世界一のラストパスを神の子へ   作:宮川アスカ

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まずはじめに、選手の実名を使うのは宜しくないとの事で、少し変えました。それと同時に、主人公がスペイン国籍なのに日本語名なの嫌だなと思い、主人公の名前も変えました。


第3話

 

 とあるコート。コート内では、項垂れ、座り着く人間と、涼し気な顔をした人間が両極端に別れていた。

 それもそのはず。スコアボードには、12-0と書かれた数字。

 

「お疲れ様でした。下村監督」

 

 ベンチから立ち上がった福田は、対戦相手である東京秋霖高校の監督に握手を求める。下村は、非常に険しい顔をしながらも、その握手に応じる。

 エスペリオンユースAチームの小合宿。最後の練習試合を無理に頼んだ事を後悔する。秋霖高校は下位とはいえ関東プリンスリーグ所属。だというのに、シーズンが始まる3月という大切な時期に、選手達は完全に自信を失ってしまった。

 福田の手を離し、コートを見る下村の視線の先に、不思議な光景が映る。

 

「ふ、福田監督。なんだかそちらの選手の疲労、落差が激しくないですか?」

 

 疲労を全く感じさせないエスペリオンユースの選手達の中に数名、負けた秋霖高校の選手達以上に疲弊仕切った選手達の姿。

 

「あー、最近Aチームに上がった奴らです。最初は皆あんなもんです」

 

 そんな異様な光景に、福田は何事もないかのように答える。

 

「まぁ、例外も居ますけどね。とは言え、奴が立つべき舞台を考えればまだまだです」

 

 福田はそう言いながら、Aに上がったばかりでありながら、既存の選手達と何ら変わらず会話する、セバスティアーノを見る。

 それとは反対に、息をあげながら座り込む本木の元に、1人の選手が歩み寄る。

 

「おい、みっともなく座り込むじゃねぇよ、遊馬。高校の奴らに情けねぇ姿見せんな」

 

「あ、阿久津さん……」

 

「せっかく新期生の中から早々にセバスティアーノと上がって来たんだろ? さっさとAに慣れろ。無理なら辞めろ。いずれにしろ早くしろ」

 

 そう吐き捨てる阿久津の耳に、チームメイト達の喧騒が聞こえてくる。

 

「あと4点は取れた! セヴァンが入って来た後半からはスムーズになったが、中盤でもたつくんだよ! 流れが止まるっていうか……」

 

「なんだと!? 俺たちMFが悪いってのか!?」

 

 高杉の言葉に、馬場が食いつく。

 

「そうじゃない! そうじゃないけど……こんな内容じゃ福田監督の理想からは程遠いってだけだ!!」

 

 その言葉に、遊馬の表情が凍りつく。プリンスリーグのチーム相手に12点を決めてなお、喧嘩を始め、理想とは程遠いと言うのだ。

 

(こりゃあ、慣れるん難儀じゃわ……)

 

 疲れるの身体じゃない。そして遊馬は思うのだ。自分が今までやって来たサッカーはサッカーとは言えないのかもしれないと。

 

「大丈夫か遊馬」

 

「……セバ。まさかAがここまで凄いとはのう。俺はこの環境に慣れるんじゃろうか」

 

 セバスティアーノの手を掴み、立ち上がった本木は、セバスティアーノにそう問いかける。

 

「遊馬なら大丈夫だろ。なんとなくだけど、遊馬はルイスに似てる気がする」

 

「ルイス? ガルティアの事か?」

 

「そうそう。ルイス・ガルティア。味方の為にスペースを作る動きだけじゃない。なによりストライカーとして必要なゴールへの嗅覚が遊馬はルイスに似てる」

 

 セバスティアーノの言葉に、本木は現在バルセロナで9番を背負いプレーをする、ウルグアイ人の姿が頭に浮かぶ。

 世界のトッププレイヤーの事をまるで友達の様に語るセバスティアーノの顔を本木はまじまじと見つめる。

 

「ん? どうした?」

 

「いや、セバの境遇は聞いてはいたが、やっぱセバは凄いのう」

 

 バルセロナのトップチームも入団の方針で話を進めるほどの逸材。Aチームはレベルが違うといった感じだが、セバスティアーノは次元が違う。それ程ずば抜けている。福田もより多くの事を彼に求め、伸ばそうとしている。後何年一緒に出来るかは分からないが、本木は本能的に、彼の欲するストライカーになろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小合宿も終わり、最初の月曜日。エスペリオンユースにとって休日となるその日に、セバスティアーノは阿久津の部屋で、サッカーの試合を見ていた。

