白銀のタルパ   作:賃現地

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見切り発車でスタートしました。
暗黒大陸編までに無事完走出来ればいいなぁ……


第二話 【ネン×ト×ケッテイ】

 

 

 HUNTER×HUNTERの世界に来て、

 一週間が経った。

 

 私こと【タルパ=ゾルディック】は、

 すっかりこの大広間に馴染んでしまった。

 

 

 まずは大広間での出来事から話さなければならないだろう。

 私は数日間、いや一週間の期間をあの部屋で過ごすことになった。

 

 

 最初は全てが物珍しかった。

 大広間には、前世において趣味の悪いといわれる珍品が各種展示されている。

 

 

 「趣味の悪……いえ、今となっては美しい品々かしらね」

 私は独り言を呟きながら考えにふける。

 

 

 その様子を交代で監視している執事達からは、

 畏敬と畏怖を感じていた。

 

 

 ゾルディック家というのは原作の一部描写だけでは把握できないほど大きかった。

 執事達はその大きさに比例するほど存在する。

 原作に出てくる執事達は”優秀な部類”であり、

 彼らの手足となる部下が多く存在していた。

 

 

 畏敬は”老人”達から。

 畏怖は”若人”達からであった。

 

 

 理由は分からない。

 だがそこには『曾祖母』を知っているか否かが関係しているだろうとは思った。

 

 

 

 監禁された期間に気づいたことも幾つかある。

 始めに暇過ぎて『水見式』を行ってみた。

 

 

 自分のオーラともいえるこの纏わり付いている物質の正体を確認する。

 『念』と一応認識しているけれど、念のため対策を立てなければならなかった。

 ……別に上手いことを言ったつもりではない。

 

 

「すみません、執事さん」

「……」

 無視って酷くない? まあ監禁対象な訳で仕方ない。

 

 

「お水をいただけませんか? 後は……外にある葉っぱを一枚ほど」

「……、対象者が水と枯れ葉をご所望だ」

 執事は持っている小型の無線機で何処かに連絡していた。

 いや、乾いていない葉っぱが欲しいのだけれど。

 

 

 そうして少し経った後、

 要望通りの水をグラスで貰った私は枯れ葉を水に浮かした。

 

 

「……(こいつ何をしてるんだ?)」

「今からこの水が変化します、どうなると思いますか?」

「何を言ってるんだ?」

「まあ、見ていてください」

 私は原作のように、水が入ったグラスに手をかざした。

 

 

 オーラのようなものを体の中から、

 取り出す感覚で絞り出す。

 

 

「な、なんだ!? 貴様は何をしている?」

「これ湯気みたいですよね、温泉に上がった後ってこんな感じよね?」

「何を訳のわからないことを……」

「あ、見てください! 変わるみたいです」

 私は手に念を集中させる。

 

 

 どんな能力だろう、強化系がいいかな? 扱いやすいし。

 それとも具現化系? 操作系ってのも悪くないかも……

 

 

 しかしながら、私の系統予想は全てが外れていた。

 水に一切の変化は無い。だが、次第に枯れ葉が生気を帯びてきたのである。

 

 

「馬鹿な……持ってきたのは枯れ葉だったはずだ!」

「ここからが面白いの」

 セリフの冷静さとは違い、心の中で私は少し泣いていた。

 

 

 そう、私の変化は『特質系』のソレであった。

 水以外の何かが変化することは、特質系に該当するのである。

 そして特質系は一番面倒くさい系統部類であった。

 

 

 手から念を送る感覚が増えるほど、

 枯れた葉は生き返り、葉が幹に付いていたであろう部分が元に戻っていく。

 

 

 次第にその植物は水の入った部分に根を伸ばし、

 コップを貫通して尚、成長を止めることはなかった。

 

 

「止めろ! これ以上行うと敵対したと判断するぞ!!」

「……止められないんですの」

 私は小さく執事に対して呟いた。

 

 

「は? 今なんて?」

「自分の力じゃ止められないんです……これどうやったら止まりますの?」

「そんなの俺が知るか!!」

 私達はどうしよう、どうしようとアタフタしていた。

 

 

