東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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満月は光る VI 『花畑』

 私としたことが、こんな頭が弱そうな娘に恐怖してしまうとは。しかし、この娘が人間ではないのは確かだ。なにせ、六割の攻撃を受け止めたのだから。

 他の二人も、恐らく人間ではないだろう。一人は妖力を感じる。一人は、何だろう。感じたことのない力の流れを感じる。

 考えても仕方がない、攻撃をするために一気に近付く。

 

「ちーかよーるなー!」

「断るわ。」

 

 私の振りかぶった拳と、お札女のただただその位置に置いただけの握り拳が交わった。しかし、ビクとしなかった。関節をずっと伸ばして居るはずなのに、一体これはどういうことだ? 

 私は拳を思い切り当てた筈なのに、あっちは何もしていないのに、こんなに硬いのは何故だ?

 私ほどの力はない。だが、得体の知れない力を持っている。 

 それに加え、何がなんでも腕や足の関節を曲げないのだ。なめてる。ハンデのつもりか。

 

「関節、曲げたらどうよ。」

「むりー。」

 

 何がなんでも曲げない気か。その生意気な態度に、だんだん苛ついてきた。久々に怒りに任せた拳を心臓の辺りに当てる。これで血の流れを変えて別の苦しみを与えようとしたのだが、それで気がついた。動いてない。心臓が動いていないのだ。妖怪でも心臓は動いているはず。死んでいるのに、生きている?どういうことだ?

 そんな思考をしている中、私の周りをうろちょろしている赤髪の女が鬱陶しい。攻撃をしてこないからいいものの、静かにできないのだろうか。

 

「貴女、何者よ?」

「芳香。」

「名前じゃない。」

「えと…忘れたぁ。」

 

 笑顔で、バカのような発言。私を完全になめてる。あまりの苛立ちを抑えるために深く溜め息を吐く。

 すると、後ろから気配。やっと攻撃してきたようだ。

 

「私達を!」

「忘れないで下さい!」

 

 囲まれながら顔面を狙ってきたため、私はしゃがむように下へ逃げた。その状態で足を崩そうと蹴ろうとするが、案の定跳んで避けた。そんなことを最初から知ってた私は彼女等の間で足を止め、能力を発動する。

 

「食らいなさい。私の植物の力を!」

 

 私は、自分の足が着いている地面から茨を出し、青髪の女と赤髪の女に巻き付くように攻撃する。これで動き回ることも出来ないはずだ。

 関節を曲げない娘は足をつかんで転ばす。

 

「うぬわぁー。」

 

 避けると思っていたのだがコケた。普通にコケた。

 

「案外楽だったわね。一度に全員を戦闘不能の状態にしたのだから。」

「いや、それはないですよ。」

「何?」

「私たちにだって能力はありますし。」

 

 茨に巻き付かれていながらも赤髪の女は強い目線でそう呟いた。そこから抜け出す能力があるのか。面白い。是非とも見せてもらい限りだが、今はこの舐めきっているお札女に目を向ける。すると、お札女は先程までの雰囲気や口調とは全く違う、別人のように変わっていた。

 

「終わらない。戦いは終わらない。何故なら、敗けてないから」

「…貴女はそうかもね。だって、関節を曲げればすぐ立てるもの。もう曲げたらいいんじゃあないかしら?それとも何、悔しいの?」

「まがらないのー。」

 

 また、先程の口調へと戻った。この女は人格が二つあるのか?いや、それよりも曲がらないとはなんだ?曲げたくても曲げられないということなのか。

 

「本当なの?」

「うん。」

「えぇ…」

 

 ずっと抱いていた怒りが馬鹿みたいだ。なんとも言えない複雑な感情が渦巻く。

 お札女は地面を腕で叩き、勢いで立ち上がる。運動神経も得体の知れない域にいるらしい。

 

「本当に何者よ。」

 

 頭が痛くなってきた。両極のこめかみを親指と中指で抑える。

 

「よっと、これでやっと動けますね。」

「え!?」

 

 背後から声が聞こえる。振り返るとそこには、茨で縛った筈の赤髪が居た。その奥を見れば、枯れた茨が在った。

 

「私は『気を使う力』があります。ですから、私の中の気を使って茨を枯らしました。」

「え、ズルい。そんなことできるのなら私の茨も外してよー。」

 

 私の植物を枯らしただと?私の可愛い子どもたちを、目の前の赤髪に殺された。

 殺意。生まれた物は殺意だ。殺してやる。

 

「貴女を殺すわ。」

「え、私単体!?」

 

 私は日傘を向けて、宣言をした。

 

「う~ん…ガンバ★。私のことは気にしないでね!」

「うぉおいい!?」

 

 私は、赤髪に向けた日傘からレーザーを放った。しかし、ソイツは逃げるでもなく、ただ深く呼吸をしていた。

 

