東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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心の隙間の温かみ Ⅱ 『契約』

 握手を交わした紫が少し二人で話したいと申し出たので、近くにあったボロボロの建物で話し合うことにした。念の為、ということで、俺と紫以外の五人は外で待機してもらうことになった。

 寒い中で待たせるのは申し訳ないので、適当な枝を集めて『熱の細胞』で火をつけて焚き火を作っておいた。

 

「その…零、本当に良いのよね?」

「あぁ。というか、さっきからそう言っているだろう。理論上は可能だしな。」

「創るのにも膨大な霊力と妖力、それに神力が……」

「膨大に有り余ってるよ。」

「……うん。」

 

 改めて訊いてきた紫は、俺の返答を聞くと口を綻ばせた。

 

「取りあえず、広い土地を結界で囲めばいい。探してくるよ。その後に、俺が色々な力を使って小さな異世界を創る。」

「あ、貴方にそこまで負担はかけたくは…」

「君が誘ってきたんだろう?」

「うぅ、でもぉ…」

 

 何をそんなに遠慮してるのか。やはり、俺が忘れているだけで過去にこいつと何かがあった?

 だとしても、思い出せない。

 

「ああもう、めんどくせぇ!んだったら、霊力が豊富な神社の巫女や神主も誘ったらどうだ!?」

「え……?」

「その世界。出来た後はどうなる?」

「後?」

 

 計画性がまるでないな。良いだろう。手伝うと契約を結んだんだ、折角なら助言をしてやるとしよう。

 

「いいか?その世界を創って永遠に平和がくるわけじゃない。平和は只じゃないんだよ。」

「…なるほど、必ず『異変』が起きる。」

「そうだ。結界で孤立した世界だぜ?妖力と霊力で溢れて仕方がない。暴れたい妖怪も出てくるさ。」

「…それを解決するために『巫女』、もしくは『神主』と言うわけね。」

 

 理解したようだ。

 

「しかしだ、油断してはならない。」

「え、なんで?」

「その異変を解決する者自身が異変を起こすかもしれない。」

「……」

「異変を解決する者は二人以上であり、そして親しい仲や犬猿の仲等の様々な関係性を持たせた方がいい。」

 

 紫は納得したように頷いた。それと同時に肩をすくめた。

 

「しつこいようだけど、本当に覚えてないの?」

「すまない。やはり、君の顔を見たことはないと、俺の脳が判断している。」

「そう…昔はこうやって意見を言い合ってたのに。用意周到なのはいつでも変わらないのね。」

 

 そんな懐かしむように言われても、分からないものは分からない。なんとも言えないやりづらさを感じる。

 この際だ、あやふやにするのも気持ちが悪い。俺は紫に問う。

 

「俺達が出会ったのはいつのことなのだ?」

「…いえ、いいわ。もしかしたら、同姓同名の顔が似た人なのかも。」

「そんな人、いるのか?」

「存在の否定は出来ないわ。」

「確かにそうだ。」

 

 俺は肯定したが、心の中では否定した。少なからず、顔のパーツは何処か違うだろうし、久しく会ったにしろ、抱き付くほどの仲の異性の顔を間違えるだろうか?雰囲気だって違うだろうし、態度だって違うはず。

 そう思考をしていると、後方の戸が開く。振り返ると青娥の姿があった。

 

「零、ちょっと来て。」

「分かった。すまん、少し空ける。」

「いいわよ、気にしないで行ってらっしゃい。」

 

 俺は後ろ手で戸を閉め、青蛾の用事を伺う。

 

「気になったのだけれど、何故彼女の計画に参加したの?」

「何故って?」

「きっと、永琳達を匿うためと、彼女のこと。記憶にないから償う気持ち半分で乗ったのだろうと思うけど、その他に理由があるんじゃないの?」

 

 鋭いな。流石青蛾だ。伊達に何百年も共に旅をしていない。

 

「何故そう思う?」

「……勘?」

「結構。ならば教えよう。」

 

 青蛾は少し前屈みになった。

 

「自身の正体を知るためさ。」

「なにか関係が?」

「力を結界で閉じ込めていれば、自と住民は強くなるだろう。その人達に頼んで一緒に正体を暴いてほしい。」

 

 それを聞くと、青蛾は少し驚いた様子だった。

 

「うむ、自分勝手なのは分かっている。だが…」

「意外…」

「え?」

 

 青娥は口に手を当て、わざとらしく驚く。というか、流石にわざとだ。何か嫌味を言うぞ。

 

「意外と気にしてたのね…自分の正体なんて気にも止めてないのかと。」

「おい、それどういう意味だ。」

「そう…でも、それは私達だけじゃ不満かしら?」

「い、いや、そういう訳では…」

 

 漸く気がついた。これは、青蛾達に対して力不足だと言っているようなものであると。しかし、今となっては断れない。身勝手すぎる。

 

「すまない…だが、多い方が早く分かると思い…」

「ふふ、良いのよ。別に悪気があったわけじゃないでしょうし。」

「……」

 

 何故、こんなことをしてしまったのだろう。俺はなんて酷い人間なのか。

 自己嫌悪に陥っていると、青娥は俺の肩をトントンと叩く。

 

「ほら、彼女の顔を見て。」

「え?」

 

 青蛾が指差したのは芳香だった。

 芳香は芋虫の行動に興味を示している。前まではあれほど虫を嫌っていたのに、不思議なものだ。

 

「彼女、実は生前の記憶をほんの少しだけ取り戻したそうよ。」

「なに!?」

「いつも蝶に戯れてたでしょう?それで、良い記憶じゃないけど『ユーベ』を思い出したらしいの。」

「………」

「貴方も、見つかるわ。」

 

 そうだな、と応えた。しかし、俺の心は晴れない。

 

「もう、いつまでもイジイジしてたらこの青娥ちゃんが抱き付くよ!」

「…お願いだ。」

「え?」

「…少し、人肌が恋しい。」

 

 俺の返答に、青娥は驚きつつも冗談めかして笑う。

 

「ダーメ。紫さん、放っておいてイチャつくのは悪いわ。後、本気にしちゃうから止めて。貴方にはもう居るでしょ?」

「…そうだな」

 

 もはや、精神が歪んできているのかもしれない。俺には永琳がいるのに、何をしているのだろう。俺は最低だ。

 

「じゃあ、納屋に入ってらっしゃい。」

「あぁ、分かった。」

 

 俺は背中に何か重荷が乗っかるような苦しみを味わいながら、建物に戻った。

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