【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥 作:木下望太郎
クラリオンのその言葉を聞いても、ライドウは構えを崩さず。
悲鳴嶼が口を開く。
「奴が事実を述べているとして。ならば、手はあるのだろう。――
ライドウもうなずく。
「ええ、悲鳴嶼さん。――まずは、手前の一体を」
悲鳴嶼が無言で鎖斧を飛ばす。目の前の蛇頭、その首を左から裂き。
同時、飛び込んだライドウの刀が。斧とすれ違うように右から斬った。
果たして、つんざくような悲鳴を上げた蛇頭は。その身を黒い灰のように変え、宙へと散っていった。
宙に浮かぶ星命がつぶやく。
「ライドウくんの刀が
その先を受けるようにクラリオンが声を上げる。
「しかし。いつまで続けられるかな」
その声が終わらぬ間にも、別の蛇頭がライドウを襲う。
古木のような太さを持つそれを、ライドウは胴斬りに裂く。悲鳴嶼がそこへ時機を合わせ、鉄球を振るい打った。
蛇頭はたちまちに灰の塊となって砕けた、が。
別の蛇頭が鎌首をもたげ、悲鳴嶼へとその牙を剥いた。
「くっ……!」
鎖斧を引き戻しつつその喉へと打ち込むが、ライドウに合わせて二度も攻撃を放った直後、体勢が崩れ武器に力を乗せ切れていない。
結果、裂いた端から再生していく敵の体に。半ば飲み込まれるような形で、斧が食い込んでしまっていた。
「しまった……!」
敵が甲高い奇声と共にその身をうねらせ、悲鳴嶼を引きずり倒そうとする。
悲鳴嶼は両手で鎖を握り、何歩か足を継いでこらえたが。大きく体勢を崩し、武器を振るえる状態ではない。
そこへ。囲むように三方から、新たな蛇頭が殺到した。
「くぅ……!」
ライドウが手近な一体に跳びかかり、刀を振るう。両断されたそれは端から再びつながり始めるも、とりあえずは動きを止めた。
だが、あと二体の蛇頭が悲鳴嶼へと向かっている。
畳の上を滑る蛇の、裂けんばかりに開かれた大口が目前へと迫る。細長い炎のようにひらめく舌が悲鳴嶼の鼻先に触れた。
そのとき。蛇頭の上に、青い巨体が跳んでいた。
「南無三! 【怪力乱神】!」
ライドウの仲魔、アタバク。
「……!」
悲鳴嶼が驚いたように目を向けると、アタバクは破顔した。八本腕の一つが悲鳴嶼の背を――衣に散らした南無阿弥陀仏の文字を――はたく。
「六字の名号を背負うとなれば、仏門の者であろう……捨ておけぬわ」
刺された蛇頭は身動き取れぬまでも、打ち上げられた魚のように未だ身を震わせている。さらには残る一体の蛇頭が、上空から落ちるように向かってきていた。
だが、もつれるような声が同じく上空から降る。
「悲鳴嶼さん!」
「しゃあっ、【
玄弥を抱えたヨシツネが、辺りにうねる別の触手を次から次へと踏み台にして跳び来る。
悲鳴嶼へ向かう蛇頭をその背後、さらに上から追い抜きざまに。ヨシツネの太刀、玄弥の小太刀がその喉を裂く。
致命打とはなり得なかったが、蛇頭は悲鳴をあげて大きくのたうつ。
その間に悲鳴嶼らは身を引き、武器を回収しつつ敵の群れから距離を取った。
ライドウ、玄弥や凪らもそちらへと合流した。
ゴウトが口を開く。
「巨大な敵とはいえ、本来なら幾らでも戦いようはある……ライドウと仲魔に、悲鳴嶼の力までも加われば。だが――」
星命が後を受ける。
「ああ、
凪が真っ直ぐにライドウを見上げる。
「いえ、一箇所しか攻撃できないわけではないはずです。退魔刀と鬼殺隊の武器、それが必要なセオリーなら――」
玄弥もうなずく。
「俺と、凪さんでもできる」
「だが……危険だ。君たちにそれをさせるわけには――」
口ごもるライドウに凪が詰め寄ろうとする、そのとき。
悲鳴嶼が口を開いた。
「二つ、確認したい。まず一つ、奴の首はどこにある」
ライドウが視線を向けると、察したように続けて言った。
「我らが鬼を殺すときには、日輪刀――日光の力を帯びた武器――でその首を落とす。日光を浴びせる他は、それが唯一の鬼を殺す手段。奴が鬼を模しているのなら、その点も同じはず」
星命が何度かうなずく。
「なるほど、つまり弱点、もしくは本体を叩く、か」
悲鳴嶼は星命の方に顔を向けた後、ライドウに尋ねる。
「そういえば。聞いていなかったが、この者は」
「……詳しくは、長くなりますが。自分の友、安倍星命……彼を
学帽を目深に被り直し、ライドウは顔をうつむける。
その肩を叩くように――
悲鳴嶼に顔を向けた。
「そうして、僕らの世界の帝都は救われた。だが、生き残っていたクラリオンの肉片が再び動き出し。それを感知したらしい、こちらの世界の鬼たちが――偶然か、思惑あってのことか――、クラリオンをこちらの世界に
悲鳴嶼は星命に顔を向ける。
