【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥 作:木下望太郎
悲鳴嶼の耳が、その弟子の銃声を遠くに捉えた。ライドウがそう聞かされてしばらく後。
闇の向こう、広大な畳の地平から。今度はライドウに取って覚えのある音が聞こえ、そして姿が見えた。
爆走するオボログルマが。
ライドウはわずかに目を見開く。
「! 凪君――」
「ライドウ先輩!」
凪も気づいたのか、オボログルマに突然制動がかかる。
そして。急激にブレーキをかけたせいか、その際にハンドルを切ってしまったのか。オボログルマはその制御を失い、渦の如く回転しながら向かってきた。ライドウたちの方へ。
「ちょ……え? えええぇええ!?」
星命が――
ライドウは懐から一本の管を抜いた。
「召喚。束縛せよ――『アルラウネ』!」
管から溢れた光が取ったのは宙に浮かぶ、
「承知したわ、私の可愛いサマナー」
アルラウネが両手を、空を抱こうとするように広げると。その身と目元に巻きつく荊が、空を打つ音を立てて伸びた。
それはたちまちにオボログルマへ巻きつき、その車体が隠れるほど巻き尽くし。皿に別方向へ伸びる荊が壁へ畳へ、根を張るように突き刺さる。
結果、暴走したオボログルマは。いくらかの荊を引きちぎりはしたものの、蜘蛛の巣に捕らえられたような格好で。荊の網を軋ませて、その動きを停止させた。
音を立てて荊が解かれる中、運転席から凪が降りる。
後席からはヨシツネと、
ライドウは声をかける。
「無事か。――しかし、君には別のことを頼んだはずだが」
凪は深く、腰まで頭を下げた。
「ソーリィ、です……でも、ヤタガラスへの伝令は仲魔に行なわせました。私は――」
頭を下げたまま言う。
「先輩の、力になりたかったのです。……以前の、コドクノマレビトとの戦い。私は何も――」
ライドウは首を横に振る。
「そのような言い方はよすんだ、それぞれに役割というものがある。今回は君を残したからこそ、もしものことがあっても、と――いや、それより。彼は」
鶏冠髪の少年へとライドウが目をやると。
悲鳴嶼が彼の方へ駆け寄っていた。
「玄弥! 無事か」
玄弥と呼ばれた少年は立ち尽くし、長くそのままでいた後。泣きそうな目をしてほほ笑んだ。
「……悲鳴嶼さん。会いたかった、会いたかったです、本当に」
そして、膝から畳に崩れ落ちる。
「大丈夫か、何があった。他の隊士は、いや――、この方たちは」
ヨシツネと凪へ、見回すように顔を向ける。
ヨシツネが横から急に、玄弥と肩を組んだ。
「おう、オレと玄弥はなあ。共に死線をくぐり抜けたマブダチよ!」
玄弥は目を瞬かせていたが、小さくうなずく。
「命の、恩人です。二人とも」
凪がライドウに言う。
「彼は不死川玄弥さん。私と仲魔たちの、命の恩人です」
ライドウはうなずいた。
「どうやら危険もあったようだが。君がいたからこそ、護れた命もあったようだ」
ほほ笑んで――それが伝わったかは自信がないが――言った。
「よくやった、プロセスだ」
目の端に涙をたたえながら。花が咲くように凪は笑った。
「ありがとう、ございます!」
ライドウは悲鳴嶼と玄弥に歩み寄り、深く頭を下げた。
「後輩を助けていただいたとのことで。感謝の言葉もありません」
悲鳴嶼は合掌する。
「こちらこそ、弟子を救っていただいたとのこと。痛み入る、そして――」
わずかに微笑んだ。
「――疑って済まない。君たちは、味方だ」
ライドウは無言でうなずく。
悲鳴嶼は玄弥に向き直った。
「そのことはともかく。他の隊士はどうなった」
玄弥は目を伏せる。
「……皆、殺られました。この屋敷に巣食う妙な鬼、いや悪魔に――」
そこまで言ったとき。
聞こえた、闇の向こうから。視界を埋め尽くすような、畳の地平いっぱいを迫り来る、悪魔の群れの足音が。
玄弥の顔が引きつる。
「しまった、そうだ奴らが……!」
凪とヨシツネも同じ表情で固まる中。
ライドウは言う。腰の鞘に左手を添えて。
「彼の誤解も解けた、この世界の者と争う必要はなくなった。これで――」
悲鳴嶼は言う。手にした斧を握り直し、鎖が音を立てる。
「玄弥は無事、他の隊士も生死は確認できた。これで――」
二人の
――これで。ようやく、本気が出せる。