【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥 作:木下望太郎
「……!」
畳に落ちたホルスターと、鉄球を振るう男の位置を目で測るが。男の鎖が動き、手早く銃を跳ね飛ばす。どこか分からぬ闇の中へ。
そこで、葛葉ライドウはようやく刀を構えた。
正直、事を構えたくはなかった。相手の事情は知らないが、訪れたこの異世界の者と。
思う間にも男の鉄球が飛ぶ。風圧にマントが学帽が、
が。
「【岩の呼吸・壱ノ型――蛇紋岩・双極】」
男はわずかな時間差を置いて、ライドウが身をかわしたそこへ。同じく鎖で一つなぎとなった、手斧の方をも放っていた。
ライドウは刀を横たえた形に構えつつ、その名を呼んだ。
「擬態せよ、『
葛葉一族より授けられし退魔刀『赤口葛葉』、その真髄はある種の秘儀により、それ自体が悪魔と一体化することにある。
悪魔化したそれは生体マグネタイト――ある種のエネルギー――を使い、自らを擬態させる性質があった。あるいは切り裂く刀、あるいは閃く槍。あるいは打ち砕く大斧に。
「何……!」
真正面から受けられるとは計算していなかったのだろう、男の動きが一瞬止まった。
「ぐぅ……!」
一方、ライドウもまた歯を食いしばる。分厚い光の壁は一撃でひび割れ、崩れた。殺し切れなかった衝撃を受け、踏ん張った足下で革靴が
だが。その衝撃を予想していた分、次の行動はわずかにライドウが早かった。男が鎖を振るい上げる前に、懐から――銃と一緒に叩き落とされなかったのは
低く息を吐くと同時、力を込めると――筋力ではない、魔力霊力の類。自らの生体マグネタイトを絞り出し、管に込める――ねじ式の
「召喚――放て、『ミシャグジさま』!」
人魂のように揺らめきながら、孤を描いて畳の上へ飛んだ光は。
それはライドウの背を越えて、ひょろりと長い体の蛇神。ただし蛇頭人身、白蛇の頭と尻尾を
「生唾モンの活躍じゃああ!」
「が……!」
手にした武器の上を体を電撃が走り、男がわずかに体勢を崩す。
ライドウは別の管を抜き、新たな
「
光が形を取ったそれは、ミシャグジさまほどの背丈だったが。幅も厚みも比べものにならない、
「応よおお!」
ゴズキはその太い腕で――女の腰回り程の太さがあろうか――男をつかみ、鎖を握るその腕ごと、ぎりり、と体を締め上げる。
ライドウが指示を飛ばす。
「そのまま遠くへ投げ捨てろ。後は構わない、追う必要は――」
その言葉が終わらぬ間に。何か異様な音が聞こえた。
それはゴズキの締め上げる男から。こおおおお、と長く、呼吸音のような――それにしては、こおおおお、おおお、と異様に深く強く、長い――。
そして男は唱え出した。
「――
男が経を唱えるその一言ごとにその腕が震え、筋肉が張り。やがては手を上げ、ゴズキの腕をゆっくりとほどき。そればかりか、つかみ返し。
「何いいい!?」
悲鳴のようなゴズキの声にも構わず、その腰に腕を回し。自らの腰を落とし、両足を踏ん張ると。
「
一息に抱え上げ、その勢いのままに体を、腕を振り。ゴズキの巨体を宙へと投げた。
「なああああああぶべっ!?」
宙を舞ったゴズキの体は程なく畳に落ち、引きずる跡を残しながら滑り。板壁を頭でぶち破ったところで動きを止めた。その指だけがぴくぴくと動く。
「何だと!」
声を上げたのはライドウではない。その傍らに姿を見せた黒猫。ライドウの供、
「ゴズキの蛮力を真正面から跳ね返すとは……あの男の力、もはや人間のそれではない」
鎖を構え直す男から目を離さず、ライドウは言う。
「では悪魔だと?」
「いや、魔力の類は感じ取れぬ……一帯が異界化しているせいで、悪魔の存在は奴の五感でも感知されているようだがな。あの怪力、あるいは独特の呼吸に関係しているのかもしれんが……それにしても」
鉄球を振り回す男を見据えて言う。
「我らの道を阻むというなら。厄介極まりない相手よ」
ライドウは小さくうなずき、刀を構え直す。その刃が再び緑の燐光を放ち出した。
そのとき。
割って入るように、別の声が二人の間に降ってきた。やや高い、声変わりしたかどうかの少年の声。
「ちょーっと、ちょっと待ったお二人さん!」
二人の上、その空間を薄く照らしながら。白くか細い光の中に浮かぶ少年がいた。
身につけた服はライドウと同じ学生服。男子としてはやや長い、襟にかからぬ程度で整えられた髪。優秀さをうかがわせるような整った顔立ちだが、眼鏡の下の眼差しはむしろ、人
「いや、お一人様と一匹? かな? でもやっぱりお二人さんの方が合ってる?」
小首を傾げる少年は、その輪郭をおぼろげに揺らす。体も身につけた衣服も。
「……」
ライドウは何も言わず、視線だけで少年を促す。
少年は手を一つ叩き――その手の輪郭がまた、波紋のように揺らめく――言った。
「そう、それよりだよ! 何やってるんだい、こんなことやってる場合じゃないよ! ライドウくんともあろう者がとんだ道草を食うじゃないか」
胸に手を当てて少年は言う。
「忘れないで欲しいな、この異世界に来た目的……『僕を探して、倒しに来てもらった』こと」
そう言った。ライドウの友であり、敵であった存在、