「全て理解できたわけではないが……君は奴から剥がれ落ちた、そう言ったな。ならば、本体がどこか分かるのではないか」
考え込むように星命はあごに手を当てる。
「奴から離れて多少の時間が経っている、変化がなかったとは言い切れないけど。元々、クラリオンの残った肉片はわずかなものだった。拳ほどの大きさかあるかどうか。そしてあなたを騙そうとして、接触してきたときの様子……安部星命を模したあれは他の人間や悪魔を模したものと違い、流暢に喋って明確に思考していた。あれが本体と見ていいだろう。つまり――」
指差す。クラリオンの中心部、星命の上半身を模したもの。その顔に半ば垂れ下がるように剥き出された、巨大な一つの目玉を。
「安倍星命を模した体、特にあの拳ほどもある目。あれが本体である可能性が高い……もちろん、そこから変化させてある可能性も捨て切れないけど」
悲鳴嶼はうなずく。
「なるほど。ではもう一つ、君たちはあのクラリオンと、それが模している蛇頭
ライドウが口を開こうとしたとき。彼方から声が降った。
「さて。ご歓談のところ済まないが、そろそろいいかな。消え果てるがいい……
高く高く、見上げるほどに鎌首をもたげた幾本もの蛇頭が。天から崩れ落ちるかのように、ライドウたちの方へその身を叩きつけた。
「!」
それぞれに跳び退き、無事であることは視線を走らせて確認したが。
畳を床を砕き、大河のようにうねる蛇の身が、今やライドウたちを散り散りに分断していた。
ライドウの傍らでゴウトが声を上げる。
「しまった……! これでは同時攻撃もままならぬ!」
悲鳴嶼もライドウの方へ向かおうとするが、新たな蛇頭に行く手をさえぎられる。
さらにはその向こう、凪と玄弥の方へも別の蛇頭が牙を剥いた。
「く……っ!」
悲鳴嶼はとっさに鎖を振るい、そちらに向かった蛇を打ち払う。
「今です!」
動きを止めた蛇頭に凪と玄弥が跳びかかり、刃を突き立てるが。二人の腕と、小太刀の刃渡りでは仕留め切れなかったか、蛇はその身を震わせて退いていくのみだった。
思う間に、ライドウへも二体の蛇が左右から襲いくる。
咬み合わされる牙から身をかわし、斬り伏せつつ跳びすさる。当然、敵の動きをわずかに止めたのみで、しかも悲鳴嶼からさらに遠ざけられている。
近くに浮かぶ星命が頭をかきむしる。
「これじゃ、らちがあかない……!」
その声を聞きながらライドウは考えていた。先程悲鳴嶼が言った、二つ目の問い――以前に戦ったとき、どうやって倒したのか。蛇頭
そう、その問いに対する答えが、この状況を打破する鍵になるのではないか。
――かつて、最終的にクラリオンを倒した方法だが――、これを再現することは不可能。
「……っ」
護るべきだった、護り切ることのできなかった
――そしてクラリオンと戦う直前、蛇頭
仲魔であるスサノオ――ヤマタノオロチ退治で知られる、強大な破壊神――の力を借り、ライドウの持つ
「【
その技の名をつぶやいた、ライドウの声を聞き。ゴウトが顔を上げた。
「清浄なる光を一帯に放ち、全てを破り魔を打ち祓う最大の奥義……確かに以前はそれで倒した、しかし――」
しかし。その先はライドウも分かっていた。
まず、
そして、この奥義は大規模過ぎる、辺り一帯を巻き込む。故に、悲鳴嶼との――彼が巻き込まれない位置からの――同時攻撃は不可能。
ライドウは言う。
「……方法としては。【天命滅門】で蛇頭の群れへまとめて打撃を与え、その隙を突いて本体へと向かう。そして敵が再生する前に、自分と悲鳴嶼さんによる同時攻撃で討つ……それしかない」
ゴウトが声を上げた。
「無茶を! あのような大技を放った後だぞ、いかに
横から星命が言う。
「じゃあその、凪ちゃんに頑張ってもらうとか……難しいか、じゃあヨシツネ、ヨシツネにあの跳躍力で運んでもらって凪ちゃんが斬る、とか……」
「現状ではそれが最善か……だが、凪の力でどこまでやれるかは何とも言えぬ。さらには【天命滅門】ほどの奥義、二度撃つことはまず不可能……機を外したなら、次は無い」
星命は頭を抱えて天を仰ぐ。
「ああっ、どうしたら――」
が。不意にその動きを止め、じっと上を見た。
そこを――本来なら天井があるであろう、先の見えない闇を――指差す。
「これだよ! その技で天井を破るんだ、異界化された空間ごと! そうすれば日光が降り注いで、
ゴウトは目を見開いたが、すぐ首を横に振った。
「名案ではあるが。こちらの世界に来た時点の、空の様子からして未だ深夜のはず……夜明けまで耐え切れるなら、それで倒すことも出来ようが……」
だが。ライドウもまた、目を見開いていた。
「日光……
星命、そしてゴウトの目を見て言う。
「手はある。