東方化物脳 Re:make   作:薬売り

23 / 106
空の雲は輝いて IV 『害虫』

「すう……すう……」

「んん…」

 

 芳香はあの後すぐに寝てしまい、離れられずにいたのは分かるのだ。何故、美鈴が芳香とは逆側の腕に食っていて寝息を立てているのだろう。

 しかも、美鈴とは青娥を挟んで寝ていたはずなのだが。昨日初めてあった女性2人に抱きつかれるのは、今後の人生でこれきりだろう。

 

「ふわぁ…おはよ……なんか増えてるわね。」

「あぁ、嬉しい苦行だね。」

「若い娘が好きなのね!プンプンッ!」

「………お前が抱きついてこなくて良かったよ。」

「酷くないかしら。」

 

 俺は青娥の可愛こぶる態度には、冗談でも見たくはなかった。精神的にキツイものがある。俺は込み上げる吐き気を何とか耐えながら、2人を起こさないように動かないでいる。

 これの光景を、永琳が見てなくて良かった。こんなの、洒落にならない。

 身も震える恐ろしい想像をしていると、耳元で何かが動く音がした。目を向けると、昨日の虫がいた。

 

「また、この虫か。昨日のやつだよな?」

「えぇ、最近増えてるの。えぇっと…蛍かしら?」

「水辺でもなんでもない、人だらけの場所によくいられるな。」

 

 眠っている芳香は寝息を立てたまま。今起きたら昨日の騒動が蘇るだろう。

 

「この国の王様が虫の妖怪に呪いをかけられたことは話したわね?」

「あぁ、話してた。」

「この蛍。もしかして、虫の妖怪の手下なのかなって思ったりして…」

 

 蛍はブゥーンとした音とともに羽を広げ旅たとうとする。俺はそれを霊力を飛ばして握りつぶした。緑の液体を流しながら床に落ちる。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!?蛍をいきなり潰して…」

「こいつ……害虫だな。」

「え?」

 

 青娥は酷い人間を見るように顔を引き攣らせていた。蛍は苦しみ悶えながら足を動かしているが、そんなこと気にも止めず、話を続ける。

 

「明らかに不自然だろう。お前がこの蛍のことを『妖怪の手下』と思っていることを話したら、こいつは羽を広げ何事もなかったかのように飛んでいこうとした。」

「たったそれだけで…」

「んな訳ねぇだろ。コイツ自身からは無いが、奥の方から殺意や殺気を感じれる。お前も仙人だろ?ちょっとぐらいは感じられるだろ。」

 

 そう言われて、青蛾は精神統一をし始めた。暫く目をつぶっていると、突然ハッとしたように目を見開いた。

 青娥も感ぜられたのだろう。極わずかだが、完全に悪意のある殺気が。

 

「あ、消えた。死んじゃったのね。にしても、よくこんな小さな殺気を…」

「まぁな、これでも師匠なので。」

 

 俺も青娥に感心した。腐っても仙人らしい。どんな小さくても、一応は感じれたようだ。邪仙は撤回してやらんでもない。

 ただ、殺したのはいいが、弟子と虫嫌いが邪魔で動けない。

 

「なぁ、コイツらのせいで動けないんだ。この虫の処理、お前に頼んでいいか?」

「え~?乙女に虫の処理を頼みますか、普通…」

 

 そう言いながら青蛾はガラガラっと戸を開け、外の空気を吸いながら処理を始めた。結局やってくれるところに、俺は青娥らしさを感じる。

 しかし、一体どんな妖怪だろうか。一体何が目的で王を呪い、何の目的で俺たちを盗み見ていたのだろうか。思考を巡らせていると右腕から芳香の声が聞こえる。

 

「零……?」

「お、どうした?」

「ムニャムニャ…」

 

 また寝息を再開する。どうやら寝言だったらしい。思

 

「…かわいい顔してやがる。さっきも思ってたんだが、一緒に誰かと寝るこの行動で、永琳を思い出させてくれる。」

 

 芳香、そして美鈴の寝顔を見て、昔の永琳との生活を思い出した。しかし、そんな思い出は虫の死臭により邪魔をされてしまった。この不快感に腹が立つ。

 ついでだ、その妖怪も俺が退治するとしようか。そう、軽く考えていた。それが過ちだったのだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。