偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」 作:鳩胸な鴨
ここの勝ちヒロイン、二亜しか考えられなくなってきた。それもこれも偽ポチタとか言うクソ童貞が悪いんだ。原作設定でいうと、戸籍上は最低でも五十路寸前らしい。なのでここでは四十路ギリにした。ちなみに体は若いままというのも原作設定だゾ。
「な…、な…っ、な……!?」
目の前に広がる光景を前に、屋上にたどり着いた十香は、絶句と共に疑問を吐き出す。
血飛沫と肉片が舞い散り、互いの存在を削り合うチェンソーマンと狂三。
どちゃっ、と湿っぽい音を立てて、銃弾によって切り離された士道の腕が転がる。
十香が咄嗟に士道を見ると、千切れたはずの腕を再生させ、向かってきた狂三の頭部を躊躇いもなく噛み砕く姿が見えた。
「シドー!?なにをしている、やめろ!!」
十香の言葉に反応してか、血に濡れた顔をそちらに向けるポチタ。
と。その意識が逸れたことによって、士道の意識が戻る。
「と、十香…!」
「シドー、なにをして…」
「一度しか言えないっ…!よく、聞け…!」
一瞬の隙を突いて戻ったものの、激昂するポチタを抑え込むことは出来ない。
困惑に満ちた顔を浮かべる十香に、士道は遠くなりそうな意識を強く保ち、叫んだ。
「ポチタがキレた!!」
「な、何を言って…」
「『私の体』が、邪魔をするなァア!!」
その口から放たれたのは、士道の声ではあるが、士道の言葉ではなかった。
ポチタといえば、士道の心臓となって死んだ、不思議な犬の名前だったはず。
疑問が頭をよぎるも、視界の隅にあるものを見つけたことで、思考が途切れる。
「と、殿町!?」
扉のそばには、一切の傷も汚れもない状態の殿町が寝転んでいた。
どうやら気を失っているらしい。
数秒、困惑からか十香の動きが止まる。
が。結局は放っておけなかったのか、十香は殿町の体を片手で持ち上げ、屋上の階段下へと運んだ。
「ここなら安全か…」
「夜刀神十香、何をしてるの?」
聞き慣れた声に、十香が視線を向ける。
そこには、装備を背負い、息を切らした折紙の姿があった。
「鳶一折紙!この際、貴様でもいい!
シドー…、いや、ポチタ…、むむ…?
…と、とにかく!あの状態のシドーを止めるのを手伝ってくれ!」
「何を言って…」
「聞くな!私にもよくわからんのだ!!」
訝しげに眉を顰める折紙。
しかし、士道の名前が出ている以上、無関係な話題ではないはずだ。
そう判断した折紙は、心底不満そうな表情を浮かべ、頷いた。
「わかった」
「なら早く屋上に…」
と。十香の言葉を遮り、屋上への扉が粉々に切り裂かれた。
先ほどまで殿町がいた場所である。
なりふり構っていないのか、それとも殿町が校舎の中に入ったことに気づいたのか。
どちらにせよ、十香たちの背筋が凍るには十分過ぎる光景であった。
「伏せろ!!」
十香は咄嗟に薄い膜を顕現させ、降り注ぐ瓦礫を消しとばす。
ぽっかりと穴の空いた箇所を見上げると、幾人にも重なった狂三で構成された壁を、躊躇いなく引き裂くチェンソーマンの姿が見えた。
「《チェンソーマ…」
「違う!アレは…、その、体はシドーのものなのだ!」
「……なんの冗談?」
「冗談などではない!現に、見ろ!
爪と指の間に野菜クズが詰まってる!アレは朝にシドーが切っていたほうれん草だ!」
「…………!?」
些細な特徴の一致を挙げた十香だったが、バイオレンスストーカーである折紙が核心に至るには十分な情報だったらしい。
あまりの事実に、折紙は愕然と震えた。
「……チェンソーマンが、士道…?」
「意識は違う!アレはシドーの心臓になってるともだちなのだ!」
「どういうこと?」
「体はシドーで、中身は違う!」
十香の声を喰らうかのように、数百年ぶりに激昂したポチタの咆哮が轟く。
音で体が潰される気さえする声量に、二人は思わず膝を折る。
士道の体ではあるが、士道ではない。
折紙もそのことを理解したようで、十香に向けて頷いた。
「……貴女は士道のことで嘘をつかない。
だから、信じる」
「うむ!今は一時休戦だ!
