ようこそ間違わなかった教室へ   作:あもう

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自己紹介

俺が教室に着くと既に何人かの生徒は着席していた。席順は前のホワイトボードに貼ってあるようで、しかも番号や性別に寄らないランダムなものだと思われる。さすがは最近の国立高校、黒板では無くホワイトボード、しかもジェンダーレスや平等なんて事を考えているのかもしれない。フェミニストは嫌いだが平等なのは社会としては大事なのだろう。最も見せかけだけだろうが。

 

さて、ここで突然だがまたもや俺の問に答えて欲しい。いつもワンパターンなのは……まぁ……ほら、コミュ障だから許して欲しい。

 

問 社会とはどうあるべきなのか。

 

世の中は何時だって強者が強者であり続け、弱者が弱者であり続ける為に出来ている。例えこの世界が真に平等になり得たとしてもそれは均等では無い。ただ力の差を明白にするだけであり、それは真の実力至上主義の社会への道を更に加速させるのだ。

 

世の中で天才と言われる人間は所詮、意識も定かで無く、記憶にあるか無いかの時期からそれについて植え付けられているに過ぎない。かの有名な福沢諭吉の『学問のすゝめ』も、生まれ持った際の才能の差は無く、平等である事を言い得ている。ここでの平等とは均等と同義である。

 

仮に天才は生まれ持って決まるものだと言い張る人間が入ればそれは幼少期の親の教育、或いは今までの努力がなし得た技に過ぎないのでただただ傲慢であるとしか言えないだろう。

 

 

話を戻そう。この世の上の地位、つまり強者達は当然ながらその位置から降りる様な真似はしたくない。だからこそ『表向き均等のように見せた自分達に有利な世界』が作りたいのだ。そしてその為の体のいい言葉が平等である。きっと社会は永遠に平等になり得ない。均等にもなり得ない。社会主義ならば社会的立場としては均等に近しくなるがそれでも多少の格差は有るだろう。

 

社会というのはJKが言う「ノリ」や「雰囲気」と何も変わらない。この世界にいる沢山の人間が保身のために生み出した生み出した常識という意味の無い実態だ。そして「ノリ」や「雰囲気」と同じく、異端と決めつけた誰かの人生をドロップアウトさせる事も出来る恐ろしい者だ。1種の猛獣、或いは怪物と言ったところか。それを権力者達は自分に都合がいい様に、『平等』という人参をぶら下げて仕向けているに過ぎない。世の中甘い話等無いのである、人というのは当然欲の塊なので、自分の利益を考えるのは当然である。

 

結論を言おうか。社会とは何か。沢山の人間の欲が生み出した猛獣であり、この世で最も恐ろしいモノである。

 

 

社会を敵にまわして勝つ方法など存在しない。例えば某兵庫県議会の議員は会見で大号泣してマスコミの反感を買い、世間体に避難されて社会からドロップアウトした。そしてそれを消したのは社会の『常識』に他ならない。彼は蛮勇にも社会と戦って負けたのである。

 

 

さて、皆さんはなぜいきなりこんな社会について長々語り出したのか疑問に思っている事だろう。中には校長先生波の長さで爆睡してしまった方もいるかもしれない。そいつはビンタな。

 

そしてここで1つ忘れないで欲しい。学校とは社会の縮図である。つまりさっき言った事は学校生活でも適用される。

 

 

つまり何が言いたいのかというと、世間体と言うのは基本的に大事なものであり、それをコントロール出来るという事は他人を社会から自由自在にドロップアウトさせられる事と同義である。そしてそれができるのが櫛田桔梗だ。まともな生き方をしてると敵に回した瞬間厄介な事この上無いのである。俺が櫛田桔梗という少女の本性を知っている以上まともな友好の道は無いだろう。

 

と、言うわけで櫛田の対処法は何個かあるが、そのうち何個かを初期の段階で実践する必要があるだろう。

 

