偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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尚、狂三もガチギレな模様。ポチタと狂三の相性が悪過ぎる。


偽ポチタ、怒る

「本当に屋上なんだろうな!?」

『こんな状況で嘘を吐くものか。

十香もまだ抱いてないんだ、急げ』

「ホンットお前さぁ!!」

 

真那がラタトスクに亡命した翌日。

士道は階段を駆け上がりながら、半ばヤケクソ気味にポチタに対して怒鳴り声を上げた。

遡ること、数分前。その異常は突如として訪れた。

校舎中を黒が覆い尽くし、それを踏んだ生徒たちがその場に倒れ伏したのだ。

その中には精霊であった十香、ASTとして活躍する折紙の姿もあり、強い倦怠感が身を襲っているのだと士道に訴えかけた。

その中でも唯一無事だった士道は、ポチタの指示通りに「原因が存在する」という屋上へと向かっていた。

 

『…ふむ。襲撃がないあたり、誘い込まれているようだな』

「だ、大丈夫なのか、それ…?」

『手間が省けるじゃないか。

少なくとも、お前と接触する気はあるということだろう?』

 

前向きに考えれば、狂三と腹を割って話すチャンスなのかもしれない。

士道は腹を括ると、眼前に佇む扉に力をかけ、開いた。

と。銃声と共に、その脳天目掛けて銃弾が迫る。

悪魔となった影響か、それとも精霊を封印し続けたことによる副作用か。

肉眼でそれを認識できた士道は咄嗟に身を翻し、スターターに指をかける。

 

「あら、残念。外れてしまいましたわ」

「狂三…!なんのつもりだ…!?」

 

士道が警戒を露わにして問うと、狂三はひどく穏やかな笑みを浮かべる。

嵐の前触れのような静けさを感じるソレに、背筋に冷えたものが刺さった気がした。

 

「好奇心とお答えしておきますわ。

私はただ、『見たい』だけです」

 

────《本来のチェンソーマン》を。

 

その言葉に、士道の双眸が揺らぐ。

《本来のチェンソーマン》。

その存在を知っているのは、自分を除けば本条二亜ただ一人。

恐らくは、二亜が教えたのだろう。

何か狙いがあるのだろうか、と思考を巡らせようとするも、やめた。

今は狂三の狙いを暴くことが先だ。

士道は続け様に飛んでくる銃弾を避け、声を張り上げる。

 

「この黒い影はなんだ!?ポチタの本来の姿を見るためだけに広げたのか!?」

「いえ、それだけが狙いではありませんわ」

 

絶え間なく銃を放ち、笑みを崩さない狂三。

士道を変身させようとしているのだろう。

胸元のスターターを引こうとするも、ポチタに止められているのか、指に力が入らない。

士道がポチタに問いかける暇もなく、士道の頬に赤い線が走った。

 

「これは〈時喰みの城〉と言うんですの。

私の影を踏んだ方の寿命を吸い上げる結界…とでも言えば理解していただけて?」

「その目…」

 

士道は金色に染まった狂三の左目が、アラビア数字が刻まれた時計であることに気づく。

それだけではない。

針がくるくると、逆行しているのだ。

ソレが何を意味するかわからないほど、士道は間抜けではなかった。

 

「お前…っ、学校にいる皆の寿命を奪って自分のものにしてるのか!?」

「あら、随分と察しがいいんですのね。

ええ。私の天使は燃費が悪くて。霊力と共に寿命をも削るんですの。

だからこうして、外から調達するのですわ」

 

凄絶な笑みを浮かべ、踊るように銃を構える狂三。

未だにスターターにかけた指は動かない。

沈黙を決め込んだポチタに問おうとするが、銃声がソレを阻んだ。

 

「本来であれば、士道さん。

あなたは直接わたくしが『食べて』あげるつもりでしたわ」

「だから接触したのか!!」

 

傷が増えた頬に、焔が揺らめく。

士道は放たれた銃弾を噛んで受け止め、ぷっ、とソレを吐き出した。

 

「ええ。しかし、思わぬ幸運が舞い降りたことで、その必要性が薄くなりましたわ」

「二亜のことか?」

「…乙女の話はきちんと聞くものですわよ」

「生憎だな、俺はせっかちなんだ」

 

食い気味に問うた士道に、狂三が呆れのため息を吐き、銃弾を放つ。

士道の軽口に言葉を返す気にならなかったのか、狂三は淡々と語り続けた。

 

「第二の精霊…本条二亜が明かしたのです。《本来のチェンソーマン》の力ならば、私の目的を果たせるのでは、と。

その詳細についても、『契約』という形で聞かされておりますわ」

 

少なくとも、士道を害するな、という契約ではないらしい。

士道は脳天に向けて放たれる銃弾を、腕の骨で受け止めた。

肉が裂け、骨が砕けた鈍い痛みと、血が抜けていく感覚が伝うも、士道は怯む事なく問いかけた。

 

「その目的ってのはなんだ?

