東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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満月は光る Ⅴ 『開華』

 少し湿り気を持つ風に苦しませられながら、ある場所に向かう。花畑を見に来たのだ。どうやら妖怪が持つ花畑らしく、早めに暑くなったこの時期に満開の向日葵があると聞く。

 

「楽しみですね!」

「そだねー。」

「どこに行くか分かっていないのに肯定する。今日も、いつも通りの芳香ちゃんね。」

「それダメだろ。」

 

 暑い。太陽がサンサンと俺達を照らし、過剰に熱している。恨めしく太陽を睨もうと思ったが、生憎眩しいのでそれすらできない。

 そんな、下らないことを考える内に着いた花畑。

 

「綺麗…」

「そうだな。」

 

 美鈴はその花を見て、感動したのだろう。感想が口から溢れ出た。

 辺り一面向日葵に埋め尽くされている。どうやら、相当長い年月を生きている妖怪なのだろう。長く生きないと、ここまで多くの花を一人の妖力では管理できない。恐らく、大妖怪と言える存在だ。

 素直に感心していると、後ろから女性が俺に声をかける。

 

「あら、どなたですか?ここに来るなんて、珍しいわね。」

「ここの花畑を管理していると言う妖怪さんですか。綺麗ですねぇ。観光できたんですよ。」

「あらあら、こんな場所まで御足労頂いて。」

「いえいえ、ここの美しい花を見たら疲れなんか吹き飛びますよ。」

「フフフフ。」

「ハハハハ。」

 

 次の瞬間、女性と俺のの拳がぶつかり、その交わった拳を中心に衝撃波が向日葵を揺らした。

 なんの前触れもなく先頭が始まったことに対し、青娥は呆れ、美鈴は何が何だかわかっていないようだった。

 

「えぇ!?何処に喧嘩する場面があったんですか!?」

「ない。」

 

 口を揃えて、俺たちは否定した。

 

「私の名前は『風見幽香』。ヨロシクね。」

 

 幽香は上手く作りあげた笑顔で手を差し伸べる。ヨロシクされたくないのだが、今はどうでもいい。

 

「『神田零』だ。」

「フフフ…暦の上では夏ではないのに、もう夏の暑さになっている。花は太陽に左右されるの。人間や妖怪もね。」

「知ってる。思考が鈍るからな。」

「あなた、何しに来たの?」

 

 噂では聞いていた、恐ろしい妖怪だと。どうやら、彼女は人間にいいイメージを持っていないらしい。その目には憎悪や憤怒のそれを孕んでいた。

 

「貴方の首をはねて、都にさらしてやる!」

「……」

「死になさい!」

「フッ…」

 

 殴りかかってくる幽香を手で押し返し、その反動で背中を向けて歩く。幽香は訳がわからなく、俺を呼び止めようとする。

 

「な、何やってるの?私を殺しに来たんじゃ…」

「なんで殺さなきゃなんねぇの?」

「え?」

 

 俺は妖怪退治の依頼を請け負っていることで有名らしいのだ。そんな人間が目の前に現れたら、妖怪は自分を退治しに来たと考えてしまうだろう。

 

「俺らは、ただただ花を見に来ただけなんだ。」

「ふうん?久々に誰かと戦えると思ったのだけれど。」

「どうしても戦いたいのなら…『亜空間の原子』。」

 

 その瞬間、その場にいる俺以外の者の真下に、亜空間が開く。

 

「俺の連れと戦うんだな。」

 

____________________________________________

 

 地面らしきものが見えたため、タイミングよく受身を取る。すると私に続いて、神田零の連れが同じように降ってきた。

 

「イテテテ……なんで私たち何でしょう。」

「知らないわよ。」

 

 呑気に神田零の愚痴をこぼす目の前の奴らに、なんとも言えない苛立ちを感じる。

 

「…もういいわ、全員殺してやる。」

 

 まずは、あのずっと手をのばしている。弱そうな奴を殺そう。私は地面を蹴り、一瞬で移動して札を顔面に貼ったソイツの鳩尾を殴る。

 

「なにやっているんだー?」

 

 おかしい。変形しないどころかビクともしなかった。何者だ?彼女らに不気味な印象を抱き始める。

 

「言っとくけど、そこら辺の妖怪とは違うわよ。」

「あの人の弟子なんです。負けるわけにはいきませんのでね。」

「しぬのは、あなたかも。」

 

 お札女は、私の両腕を掴んで地面に叩きつける。先程までニコニコしていた彼女は、戦闘が始まった瞬間に別人のように変わった。

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