例えば高円寺は櫛田桔梗に一切で負ける事が無いだろう。それはスペック云々の問題では無く、彼が『非常識』、つまり社会的立場、或いは世間体の一切を捨てているからに他ならない。彼ほど極端では無いにしろ、社会的立場等不必要だという根底概念さえ持てばまず自分の身の安全は確保できる。

 

次に誰かしらを櫛田の様なポジションに送り込めればその時点で攻略可能なのだが……まぁこっちはかなり難しいだろう。それに現状櫛田を排除する予定は無い、こちらが潰されないようにすればいいだけだ。排除したい奴は現状堀北一人である。

 

ちなみに俺の席は廊下の出入口の最も近くの席……の一個前に位置している。登下校は楽そうで何よりだ。櫛田対策で不必要に人と関わらない方向に舵を切った俺にはちょうど良いのかもしれないな。どうせDクラスの八割はゴミだしな。2000万プライベートポイント貯めたいぐらいだぞ本当に。

 

幸い教室に櫛田桔梗は居ない。堀北……今もうゴミ北でいいか。ゴミ北も居ないので今のうちに会話のシャットダウンをさっさとしてしまいたい所だ。

 

周りから見て極力穏便に、かつ会話をシャットダウンする方法、それ即ち仮眠である。寝てる相手を初対面から起こせば勝手にあっちの評判が落ちる。絶対に起こして話しかけはしないだろう。幸いにも、英才教育(笑)のせいで普段から睡眠負債は溜まっていた為、早々に眠りに着く事が出来た。資料は予め頭に叩き込んでるし問題は無いだろう。

 

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「おい、先生来たぞ、起きろ。」

 

「……んぇ?誰?」

 

俺は爆睡していた所を目の前の奴に起こしてもらう事で、説明中に寝てる、なんてことは無く事なきを得た。自分でも思っていたより寝ていたらしい。幸いにもここは廊下に最も近い席なので、遠くから先生が来てるかどうかはひと目でわかる。それにしても目の前の奴は……初対面の俺をわざわざ起こしてくれたのか、良い奴だな。

 

「ん?あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は三宅明人だ。起こしちゃまずかったか?」

 

「いや、普通に助かった。俺は天野聖だ。セイントなんてキラキラネームをつけた父親は絶対に許さん。よろしくな。」

 

「大変だな……よろしく。」

 

目の前のキャラは三宅明人。原作では綾小路グループの1人にして、Dクラスの中にいる数少ないまともな人間、つまりは先述の残りの2割だ。確か弓道部に入るんだったか……今のうちにこちら側に引き込んでしまいたい所だな。よく分からんモブもいるし基準はキラキラネームに引くか引かないかにしておこう。

 

そのまま教室の前の扉がガラガラと音を立てる。そう言えば原作では天井に監視カメラがあるんだったな。俺は寝起きなので首を回すフリをして上を見上げると、天井の四隅に監視カメラが設置されているのが分かった。天井は白なのに対して監視カメラは黒、隠す気はサラサラ無さそうだ。

 

 

そして胸元だけ開けたスーツを着た20代後半と見られる女性が、登校時間のチャイムが教室内に響き渡るタイミングで教卓の前に立った。

 

彼女は生真面目なスーツの着方をしているように見えるが、何故だか胸元のボタンだけ空いているせいで谷間が若干見えている。サイズが絶対にあって居ないと思う。男子高校生を悩殺する気なのかこの人は……コイツらまだ15だぜ?

