東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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永琳の苦労 Ⅲ 『裏切り』

 昨日の決意から、私たちは大規模なロケットの設計図を考えていた。帰って来れるとは限らないため、都に住民を置いていく訳にもいかず、そんな大規模なロケットを数十機も造らねばならないのだ。

 

「ここはどうしたらいいと思う?」

「横20m、縦15m、高さ30mにした方がいい。」

 

 今設計している場所は全体の1割も満たない。それほど大きく、また、それを動かすのに相応のエネルギーが必要である。核燃料を詰め込む予定だ。行きの分と帰りの分を詰め込むと、気が遠くなるエネルギー量だ。

 少しでも量を減らすために、零に設計を手伝ってもらっている。とは言うものの、ほとんど零が考えていて、私は設計図を書いている感じだ。

 やはり、私よりも頭いいのかもしれない。その頭脳が欲しいわ。

 

「欲しいのか?」

「心を読まないで。」

 

 そういえば、彼は人の考えていることを読めるのだ。全く便利な能力だ。指揮も取りやすいし、交渉にも使えるだろう。

 

「欲しいのかって…じゃあ、欲しいって言ったらくれるの?」

「脳の細胞を創ることは出来るぞ。」

「………そうだったわね。貴方はモンスターだった。」

「じゃあ、今から創るから一分位待ってて。」

「いや、いらないわ。」

 

 お願いしようとは決して思わない。いやちょっと欲しい気もするけど、なんだか生理的に受け付けない。

 

「そう?じゃあいいや。にしても昼か…何か作ろうか?」

「えぇ、お願い。」

 

 本気か、冗談か。彼はたまに言っていることが狂気じみていて恐ろしい。頭を掻き、髪を崩しながら私は紙に真っ直ぐな線を引いた。

 

────────────

 

 暫くして、部屋の奥からいい匂いが漂ってきた。昼ごはんが完成したのだろう。しかし、先程は流れでお願いしたものの、彼が昼ごはんを作るのは初めてなのではないか?果たして美味しいのだろうか。

 いや、彼はなんでも出来る生命体だ。料理ぐらいできるだろう。

 

「出来たぜ。」

「あぁ、ありが……なにこれ。」

「え?料理だけど。」

「そうじゃなくて、なんでこんなに豪華なのよ。」

 

 隣の部屋へ行くと、20人くらいが余裕で座れるぐらいの長テーブルに、テーブルの板が見えないほど大量で豪華な食べ物がそこに並べられていた。

 ここから海まで徒歩4日はかかるはずなのだが、なぜ蟹が、なぜウニが、なぜ鰻があるのだろうか?それにこの鰻、異様に大きくないか?

 

「この鰻、痺れて痺れて苦戦したよ。」

 

 まさかの電気鰻だった。もはや陸すら違う。確かに電気鰻がどのような味なのかは気になるものの、まさか今日それを味わえるとは誰が分かっただろうか。

 いやそれより、どうして触れるのだ。

 

「俺がモンスターだからじゃね?」

「心を読むな!」

 

 結局、部下達も呼び、なんのパーティーかも分からないパーティーが開かれることになった。

 

────────────

 

「いやー、食った食った。ありがとうございました、僕達を呼んでくれて。」

 

 一人の部下が膨れた腹を擦りながら感謝してきた。零が自慢げな顔をしているのがなんともイラつく。

 

「このアホが十分で世界を旅して、三分で全部の食材を使って料理したから食べきれなかったのよ、むしろ助かったわ。」

「誰がアホだよ。」

「貴方よ。」

 

 わざとらしく彼は半笑いで首を傾げている。恋人であろうとその笑顔を拳で破壊してやりたくなった。

 

「ド直球に言うなよ、普通に傷つくぞ。俺のハートは90%がガラスで出来ているんだぜ?」

「残り10%は?」

「カッコ良さ。」

 

 私はついに彼を殴った。可哀想だから腹にしてあげた。もう流石にウザすぎる。

 

「うげぇ!?俺でも痛いもんは痛いんだぞ!」

「あっそ。」

「こ、こいつ…!」

「というか、昼ご飯の筈だったのに、何でもう夜なのよ。」

 

 窓を見ればスッカリ暗くなっている。部下たちは酒を開け始め、パーティーはほぼ宴と化してきた。なんの祝い事でもないのに騒いでいる部下たちは、ただ酒を飲みたいだけだろう。

 

「ハァ…」

「ため息は幸せを逃がすぜ。」

 

 誰のせいだと思っているんだ。

 

──────────── 

 

 いつものように部下たちが酔いつぶれ、部屋が地獄と様変わりした後、私たちはその地獄の研究所から自宅へと向かっていた。夜風が気持ちよく、酒を呑んだ後には丁度いい。

 

「そういえばさ、さっきのパーティーで気になるやつが居たんだよ。」

「気になるやつ?部下しかいなかったと思うのだけど…」

「なんか、見た目人間だけど中身が妖怪だったな。」

 

 彼は一体なにを仰っているのだろうか?

 

「イヤイヤイヤ、なに言ってるのよ!この都に妖怪が入れるはずないじゃない!?」

「いやでも妖怪だったぞ、断言出来る程度には。」

「もし妖怪が居るんだとしたらなんで私に言わなかったのよ!?」

「だって、飲みの席で白けること言いたくないじゃん。」

 

 この人が元々人間ではなかったとしても、さすがに感覚がズレていると思わざるを得ない。優先順位は確実にそれではないのだ。

 

「あと、勘だけど相当強いよ。」

「勘って…」

 

 しかし、もしそうだとするとスパイだろうか。この私でさえ、分からないくらい妖力を隠すのが上手いということは零の言う通り、強いかもしれない。

 ただでさえ忙しいのに、さらに厄介事が増えてしまった。いつしか恋人のためなら疲れないと言ったが前言撤回をする。

 

「とりあえず分かったわ。明日から捜しましょう。」

「ガンバレー。」

「なに言ってるの?貴方もよ。」

「ロケットはどうするのさ。期限までに間に合うか?」

 

 何も言えなくなった。

 

「ガンバレー。」

「頑張ります…」

 

 一人で捜さねばならないのか。最近、私ばかりが苦労してばかり。特にこの男が来てからだ。惚れた弱みがすぎる。

 ロケットを造って、月に到着したら『永琳の苦労』って本を出そう。そう決心した。

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