参考までに教えてくれないか?」

「あなたが私に隷属するのなら」

「断る」

「……きひひっ。では、こういうのはどうでしょう?」

 

狂三が笑みを浮かべ、指を鳴らす。

と。その影から、『もう一人の狂三』が現れた。

驚愕すべきはそこだけではない。

その手には、気を失った殿町が首根っこを掴まれているではないか。

もう一人の狂三は殿町の脳天に銃を突きつけ、士道に迫る。

 

「さぁ、さぁ!ご学友の命が惜しくば、早く《本来のチェンソーマン》に変身なさ…」

「ポチタ!頼む、変わってくれ!!」

『お前でも無理だったか。仕方ない』

 

ヴゥン、とエンジン音と共に、もう一人の狂三の腕が裂かれる。

チェンソーマンに変身したポチタは、フェンスの向こう側に投げ出された殿町の体に向け、チェーンを伸ばした。

そのチェーンが殿町の体に巻きつくと、ポチタは乱暴に引き寄せ、屋上に放る。

 

「ぐほっ…」

『ぽ、ポチタ…。もうちょい加減を…』

「わがままなヤツだ。お前の学友だから、十二分に気を遣ってやったろうが」

 

呻き声をあげる殿町を前に、ポチタが士道の抗議をあしらっていると。

狂三がポチタへと迫り、胸元に伸びるスターターに手を伸ばした。

 

「そんなに変身したくないんですのね?

だったら、私が引き金を引いて差し上げますわ!!」

「私に何を求めているかは知らんが、あの姿になる気はないぞ!

股に勃つモノがないんだ!

女を抱くことはおろか、自慰すらできんだろうが!!」

 

最低なことを叫びながら、迫った狂三の脳天目掛け、額から突き出たチェンソーを振り下ろすポチタ。

と。狂三の体をもう一人の狂三が引き戻し、ポチタの瞳目掛けて銃弾を放った。

 

「いい線行ってたな。

私の体がシドーでなければ危なかった」

 

仮面の奥から炎を吹き出し、嘲りを込めて鼻で笑うポチタ。

どうやら、封印した精霊の力を行使できるのはポチタも同じらしい。

狂三は笑みをより歪めると、その影から3人目の狂三を呼び出した。

 

「本体が来たか」

「おいでなさい、《刻々帝》!!」

 

時計の針が動くような音と共に、その背に金色の時計が顕現する。

ポチタはその見た目と地獄での経験をすり合わせ、狂三の能力を考察する。

と。ある推測に至ったポチタは、その歓喜を声に乗せた。

 

「時止めセッ○スなるものがあったな!

ニアなら前戯も済ませた上で、そのような嗜好も受け入れるだろう!

シドー、心は折ってやる!!

そのあとに口説いて封印しろ!!」

『ホンットお前さぁ!!』

 

興奮に伴ってか、刃の唸り声が激しくなる。

あいも変わらず最低な言い分に士道が怒鳴るも、いきりたったクソ童貞の耳に届くはずもなく。

屋上のコンクリートを踏み砕き、その体が宙を舞った。

 

「ギャハハハハッ!!」

「ブッ殺しますわ」

 

『時止めセッ○ス』という下品な単語が、その逆鱗に触れたのだろう。

こめかみと首筋に青筋を浮かべ、静かに怒りを放つ狂三。

長銃がⅫを、短銃がⅦを指す。

その銃口に向けてⅦの数字から影が飛び出すと共に、銃口へと吸い込まれていった。

 

「【七の弾】」

 

落下するポチタに銃口を向け、狂三が早撃ちを決める。

避けるまでもないと判断したポチタは、そのまま銃弾へと突っ込んでいった。

が。それに触れると共に、ポチタの姿が一時停止されたアニメーションのように、空中に止まってしまった。

 

「あら、どうしたんですの?

あなたの望んだ力ですわよ?」

 

狂三は嘲笑を浮かべ、幾人もの自分と共に銃弾を打ち込む。

夥しい数の穴が全身に開くと、ポチタの体が動き出し、激しく血液を撒き散らした。

 

「きひひひっ!さぁ、本来の力を…」

「ほう。そういうのは出来るんだな」

 

背からチェンソーの音が聞こえる。

狂三が驚愕と共にそちらを向くと、左手が千切れ飛んだ。

そこに立っていたのは、チェンソーマン。

着ている制服には銃創どころか、刃から垂れる血液以外の汚れがない。

狂三は咄嗟に距離を取り、周囲の状況を確認する。

 

「なっ……!?」

 

思わず絶句した。

倒れ伏し、呻き声をあげるチェンソーマンと、襲いかかる狂三たちを裂くチェンソーマン。

二人のチェンソーマンが、そこには居た。

 

「落下の前に心臓を抜いて捨てた。

あそこにいるのは体…、シドーだけだ」

「いっ…てぇええぇぇ〜…っ!!

