東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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玉の緒の刀 Ⅴ 『仲立』

「全力で行くよ。」

「おう、来い。」

 

 やっと、コイツの番が回ってきた。鞍馬への侮辱を撤回させるために拳を構えているのだが、同時に俺はこの戦いを楽しんでしまっている。悪い癖だというのは俺も理解している。ただ、感情ってのはそう簡単に制御できるもんじゃない。

 

「四天王の二人が誰かに負けるなんて初めてでねぇ…本気で行かせてもらうよ。」

「そうか。ならば、俺も。」

 

 俺は右手から、青く輝く刃物のような物体を出した。そろそろこれに名前を付けたい。でも、どうにもしっくりくる技名が思いつかない。

 そんなどうでも良いことを考えていると、鬼達はこれに反応した。萃香や華扇は驚愕した眼差しを向け、勇儀はジッとそれを見ていた。

 

「…アンタ、神殺しだね。」

「人聞きの悪い。神は信仰が有る限り死なないんだよ。」

「でも、結局は戦って勝ってきたと。」

 

 コイツは一体何が言いたいのか。含みを持つような言い方をしていて、なんともむず痒い。取り合えず、顔を縦に振って肯定する。すると、勇儀は片手で顔を隠すように俯いた。

 

「…フフ。」

「…?」

「ハッハッハッハッ!!」

 

 唐突に勇儀は盛大に笑い出す。その笑い声に俺らや天狗達は勿論、相手の鬼達も困惑していた。

 

「ハッハッハッ!!いやぁ、だったら当たり前だわ。」

「は?」

「そりゃ負けるよ。あー腹痛い。」

 

 開き直りってやつか?まだ戦ってないのに。あまりの拍子抜けな展開に、俺は構えを解いた。

 勇儀は涙を人差し指で拭って話し続ける。

 

「だけど勝つよ、アンタにね。そんな気持ちで戦わないと失礼だしね。」

「お、おう…」

 

 勇儀はそう言いながら、笑って乱れてしまった呼吸を整え始めた。

 

「フゥ…ハァアッ!」

 

 またも、予備動作なしで勇儀が拳を突き出してきた。萃香の時のこともあり、瞬時に避ける。そのついでに『痺の細胞』を使い、勇儀にカウンターをくらわせようと顔を掴もうとする。

 勇儀はカウンターの存在に気付き、手で受け止めるが意味無し。触れた瞬間、体が痺れる。

 

「アアァ!?」

 

 ズシンと渡る激痛が全身を駆け巡っているだろう。だが、勇儀はそれを耐え、俺の腕を掴む。そして引っ張り、地面に叩き付けた。

 

「グッ!」

 

 地面に寝転がっている俺の顔面目掛けて殴りかかるが、首を傾げて回避。

 俺の真下に『亜空間の原子』を開き、そのまま落ちる。俺の出鱈目な能力に周りは驚いた。もちろん、勇儀も。

 気になったようで、勇儀は亜空間を覗き込む。そんな彼女のその真上に、一つ亜空間が開いた。

 

「一緒に来るんだ。」

 

 下に落ちた俺が上から降ってくる俺にビックリしたのか、口を開いていた。

 そんな勇儀を掴み真下の亜空間に入る。ループだ。 どんどん加速して行く。そして、一瞬で真下の亜空間が閉まり、勇儀を地面に叩き付けた。

 

「ガハッ!?」

 

 最後に閉め技。これで身動きがとれない。勇儀は観念したのか、俺の背中をポンポンと叩き、ギブアップのサインを出した。

 

「あ~あ、直ぐに負けちまった。」

「ほら、立てるか?」

「ありがと。」

 

 俺の手を掴み、立ち上がる。

 

「神は殺して私は殺さないんだね。」

「だから殺してねぇって。」

 

 勇儀は大きく息を吐き、負けをしみじみと実感しているようだった。

 

「領土の事だね。分かった、諦めるよ。」

 

 その発言に、天狗達の喜ぶ声が聞こえた。中には鞍馬や文の声、俺の仲間も混じっている。

 

「本物の鞍馬はいるかい?」

「ワシだ。」

「領土は諦める。ただ、友好的にアンタ達と接したい。」

 

 ここまで宣戦布告をして…という無粋な横槍は入れない。これは、天狗の代表である鞍馬が決めることだ。鞍馬は顎に手を置き、眉を顰める。

 

「うむ、それなら構わない。」

「い、いいんですか!?」

 

 その反応は文のみではなかった。他の天狗たちも驚いていたが、俺からすれば納得の判断だった。変に溝を深めるより、友好を築いた方が、天狗としても今後の動きがスムーズになるだろう。

 

「こやつは本気で諦めたようじゃ。コイツらよりは弱いが、コイツらよりは長く生きている。目で分かるわい。」

 

 流石、と言って良いだろう。この鞍馬のカリスマ性は尋常じゃあないだろう。根拠がないが、何か説得力がある。こいつもきっと、言霊ってやつが実っているのだ。言霊は余り感じにくい物だな。

 

「んじゃ、記念に呑むか。」

「お、いいねぇ。」

「みな、今宵は宴じゃ。酒を倉から出せ!」

 

 俺の提案に、勇儀も鞍馬も大賛成する。緊迫していた空気は嘘のように、明るい活気のある雰囲気になった。思わず笑みがこぼれる。

 そんな中、萃香が俺に話し掛けてきた。

 

「あのさ、私は人間には死んだってことにされているからさ…」

「あぁ、言わないよ。」

「そう…ありがとう。」

 

 その言葉を聞いて、俺は亜空間から酒を取り出した。

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