【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥   作:木下望太郎

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第四章  剛斧《ごうふ》鉄球、霊刀と相打《あいう》つ

 

 ――そして今。

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

 悲鳴嶼は変わらず念仏を唱え、鉄球を振り回す。己が武器に遠心力を乗せつつ、いつでも攻防に使える体勢。

 

 敵は先ほど出現させた、手下の鬼に帰還を命じた。同時、その傍らに立っていたはずの、先程電撃を放っていた痩躯(そうく)と、投げ倒した巨体。その二つから跳ね返っていた音が突然手応えを失う。

 そしてそれらがいた位置から、敵に向かって何かが流れる――音の跳ね返りは柔い、むしろ、ゆるり、と透過するような。実体ではなく水の流れや、揺らめく炎のような何か――。その流れは敵の手にした、筒のような器物に収まった。

 

 そして敵は刀を下ろし――鞘に納めはせず――声を発した。

「待て。敵対するつもりはない、当方は対話を希望する」

 

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

 

 管か何か、小さな物に手下を封じておき、自在に呼び出しては血鬼術を使わせる、それが奴の血鬼術。そう悲鳴嶼は判断した。

 そして、そう判断した以上。対話に応じる必要も意味も無い。血鬼術を使える人間などなく――呼吸術による力はあくまで物理的な力、火や水を放つような神通力ではない――、人間に味方する鬼も――わずか二、三の例外を除いて――ない。

 何より奴は斬った、悲鳴嶼の前で隊士を。

 

 そして悲鳴嶼は、返答を口にした。

「【岩の呼吸・()ノ型――流紋岩・速征】」

 斧と鉄球、鎖につながった翼の如く左右へ広げつつ、前へと挟み討つように放つ。

それはあたかも、たった一人の人間が完全に再現した鶴翼(かくよく)の陣。双方向から回り込み、押し包み、すり潰す――そのための攻撃。

 

「くっ……!」

 相手は素早く飛び退き、挟み討ちの射程から逃れた。

 

 それでいい、と悲鳴嶼は思った。

 孫子の兵法書にもある――悲鳴嶼はかつてそれを、御館様から読んで聞かされた記憶があった――、敵を完全包囲するのは愚策、と。

もしそうすれば敵は死兵と化し、命を顧みず抵抗する――この敵程の手練(てだれ)であれば、回避不能と見れば前へ出るだろう。危険を冒してでも、武器を振るう悲鳴嶼自身を斬りに。

 

 そうならないよう手を緩めておいた、逃げ道をただ一つ空けるように。敵が後ろへ逃げられるように。悲鳴嶼が狙ったそこへ、上手く誘い込めるように。

 

 斧を手元へ引き寄せつつ、鉄球を敵へと大きく振るう。

 だがそれは、大技を放った隙を埋めるための攻撃に過ぎない、速度も力も乗ってはいない――そう、敵は感じただろう。

 

 そこへ。

「【岩の呼吸・()ノ型――天面砕き】」

 鉄球を振るう鎖を踏み締めた、畳にめり込む程の力を以て。

 緩く放物線を描いていた鉄球は突如その半径を縮め、遥かに速度を上げ。鋭く、敵へと()ちた。

 

「ライドウ!」

「ライドウくん!」

 敵から離れた位置にいた、その仲間らしき者――小動物と、宙に浮かんだ炎か風の流れのような、ゆらめく何者か――が声を上げる。

 

 同時、古畳と床板の粉砕された轟音、辺りに舞い散る(かび)くさい粉塵。

 

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

 せめてそれだけ念仏を唱え、鉄球を引き戻そうとして。

 

 気づいた。

床下まで打ち抜いたはずの鉄球が。畳の上ほどの位置に留まっていることを。

 

「おお……おおおぉっ!」

 燃えるような叫びと共に、敵は鉄球を振り落とし。床下から跳び上がった。

 

「何……!」

 血のにおいがする、決して無傷ではない。それでも敵は、振り払うように空間へ刀を振った。

 それと同時に、辺りに何か多数の、いや無数の物が倒れる音。

「これは……剣……?」

 

 いったいどこから現れたというのか、これも敵の血鬼術か。周囲の畳に深々と突き立った無数の直剣。それが敵を護るように(かし)ぎ、まるで天幕(テント)のような形に折り重なり。厚く厚く、防弾壕(トーチカ)にすら似て分厚く重なり。

 そのほとんどを折り取られながらも、剣の群れは砲撃の如き鉄球から護り抜いた。敵を――葛葉ライドウと名乗るその男を。

 

 剣の破片が、これも炎や風の流れのようなものへと姿を変え、かき消える中。ライドウの仲間、小動物の姿をした者がつぶやく。

「かつてその刀に宿した剣神『フツヌシ』……その残した思念と力がライドウを護った、か……」

 

 血を流しながらもライドウは、背筋を伸ばして立ち。刀を納めた。

 そして声を放つ。

「敵対するつもりはない。当方は、対話を希望する」

 

「…………」

 悲鳴嶼は鎖を手放しはしなかった。

 ただ、忘れていた。それを振り回すことも、経を読むことも。

 

 

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