あの後、牛若丸とは別れて俺は旅を続けている。牛若丸の方は、今では目的の母親に会ったそうだ。祝福すべき出来事だ。今では『
ある日、俺達は久しぶりに諏訪へ行くことになった。いつ来ても懐かしさを感じさせる諏訪大社の大きな注連縄を目の前に、俺は思わず笑みがこぼれる。
「ん~、久しいな。」
「本当に定期的に帰りますよね。」
「まぁ、約束したしな。」
諏訪大社の戸をいきなり開け、中にいるであろう諏訪子の反応を期待する。唐突な戸の開閉に、中にいた人物は驚いたような表情でこちらを見るら、
「うぇ!?れ、零!?か、か、帰ってくるなら言ってくれれば…もっと準備出来たのに…!!」
「いやぁ、いつもこのぐらいには来てるだろ。何で毎回同じ反応なんだ?」
俺はニヤニヤと弄り甲斐のある諏訪子の赤面を覗き込む。そんな俺に諏訪子は慌てて顔を隠す。
「あーうー…あ、どうもお久しぶりです。お弟子さん達。」
「お久しぶりです。」
「ヤッホー!」
「あーうー。」
青蛾は軽いし、芳香は挨拶じゃない。ただ諏訪子の真似しただけだ。最初に連れてきた時はもう少し丁寧だったはずなのだが。
苦笑いをしていると、奥の部屋から神奈子が珍しそうに現れた。
「おや、零じゃあないか。久しいな。」
「久しぶり。」
フランクに挨拶をしてくれたため、同じように返した。所で、神奈子の後ろに誰かいる。小さな女の子だ。もしや…
「神奈子、その子は次の巫女かい?」
「ん?あぁ、そうだ。ほら椿、諏訪子が恋した男性だよ。」
「んな!?」
それに関しましては俺も申し訳ないと思っている。どうやって反応すれば良いのか分からない。神奈子は分かってそう言っていやがる。いい性格だ。
「はじめまして…」
「ん、初めまして。」
笑顔で挨拶をすると、照れなのか、俺が嫌なのか、椿は神奈子の後ろに隠れ、こちらを覗いている。
「ハッハッハ、この子は人見知りだからねぇ。悪く思わないでくれ。」
「分かっているよ。」
暫く話し込んだ後、酒を開けて、毎度恒例となっている再会を祝う小さな宴を行うこととなった。
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「久しぶりに呑む酒もウマイ。」
「もっと呑めー。そして酔えー。過去の恥ずかしい黒歴史を語れぇ!!」
「遠慮しておく。」
「くっ…!」
「っていうか、お前が酔ってるやん。」
俺の肩に頭を預けながら呂律の回っていない口で話しかける。目も薄らと開いていて、焦点が合っていない。誰がなんと言おうとベロベロに酔ってる。
「そってしておけ。」
神奈子が呆れながら、諏訪子とは逆側に座る。
「そういや、今は源頼朝だとか義経だとかが有名だよなぁ。」
「義経ね、懐かしいな。」
「知り合いかい?」
「色々あってね。」
今、彼は何をしているのだろう。きっと、大勢の武士の先頭に立ち、導いているのだろう。
牛若丸の活躍を祈っていると、そんな俺に神奈子は複雑な表情を見せる。
「だとしたら、言いづらいが悲報がある。」
「…何だ?」
「今、彼は追われる身になっている。」
あの高い志を持つ青年が、追われる身だと?あまりの事実に上手く飲み込めない。
「何故?」
「兄の頼朝と戦術や考え方の違い、それと行き違いがあってそうなったらしい。」
俺は当事者では無い。だから、頼朝に対して何かを思うことは無い。しかし、あの牛若丸が兄に拒絶されているという、その事実が受け入れられなかった。
「…今日はもう寝るよ。」
「そうかい。じゃあ私も寝るか。」
酔いが一気に冷め、呑む気も失せてしまった。しかし、俺はある覚悟を決め、その夜を越した。
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「みんな、もう準備は出来たか?」
「えぇ、勿論よ。」
朝、俺は諏訪子たちと別れ、青娥たちと険しい表情をしながら晴天の下を歩く。
「じゃあ行くぜ。義経のもとに。『ナビゲーター』。場所は……『東北』?」
「相当逃げたのですね…」
俺は、彼を助けたい。彼が今、助けを求めているのならば、今すぐにでも駆け付けたい。
「『瞬間移動』ッ!」