【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥 作:木下望太郎
「戻りなさい、オルトロス!」
凪の声が飛ぶと同時、獅子の体は緑の光となって散る。吸い込まれるように、凪の手にした管へと還っていった。
その間にも、玄弥は炎のくすぶる死神に爪を浴びせては引き、振るわれる剣を小太刀で受ける。まだ、決着はつけられそうにない。
凪が声を上げる。
「貴方! ええと――」
敵の攻撃から身をかわしながら、玄弥は一瞬悩んだが。こちらの名前を知らず呼べないのだと、遅れて理解した。
死神へ斬りつけながら言う。
「何だ! 後にしろ後に!」
後ろから凪は言う。
「心苦しいプロセスですが、もう少しそのまま頑張って下さい!」
「あぁ?」
跳び退きながら横目で見ると。凪は、一本の管を手にしていた。
「わずかだけ時間を稼いでいただければ、強力な仲魔を
よく分からない――そもそもなぜ、血鬼術のような召喚術を凪が使えるのかも分からない――が。とにかく、玄弥は断わらなかった。無言のまま戦闘を続ける。
管を持ったまま目をつむり手を合わせる、凪の声が静かに響く。
「
玄弥は爪と小太刀で十字に斬りかかるが、敵の剣に阻まれた。つばぜり合いに持ち込むが力で押され、舌打ちして身を引く。
「――
続けて振るわれる剣を玄弥は跳び、身をひねり、体ごとのけぞってどうにかかわす――
「――願わくは
目を見開き、凪が声を上げた。
「召喚! 貴殿の名は――英雄『ヨシツネ』!」
緑の光が管から飛び出し、軽快な男の声を上げた。
「ハッハー! 浅草
見る間に光は、赤い鎧をまとった若武者の姿を取る。端整な顔の上、頭には烏帽子をかぶった、身軽そうな細身の武士。その手には抜き身の太刀。
「え……」
敵から距離を取りながら、思わず玄弥はそちらを見る。
幼い頃、ぐずる弟たちをあやしながら。寝床の上で母が語ってくれた、牛若丸――後の源 義経――と弁慶の昔話。それが、ここに?
凪は死神を真っ直ぐ指差す。
「ヨシツネ! あの敵を倒し、少年を救うセオリーです!」
整った顔をはっきりと歪め、ヨシツネは舌打ちする。
「このオレに命令たぁ、出世したもんだな小娘……まぁいい。あの程度、名刀『
言う間にヨシツネは高く跳び。闇の中へ高く跳び――そういえばこの屋敷は異常に大きい、一部屋一部屋が大広間か蔵のように。外から見たときはただの屋敷だったが、これも悪魔とやらのせいか――。そのまま闇に姿を消した。
「……ん?」
玄弥がいぶかしんだとき。
「しゃあらああぁ!」
遥か高くの壁を蹴ったか、矢のような速度で。ヨシツネが敵へと飛びかかる。
「ググ……!」
その一撃は、敵も剣を構えて受けたが。
大きく体勢を崩したそこへ、着地したヨシツネが連続で太刀を振るう。
「おぉらぁ! これで終いじゃあ!」
さらに、一直線に駆け抜けながら。胴斬りに振るった刃が、敵を両断した。
死神の上体がぐらり、と揺れ、音を立てて畳に落ちる。
「ふ。決まったな……決まり過ぎたぐらいだぜ」
太刀を一つ降った後、目を閉じて納刀するヨシツネ。
凪の声が飛ぶ。
「ヨシツネ、後ろ!」
「ん?」
悠々と振り返ったヨシツネの前に。倒れた死神が最期の力で振るう、剣が迫っていた。
「えっ……」
完全に固まったヨシツネには構わず。玄弥は銃の引き金を引いた。横合いから敵の腕、そして頭へ一発ずつ、最後の銃弾を。
散らばる弾丸の群れは敵の腕を折り、頭を吹き飛ばし。完全に敵の動きを止めた。
凪が玄弥とヨシツネの方へ駆け寄る。
「感謝です、助かったセオリーです! ヨシツネ、怪我は」
「えっ、と……」
目を瞬かせていたヨシツネだったが。突然玄弥に向かい、顔をしかめた。
「今よーてめえよー、『てつはう』が一発ヒュン、って一発ヒュン、って! オレの顔に当たるとこだったろうがよ、あぁー?」
頬に何度も、ヒュン、と指を走らせる。
「…………」
玄弥は口を開けていた。
なんだか、思っていたのと違う。この義経は。
一発ぐらい当たっていても良かった、そう思いながら凪に向き直る。視線をうつ向けていった。
「こっちこそ、助けられた。……俺は鬼殺隊、
ヨシツネが腕組みして背を反らせる。
「ふんっ、特別に名乗ってやろう。遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 我こそは源――」
目を合わせずに玄弥は言う。
「お前はいい」
「何ぃぃ!」
「知ってる」
「お……おう。そうか。さすがにオレは名高き――」
何か喋っているヨシツネは無視し、凪に言った。
「悪いが、力を貸して欲しい。図々しいかも知れねえが――」
凪は玄弥の手を握る。
「もちろん、こちらこそお願いしたいセオリーです」
と、そのとき。闇の向こうから、何かが這いずるような音がした。
見れば。さらに現れた、隊士服を着た屍人、着物姿や洋装の屍人。泥に目と口をつけたような魔物。
玄弥は鼻を鳴らし、獣の力を宿す手を握る。
「ふん、早速お出ましかよ。だが――」
さらに現れた。泥の魔物。地獄図に見る餓鬼。牛頭鬼、馬頭鬼。根を軋ませて歩く、人骨を幹で捻り潰した木。炎の尾を持つ虎。翼をはためかす、西洋甲冑をまとう天使の手には剣が光る。
人魂のように宙に燃える、南瓜をくり抜いた形の
それらが溢れかえる向こうには。見上げるような巨大な骸骨が、足音も重く向かってくる。
「………………」
無言のまま。三人の顔が、一様に引きつる。