俺の構える刀を見て、ユナは納得したように頷いた。
「なるほど、霊魂か。しかも擬態化するとは珍しい。よっぽど強い念だ。」
「当たり前だ。零さんの命が狙われているんだ。そのままにはいかぬ。」
こう思ってくれる人がいる。そう気付く。それは、美鈴達や諏訪子達、神子達や文達、そして永琳達。挙げると数多の数だった。
俺は、護られている。
「まぁ、どうでも良い。どっちにしろ…死ね。」
ユナは一瞬で俺の前へと現れ、渾身の一撃を食らわそうと拳を振るうが、その拳は刀によって遮られた。
そろそろ、美鈴達も目を覚ましたようだ。
「ッウグ!!……あんただけが、刃物を扱うなんてフェアじゃあないよなぁ!?」
「………?」
「まさか!零さん、構えてください!」
丸に言われた通りに構えるが、ユナはお構い無しに弁慶の死体の方へと向かった。ユナは弁慶に触れる。軽く撫でる程度。
すると、空中に幾つもの武器が浮かんできた。あらゆる場所から出てくる。
「あれは弁慶の所有物です。武器を集めるにが趣味でした。」
「おかしくないか?アイツ、武器に触れていないのに能力が発動している。」
「なにやら『特典』というもので、『生物を触れるだけで、それの所有物を扱える』らしいです。俺も、彼に触れられて刀を奪われていたのです。」
『特典』か。次から次へと問題が降りかかってくる。その一つ一つの問題を潰すのにどれだけ労力を割かなくてはならぬのか。苛まれる。徒花を見ている気分だ。憂鬱な気分。
「食らえェ!!」
「……」
それらは一気に向かってくる。勿論避けるが、限界が来るのは当たり前。何処かで防がなくてはならぬ。
…否、その必要性はない。
「当たれェェェ!」
「回りを見ねぇのが、あんたの悪いところだな。」
「あ?」
次の瞬間、美鈴の拳によってユナは吹っ飛ばされる。勢いで俺の方へ。
「ハァッ!」
斬る。ユナはすれ違うように倒れ、その胴体から一筋の綺麗な線が血を吹き出した。
「ガハッ!!ハァ……まだだ、刀に触れたからな。」
俺の手の中に納まっている刀になった丸は、ユナの後ろの方へと飛んでいき、地面に刺さった。
「お前に刃物は効かない様なもんだからな。」
「よくわかっているじゃあないか。」
「お前を殺すためにお前を知ってきた。」
「その努力は無駄になる。」
「どうかな?」
軽口を叩くのもそろそろ止めにしよう。俺は確信した勝利に、思わず笑いが込み上げる。
「…もう、無駄になっているか。」
「は?」
何かが勢いよく斬れる音。ユナの背中が斬れたのだ。斬ったのは、丸である。
「刀になるだけじゃない。幽霊なんだから、人の形をするのは当然。なぁ、丸。」
「えぇ、そうですよ。」
「…ク、クソ……クソどもがぁぁぁぁぁぁッ!!」
「秘技『八艘飛び』。」
出鱈目に斬っているようで毎回致命傷を与えている。正に秘技である。
「テイヤァッ!!」
とどめを刺す。ユナ・ネイティブはもう動く様子がなかった。
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「いやぁ、終わったな。」
「そうですねぇ。」
ボロボロになりながらも、灰まみれの屋敷の屋根の上で朝日を眺める。
「強くなったんですねぇ。」
「えぇ、それはもう。死んで霊になっても、力は死にません。」
美鈴のシミジミとした言葉に、丸は嬉しそうに答える。
「貴方、あのユナ・ネイティブって人と知り合いみたいだったけど…」
「まぁな。」
青娥の問いには、あまり深く答えなかった。青娥もそれに察したのか、あまり触れようとはしなかった。
俺は空を見上げ、目を瞑る。すると、微かな風の流れを感じる。
「なぁ、丸。一緒に来るか?」
丸は少し驚いた。が、直ぐにその表情は笑顔になる。
「勿論です。」
と、答えた。
「よし、じゃあ行くか」
そして、旅は朝日に照らされながら再開する。この旅は、一体どこへ向かっているのか。それは誰にも分からない。
ただ一つ、その終わりの見えない旅は確実に終わりに近づいていっていることは分かるのだ。黄泉からの刺客。俺が命を狙われている、その理由が分かれば、全てが終わる。
俺は立ち上がると、四人も立ち上がる。頼もしい仲間がここにいるのだ。必ず、この呪いの旅に終止符を打つ。そうして、俺はその足を前に出した。