東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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心の隙間の温かみ Ⅵ 『未来』

 私は零に紹介された島に降り立っていた。やっと目的地に着いたが、私の式の藍は未だに船の上で青い顔をしながら唸り声を上げている。

 

「藍、もう着いたわよ。」

「は、はい。ありが…うッぷ。」

「ハァ…」

 

 零も地を足で踏み、広がる光景を眺めている。私も横に並び、この候補の島を眺める。

 

「そう言えば、芳香は?」

「ぐっすり寝てるわ。」

「そ、そうなの。」

 

 この人達は普通の感覚になっているけれど、キョンシーって元々は死人で、さっきみたいに痛いなんて言わないし、寝たりもしない筈。つまり、人間らしいことはしないはず。

 やっぱり、おかしい。

 

「紫?」

「へ!?」

「うお。す、すまない。」

「え?ああ、気にしないで、考え事をしていただけだから…」

「そうか?なら良いんだ。」

 

 驚いた。心臓が体内で跳ねた気がした。その後も血液が体を巡る音が聞こえて止まない。取り合えず落ち着くために少し大きく息を吐くが、なんの変わりもない。

 

「今は幻想郷のことだけを考えるのよ…」

 

 そう自分に言い聞かせた。

 

「あ~、落ち着いてきた…」

「あら、もう落ち着いたの?良かったわ。」

「すみません…」

 

 藍はやっと船から降りて、またその場にしゃがむ。何が落ち着いたのだろうか。

 

「にしても変わったな、この島は。」

「そうですね…」

「同意です。」

「なにが変わったの?」

 

 ただ単に森が広がっている様にしか見えない。昔は巨大都市があったとかだろうか。そのような形跡は無いが。

 

「昔は、自由な島だった。楽しさで溢れた、笑顔の耐えない島。」

 

 もし昔がその様な島だった場合、今はその情報とは合わない。似ても似つかない。

 この島に人の声も聞こえなければ、動物の姿も見えない。ただなにかに支配されているような、重たい空気が漂っていた。

 

「…ダメだな。」

「え?」

 

 突然、零の口の否定に声が漏れた。ダメ…なんとなく何を指して言っているのかは分かる。候補として挙げたが、あまりにも変わり果ててしまったのだろう。

 

「今日の朝飯、当たったぜ…本気でダメだ…」

「いや、そっちかよ!?」

「すまん、部屋に戻る。」

 

 呆れたよりも驚きが多い。久しぶりに零の変人っぷりを見た気がする。でも、それを見て少し嬉しいと思ってしまう私も大概だ。

 

「あの人こそ自由ですよね。」

「そこが良いのよね。なんか母性本能がくすぐられる…」

 

 それはない。

 

「と、兎も角、私達も休みましょう。潮風に当たり続けて疲れましたし。」

「そうね、寝ましょー。芳香の具合も気になるし。」

「落ち着きはしましたが……ちょっとまだ胃に違和感がありますね。」

「じゃあ、霊体は疲れないので修行をしてますね。」

 

 各々が行動をするらしい。確かに、肝心の零がダウンしてしまったのだから私たちは下手に行動出来ない。

 

「なら、私も寝ることにするわ」

 

 そう言って、部屋に戻った。と見せかけ、零の部屋へ向かった。ドアをノックして、中にいる零に声をかける。

 

「零、入って良いかしら?」

「ん?いいぞー。」

 

 私はドアを開け、中に入る。中には寝具に横たわった零がいた。顔色は悪くなさそうだ。

 

「お腹、大丈夫?」

「ダメだ。まぁ、心配するな。俺の体だし、すぐに回復する。」

 

 確かに、零の体は特殊であるために大事に至ることは無いだろう。でも、心配は心配。

 

「心配するなって。別に死ぬ訳じゃあないし。」

「無理ね、心配するなって方が。」

「ふーん、優しいんだな。」

「…そんなことないわ。」

 

 もし、私が優しかったら貴方をこんな事に巻き込まない。巻き込まなかった。私に自信がないから貴方達を巻き込んでしまったんだもの。

 

「ねぇ、零。」

「どうした?」

「必ず、幻想郷を創ろうね。」

「当たり前だ。」

 

 零はあの頃と変わらない屈託のない笑顔で静かに頷いた。

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