目を見開き返り血を存分に浴びている男が妖怪の脳天をナイフでほじくっている。それは、八つ当たりと、村を襲っていた妖怪を退治して感謝されるという二点を報酬のためにい、勝った後の光景。
「どうしてだ、どうして!!俺は讃えられないんだ!!」
ただただ、生々しい音だけが響いた。
「幾ら悪人を殺しても、殺しても有名にも評判にもされやしねぇ!!」
暫くナイフで抉っている内に、楽しくも嬉しくもないのに、笑えてきた。狂気じみたその笑い声が、森の中を駆け巡る。
「…ならいっそ。」
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「…!?」
今の記憶は…?いきなり俺の頭の中に入ってきた。もしかして、今のはこの島を支配している悪神なのか。
しかし、最後に聞こえた言葉の『お前が悪となればいい』というのは、話の流れ的におかしい。『俺が悪となればいい』では無いのだろうか。
分からないが、それにしても何故そんな過去の記憶が脳内に入ってきたのか。
「零?どうかしたの?」
青娥は俺の困惑に気がついたのか、心配しながら俺の顔を覗いてきた。
ということは、俺だけだということか。
「あ、あぁ…気にするな。」
こんな入り込んできた記憶なんてどうでもいい。目指すは島の奥地、霊魂の集う場所。そこで悪神を潰す。
「そこまで時間はかからない筈だ。」
「それなら、私の能力を使いましょうか。」
「君の能力?」
そう言えば、紫の能力を俺は知らない。俺の興味が紫の方にいくと、彼女は俺を見つめて少し考えているような素振りを見せると、次第にイタズラを企む子どものような不穏な笑顔と変化していった。
「私の能力はね…」
すると、紫はパチンッと指を鳴らした。その瞬間、落下したような感覚が俺を襲う。いや…これは、本当に落ちている!?
「『境界を操る程度の能力』よ。」
そして、俺の視界は暗転した。
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「誰だ!?」
「お前…そんなにこの世から注目をされたいか?」
「な、何?」
正しくその通りだ。俺はこの世から注目されたい。だが、そんな理由で妖怪退治をやっているなんて知られたら、格好が悪い。
「そんなはず…ないな。」
「それなら、何故一瞬でも悪になろうと思った?」
「それは…」
「注目をされたいから、だろう?」
図星だった。先程から正論で突いてくる。
こんな惨めな生活は嫌だ。苦でしかない。そんなことを思っている自分がいる。
「良いじゃあないか。夢のない者より断然にな。お前を尊重する。」
「……」
「なればいいじゃないか、悪に。お前のスゴさを理解しようとしない奴等を支配しろ。」
「支配…」
俺はその言葉を呟くと、自然と笑いが込み上げてきた。そうだ、『支配』をすればいいのだと、理解したのだ。
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「………」
また、記憶が入ってきた。これを俺に見せて、一体なんなのだというのだ。
俺は顔を上げて、辺りを見渡した。俺を囲うように広がる森。中に入る分かるが、霊力が非常に強い。丸の2倍程の霊力が森を覆っている。
すると、後方から声が聞こえてきた。
「どう?凄いでしょ。」
「あぁ、驚いた。」
「フフン。」
分かりやすく上機嫌になった紫と、それを呆れたように見ている藍。いつもこんな感じなのだろうな。
それにしても、よく考えるとこの二人は凄いコンビだ。世界で唯一無二の妖怪が二人いて、片や伝説の大妖怪である
「…どうかしました?」
「いや、気にするな。」
「難題ですね。その口癖、直したらどうですか。気にするなって本当に無責任な言葉ですよ。」
「………」
その式に説教されました。