 この”止められない”という言葉の通り、

 植物は更に大きく進化しており、若木にまで成長していた。

 根は机を貫通し、下の絨毯に届きそうな程である。

 

 

 執事と私がワタワタしていると、突然広間に誰かが入ってくる。

 大広間に入ってきたのは眠そうにしているゼノ=ゾルディックだ。

 

 

「……なんじゃこれ」

「お爺さま! 助けてください“! 念が止まりませんの!」

「いや、とんでもないのう。お嬢ちゃん」

 ゼノは感心するかのように成長を続ける木を見ていた。

 

 

「ゼノ様、どうすればよろしいでしょうか」

「まあ、見ておけ」

 その瞬間、若木の上半分が切り取られ地面に落ちていた。

 

 

 だが、その断面からまだ若木は少しずつ成長を続けている。

 その様子に更に関心を寄せた顔をゼノはしていた。

 

 

「お嬢……いや、”タルパ”よ」

「はい、お爺さま」

「お主はどうやってそれを発動させておる?」

「ええ、なんか体から出す感じです」

 私は直感で行っている今の動作を説明した。

 

 

「体から気を噴き出している穴を想像せよ」

「穴……ですか?」

 私は言われたとおり、目を瞑って想像する。

 

 

 そうすると今まで箱から湯気を取り出していた感覚が、

 体の細部から噴出しているように感じ取れたのだ。

 

 

「わかりますわ、この感覚ですのね」

「ならその穴を”手だけ”止めてみい」

「……」

 私は言われたとおり、手に集中する。

 

 

 両手の穴を閉じるように神経を集中すると、

 瞬時に手に集まっていた念の流れが遮断する感覚を得た。

 

「ま、これでええじゃろ」

「出来ましたわ! ありがとうございます。お爺さま!」

「ああ、そうか。後はお主【念】禁止な」

「え……」

「それじゃあの、シルバが奥で呼んどるから。後は頼むわい」

 そう言うと老人は執事に何かを呟くと去ってしまった。

 

 

 念禁止って言われても、

 まだ習ってすらいないのですが?

 

 

「ええと、どうしましょう……」

「お嬢様、先程の発言をお許しください」

 執事は先程の態度と違って、私を認めているようである。

 

 

「別に構いません、呼び方が違うということは分かったのですか?」

「それを私に言う権利は御座いません、当主様の元へご案内いたします」

 執事は私の元へ来ると、鉄の枷を鍵を用いて解錠した。

 

 

「こちらで御座います」

 執事は広間の扉を開けて私を案内してくれる。

 

 

 執事に続いて私は、

 暗いゾルディック家の廊下を歩いて行くのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 どの程度の距離を歩いただろうか。

 外の明かりが確認できる通路から離れて、機械が入り組む暗い通路を進むこと数分。

 先頭の案内を行っていた執事が、突然停止した。

 

 

「私が案内できるのはここまでです」

「? どういうことかしら」

「これ以上は基本的に、シルバ様の専属執事かご家族しか滞在できません」

 ローマのある皇帝もこんなシステム採用していたなと感心した。

 

 

「そうなのね、後は道をまっすぐ行けば良いのかしら?」

「はい、そうなっております。いってらっしゃいませ」

 執事はお辞儀をして私を見送った。

 

 

 また少し通路を進む。

 所々湯気のようなものが、通路の配管から出ているところを見ると

 シルバの部屋は活火山の地下に近いのでは無いかと推測できた。

 

 

 そして行き止まりにつくと、

 そこには普通よりも大きな両開き扉がある。

 

 

「(ノックした方がいいわよね)」

「失礼いた……」

「開いてるぞ、入れ」

 私の行動を中から予想したのか、外に付いていた機械からシルバの声がした。

 

 

 私はゆっくりと扉を開ける。

 開けていて思ったのだが、随分と力が必要な扉であった。

 

 

 開けるとその奥には、当主であるシルバ=ゾルディックが鎮座しており、

 ミケと同様の種類の番犬が傍に二体控えていた。

 

 

「”父上”とお呼びしても?」

「構わないぞ、我が娘”タルパ”」

 私はホッとした。ここで敵対でもされたら私は死ぬしか無い。

 

 

