東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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幻想の園に夢の花を Ⅱ 『龍神』

 零が封印から解かれ、直ぐに私達は信濃…基、長野県の白馬村に向かった。紫が言うには、ここが幻想郷の土地となるらしい。

 上を見上げると夏の綺麗な夜空は見えず、激しい雨が降り始めている。今日は止めようと紫が言ったものの、零は今日に固執していた。なにか理由があるのか訊いたものの、それらしい返答は得られなかった。

 

「ここに決めた理由とかあるの?」

「四季があり、且つ土地の霊力や妖力が安定している大きな土地を選んだ。」

「へぇ。」

 

 肌で感じるエネルギーは決して、多くもなく少なくもない。それに加えて一定を保っているらしい。不安定だと、妖怪が暴走をするなんてこともあるだろう。ならば、この土地を選んだのも納得できる。

 それにしても、長閑な土地だ。明治が始まり、和洋折衷の街並みが空の下に乱立する中、ここは昔ながらの雰囲気を漂わせている。しかし、人が住む時に家を建てる為、このノスタルジックな風景は洋風の要素を取り入れた街になってしまうのだろうか。私は今の土臭い建築が好きだ。どうかこのままであって欲しいと願う。

 

「あれ、そういえばもう1人幻想郷の創世の協力者がいるんじゃなかったの?」

 

 諏訪子が不思議そうに紫に問う。全くもって初耳なのだが、もう1人協力者がいるらしい。しかし、そのような人物は見当たらない。

 私があちこちを見渡していることに気がついたのか、紫は少し微笑みながら説明をしてくれる。

 

「彼女は自分の支配する領域からサポートするらしいわ。零の亜空間みたいなね。」

「なるほど。」

「まぁ、同じ協力者だし、名前を伝えておくと『摩多羅隠岐奈』という人よ。」

 

 見えない領域からの支援。果たして、どう役に立つのかは気になる所だ。

 

「支援があるなら、結界なんて余裕だぞ。片手間で管理できるぐらいしっかりした結界を張れる。」

 

 零が得意気にしながら言う。先程の霊力を見れば、その言葉に嘘偽り無いことは明らかだ。

 

「なんなら、遊びながら張れるぞ。」

「ちゃんとやりなさい。」

 

 調子に乗った零にチョップを下す。すると、彼はわざとらしく頭を摩り、拗ねたような返事をする。

 

「さて、早速で申し訳ないけれど、お願いしていいかしら?」

「いつでも大丈夫だ。」

 

 紫の確認に、零はすんなりと返す。修行が終わってばかりにも拘らず、全く疲労を見せないことにも何も思わなくなった。それほど、彼の力と生態は異様なのだ。そして、それが彼の強さであり、心の余裕なのだと思っていた。

 しかし、全ては彼が抑え込んでいただけだった。それを私が一緒に担おうとしても。彼は私を頼らない。悔しさが私を苛ませる。

 

「よぉーし。永琳、見ててくれよー。」

「えぇ、しっかりとね。」

 

 わかってる。彼は、私の前で格好をつけたいだけだ。彼はそういう人なのだ。

 もちろん、悔しいことに変わりは無いが、彼のその子どものような心が、どうしようもなく愛おしい。彼は私のことになると自分の身さえ投げるほど狂ったような愛を持っているが、どうやら私も人のことが言えないほど、彼を愛しているらしい。

 結界を張ろうと、激しい雨に打たれながら目を瞑る零の背中を眺める。

 

「他の協力者の力もあって、霊力が安定し易いな。ナイスサポートだ、顔も知らない協力者さん。」

 

 零の言葉を返すかのように、霊力の流れが一瞬強まった。しかし、その一瞬は強力なものだったのだが、零は眉一つ動かさない。それどころか、それを笑った。

 恐らく「私のサポートなしでも行けるだろう。」という嫌味も込めた返事だったのだろう。

 

「面白い協力者だな。いつか呑もう。」

 

 のびのびと霊力を放出している。もちろん、私達が立っていられるように調節もしながら。エネルギーの扱い方が、芸術を見ているかのような錯覚に陥るほど、美しい。

 私が惚れ惚れしてその光景を眺めていると、零が紫の方に顔を向ける。

 

「幻想郷に住む予定の人や妖怪なんかは、どうしてるんだ?」

「万が一のために、結界から1km程離れた所に集まって待機してもらっているわ。」

「お、それなら…」

 

 何を企んでいるのか、零はイタズラをする前の子どものような笑顔をする。私のチョップが響いていなかったらしい。私は呆れたようにため息を吐きながらも、彼らしいと思い口角が上がった。

 

「俺から、幻想郷に祝福を!!」

 

 彼がそう叫ぶと、手で霊力の流れを一気に引っ張り、ホースから出る水のように、上空へと霊力を打ち上げる。それが雨雲を破り星空が満開に咲いた。

 霊力がキラキラと輝いている。まるで天の川が私達の平和を願っているかのようだった。

 

「まだまだぁ!!」

 

 すると、その天の川は形を変え、一匹の龍のような形へと姿を変え、うねうねと上空を飛び回っている。こんなにも美しい光景を、私はこの二億年で見たことがなかった。その霊力の一つ一つが温かくて、目を奪われる。

 

「綺麗…」

 

 紫が言葉を漏らす。その場にいた誰もが、その言葉に頷いた。そして、どうやら皆同じように目を瞑り祈ったようだ。これからの幻想郷の平和を。

 

「これが、最後だ!!」

 

 零は華麗に舞い、それと連動するように龍は螺旋状に上空へと上る。そして、徐々にその形は崩れていき、まるで星で形成された柳のように輝きが落ちてくる。

 結界が張られているのを確認する。いつの間に完成していたのだろうか。全ての人間、妖怪、幽霊、妖精…いくつもの意思あるものが、零が生み出した龍神に目を奪われていたのだ。

 

「どうだった?最高だっただろ、永琳。」

 

 でもその龍神は私の為の輝きだったと思って、いいだろうか。

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