 

ちなみに皆さんお察しだとは思うが一応外見の話はしておこう。鳶色の長い髪をポニーテールのように垂らし、黒タイツとスーツのミニスカート、何故か胸元の空いたスーツといった感じだ。まぁ恐らくは某担任だろう。目は圧が強く、正直あんまりタイプじゃない……と言っても別に恋愛する訳では無いのだが。

 

それを見た生徒達は、資料から目を離したり、仮眠から目を覚ましたりしていた。須藤と見られる赤髪の奴がまだ寝てる事や、高円寺が爪研ぎをしている以外は概ねちゃんと話を聞く姿勢だろう。高円寺は攻撃と命中率を1段階上げているがここは目と目があってもポケモンバトルはしないと思う。

 

「新入生諸君。私はこのDクラスを受け持つことになった茶柱佐枝だ。担当科目は日本史だ。当校では卒業までの三年間クラス替えはしない。よって、私たちは三年間共に過ごすことになる。よろしく。今からおよそ一時間後に入学式が行われるが、その前に当校の特殊なルールについて説明をしたいと思う。まずはこの資料を配布したいので、前の生徒は後ろの生徒に回してくれ。」

 

 

 そう言いながら茶柱先生は人数分の資料を取り、配布する。

 

さて、茶葉佐枝、このDクラスの担任であり、過去に縛られて誰よりも下克上を望んでいる教師だ、ちなみに個人的には佐倉の1件しかり、軽井沢のイジメを知らなかった件しかり、綾小路を脅した件しかり、原作準拠ではかなり使えない教師という判定を下している。あと偉そうなのと圧が強いのが単純に苦手なタイプだ。成長を遂げた世界線の堀北みたいだな。

 

 

彼女を更迭するのも場合によっては視野に入れていく必要があるだろう。或いはプライベートポイントを払って教師をトレードさせるか。一体いくら掛かるんだろうか……とは言ってもあんまり学生側から見たら意味は無さそうなので案外安いのかもしれない。

 

この高等学校は、この国に47個しかない国立の高校である。そしてここだけは全国各地にある国立の高等学校とは異なったルールが敷かれている。このシステムの学校があるのは他の国だとアメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中国、イタリア、フランス、ブラジル、オーストラリアの10ヶ国しかない。

 

「まずは大前提として、生徒は在学中、学校が用意した寮で寝泊まりしなくてはならない。そして、生徒は在学中、特例を除き外部との接触を禁じられている。例えば中学時代の友達や、家族との連絡は不可能という訳だな。さらには、学校の敷地内からの外出も禁じられている。

 

勿論破ればそれ相応の罰則が下される。だが心配する必要は無いぞ?この学校がまた生徒に不満を覚えさせないように手配されているのも事実だ。この学校にはスーパーやコンビニは勿論カラオケやシアタールーム、カフェやゲームセンターなんかも存在している。」

 

ちなみにこれを聞いて割を食うのは葛城だ。まぁあんなハゲの事はどうでもいいか。そして俺たちの手元に次は学生証端末が配布される。これの録音は……間に合わなそうだな。

 

 

 

「次はSシステムについての説明をする。今お前たちに今から配る学生証端末。このカードにはポイントが振り分けられており、ポイントを消費することによって敷地内にある施設の利用や売られている商品の購入が可能だ。

 

まあ、クレジットカードだと思えばいい。敷地内で買えないものは無く、また学校内でもそれは同様だ。学生証に振り込まれているポイントは1ポイント=1円の計算になっている。

 

ポイントの使い方は簡単だから迷うことはないだろう。もし困ったらその場にいる職員に尋ねるように。それからポイントは毎月一日に振り込まれる。今現在、新入生のお前たちには10万ポイントが振り込まれているはずだ。」

 

 

 茶柱先生の言葉に、大半生徒はざわついた。

 

 彼女の言う通りなら、オレたちは現時点で、10万ポイントを得ているのだから無理もないだろうが。

 

それにしても電子マネーか……ハッキング対策はしっかりしてあるんだろうか。いやまぁしてないと困るんだけどさ。仮にも国立だし心配要らんか。

 

 

あるものは喜び、あるものは疑い、あるものは爪を研ぐ。その生徒達を、茶柱先生はおかしそうに笑った。最後のは関係ない気もするって?気にするなよ。

 

