東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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満月は光る Ⅱ 『美貌』

 『美しい』。その言葉だけで全てが物語れた。その目、鼻、口、顔の形、表情、出で立ち、雰囲気、その全てか美しかったのだ。永琳と一位二位を争う程だ。流石は同じ…。

 それより、あの阿鼻叫喚を聞けば、外の様子を見ようとするのは当たり前だろう。丁度いい、彼女の質問に答えるように、俺はその姿を現した。

 

「やあ、お姫様。」

 

 俺の姿をその目で捉えると、視線が鋭くなり俺を睨む。

 

「今は警備が厳重なはずよ。」

「あれがか?量が多いだけで、厳重でもなんでもない。」

「…そうね。」

 

 そう、無愛想に吐き捨てた。というよりも、警戒をしているようにも見える。過保護なほどの警備といい、何かあるのだろうか。

 すると後ろから3人が我先にと顔を出し、彼女の姿を見て三者三様に驚いていた。

 

「本当にきれいね!」

「噂通りです…」

「ご飯じゃなかった…」

 

 このように女性すらも圧倒される美しさなのだ。この時代のトレンドとは言い難い顔立ちであるにも関わらず、この姿を潜在的に美しいと思えるのだ。

 とりあえず芳香には後で肉団子でもあげよう。

 

「あなたも求婚者?新しいわね、嫁を連れてくる人なんて。しかも夜中に。」

 

 それは、斬新すぎるプロポーズだな。そんなわけはないと、あちらも分かっていそうであるが、その理由としては恐らく…少し、試してみよう。

 

「いや、生憎俺達は結婚している訳じゃないし、求婚しに来た訳でもない。何故来たか…分かるよな?」

 

 俺はまるで何か含みがある様な言い方で、彼女に対してニヤリと笑う。すると、それに対して彼女は軽蔑した目をしながら鼻で笑った。

 

「ふん。そうと思ったわ。やっぱりあなたは月び…」

「ただ興味だけで見に来た野次馬旅人だ。」

「…へ?」

 

 やはり引っ掛かった。面白い、少し悪戯をしてやろう。

 

「それより『やっぱり』ってなんだ?ん?何か思い当たる節でも?」

「ググ…べ、別に?なにもないけど?」

 

 あくまでも白を切るようだ。こういう反応は弄り甲斐がある。俺は縁側に座り、目線を合わせようとしないお姫様を見上げる。

 

「へぇ、それより何か言いかけたよね?『月び』…何?」

「うぐッ!?た、焚き火と間違えたのよ!!『た』を『つ』と間違えたのよ!」

「ほぅ?仮にそうだとして、なんで今、焚き火なん?」

「ウガーー!うるさいうるさい!『月人』よ、これでいい!?」

 

 俺の質問に耐えかねたのか、姫という立場にはあるまじき態度を示した。こちらが本当の性格なのだろう。繕った仮面を剥がすことに成功した。これで、腹を割って話すことが出来る。

 

「よろしい。ならば、『八意永琳』を知っているか?」

「やっぱりあなた!」

 

 また警戒して、少し後退る。気が立っているのだろうな。俺は落ち着いてその誤解を解く。

 

「おいおい、月人が月人に『八意永琳を知っているか?』なんて聞かねえだろ。」

「それも…そうね。」

 

 納得してくれたのか、落ち着きを取り戻してくれた。落ち着いてくれなくては話せるものも話せない。これは、俺が旅をしてきた中で初めて目的に近付ける内容になるはずなのだから。

 

「でも、何故永琳を知っているの?」

「それは話が長くなってしまうな。取り合えず、名前を言っておこう。俺は神田零だ。」

「え!?ちょっと待って嘘でしょ!?」

 

 反応がおかしい。確かに、俺の名前は旅をしていく中でよく知られるようになったが、それにしてもこの驚き様は異常だ。

 

「初対面の君に嘘をつくわけがないだろ。そして、その反応なんだ?」

「神田零って…妖怪から皆を助け、核兵器で自分ごと妖怪を殺して、更に永琳の恋人の『月の英雄』の、あの神田零!?」

「合ってるけど、月の英雄?」

 

 月の英雄という言葉に疑問符を浮かべる。俺は英雄になった覚えはないし、そもそも月に行った覚えはない。そんな俺がそんな称号を得ているとは初耳だ。

 

「貴方、どんな人生歩んでいるのよ…」

 

 と、ジト目の青蛾。

 

「す、すげー…」

 

 話を素直に信じる可愛い弟子。

 

「……ン?話聞いてなかったー。」

 

 それはそれで悲しいぜ芳香。

 話すつもりもないことを旅の仲間に知られてしまった訳だが、この際どうでもいい。月での俺の逸話がどう伝わっているのかが気になる。

 

「わ、私は『蓬莱山輝夜』です!月の英雄…神田零様!」

「止めてその呼び方。怖いよ急に。」

 

 先程の態度からは考えられない変わり様。警戒心なんてものは元々なかったかのように、敬語で尊敬の眼差しを送ってくる。怖いとすら思える。

 

「お願いです。私をここから連れ出してください!」

 

 唐突なお願いに、流石の俺も驚きが隠せない。そんな時に簡単に気持ちを表現出来る、たった一文字の不思議な言葉を思わず口に出してしまった。

 

「は?」

 

 記号を入れたら二文字だった。

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