 小合宿終わりに、セバスティアーノが福田に出された課題。それは東京シティ・エスペリオン。そのトップチームの試合を見ながら他人に伝わる様に、言語化し解説する事。そして、同時に自分ならどの様なプレーをするかを考えるという事である。

 とりあえず同室の本木に頼もうと思ったのだが、せっかくの休日と言う事もあり、本木は寮にいないらしい。関東圏に住む者が多い為、寮生はこの日だけ実家に帰る者も多い。

 そんな中で、阿久津は地元が関東圏でさなく、寮に居るという噂を聞き、現在にいたる。

 

「司馬、司馬明考。この選手、良い選手だなぁ。なによりサッカーが上手い。海外行っても活躍出来てただろうな。ああ……こういう人が海外に行かず日本に残ってるから日本の進歩があるのか」

 

「……おい。そんな事は俺たちユース生は皆知ってんだ。そんな話しに来たんだったら帰れ」

 

 過去の試合を見ながら、ブツブツと呟くセバスティアーノを軽く睨みながら、阿久津は試合を巻き戻す。

 

「ここのプレイ。キーパーに止められはしたが決定機だった。このシーンをお前はどうみる、お前ならどうする」

 

「俺なら……」

 

 セバスティアーノはそう言いながら、選手達に見立てたマグネットを使い、ホワイトボード上にボールが出される前のシーンを作っていく。

 

「まずポジションはここを取る。この相手選手4人のボックスの中心。初期位置はここでいい。意識するべきはゲート。中盤の選手がパスを供給する時は必ずボールはこのゲートの間を通る。この位置なら次の選択肢を多くもてる」

 

 初期のポジショニングは試合映像の選手と同じ場所。映像での選手はここでボールを要求し、ボールを受けたが、セバスティアーノは違う。

 

「俺ならこの完璧な位置でのボックスを1度捨てる。少し下りた位置でボールを要求する」

 

「……何故、完璧なポジションを捨ててボールを受けに行く」

 

「縦パスを供給するボランチのマークを剥がしたい。良い位置に居てもボールが来ないんじゃ意味がない」

 

 結果この試合ではボールが通っているが、それは結果論だ。セバスティアーノはより可能性が高い方をとる。それにここで下りてボールを貰うのには、他の理由もある。

 

「ここで下りる事で、ボランチのマークを誘導出来るだけじゃない、相手CBの1枚を若干引き付ける事が出る。1人で2枚のマークを引き付ける。そうすると相手のポジショニングが有耶無耶になり、陣形が崩れ、スペースが生じる」

 

 そして、ボールを受け、少し運べば再びボックスの中央に位置取る事が出来る。先程と違うのは、1度CBが引き出された事によって、FWが抜け出す為のスペースを確保出来ていると言う事。

 

「そして、このタイミングで出口にパスを出す。机上の空論だが、俺だったらこの方法が1番ゴールに近いと判断するだろうな」

 

「……お前いつもそんな事考えてプレーしてんのか?」

 

「? ああ」

 

 それを聞いた阿久津は、何かを考える様に黙り込み、その次にオイと声をかける。

 

「前から思ってたけどよ、お前、コーチングする時セバスティアーノって長ぇんだよ」

 

「……? あぁ……皆、セバがセヴァンと呼んでるじゃないか」

 

 阿久津の言葉の意図を察したのか、セバスティアーノはニヤリと笑う。阿久津はその顔を見て、嫌そうに舌打ちをする。

 

「セバ、お前ボランチ出来るくらいには守備強度上げろ。寄せのタイミングがワンテンポ遅せぇんだよ。だから、俺や志村が──」

 

 セバスティアーノと阿久津のサッカー談義はこの後もまだまだ続くのであった。




さて、W杯の話をしましょうか。
まずは日本代表の皆様、お疲れ様でした。スペインに勝った時は流石に興奮しました。おかげさまで次の日の懇親会は眠過ぎて死にそうでしたがね。
アルゼンチンも無事ベスト8進出、次はオランダでございます。また中々に強敵ですね。オーストラリア戦のデパウルはエグかったです。ラウタロはここらで決めて波に乗って欲しいですね。
今のところ、フランスとブラジル。特にブラジルが強すぎんなって印象です。
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