 

 

「意外か? 最初に言っておくが、当校では実力で生徒を測っている。偏差値が高い高校入試をクリアしてみせたお前たちにはそれだけの価値があるということだ。

 

若者には無限の可能性がある、その評価のようなものだと思えばいい。ただし、卒業後はどれだけポイントが残っていても現金化は出来ないので注意しろ。仮に100万ポイント……百万円貯めていたとしても意味は一切ない。

 

ポイントをどう使おうがそれは自由だ。そうだな、例えば男子だったら最新鋭のゲーム機が売られているし、女子だったら様々な服屋がある。自分が使いたいように使え。逆に使わないのも手だな。もしいらないのならば友人に譲る方法もある。

 

……ああ、苛めはやめろよ? 学校は苛めに敏感だから、もし発覚したらそいつは問答無用で退学処分となるからな。では、良い学生ライフを過ごしてくれ。」

 

 

茶柱先生はそう締め括って、やることはやったとばかりに歓喜の声に包まれる教室から立ち去った。ちなみに俺はこの茶柱先生が原作では龍園が軽井沢を虐めていた際に虐めに対応して居なかった事は知っている。教師として虐めのガン無視とかただのクズだと思う。本当に。もし仮に冤罪で虐められている奴が居たとしても見捨てるだろう。

 

さて、駒の少ない現状真っ先に軽井沢を虐めたい所だが初日に気付いてるのは色々頭おかしい……いや、近くの中学校って事にしとこ。どうせ大方住んでいる地域の特定は出来てるんだ。それにこの学校で俺はAクラスを目指す事よりも退学しない事よりも楽しく生きる事を優先したい。美少女を脅すとか最高に愉悦を感じられそうだ。ウンウン。

 

 

ちなみに補足をしておくと東京都高度育成高等学校の最大の魅力は、就職率、進学率共にほぼ百パーセントの所だろう。国主導で作られたこの高校は、生徒が望む道に応えるのだとか。

 

事実、学校側はそれをホームぺージを通して大体的に告知しているし、卒業生の中には世の中を賑やかせている人……うちの父親なんかがいる訳だが、その実態はAクラスだけしかその権利が貰えない事であろう。まぁ最も俺はどのクラスで卒業しよう行先は会社の社長である。強いて言うならいい大学に行くのに使うぐらいか。こちらも受験勉強をしっかりすればそこそこの所には行ける。なんの問題も無いだろうが。

 

この学校にしてもそうだ、社会にあるもの全てには、上手い話に裏がある。偽善者は何処まで行こうとやる事は己の心を満たすエゴだし、善人なんてのも存在しない。自分のエゴをし続けているに過ぎない。

 

 

茶柱先生にしてもそうだろう。ゴミ北にしてもそうだ。それ自体を否定するつもりは無いが、価値観と合わないものは合わないのだ。

 

ちなみにDクラス内だが……。

 

 

「ねぇねぇ、後で一緒に買い物行かない? 持ってこれた私物はかなり少ないし、服でも見に行こうよ!COOLUAのチョコも食べたいしさ。」

 

 

「うん! 今だったら何でも買えるしね。……私、この学校に入学出来て良かったな〜。絶対に落ちたと思ってたもん。私バカなんだよねぇ〜。」

 

 

「私も私も〜!!この学校入れて本当によかった!」

 

 

「なぁ、さっきの先生の言葉が本当ならさ。最新鋭のゲーム機が売られてるんだろ? ちょっと見に行かねぇか?俺ポケモン買いてぇ!」

 

 

 

「もちろんだ。最近出た第14世代のポケモン売っていると良いなあ……。すぐに完売になったからな、お前どっち買う?俺はαかな。」

 

 

「お前もか? ならさ、一緒に買って一緒にプレイしようぜ!俺はβ買うわ。」

 

 

