高きこの名を教える義理無し。早く名乗れ。」

 

 プライドも一丁前のようだ。

 

「神田零だ。」

「神田零だとッ!?ほう、お前が…」

 

 俺のことを知っている?どういうことがろうか。須佐之男の件もあり、俺は少し警戒しながら彼女の動向を伺う。

 

「本物かどうか、確かめて貰わせるッ!」

 

 そう言い放つと、彼女は数珠を付けた手を俺に向ける。すると、その手からなにか弾けるような音が聞こえてきた。これは、もしや雷だろうか。とはいえ、あまり脅威でもなさそうだし、何より本物かどうか確かめるとも言っていた。ならば、当たってやった方が良いかもしれない。

 避けることも無く、その電撃を食らう。

 

「なんだ、偽物か。」

「いや、偽物なんかじゃないよ。」

「なにッ!?」

 

 期待通り、いや、期待以上の反応をしてくれた。目を点にし、口を大きく開いてパクパクとさせている。ここで嫌味を言ってやったらどう反応するだろうか。

 

「避ける必要がないから、避けなかっただけだ。静電気を避けたって仕方がないからな。」

「は?いや、私も別に本気じゃなかったし。なに余裕ぶってるんだか。」

 

 本当に期待以上の逸材だ。

 

「とりあえず、お前が本物の神田零と言うことを確認した。」

「……さっきから、思っていたんだが何故、俺の名を知っている?」

「お前は、旅人の中でも有名な存在。知らない方がおかしい。」

 

 なるほど、そういうことだったのか。最近妙に視線を感じると思ったら、いつの間にか俺は有名になっていたらしい。旅の途中で人助けや山賊なんかを懲らしめたりしていたから、これが原因だろう。

 

「すまない、申し遅れた。私は蘇我屠自古と言う者だ。お前に頼みがある、来い。」

「何故、上から目線なんだ。良いが、何をするんだ?」

「黙って着いてこい!」

「…え、俺頼み事を聞いてあげてんだよね?可笑しいだろ。」

 

 腑に落ちないまま、俺は彼女について行く。

 

────────────

 

「私の部下がご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!!」

「太子様!!貴女様のような人が頭を下げるなど…屠自古!貴様がこの旅人にアホのような態度をとったから!!」

 

 土下座をする多分偉い人、屠自古に怒り狂う人、そっぽを向き口笛を吹く屠自古。混沌としすぎて何が何だか分からなかい。

 

「あの…気にしてないし、顔を上げてくれ。」

「ありがとうございます!」

「なんと!心優しいお方じゃな!」

 

 屠自古に怒り狂っていた銀髪の少女は明らかに俺のご機嫌を取ろうとしているが、噂での俺のイメージは一体どうなっているのだろうか。

 

「それより、何故俺はここに連れてこられたんだ?」

「はい、それは…あ、まず自己紹介をさせてもらいますね。豊聡耳神子と言います。そして、こちらの銀髪が物部布都です。」

「物部布都だ!宜しくお願いする!」

「あぁ、宜しく。」

 

 手を差し伸べてきたため、その手を掴み握手を交わす。俺も別に敵対視している訳でもないので、にこやかに行うと相手も友好的であると察して少し緊張を解いてくれた。

 

「それで頼み事なんだが、遣隋使を守ってはくれぬか!」

 

 唐突がすぎる。

 

「すまない、遣隋使とは?」

「海を挟んで向こう側にある、『隋』と言う国がある。その国に行って勉学をして、隋の知識を持って帰るのだ。」

 

 屠自古が「そんなことも分からないのか。」とでも言うように顎を上げて見下げながら説明してくれた。

 さっきの嫌味に腹を立てすぎだろう。どこまでプライドが高いのだ。

 

「ふむ、今までで行ったことは?」

「ありません。」

「なるほど、初めての試みである以上、用心に越したことはないな。」

 

 敢えて悩むような素振りをみせると、彼女たちは固唾を飲んで答えを待っている。心臓の音がこちらにまで聞こえてきそうだ。

 

「それじゃあ、引き受けるとするよ。」

「ありがとうございます!!」

 

 思い切り笑顔を咲かせ、勢いよく俺の両手を掴んで感謝の念を述べてきた。表情豊かだな。

 

「それで、いつ隋に行くんだ?」

「一ヶ月後です。それまで、こちらで宿泊施設の手配をしておきますので、そこに泊まっていただけると幸いです。」

「そうか、わかった。」

 

 そうして、改めて握手を交わした。

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