共にシドーを元に戻すぞ!」
十香の言葉を合図に、二人して赤黒く染まった屋上へと飛び出す。
しかし。そんな二人に意識を向ける暇すらないのか、それとも怒りのあまり興味を持てないのか、二人は殺し合いを止めなかった。
「…どうするの?アレでは近づけない」
「む、むぅ…!!」
力の大半を失った十香に、精霊どころか、真那に勝つことすらままならない折紙。
暴走を続けるチェンソーマンと狂三の間に、二人が割って入ったところで、良くて四肢欠損、悪くてミンチだろう。
しかし、このまま放っておくわけにもいかない。
十香はより力を戻そうと集中するも、ふと、ある違和感に気づく。
「力が流れ込んでこない…!?」
天使を顕現するための最低限の霊力以外が、一切合切戻らないのだ。
まるで、力そのものが何かに堰き止められてしまっているような感覚。
いくら封印したとは言え、士道にそんなことができるとは、到底思えない。
となれば、考えられる要因は一つ。
「ポチタ…!!」
ポチタの意思である。
どれだけその事実に焦っても、限定的な霊装を維持できる程度の霊力すらも戻らない。
そんな状態で狂三の影を踏んでいる影響が出たのか、ぐら、と視界が揺れた。
「ぬ、ぐぅ…」
「くっ…」
急激に、力が抜けていくような感覚が襲う。
影による吸収が強まったらしい。
膝をつき、十香たちは血飛沫交わる上空の戦場に目を向けた。
ソレを最後に、二人は意識を手放した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ありゃー…。プッツンしてるわー…」
その頃、二亜の自宅にて。
窓から見える来禅高校の異変を双眼鏡で見やり、二亜は苦笑を浮かべる。
ポチタが激昂した姿を見るのは初めてだが、ここまで激しいとは思っていなかった。
クソ童貞故か、地雷がわかりやすい分、その爆発も大規模だったのだろう。
これ以上は流石に看過できないな、と思いつつ、二亜は《囁告篇帙》を顕現する。
「ポチタには悪いけど、時崎狂三の戦力をこれ以上削られるのは困るんだよねー。
ま、『誰かが止めるってわかってる』から、あそこまで容赦ないんだろーけど」
二亜は言うと、自身が連載している漫画のキャラクターがプリントされたマグカップに口をつける。
その瞳には、空を切り裂く炎が映っていた。
「ありゃ。あっちもプッツンきてるね。
あの立場じゃイラつくのもわかるけど、もうちょいクールダウンした方がいいんじゃないかなー。
漫画描く以外で働いた事ないし、そのストレスがどんなモンかってのを知らん私が言っても…とか言われそーだけど。
…いかんね。ハイになってきちゃうにゃあー」
戸籍上は四十路ギリッギリなのだ。
こんな独り言を呟いて、『痛い』の一言で済まされるような歳でもない。
…そんなことを言えば、士道に胸を揉ませるのもどうかと言う話にもなってしまうが。
二亜は「あーやだやだ」とため息を吐き、《囁告篇帙》から一枚の紙を抜き取った。
「やりすぎ感パないけど…。
こんだけインパクトありゃあ十分っしょ」
天使に付属していたペンを、抜き取った紙に走らせる。
数秒と待たず完成した絵を見て、二亜は悪魔のような笑みを浮かべた。
「やっぱ概念系存在はいいね。
『再現』もできちゃうし」
言って、窓から紙を捨てる二亜。
と。風にさらわれたソレは唐突に光を放ち、異形を形作った。
「【
力はモノホンの2%くらいしかないザコだけど、インパクトは抜群よねー」
その瞳には、銃と肉で構成された怪物が映っていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「あーもぉおお!いい加減にしなさいよこの駄犬!!こっちだっておにーちゃんのことをいろいろ考えてやりたくもない大立ち回りとかしてんだからぁあああっ!!」
五河琴里は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の悪魔を屈服させねばならぬと決意した。
そんなミームが頭をよぎる程に髪を乱し、斧を振り回す琴里に、ポチタが負けじと怒号を返す。
ポチタというイレギュラーや、士道の直情的のくせにヘタレな性格によって振り回されるのにも限界が来たらしい。