ポチタ…!お前覚えとけよ…!!」

「ほら、さっさと治せ。時止めセッ○スができるとわかっただけで儲け物だろ」

「俺!そういう!趣味!ないっ!!」

 

痛みに悶え苦しむ士道の体を、炎が舐める。

胸の穴以外が完治すると、ポチタが己の心臓を引きちぎり、士道の胸に埋め込んだ。

 

「体がもう一つある気分はどうだった?」

『最悪だ!!』

「慣れると結構便利だぞ?」

『あらかじめ言っとけ!!

めっちゃ痛かったんだからな!?』

「…これなら3Pも出来るか?」

『おまっ…、絶対やらんからな!!』

 

ギャーギャーと騒ぐ士道に、辟易のため息をこぼすポチタ。

頭のネジが根こそぎぶっ飛んだようなことをしでかした悪魔を前に、腕を戻した狂三は怒りを吐き出す。

 

「どこまで貶めれば気が済むんですの…!」

「そのくらいにしか使えんだろ。

時間に干渉する能力など、イカれポンチの下位互換だろうが」

 

支配の悪魔が強すぎるだけである。

それすらも下したポチタからすれば、狂三の能力は脅威に値しない。

その侮蔑は、時崎狂三の地雷を的確に踏み抜いていた。

狂三は怒りを銃弾と共に叩きつける。

 

「この力は私のもの!それで何を成そうが、私の勝手ですわ!!

『女を抱く』などというくだらないことだけを夢見ているあなたに、負けてたまるものですか!!」

「あ゛?」

 

ぴくっ、とポチタの瞳が揺れる。

数万年もの間、ただひたすらに願い続けた自分の夢が、くだらないと貶された。

ふつふつと感情が沸き立つ。

この感覚は、数百年ぶりだろうか。

 

────そんな下賤なことを夢見てはいけません。

 

数百年前。支配の悪魔が夢を語った自身に向けて吐いた言葉が、脳裏で反響する。

性器を失い、暴れ狂う本能に苦しみながら、それだけを求めた数万年が否定されたのだ。

狂三は地雷を踏み抜かれたが、同時にポチタの地雷も踏んづけてしまったのである。

どっちもどっちだが、それで留まるような性格ではないポチタは、感情の昂りのままに吠えた。

 

「なんなんだ貴様らイカれポンチは!!

勝手な想像ばかり押し付けて!

それが合致しないとなれば喚き立てて!!

ちょっと強いからと言って、世界の神にでもなったつもりか!?だとすれば驕りが過ぎるわ!!

そんなくだらんプライドで私が数万年抱いた夢を否定するな!!」

「くだらないのは事実でしょうが!!」

 

チェンソーが激しく唸る。

狂三が反論すると、ポチタの腕に血管が浮かび上がった。

 

「く、くふふっ、くふふふっ!

ギャハハハハッ!!そうかそうか!!

ならお前は、『私の夢よりも高尚で素晴らしい夢を抱いている』という自負があるんだな!?」

「ええ、もちろん」

 

怒り狂うポチタを前に余裕を取り戻したのか、狂三が笑みをこぼす。

それに対し、ポチタは唾液と血液を撒き散らし、叫んだ。

 

「なら夢バトルだ夢バトル!!

私が貴様の心を折れば、貴様の夢は『女を抱くこと以下』となる!!」

 

あらゆる夢を冒涜する一言に、狂三の怒りを計測したフラクシナスの観測器が爆発した。

 

「何を言うかと思えば、犬のようによく吠えますわね!

だったら犬らしく、私に跪きなさい!!」

「ギャハハハハッ!いいだろう!

ただし、私に夢バトルで勝ったらなァアッ!!」




時崎狂三…能力も夢も何もかもを貶された女。そりゃキレますわ。

五河琴里…全然兄が頼ってこない状況にキレかけてる。霊力の逆流が進んできているのか、それとも大きすぎる怒りを検知したせいか、観測器が軽く爆発した。

崇宮真那…ガチギレした狂三を画面越しに見て笑い転げてる。DEMやら精霊云々を抜いてもよっぽど嫌いらしい。この後、横隔膜が捻れてフラクシナスの医務室の世話になった。

偽ポチタ…自分の夢がしょうもないという自覚はある。それはそれとして否定する奴は許さないという面倒くさいクソ童貞。
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