「お父様、血液はどうでした?」

「お前の血は間違いなく、『ゾルディック家』のものだった」

「そうですか、ホッとしましたわ」

「それに俺の親父より前の血を継いでいる」

 やはりそうか、と私は心の中で呟いた。

 

 

「そして、それは現当主候補が二人いるということでもある」

「!?」

 突然、シルバから殺気が漏れた。本当に私を殺すという気が詰まっていた。

 

 

「辞退しますわ、当たり前です」

「……安心した」

 すぐに殺気はおさまった。

 

 

 シルバが言いたいことは、

 ゼノから続く当主の座を決め直すかという脅しであった。

 

 私としても”当主”に興味は無い。

 あるのはゾルディック家そのものである。

 そんな権力や現在の家族を壊すことをしたくなかった。

 

 

「タルパ、お前には我が家のルールを教える」

「はい、よろしくお願いします」

 こうして私はゾルディック家のルールを簡易的に教えられた。

 

 

 これは原作通りの『家族内指令(インナーミッション)』である。

 この辺りは皆様の方が詳しいであろうから、割愛させてもらうことにする。

 

 

「質問はあるか?」

「一つよろしいですか?」

 私は先程、ゼノに言われたことを聞いてみようと思った。

 

 

「お爺さまから念の使用を禁止されたのですが……」

「ああ、それはお前が本当の使い方を知らないからだ」

「本当の使い方? どういう意味ですの」

 私は理解していたが敢えて聞く振りをした。

 そうする方が都合が良かったからである。

 

 

「お前は念を独学で使用している」

「危険だということですの?」

「”お前”が危険というわけじゃない、他の者が壊れかねん」

「それに独学では後で困るだろう」

 私の都合に良い方向へ物事が進んでいく。

 

 

 私がこの家で最も危惧していたのは、

 ”念”についての教師がいないことだった。

 

 

 原作では多くの修行を通して得る念能力。

 それを独学で学ぶのはほぼ不可能といえた。

 

 

 実際に使用して理解したのは、

 体で覚えても、頭で理解することの方が効率的であるということだった。

 もちろん体を利用して覚えることも必要だが、

 私に足りない部分は圧倒的に理論の方であった。

 

「だから我々はある教師を招くことにした」

「家族の中ではなく……ですか?」

「理解しているだろう、我々は暗殺者だ」

「仕事もあるし、教えている暇は無いと?」

「そういうことだ」

 キルアが家族愛を受けられなかったのも当然の結果だと理解した。

 

 

「分かりました、その方針に従いますわ」

「ああ、そうしてくれ。後は暗殺者の訓練だが……」

「毒物については完全に耐性があることをもう把握してある」

「えっ?」

 私は驚いた、一体何処でそんなテストをしていたのであろうか。

 

 

「何を驚いている? 一週間の食事に何も混ぜないと思っていたのか」

「あ、ああ。そうでしたのね、気づきませんでしたわ」

「嘘を言うな、やはり天性の才能というのは理解が出来ないものだ」

 

 

 事実、理解せずに食していた。

 今日のパスタ美味しいなとか、今日は海鮮料理なんだとか。

 そんな当たり前の感想を覚えていた。

 

 だが、言われてみると確かにピリッとしたり、

 なんか苦みがあったように思えた。

 

 

「で、暗殺者の訓練だが”イルミ”が担当する」

「嬉しいですわ、イルミお兄様が担当だなんて」

「だがイルミはお前を殺す気で鍛えるだろう」

「……そんなに私って嫌われてますの?」

「知らん、だが珍しく嫌そうな顔をしていたぞ」

 一番好きなキャラクターであるイルミに嫌われているらしい。

 

 

 そりゃ出会い頭に接吻なんてしたら、

 誰でも嫌われるだろう、相手からしたら痴女以外の何者でもない。

 

 

「後は、他の家族に挨拶をしてくれ。教師は数日後に来る」

「わかりました、父上。ちなみに教師というのは……」

「親父の知り合いだそうだ、まあ思い浮かぶのは一人しかおらん」

 それを聞いて相手が分かった、あの『会長』を雇うってどんだけだゾルディック家。

 

 

「最後にいいですか? 父上」

 私は最も聞きたかったことを聞いてみることにした。

 