その目尻には涙が溜まっており、自分でも感情の制御が出来ていないことが窺えた。
「知るかッ!!」
『おまっ…!?』
そんな怒りを三文字で一蹴したポチタに、士道は言葉を失う。
曲がりなりにも社会に揉まれ、多少大人びているとはいえ、琴里はまだ中学2年生。
黒と白のリボンでオンオフを切り替えているだけで、感情のコントロールが上手いとは世辞にも言えない年頃である。
ブッ、と何かが切れた音と共に、琴里の拳から治癒の炎が揺らめいた。
「うがぁぁぁああああっ!!」
『ほら見たことか!ほら見たことか!!』
もはや獣である。
人語を失うほどに怒り狂った琴里を前に、士道が戦慄く暇もなく。
ポチタは怒号を放つ琴里を放り、銃を時計へと構えた狂三へと襲いかかった。
「ギャハハハハ!!」
「妹の前で死になさい!!」
三つの怒号が混じった、その時だった。
三発の弾丸が、3人の眼前を通ったのは。
「「「……!?」」」
急なことに、3人とも弾丸が放たれたであろう方向を見やる。
そこに佇んでいたのは、全身から銃が突き出た怪物。
剥き出しの牙に、胸部を覆う人の顔。
生物的嫌悪すら感じさせる悍ましいシルエットを前に、狂三と琴里は頭が冷えたのか、武器を構える手を下ろした。
「……なに、アレ?」
『あー、テステス。マイクテスしてまーす。
……お、聞こえてるっぽいねー』
なんとも気の抜ける声が響く。
かなりくぐもっているが、喋り方の癖からして二亜なのだろう。
剥き出しの牙から発せられる声に、ポチタはため息を吐いた。
「『銃の悪魔』…の模造品か?」
『ざっつらーいと。
流石にヤバいと思って仲裁に駆り出したの。
燃費クソ悪い上にモノホンの影も踏めないクソ雑魚だけど…。
消耗した君らの四肢を飛ばすくらいだったらヤレるよ?どうする?』
冷えた声音と向けられた銃口に、全員が武器を収める。
仮面をグズグズに溶かし、顔を晒したポチタはわざとらしく両手をあげた。
「わかったわかった。今回は引いてやる」
『やたー!』
「ただしだ。あとで抱かせ…、いや。
今晩の性処理に付き合え。本番じゃないんだ。
そのくらいならヘタレんだろ」
『おけおけ!楽しみにしとくね!』
『…………え?…え!?はァ!?!?』
士道が抗議を始めるも時すでに遅く。
模造品である銃の悪魔は、その場で消え去ってしまった。
『ポチタぁああああっ!!』
「ええい、別にいいだろ!
第一、お前はこうでも言わんと手を出さんだろうが!!」
『そ、そりゃあ、悪いとは思ってるけど…』
「言っとくが、さっきのも契約だぞ!
お前のことだから使わんだろうが、保険に避妊具やローションも買っておけ!!」
『お、おまっ…、お前…!!』
逃げ道があったら逃げる。
クソ童貞故にクソ童貞のクソ習性を十全に理解していたポチタは、その逃げ道を一部塞ぐことに成功した。
だが、「抱け」と言わないあたり、ポチタ自身も覚悟が定まっていないのだろう。
流石はクソ童貞。肝心なところでヘタレるのはよく似ていた。
「……あ、そうだ!狂三は!?」
と。ポチタの怒りが冷えたことにより、意識の入れ替えに成功した士道は、キョロキョロと血の匂いが充満する屋上を見渡す。
しかし、そこには泣きじゃくる琴里と、気絶してしまった十香と折紙がいるくらいで、狂三は影も形も見えなかった。
「ひぐっ、ひっ…、うぇっ…」
「こ、琴里…」
曲がりなりにも、琴里をここまで追い詰めてしまったのは自分なのだ。
士道がどう謝罪しようか、と言葉を探していると。
琴里は涙をこぼしながら、夕日に吠えた。
「アラフィフのおばさんにおにーちゃん盗られたぁああああっ!!」
本条二亜…精霊だから若い姿なだけで最低でも四十路ギリのアラフィフってのが公式設定な女。体は19くらいな模様。悪魔の再現もできるようになったが、モノホンの2%くらいの強さとか言うクソザコなのに加えて1日一体しか生み出せないクソコスト。正直、ポチタがいるからやる意味がない技である。
五河琴里…一番可哀想な人。義妹という美味しいポジションに甘えてたらアラフィフに掻っ攫われた。この後、琴里とのデート回が待ってるのだが、アラフィフに掻っ攫われたという事実は変わらない。おのれクソ童貞悪魔。
時崎狂三…逃亡。結局目的も果たせず、ただ無駄弾撃っただけ。士道は兎に角、ポチタのことが心底嫌いになった。