十万円という大金を得た喜びに浸り、浮き足立つ沢山の生徒。この時期にわざわざ無能と関わるメリットは無い。賭けと称してプライベートポイントを巻き上げてもいいが普通に訴えられそうだしな。

 

 

「皆、ちょっと良いかな?」

 

 

大半生徒たちが声主に視線を向ける中、そこには数多の視線を身に浴びながらも堂々とした態度を崩さない一人の男子生徒が居た。俗に言う爽やかイケメンタイプである。だいたいこう言う奴がサッカー部なのだ。まぁ彼はボールと友達な訳でも超次元サッカーをする訳でもエゴイストでも兄の心臓が胸にある訳でも無いのだが。

 

 

「僕らは今日から三年間共に過ごすことになる。だから自己紹介を行って、一日も早く友達になれたらと思うんだ。茶柱先生の言葉を信じるなら、入学式までに一時間はある。どうかな?」

 

本来、原作では入学式の後だった気がするが、こうしてみると取捨選択の有無がないな。逃げるつもりだったがまぁ……乗り掛かった船だな。タイタニック号じゃない事を信じよう。

 

 

「賛成ー! 私たち、まだお互いの名前すら知らないしね。」

 

 

 

 一人の少女が賛同したことによって、流れは前に前にと進む。多分あれが軽井沢だな。それにしても虐めっ子上がりでこの合せの上手さって凄くね?

 

 最初に自己紹介をしたのは、やはりというか発案者の少年だった。そして多分こいつが平田だな。

 

ちなみに俺は自己紹介はあんまりしたくない。下の名前がキラキラネームだからだ。察して欲しい。ここはDクラス、三宅みたいに誰しもが許容範囲が広い訳では無いだろう。

 

「僕の名前は平田洋介。中学の時は皆から洋介って言われていたから、気軽に『洋介』って呼んでくれると嬉しいかな。趣味はスポーツ全般だけど、その中でもサッカーが好きで、サッカー部に入部する予定だよ。よろしく。」

 

 

 拍手喝采。

 

 イケメン×爽やか×サッカー×クラスリーダー×陽キャ=テンプレートの公式を見事に持っていらっしゃる。属性過多でありながら系統が揃っており綺麗なバランスのある属性だな、と前世の記憶の無い俺ならば言っていた事だろう。

 

平田洋介、陽介では無く洋介、昔なんやかんやあったせいで極度の平等中毒者になり、他人を斬ることに反対し続ける人間だ。コイツクラスの雰囲気的に絶対Bクラスに送るべきだったと思うんだけど学校側は問題を起こしたせいでDクラスにぶち込んだ。ちなみに彼がこのままな間はクラスの足切りが出来ないのでスペック云々を差し引いても割と邪魔だと思っている。神崎と交換所望だな。

 

 

ちなみに拍手自体は皆送っているが、女子生徒の拍手の度合いが凄まじい。今のたった数秒の自己紹介で、彼の玉の輿を狙う女はおいくらかおいくらか。世の中は顔面偏差値に満ちている。

 

 

「もし良ければ、端の方から自己紹介をお願い出来るかな? えっと、そこの君。頼めるかい?」

 

そう言い隣の少女を指名する。なんか幸薄そうな顔してるな……貧乳ゆんゆんみたいだ。誰だっけこの人。

 

「え、わ、私……ですか??」

 

 

「うんそうだよ。気を悪くさせたらごめんね。」

 

イケメンスマイルと場の雰囲気でゴリ押しに掛かったなコイツ…まぁ助けてやる義理も無いか。

 

そのまま数秒、数十秒と場の空気が過ぎていく、彼女はあがり症なのだろう。この場の雰囲気は平田が最高にして最悪のパスをしたせいで自己紹介のハードルが上がり過ぎている訳だから無理もないが。他の周りも初手から突っ込んだ事はしたくない、か。

 

仕方ない。クラスでの立場なんか要らない俺は泥にどれだけ塗れようとなんの問題も無い。特に助ける価値は感じないが助けに入るか。

 