「フーッ………ハァッ!」

 

 赤髪は私の放ったレーザーを殴った。跳ね返るはずがない。食い止められるはずもない。奇行を行った赤髪は、何をしているのだ。そう、嘲笑していた。しかし、それは予想と反した。

 跳ね返したのだ、レーザーを。

 

「気を拳に集中させ、跳ね返しました。」

「………チッ。」

 

 私は殺す気で戦っているのに…コイツらはずっとふざけている。赤髪が青髪の方に向けて跳ね返したのだ。

 

「あ、惜しい。」

「貴女…わざと私の方に跳ね返したわよね?」

「偶然です。」

 

 もう、限界が近い。

 

「ちゃんと戦え。」

「ちゃんと戦ってます。これでも、私は戦闘に誇りを持っている人でして。」

 

 どこがだ、戦っていない。

 

「いいえ、戦ってます。それじゃあ、おさらいをしましょう!」

「は?」

 

 いきなり、なにを言っているんだ。

 

「私は『気を使う力』を持っています。それにより、レーザーを跳ね返すことが出来ました。」

「一体何を…」

「一番最初に攻撃された芳香さんに興味を持ち、一切私達に見向きもしなかった。」

 

 こいつは何をしているのだ。気でも狂ったか?

 

「今思えば、不思議じゃありません?芳香さんと戦っている間にもっと早く三人で攻撃をできたはず。」

 

 確かに、不思議には思っていた。

 

「なのに私は、周りをグルグルまわっているだけ。」

 

 チラチラとは見えていた。

 

「それがなんだっていうの。」

「私も力を求めし旅人ですから、どこからどのような力の流れがあるか、分かるのですよ。例えば、この日傘から力の放出がなされることは何となく分かっていました。」

「だから、何を言っているの!?」

 

 我慢できない。私は日傘をもう一度赤髪に向ける。私も分かるのだ。彼女には、その気とやらを使う力を使い果たしてしまったことを。

 これで最後だ。しかし、赤髪は余裕の表情で話を続ける。

 

「もし、周りをまわっている時に『空間にレーザーを跳ね返す気だけを留めていたら』?」

「…?」

「そして、私が跳ね返したレーザーは青蛾さんに当てる為ではない。」

「…まさか!?」

「もう遅い。」

 

 振り返ると、一寸も離れていない所に私のレーザーが在った。そして、飲み込まれる。

 つまりだ。赤髪が、留めておいた気がレーザーを跳ね返しながら移動させていたのだ。赤髪はワザと私を怒らせ、日傘を使わせた。

 レーザーに焼かれた私はその場に倒れ込む。すると、どこから現れたのか、神田零が得意げな表情をしながら赤髪に近付いた。

 

「よく頑張ったな、美鈴。」

「え、えへへ……そうですかねぇ?」

 

 頭を撫でられ、赤髪はニヤけている。なんという屈辱なのだろう。

 

「すまんな、弟子達の実力を見たかったんだ。許してくれ。」

「許さないわ。だって、私の茨を枯らしたのだもの。許さない。」

「え?確かに枯らしましたけど…元に戻しましたよ?」

「…は?」

 

 茨があった方に目を向けると、綺麗な色をした茨しかなく、枯れた茨は見つからなかった。

 

「ど、どう言うこと?」

「気を使ったんですよ。気は、大きく分けると二種類に分けられます。『再生』と『破壊』です。」

「『再生』と…『破壊』?」

「茨を『破壊』させ、そのあとに『再生』をしました。」

 

 トコトン、訳の分からない力だ。

 

「まぁ、結局枯らしたことは事実だしな。謝るよ、すまなかった。」

「い、いや!師匠が謝らないで下さいよ!あ、あの本当に申し訳ありませんでした!」

「…ハァ、もういいわ。早く、ここから出してはくれないかしら?」

「いいぜ。」

 

 神田零が空間を手で切るような動作をすると、見慣れた向日葵が見える切り目が現れた。そこから出て、久しぶりの外の空気を吸うかのように、私は深呼吸をする。

 

「いい空気!あの空間吐き気がするのよ。」

「む、すまんな。」

「いいわよ、もう。なんか、いいわ。」

「なんだよ。」

「知らない。」

 

 この年一番内容がない会話をした気がした。ともあれ、やっと終わった。見ればもう夜になりかけていた。

 

「もう、今日は泊まりなさい。」

「良いのか?」

「ええ、いいわよ。さぁ、家はこっち。来なさい。」

 

 私はコイツらを許しはしない。けど、何となく、コイツらは醜いドロドロとした人間味がないのだろうと感ぜられた。

 きっと、酷く疲れた表情をしているだろうが、気分は少し晴れていた。

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