【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥   作:木下望太郎

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第十四章  その力、全てを穿(うが)つか

 

 聞いたゴウトが声を荒げた。

「『日の神仏(かみ)』だと!? 血迷ったか、仲魔でもない神を()ぶことなど出来るわけがない! そもそも太陽神といえば、ほとんどの宗教において主神かそれに準ずる存在。いくら(うぬ)でもそれほどの力、使いこなせるとは思えぬ……!」

 

 ライドウは静かに首を横に振る。

「いや。手はある、それにわずかな時間でいい。あの仲魔、彼に『真の姿』を取り戻させることが出来れば――」

 

 ゴウトが目を見開く。

「! そうか、マレビト事変以降に仲魔にした『あの者』か!」

 

 そう話すうちに。三体の蛇頭がその舌を見せ、ライドウへと上から襲いかかる。

 

 が。その三体をまとめて括るように、鎖鉄球が巻きついた。

「葛葉。無事か」

 悲鳴嶼がその剛腕で鎖を引き、身をよじらせる三体を強引に引き止めていた。

 そこへアタバクが多腕の武器を振るう。

「【外敵粉砕】!」

 その巻き起こす衝撃波が鱗を、肉を弾き飛ばし。無理矢理に蛇頭を切断した。

 

「もらったァ!」

 音を立てて地に落ちたそれにすかさず玄弥が取りつき、滅多やたらと小太刀を突き立てる。

「剣は……腰で振るプロセス!」

 凪もそこへ縦横に小太刀を振るう。そうして、どうにか一体の蛇頭を灰へと滅した。

 

 横でヨシツネが声を上げた。

「ちいっ! こっちも早く頼むぜ!」

 アルラウネが荊を伸ばして動きを封じ、塞がろうとする傷口にヨシツネが斬りつけ続け。どうにかその再生を防いでいた。

 その一体に玄弥と凪が向かい、刃を突き立てる。

 

 再生しかけたもう一体に、悲鳴嶼は大きく孤を描いて鎖斧を打ち込み。

 追いかけるように跳び込んだライドウの刀が、続けて蛇頭を切断。その体を灰へと変えた。

 

 マントを振るい、漂う灰を払いのけて。ライドウは言った。

「助かりました。感謝します、後輩と仲魔を守っていただいて」

 

 表情を変えず悲鳴嶼は言う。

「なに、慣れている。それより何やら、先程の話。手はある、と聞こえたが」

 

 ライドウはうなずいた。

「『日の神仏(かみ)』。魔を祓う力と日光、それを併せ持つ仲魔を()びます。ただ……そのために力を溜める、時間が必要。それにその者の真の力、今までに()び覚ましたことはありません。どれほどの間、力を使えるか……」

 

 悲鳴嶼はうなずいた。

「心得た。ならばその間、我々で君を護ろう」

 

 ゴウトが口を開く。

「だが。力を集中させねばならん、今召喚している仲魔は管に戻す必要があるが……それでも、耐え切れるか」

 

 表情を変えず悲鳴嶼はうなずき。そして、鎖斧を無造作に放った。それがライドウへ近づいていた、一体の蛇頭を切断する。

「他に手はないのだろう。ならば、やってみせる」

 

 ライドウはうなずく。

「頼みました」

 

 アタバクとアルラウネがその身を緑の光に変え、管に戻る。

 ライドウは合掌した手に――ただし指先だけを互いに組み合わせた形――一本の管を手挟(たばさ)み、真言(しんごん)を唱える。

「オン・アスラ・ガラ・ラヤン・ソワカ。(なんじ)(たけ)く勇ましき者、天に(あら)ず神に(あら)ずといわれども、正しき義掲げ続ける者――」

 

「どっしゃああ!」

 ヨシツネが両脇に玄弥と凪を抱え――歯を食いしばり脂汗を垂らしながら――、悲鳴嶼に斬り落とされていた蛇頭へと必死に跳ぶ。

 着地と同時、二人は小太刀を振り上げたが。

 

 悲鳴嶼の声が飛ぶ。

「いかん、深追いし過ぎだ!」

 

 その言葉のとおり。それを餌とし、狙っていたかのように。複数の蛇頭が三人を囲み、鎌首をもたげていた。

 

 ライドウはなおも詠唱する。

「――神々の帝に弓引く者よ、それらの王よ。その義決して揺らがせず、正しき義貫く者よ――」

 

 悲鳴嶼が蛇頭に向け鎖を放つ。が、それが蛇頭をまとめて薙ぎ倒す前に。

 一体の蛇頭がすでに、玄弥と凪へ向けて、牙を剥いていた。

 