「平田……だったか。ちょっといいか?悪いがトップバッターは俺に任せてくれないか?ここら辺でお遊びは終わりだって所を見せてやりたい。」

 

ちなみにここで大事なのはいかに上手い自己紹介をするかでは無く、いかに周りからドン引きされる自己紹介をするかである。どうせ大半は何も見てないだろうしな。俺の狙いポジションが高円寺に近しい時点で特に問題はないだろう。さて、腕の見せ所だな。

 

「お遊び……??よく分からないけどそれじゃあお願いしようかな。」

 

周りの女子の一部はこの時点で少し引いているが、ドラゴンボールネタを知っている男子からは割と期待された視線を送られている。ムードメーカーだと思われているのかも知れないな。まぁ悪いが……その幻想(イメージ)はぶち壊す事にするが。

 

「我が名はセイント!父親にキラキラネームを付けられて復讐を誓い、最強を目指すもの!この出会いは運命の出会い!以後よろしく!……というわけで次の自己紹介頼むわ。」

 

俺の自己紹介を聞いた反応で最も多かったのはドン引きだ。特に女子に多かった。引いてない女子は片手で数えられそうだった。ちなみに次の自己紹介を押し付けた相手は三宅である。この手順で回せばあの自己紹介をどもった少女は折り返し半分程度になる。しかも彼女の前に高円寺も居ることなので、まぁ失敗しても俺と高円寺がやばすぎてなんとかなると見た。

 

時点で多かったのはヤバいやつを見る目だ。まぁそりゃあんな厨二病MAXな自己紹介をしたら当然である。しかも自分の事をセイントとか名乗ってるしな。

 

そして何故こんな事をしたかを察したごく一部は表情は様々だった。人数にして8人ぐらい……思ったよりはいたな。

 

何考えているか分からん綾小路と無関心の極みの高円寺を除いてこの三パターンの反応で留まった。てかみんな紅魔族って知らねぇのか?

 

「入学初日から自分の身を犠牲にして助けるなんて……凄いなな、お前。」

 

そして目の前の彼、三宅はどうやら気付いていた様だ。

 

「なんの事だ?」

 

俺は恍けることにした。周りが聞いているかもしれないしな。

 

「まぁそういう事にしておく。」

 

それだけ言うと俺も三宅も自己紹介を見る方向に視線を戻した。

 

 その後も自己紹介は続く。

 

 次に立ち上がったのは、一人の男子生徒だった。

 

 

「俺の名前は山内春樹。小学生の時は卓球で全国に、中学時代は野球部でエースで背番号は四番だった。けどインターハイで怪我をして今はリハビリ中だ。よろしくぅ!」

 

山内春樹……特に語ることも無い雑魚だが原作ではネタが多い。山内テンペスト、ブラックルーム、泥掛け山内、坂柳有栖を倒した男、坂柳櫛田綾小路堀北と一人でバトルした男等様々な呼び名がある。Aクラスにいる戸塚弥彦と顔含めよく似てる気がする。

 

ちなみに彼は嘘つきの小心者だ。なんか顔含めて何処かの世の中クソだなが信条の自己中キャベツ刑事にそっくりに見えるのは俺だけだろうか?

 

 

「じゃあ次は私だねっ!!」

 

来たか、この学校である意味最強の奴。メンタル最強メンヘラ地雷女。

 

 

「私は櫛田桔梗と言います。中学からの友達は一人もこの学校に進学していないので一人ぼっちです。だから早く皆さんの顔と名前を憶えて友達になりたいと思っています。」

 

ダウト!堀北は同じ中学校じゃねぇか!まぁ勿論この場で言うつもりは無いのだが。

 

 

「私の最初の目的として、ここにいる皆さんと仲良くなりたいです。是非、皆さんの連絡先を教えて下さいねっ♡ 」

 

 

 