 

「ああ、どうした」

「なんで私を受け入れてくれたのですか?」

「……」

 そうすると父上は黙って私の瞳を見た。

 

 

 その姿が珍しかったのだろう、両隣の犬が心配そうに主人を見ていた。

 

 

 そうしてシルバ=ゾルディックは静かに語り出した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 タルパ=ゾルディック。

 お前を受け入れたのは、家族の意見が賛成となったからだ。

 

 最初に家族の中でお前を受け入れる投票を聞いた時、半分に別れた。

 

 俺は無効票だ。

 幼いカルトも意見には含めなかった。

 

 ゼノ、イルミ、ミルキ、などはお前を家族として認めることに反対していた。

 

 同時に

 キキョウ、キルア、アルカはお前を受け入れることに賛成していた。

 キキョウとキルアが同意見だったのは面白かったな。

 

 

 両者共に一歩も引かない状況だったが、

 血液分析の結果が”マハ”の血を継いでいることが明らかになる。

 

 

 親父はそれを期に賛成を唱えたが、

 長男、次男の反対が大きくてな、会議は収拾がつかなかった。

 

 

 挙げ句の果てには、

 イルミがお前を殺そうだなんて言うものだから、

 キルアが本気で怒っていたな。

 

 

 今までイルミに反抗しなかったアイツが、

 お前のことで激昂するなんて、と思ったよ。

 

 

 まあそんな状況を止めるために、

 俺が提案したのはイルミが暗殺者として訓練すればいい。

 その中で死ぬようであればこの家の者ではないことにすればいいとな。

 

 

 イルミはその考えを承諾すると、即座に賛成に回った。

 ミルキは言わずもがな、イルミという盾を失いすぐに賛成へ。

 

 

 こうして俺以外の全員が”一応”お前を受け入れることにした。

 これがお前を家族として受け入れる経緯だ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 シルバ=ゾルディックは、

 肝心なことを語らなかった。

 

 

 イルミを承諾させたことがこの話の主題だが、

 『シルバ=ゾルディックの意見』が入っていない。

 私はすぐにそのことを聞いた。

 

 

「シルバ、いえ父上の意見が入っていませんが」

「それはまだ話していない」

「では父上はなぜ賛成されたのですか?」

 

 

 

「……曾祖母には世話になった」

「曾おばあさまの話ですの?」

「彼女はゾルディックの血筋でも変わった女だった」

「今の親父があんな性格をしているのも彼女のせいだ」

 シルバ=ゾルディックは懐かしそうに思い出していた。

 

 

「暗殺者として育てられた俺だが、あの人だけは優しかった」

「……だがそれ故に、悲しい人だ」

 その顔は当主がしてはいけない一個人の顔であった。

 

 

「話は終わりだ。今日は休むといい」

「分かりました、期待に添えるように頑張りますわ」

「ああ、じゃあな」

 私はお辞儀をした後、部屋を出る。

 

 

 

 執事の一人に案内され、

 私は与えられた自室に戻ってくる。

 

 部屋は女性用の客室のようで、

 一般的な中世風ホテルの一室である。

 

 

 調度品の多くはパドキア共和国の品々であり、

 基本的には滞在するはずのない外来客の為の部屋で会った場所だ。

 

 

 それでも室内にはトイレや浴室が備えられており、

 個室内でも調理などが可能となっているスペースが存在していた。

 

 

 ミルキという兄弟がいるのだが、

 その人物が10年以上部屋に引き籠もっても生活出来る理由がなんとなく分かった。

 

 

「さあ、明日からどうしましょう」

「念も禁じられているし、『会長』がくるまで暇ね……」

 私は独り言を呟きながら、ベットに横になった。

 

 

 疲れていたのだろう、私はすぐに眠ってしまった。

 

 月明かりが照らす窓に、

 長身の男が立っていることにも気づかずに。

 

 

 その黒色長髪の男は、

 私のベットの傍まで来ては私の寝ている姿を観察していた。

 

 

「君は誰なんだい? タルパ=ゾルディック」

「ボクは君をどうすればいいんだ?」

 男の独り言は月夜の静寂に消えていった。

 

 

 

 

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