 詠唱は続いている。

「――されど知れ、汝らの義揺るがずとも。世の全て常に揺らぐもの、諸行、常に移ろうもの。汝らもまたその内にて揺らぐ、汝らが望まずとも――」

 

「きゃああ!?」

「ぐ……!」

 凪が目をつむり、玄弥が抱きかかえるようにかばおうとした、瞬間。

 

「おらああああ!」

 跳びかかるヨシツネが二人を突き倒し、間一髪で牙から逃がした。

 

「すまねえ、助かっ――」

 玄弥はそこで口を止めた。

 ヨシツネの背が赤く染まっていた。その肉が鎧ごと――骨すらのぞくほどに――こそぎ取られていた。

 

 玄弥の表情が固まる。

「――た、って……おま、お前――」

 凪が震えながら、両手で口を覆う。悲鳴を塞ぎ止めようとするかのように。

 

 口の端から血を流し、ヨシツネはほほ笑み。

 その間にも蛇頭は再び牙を剥き出し。

 悲鳴嶼が鎖を振るい上げるが、間に合うかどうか。

 

 ライドウは声を上げた。

「――さらば聴け、この(ことわり)を! 諸行無常・諸法無我。その義を知りて混沌より()で、我の前に力を示せ! 召喚――『アスラ王』!」

 

 轟くような音がした。揺れた、畳が、床が。否――大地が。

 ライドウが()んだものはそこにいた。

 丘陵のごときクラリオンの背丈すら越えて。先の見えぬ闇に覆われた天井、それに頭を()くかと見える、巨大な人影が。

 

「な、に……!」

 クラリオンが――それが模した星命の上半身が、全ての蛇頭が――動きを止め、天を、その悪魔を見上げる。

 

 三面六臂(ろっぴ)――三つの顔に六本の腕――を(そな)えたその仲魔は。燃えるような肌を簡素な衣に包み、黄金の兜をその三面にかぶり。六本のうち一組の手で合掌していた。

 

「ぬぅん!」

 アスラ王は地を揺るがして片膝をつき、合掌したまま四本の腕を振るう。それが凪たちに迫る蛇頭を軽々と薙ぎ倒し、勢い余ってちぎり飛ばす。

宙へと舞った蛇頭の先端は、重い音を立てて落下し。畳を突き破って、それでも(うごめ)き続けていた。

 

アスラ王は重く響く声を上げた。

「修羅道の主たる我が力を求めるとは……ライドウよ、此度(こたび)は余程の修羅場と見える」

 

 ライドウは声を上げる。

「そのとおりだ。だが、今必要なのは――」

 

 その続きを言うより先に、クラリオンが声を上げた。

「なるほど……確かに強大な悪魔だ、だが。今の我を滅することなど出来ぬ……何者にも!」

 

 無数の蛇頭がアスラ王の、脚に腹に胸に巻きつき。一斉に牙をその身に立てる。

 

 だが、意に介した様子もなく。アスラ王はその六本の腕を大きく開き、伸ばし。そして身をかがめ、合掌するように合わせた。蛇頭を、その首を、そしてクラリオン本体を。打ち潰すように、その巨大な掌で。

「合掌……【万物(ほふ)り】!」

 

 声も無く。クラリオンはその手の内で潰され、湿った音を響かせ。辺りに紫色の体液を散らす。

 

 阿修羅の王はなおも容赦せず、その手を開き。

「おぉぉああああああああああっっ!!」

 六本腕での掌打を無数に、潰れ果てた肉塊へと浴びせかける。それが当たるその度に床が柱が、建物が大地が揺らぎ。クラリオンの体が潰れ、体液をまき散らす。

 

 玄弥が口を開く。

「すっ……げ……」

 苦しげな息の下からヨシツネが言う。

「やったぜ、こいつぁ……!」

 

 だが。

飛び散っていた体液が泥のように潰れた肉片が、時を戻したように寄り集り。再び、クラリオンの姿を取る。

 紫の血を流すそれが星命の上半身を模した姿で笑った。

「ふっ……ふ、ははははは! 何だそれは、何だそれは! 祓魔(ふつま)の力も日光も帯びぬ、ただの力ではないか! 確かに圧倒的な力ではあるが……そんなもので我を殺せると思ったか!」

 

 無数の蛇頭が再びアスラ王に取りつく。

 

 クラリオンはその、異様に澄んだ目でアスラ王を見上げる。

「さあ、その力。我がものとしてくれる、全てを喰らって!」

 

 




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