拍手喝采。男子からは雄叫びが上がる。さっき自己紹介していた彼女募集中の池なんか目がハートだぞ。マジで。

 

雄叫びをしていた1部の男子を見た女子はドン引きだった。初日から崩壊しかかってるのはどうなんだ一体。

 

そしてそのまま自己紹介は続いていく。

 

「それじゃあ次の人、お願い……出来……る……かな?」

 

 

 

司会役としてサラッとリーダーシップを披露した平田は次の生徒に促すが、その生徒は真正面から睨み付けることで対抗した。

 

髪の毛を真っ赤に染め上げた、如何にもな不良少年。さっき爆睡していた須藤だろう。

 

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんて、やりたい奴だけやればいいだろ?あ!」

 

出たよヤンキー、俺の嫌いなタイプ。

 

須藤健、原作では恐ろしい成長速度を遂げるヤンキーだ。ちなみに元々は短期かつバカ、運動神経だけはいいがそれだけだ。なんというかとあるバスケ漫画の赤坊主に似ている気がする。

 

「僕に強制させることは出来ない。不愉快にさせたら謝りたい。」

 

 

だが平田はサラッと謝罪の言葉を述べて、そう言って頭を深く下げた。

 

 

「なによ、自己紹介くらい良いじゃない!」

 

「先生の説明中も爆睡していた癖に!」

 

「ガキって言うけど、アンタの方がガキじゃない!」

 

「桜木花道のパクリみたいな髪型している癖に!!」

 

 平田の謝罪と同時に彼を擁護する声が須藤へと突き刺さる。ちなみに全部女子だ。なんというか……地雷原でタップダンスしてないかあいつら?

 

もしこれからの学生生活の立場考えるのなら須藤はこんな事をするべきでは無いだろう。クラス内での立場は無いも当然になる。

 

 

「うっせぇ。俺は別に、仲良しこよしするためにここに入ったわけじゃねえよ」

 

そしてそのままは席を経ち教室を出ていった。それに追随するようにして数名の生徒も立ち上がる。自己紹介をしたくないのだろう。それっぽい人間はゴミ北、佐倉、長谷部、幸村ぐらいか。アイツらすげぇな。いつの間にこんな度胸を持つように……ってそうじゃないそうじゃない。

 

 

 その後も着実に自己紹介は続いていく。

 

まぁモブが続々続くが、次が一番大事だろう。大喜利としては、だが。

 

「私の番か……ふむ。私の名前は高円寺六助、かの高円寺コンツェルンの御曹司だよ。可愛いガール達に囲まれる学校生活を所望していぃるよ。」

 

なぜ毎回ロズワール口調なんだろう……リゼロ好きなんだろうか?そして貧乳ゆんゆん事井の頭心も無事自己紹介に成功し、そのまま自己紹介は続いていく。そして最後に……彼の番になった。

 

「じゃあ最後に、そこの君。お願い出来るかな?」

 

 

「……えっ? オレか?」

 

 

「うんそうだよ。」

 

彼は綾小路清隆、最強にして最高。天才にして怪物。無機物して虚空。ホワイトルームの最高傑作の主人公だ。まぁ一言で言うならヤベェやつ。

 

 何十人分もの視線が綾小路の方を見る。失敗する自信しかないな。

 

綾小路はゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。趣味は……えー、特にありません。……好きな事とかも……えー、得意なことは特にありません。えー、……皆と仲良くなれるように頑張りたいです。……えー……よろしくお願いします。」

 

 

 

「よろしくね綾小路くん。一緒に仲良くなっていこう。」

 

 

向けられる同情の眼差し。平田の言葉がさらに綾小路の心のダメージを加速させている事だろう。

 

そして俺は綾小路とのファーストコンタクトに頭を抱えながら、そのまま周りの八割からキチガイを見る目線で見られるのに入学式まで耐えるのだった。

 

行動には責任が伴う。そう感じた瞬間だった。

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