【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥   作:木下望太郎

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第九章  全員、ついに集合す

 

 悲鳴嶼の耳が、その弟子の銃声を遠くに捉えた。ライドウがそう聞かされてしばらく後。

 闇の向こう、広大な畳の地平から。今度はライドウに取って覚えのある音が聞こえ、そして姿が見えた。

 爆走するオボログルマが。

 

 ライドウはわずかに目を見開く。

「! 凪君――」

 ()えるような表情でハンドルを握るのは、元の世界に残っているよう指示したはずの凪だった。

 

「ライドウ先輩!」

 凪も気づいたのか、オボログルマに突然制動がかかる。

 そして。急激にブレーキをかけたせいか、その際にハンドルを切ってしまったのか。オボログルマはその制御を失い、渦の如く回転しながら向かってきた。ライドウたちの方へ。

 

「ちょ……え? えええぇええ!?」

 星命が――(アストラル)体に物理的な危険が及ぶのかは疑問だが――悲鳴を上げる中。

 ライドウは懐から一本の管を抜いた。

「召喚。束縛せよ――『アルラウネ』!」

 

 管から溢れた光が取ったのは宙に浮かぶ、赤裸(あかはだか)の女の姿。まさに赤い、真紅の花びらのようなその肌はしかし、巻きつく(いばら)によっていくばくかが隠されている。

「承知したわ、私の可愛いサマナー」

 

 アルラウネが両手を、空を抱こうとするように広げると。その身と目元に巻きつく荊が、空を打つ音を立てて伸びた。

 それはたちまちにオボログルマへ巻きつき、その車体が隠れるほど巻き尽くし。皿に別方向へ伸びる荊が壁へ畳へ、根を張るように突き刺さる。

 

 結果、暴走したオボログルマは。いくらかの荊を引きちぎりはしたものの、蜘蛛の巣に捕らえられたような格好で。荊の網を軋ませて、その動きを停止させた。

 

 音を立てて荊が解かれる中、運転席から凪が降りる。

 後席からはヨシツネと、鶏冠(とさか)のような髪をした見知らぬ少年が、ドアを跳ね飛ばすような勢いで転がり出た。まるで一瞬たりとも車内にいたくないとでもいうように。

 

 ライドウは声をかける。

「無事か。――しかし、君には別のことを頼んだはずだが」

 

 凪は深く、腰まで頭を下げた。

「ソーリィ、です……でも、ヤタガラスへの伝令は仲魔に行なわせました。私は――」

 頭を下げたまま言う。

「先輩の、力になりたかったのです。……以前の、コドクノマレビトとの戦い。私は何も――」

 

 ライドウは首を横に振る。

「そのような言い方はよすんだ、それぞれに役割というものがある。今回は君を残したからこそ、もしものことがあっても、と――いや、それより。彼は」

 

 鶏冠髪の少年へとライドウが目をやると。

悲鳴嶼が彼の方へ駆け寄っていた。

「玄弥! 無事か」

 

 玄弥と呼ばれた少年は立ち尽くし、長くそのままでいた後。泣きそうな目をしてほほ笑んだ。

「……悲鳴嶼さん。会いたかった、会いたかったです、本当に」

 そして、膝から畳に崩れ落ちる。

 

「大丈夫か、何があった。他の隊士は、いや――、この方たちは」

 ヨシツネと凪へ、見回すように顔を向ける。

 

 ヨシツネが横から急に、玄弥と肩を組んだ。

「おう、オレと玄弥はなあ。共に死線をくぐり抜けたマブダチよ!」

 

 玄弥は目を瞬かせていたが、小さくうなずく。

「命の、恩人です。二人とも」

 

 凪がライドウに言う。

「彼は不死川玄弥さん。私と仲魔たちの、命の恩人です」

 

 ライドウはうなずいた。

「どうやら危険もあったようだが。君がいたからこそ、護れた命もあったようだ」

 ほほ笑んで――それが伝わったかは自信がないが――言った。

「よくやった、プロセスだ」

 

 目の端に涙をたたえながら。花が咲くように凪は笑った。

「ありがとう、ございます!」

 

 ライドウは悲鳴嶼と玄弥に歩み寄り、深く頭を下げた。

「後輩を助けていただいたとのことで。感謝の言葉もありません」

 

 悲鳴嶼は合掌する。

「こちらこそ、弟子を救っていただいたとのこと。痛み入る、そして――」

 わずかに微笑んだ。

「――疑って済まない。君たちは、味方だ」

 

 ライドウは無言でうなずく。

 

 悲鳴嶼は玄弥に向き直った。

「そのことはともかく。他の隊士はどうなった」

 

 玄弥は目を伏せる。

「……皆、殺られました。この屋敷に巣食う妙な鬼、いや悪魔に――」

 

 そこまで言ったとき。

 聞こえた、闇の向こうから。視界を埋め尽くすような、畳の地平いっぱいを迫り来る、悪魔の群れの足音が。

 

 玄弥の顔が引きつる。

「しまった、そうだ奴らが……!」

 凪とヨシツネも同じ表情で固まる中。

 

 ライドウは言う。腰の鞘に左手を添えて。

「彼の誤解も解けた、この世界の者と争う必要はなくなった。これで――」

 

 悲鳴嶼は言う。手にした斧を握り直し、鎖が音を立てる。

「玄弥は無事、他の隊士も生死は確認できた。これで――」

 

 二人の猛者(もさ)は同じ言葉をつぶやいた。

 

 ――これで。ようやく、本気が出せる。

 

 

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