東方化物脳 Re:make   作:薬売り

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幻想の園に夢の花を Ⅴ 『幻想』

 東方projectが無事完遂し、数日が経った。幻想郷の大結界に守られているため追っ手の心配もしなくて良いことから人里へ大手を振って遊びに行けるのは、私にとって非常に良い変化だった。屋敷に帰ると愛しの恋人もいるし、愛玩動物のてゐも遊びに来る。こんなにも自由の効く中で、輝夜のお世話をすることは非常に満足だった。

 しかし、彼は言った。

 

「そろそろ謝罪しに行くとする。」

 

 食事を四人で囲っている中、唐突に言ったのだ。

 

「謝罪?なんの話?」

「てゐは知らないもんな、俺の無責任さを。」

 

 首を傾げるてゐに、零の今までの旅路を話す。武勇伝のような話を、まるで恥ずかしい失敗談のように話す彼に、改めてその異様さを認識する。

 まるで子どもの妄想から生まれた粗末な物語のようにハチャメチャな話に、てゐは驚愕の表情を見せる。開いた口が塞がらないとはよく言ったものだ。

 

「何その…訳の分からない話は。」

「恥ずかしい限りだ。」

 

 そういう意味でてゐは驚いているのでは無い。何度も聞いても、私でさえ理解が難しい。しかし、決して弱くは無い彼がここまで苦しめている『黄泉からの刺客』から私たちを守るために、あの時一緒に住むことを断ったのだ。今度こそ、彼と1つ屋根の下で…そう思っていたのだが───

 

「まぁ、そういうわけで、西洋の館でメイドをしてるらしい美鈴と、怒り狂って芳香を連れて旅に出た青娥達に謝りに行くとするよ。」

 

 確かに、封印を解かれた直後はそんなことを言っていた。しかし、それは幻想郷の外へ出るということだ。私は付いて行けそうにない。

 

「義経さんは一緒に行くの?」

 

 因みに、義経さんは一緒に暮らしておらず、『妖怪の山』という天狗や河童などの妖怪が住んでいる山で日々修行をしているらしい。

 

「いや、丸は連れていかない。なんでも、外の世界は刀を持っているといけないらしいからな。なんでかは知らないけど。」

「そっか。」

 

 それに関しては、私も竹林に篭っていたため、世の情勢に対して疎いところがある。豊臣以来の刀狩りが行われている理由に関しては分からないが、恐らく西洋の文化に遅れを取らないために、といった考えの下だろうという私なりの予想だ。

 

「それじゃあ、一人で?」

「あぁ。二人を外に連れていく訳にもいかないしな。」

 

 そう言うと同時に、彼は手のひらを合わせて「ご馳走様でした」と感謝し、食器を持って立ち上がった。

 

「まぁ、そんなに長い間家を空けたりはしないから。『ナビゲーター』で青娥達を見つけるのは簡単だからな。」

「わかったわ。ただ、来週に『博麗神社』で幻想郷創世の祈祷を執り行われるらしいから、それまでは幻想郷を出ないでね。」

「え、初耳なんだが。」

「初めて言ったからね。」

 

 零が幻想郷の結界を張り終わり、屋敷で伸びきっていた頃に紫が私に伝言としてそう言っていた。零も何かと疲れているだろうからと、今まで伝えていなかった。

 

「そうか、それじゃあそれまではここにいなければな。」

「うん、よろしくね。」

 

 そうして、私は空になった器の前で手を合わせた。

 

____________________________________________

 

 晴天、雲ひとつもない青空の下、幻想郷の住民が鳥居の下を潜り始めていた。私はというと、零の立ち話を横で聞いているだけ。話し相手は、幻想郷の治安を取り締まる巫女さんだ。無論、この博麗神社の。

 

「お初にお目にかかります。神田零様と八意永琳様ですね。私は博麗靈夢と申します。」

 

 恭しくお辞儀をして、巫女らしい清らかさも感ぜられる。

 

「堅苦しいな、気軽にでいいぞ。」

「あっそう、わかったわ。」

「…さては元々畏まるつもり無かっただろ。」

「紫がやれって言うのだからしょうがないでしょ?」

 

 そんな印象は綺麗に崩れ去った。とはいえ、零も堅苦しいことは嫌っている。紫も分かっていて、小さなサプライズとして靈夢にそのような態度を強いたのだろう。

 

「幻想郷を守る巫女がこんなにも落ち着いていて物怖じしない者なら、安心だな。」

「任せなさい。アンタが何かやらかしたら封印してやるから。」

「おう、任せたぞ。」

 

 零は実に愉快そうだった。本気で、彼は安心しているのかもしれない。彼は何も言わないが、この結界は、本当に外の世界と断絶された結界なのだ。つまり、外子から認知されることは無いに等しい。それは、零に送られる『黄泉からの刺客』からも同様に言えることなのだ。紫曰く、幻想郷の冥界や地獄は外の世界のものとは違う、新たなものらしい。魂の行く末は、黄泉に繋がらない。

 しかし、万が一『黄泉からの刺客』に存在を気付かれたら?そんな小さな可能性を孕んでいる以上、中で平和ボケしている訳にはいかないのだ。零は修行をして大きく成長し、強くなった。しかし、やはり人を守るにも限界がある。ならば、幻想郷の個人それぞれが自分の身を守れる程の力が必要になるのだ。

 

「永琳?」

「え?」

「どうした、もう始まるぞ。」

「あ、あぁ。」

 

 私は、彼に何をしてあげられるのだろう。それだけが、ここ最近で一番並んでいることだ。もちろん、一緒にいるだけでも良いと彼は言ってくれるが、エゴ的な考えだが私自身が彼のために尽くしたいと思っているのだが、それに見合う程の実感がない。

 彼は今始まった靈夢の祈祷の舞を岩に腰かけて眺めている。私もその隣に座り、彼と同じ方向を眺める。

 

「ねぇ、零。」

「なんだ?」

「…」

 

 彼は言った、輝夜に一生をかけて償えと。しかし、私にはもう一つ、一生をかけてでもしたいことがある。

 私は彼の方に頭を預け、彼の安心する香りを鼻で感じる。

 

「大好きよ。」

「俺も、大好きだ。」

 

 そうして、彼は私の頭を優しく撫でた。




 これにて、東方化物脳の前編を終えます。次回から中編に入り、主人公も変わります。いきなり主人公が変わると皆様が困惑される可能性を考え、事前にお知らせ致します。もちろん、神田零は中編でも出てきますのでご安心を。
 因みに、東方化物脳の主人公は神田零と次回からの主人公の二人のみです。三人目が出てくることはありませんし、無駄に話を伸ばすこともありませんことをお知らせいたします。

 それでは、また次回にお会いしましょう。
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